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4.魔法使い
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彼女の話は、とても信じられないものだった。
この世界には、人間の世界(科学の世界)である人間界と、魔法使いの世界(魔法の世界)である魔法界の2つの世界が共存している。
通常、人間は魔法界へ行くことができない。
しかし反対に魔法使いなどの魔法に精通するものは人間界と魔法界を行き来することができる。
それは魔法界の生物である魔物も同様である。
そのため、人間界には魔物と呼ばれる魔法界の生物が時々入り込むことがある。
涼太が体験したように直接攻撃を受けることは珍しいが、魔物は放置することで人間界で魔災と呼ばれる災害を引き起こす。
「そんな悪者の魔物を駆除することが私たち退魔師の役目です。」
雪はふふんっ、と胸を張った。
「そして、私は退魔師の中ではかなり強いんですよ。」
すごいでしょ、と涼太の方へと顔を近づけた。
「いや……。うん、すごいけど……。」
涼太の胸に一抹の不安がよぎった。
「もしかして、俺みたいな人間は、魔法使えないのか?」
もし、人間界と魔法界が全く別の世界だとしたら、人間である俺は魔法が使えないんじゃないか……。
「はい、そうですけど。」
当たり前だと言わんばかりに言ってのける雪に、涼太は肩をがっくりと落とした。
「やっぱり……。」
一瞬でも、自分も魔法が使えるかもと思った俺が馬鹿だった。
はぁ……。
思わずため息が口をついて出た。
「ただ……。」
雪はそう言って、少し考え込むようなそぶりを見せた。
「ただ、涼太さんのように、魔物が見える人間というのは珍しいです。これまでにも何人かいたようですが、その中には後天的に魔法を使えるようになった人もいました。」
つまり、俺も魔法が使えるようになれるかもしれない……!
涼太はにやりとほくそ笑んだ。
雪の目をぐっと見つめる涼太。
「ゆき!俺も……!」
「だめです。」
雪は涼太の言葉を一蹴した。
「いいですか。先ほど言った魔法が使えるようになったというのは、杖を使った簡単な魔法のみですし、そもそも人間が魔法を使えるように訓練するためには、2級以上の魔法使いの推薦を受けて、厳しい審査を通過する必要があります。」
あなたには無理です、と言葉を続ける。
「2級以上ってなんだ。雪は違うのか。雪が俺のことを推薦してくれたら……。」
藁にも縋る面持ちで雪に迫る。
「魔法使いの階級ですよ。10級から1級までの10階級があります。ちなみに退魔師は3級以上じゃなきゃなれません。」
「ちなみに私は1級のさらに上の階級である殿堂級です。」
したり顔で雪は涼太に目を向ける。
殿堂級……。その言葉が涼太の心を震わせた。
そのかっこいい響きに胸が高鳴る。
「すごい……。つまり君はすごく強いってことだね。」
「だからさっきからそう言って……。」
やっと分かったのかと呆れ顔の雪に、涼太は足を引きずりながら詰め寄った。
「なら、俺を……!」
――どぉん。
どこかからか響いてきた大砲のような音が涼太の言葉を遮るようにあたりの空気を震わせた。
この世界には、人間の世界(科学の世界)である人間界と、魔法使いの世界(魔法の世界)である魔法界の2つの世界が共存している。
通常、人間は魔法界へ行くことができない。
しかし反対に魔法使いなどの魔法に精通するものは人間界と魔法界を行き来することができる。
それは魔法界の生物である魔物も同様である。
そのため、人間界には魔物と呼ばれる魔法界の生物が時々入り込むことがある。
涼太が体験したように直接攻撃を受けることは珍しいが、魔物は放置することで人間界で魔災と呼ばれる災害を引き起こす。
「そんな悪者の魔物を駆除することが私たち退魔師の役目です。」
雪はふふんっ、と胸を張った。
「そして、私は退魔師の中ではかなり強いんですよ。」
すごいでしょ、と涼太の方へと顔を近づけた。
「いや……。うん、すごいけど……。」
涼太の胸に一抹の不安がよぎった。
「もしかして、俺みたいな人間は、魔法使えないのか?」
もし、人間界と魔法界が全く別の世界だとしたら、人間である俺は魔法が使えないんじゃないか……。
「はい、そうですけど。」
当たり前だと言わんばかりに言ってのける雪に、涼太は肩をがっくりと落とした。
「やっぱり……。」
一瞬でも、自分も魔法が使えるかもと思った俺が馬鹿だった。
はぁ……。
思わずため息が口をついて出た。
「ただ……。」
雪はそう言って、少し考え込むようなそぶりを見せた。
「ただ、涼太さんのように、魔物が見える人間というのは珍しいです。これまでにも何人かいたようですが、その中には後天的に魔法を使えるようになった人もいました。」
つまり、俺も魔法が使えるようになれるかもしれない……!
涼太はにやりとほくそ笑んだ。
雪の目をぐっと見つめる涼太。
「ゆき!俺も……!」
「だめです。」
雪は涼太の言葉を一蹴した。
「いいですか。先ほど言った魔法が使えるようになったというのは、杖を使った簡単な魔法のみですし、そもそも人間が魔法を使えるように訓練するためには、2級以上の魔法使いの推薦を受けて、厳しい審査を通過する必要があります。」
あなたには無理です、と言葉を続ける。
「2級以上ってなんだ。雪は違うのか。雪が俺のことを推薦してくれたら……。」
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「魔法使いの階級ですよ。10級から1級までの10階級があります。ちなみに退魔師は3級以上じゃなきゃなれません。」
「ちなみに私は1級のさらに上の階級である殿堂級です。」
したり顔で雪は涼太に目を向ける。
殿堂級……。その言葉が涼太の心を震わせた。
そのかっこいい響きに胸が高鳴る。
「すごい……。つまり君はすごく強いってことだね。」
「だからさっきからそう言って……。」
やっと分かったのかと呆れ顔の雪に、涼太は足を引きずりながら詰め寄った。
「なら、俺を……!」
――どぉん。
どこかからか響いてきた大砲のような音が涼太の言葉を遮るようにあたりの空気を震わせた。
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