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本編
第26話 裏切り
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深夜の戦闘訓練場は、真っ暗だった。
ロザリアは慌てて、中へ入る。
真白はアリスが大切に育てていたのだ。
それがロザリアのせいで傷つけられるなんて、許せない。
生徒たちの面白可笑しないたずらで傷つけられていいようなものではないのだ。
「ま、ましろ……?」
ロザリアが訓練場へ入ると、フィールドの中央だけに、なぜかスポットライトが当てられていた。
光の中にあったのは、大きな檻。
「きゅぅううん」
ガリガリと檻を叩きながら、心細そうな鳴き声を上げる真白が中にいた。
「真白!」
ロザリアは慌ててフィールドの上へ駆け上がった。
真白のいる場所まで駆けていくと、慌ててその檻を確かめる。
「真白、どうしてこんなことに……あっ!」
ロザリアは檻の中のましろを見て、声を上げた。
「怪我をしているじゃない……!」
ロザリアはパニックになった。
檻の中にいた真白は、前足から血を流していたからだ。
心なしか、毛もボサボサになっている感じがする。
「誰がこんなことを!」
ロザリアは慌てて檻を開けようと、がちゃがちゃ動かした。
思いっきり扉を引っ張る。
がしゃん!
意外なことに、檻はあっけなくあいた。
「きゅぅううん!」
真白は怖かったのか、ロザリアに飛びついてくる。
「怖かったね……」
「きゅうううん!」
「帰ろう。アリスちゃんに報告しなきゃ……」
ロザリアがホッと真白を抱きしめた時。
「やっぱりお前だったんだな」
声が響き渡ると同時に、暗かった訓練場に明かりが灯った。
「!」
ロザリアは息を呑んだ。
手紙をよこした時点で誰かがいるのだろうとは思っていたが、まさかこんな、観客席に大勢の生徒たちがいるとは思わなかったからだ。
「なに、これ……」
ロザリアはあまりの自体に、頭が真っ白になってしまった。
そんなロザリアをバカにするように、フィールドに上がってくる男子生徒。
「あなた、は……」
「ふん、もう忘れたのか?」
男子生徒はにやりと笑った。
「グレン・バルハザード。第三王子じゃないか」
「っ」
ロザリアは後ずさった。
男子生徒──グレンは、にやりと笑っている。
「……こ、これは一体どういうことですか?」
ロザリアはせいいっぱい声を絞り出してそうたずねる。
「どういうこと? それはこちらが聞きたいな」
グレンは大げさにため息をつくと、後ろを振り返った。
「アリス、おいで」
「!」
おずおずとフィールドの上へやってきたのは、アリス・エヴァレットその人だった。
(アリスちゃん……!?)
ロザリアは息を飲む。
アリスは俯いたまま、ロザリアの方を見ようとしなかった。
「お前はこのアリスをいじめた上、今日までこの魔獣を旧校舎に隠し、アリスを襲おうとしたんだ」
(は?)
ロザリアは驚いた。
「今、この場へ魔獣を助けていたのを、この場にいた全員が目撃した」
「……」
(え! だって手紙に来いって書いたのはそっちじゃ……)
「言い逃れはできないぞ、ロザリア」
ロザリアは目を白黒させた。
明らかにグレンの言っていることは穴だらけというか、何かおかしいのだが、大勢の前にさらされているという緊張で、声が出ないのだ。
ロザリアは正直、心の中ではパニックだったし、泣いていた。
しかしその表情は相変わらず『無』という感じで、それが周りにまた何かしらの誤解を与えているのだった。
「オルガレム公爵令嬢ロザリア=リンド、今日この時この場を持って、お前には学園を退学してもらおう!」
グレンの堂々とした声が、訓練場に響きわたった。
ロザリアは慌てて、中へ入る。
真白はアリスが大切に育てていたのだ。
それがロザリアのせいで傷つけられるなんて、許せない。
生徒たちの面白可笑しないたずらで傷つけられていいようなものではないのだ。
「ま、ましろ……?」
ロザリアが訓練場へ入ると、フィールドの中央だけに、なぜかスポットライトが当てられていた。
光の中にあったのは、大きな檻。
「きゅぅううん」
ガリガリと檻を叩きながら、心細そうな鳴き声を上げる真白が中にいた。
「真白!」
ロザリアは慌ててフィールドの上へ駆け上がった。
真白のいる場所まで駆けていくと、慌ててその檻を確かめる。
「真白、どうしてこんなことに……あっ!」
ロザリアは檻の中のましろを見て、声を上げた。
「怪我をしているじゃない……!」
ロザリアはパニックになった。
檻の中にいた真白は、前足から血を流していたからだ。
心なしか、毛もボサボサになっている感じがする。
「誰がこんなことを!」
ロザリアは慌てて檻を開けようと、がちゃがちゃ動かした。
思いっきり扉を引っ張る。
がしゃん!
意外なことに、檻はあっけなくあいた。
「きゅぅううん!」
真白は怖かったのか、ロザリアに飛びついてくる。
「怖かったね……」
「きゅうううん!」
「帰ろう。アリスちゃんに報告しなきゃ……」
ロザリアがホッと真白を抱きしめた時。
「やっぱりお前だったんだな」
声が響き渡ると同時に、暗かった訓練場に明かりが灯った。
「!」
ロザリアは息を呑んだ。
手紙をよこした時点で誰かがいるのだろうとは思っていたが、まさかこんな、観客席に大勢の生徒たちがいるとは思わなかったからだ。
「なに、これ……」
ロザリアはあまりの自体に、頭が真っ白になってしまった。
そんなロザリアをバカにするように、フィールドに上がってくる男子生徒。
「あなた、は……」
「ふん、もう忘れたのか?」
男子生徒はにやりと笑った。
「グレン・バルハザード。第三王子じゃないか」
「っ」
ロザリアは後ずさった。
男子生徒──グレンは、にやりと笑っている。
「……こ、これは一体どういうことですか?」
ロザリアはせいいっぱい声を絞り出してそうたずねる。
「どういうこと? それはこちらが聞きたいな」
グレンは大げさにため息をつくと、後ろを振り返った。
「アリス、おいで」
「!」
おずおずとフィールドの上へやってきたのは、アリス・エヴァレットその人だった。
(アリスちゃん……!?)
ロザリアは息を飲む。
アリスは俯いたまま、ロザリアの方を見ようとしなかった。
「お前はこのアリスをいじめた上、今日までこの魔獣を旧校舎に隠し、アリスを襲おうとしたんだ」
(は?)
ロザリアは驚いた。
「今、この場へ魔獣を助けていたのを、この場にいた全員が目撃した」
「……」
(え! だって手紙に来いって書いたのはそっちじゃ……)
「言い逃れはできないぞ、ロザリア」
ロザリアは目を白黒させた。
明らかにグレンの言っていることは穴だらけというか、何かおかしいのだが、大勢の前にさらされているという緊張で、声が出ないのだ。
ロザリアは正直、心の中ではパニックだったし、泣いていた。
しかしその表情は相変わらず『無』という感じで、それが周りにまた何かしらの誤解を与えているのだった。
「オルガレム公爵令嬢ロザリア=リンド、今日この時この場を持って、お前には学園を退学してもらおう!」
グレンの堂々とした声が、訓練場に響きわたった。
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