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第4章 魔王様は脱力系?
モフリシャス!!!
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◆
リリィはお茶を飲みながら、テレビを見ていた。
一通り仕事を済ませた後、寝る前にこうしてドラマを見て、お風呂に入るのがリリィのルーティーンなのだ。
リリィがテレビを見ていると、ダイニングルームにショコラが入ってきた。
「リリィさん、お風呂いただきました」
「あーはいはい。じゃあ私もそろそろ入り……」
リリィはショコラを振り返ると、固まってしまった。
その視線はしっぽに釘付けになっている。
「な……」
リリィはショコラに近づくと、しっぽを凝視した。
ショコラはもじもじと、恥ずかしそうにしている。
「ルーチェさんが、しっぽ専用のソープを買ってくれたんです」
そこにあったのは、あきらかにお風呂に入るまでとは違う、もっふもふでボリューミィなしっぽだった。
毛質がもっともっと柔らかそうになり、艶が出ている。
「……ショコラさん、大変失礼ですが」
「はい?」
「もふっても?」
「ど、どうそ」
リリィはその、ふわんふわんのしっぽをそっと両手で握った。
もふもふもふ。
とろけるような肌触りのしっぽが、リリィの手に触れた。
「……」
リリィは黙って、もふり続けた。
そしてぽつりと呟く。
「も……」
「?」
「モフリシャス!!!!」
よく分からないが、モフリシャスとは、もふもふしたものを褒めるときの褒め言葉のようだった。
◆
「美容関係の仕事仲間が教えてくれたのよ。あたしに感謝しなさいよね」
リビングで鼻高々にルーチェが言った。
ショコラは裸で出てきたミルとメルに服を着せていた。
そしてリリィは、なしっぷる社のポッキントッシュ、通称ポックPCで、ウェブサイトを検索している。
「あった! これですね!」
検索でたどり着いたのは、モフリシャスの公式通販ページだった。
リリィは必要事項を入力すると、『定期購入便』にカーソルを合わせ、かちりとクリックする。
「……定期購入しましたわ」
ふう、と一仕事を終えたように、リリィは息をつく。
それを見ていたショコラは、心配になった。
「あの、これ、とても高価なものだと思うんですけど、いいのでしょうか?」
「心配しないでください。ラグナル様のカードで買ってますから」
そっちの方が余計心配だったのだが、いくら言っても買うと聞かないので、ショコラはあとでラグナルに報告しようと思った。そしてしっぽを見たラグナルは、これほどためになる買い物はないと、定期購入を激押ししたのだった。
「いや~、いい買い物をしました」
そう言って、リリィはご機嫌で風呂へ向かったのだった。
◆
「ふんっ。これで、あたしがしたこと……ちゃらでいいでしょ?」
「え?」
ショコラが自分のしっぽをいじっていると、ルーチェがぽつりとそう言った。
「それって……」
「ま、別にあんたなんかにこんなことしてやる義理なんてないんだけどね!」
「ルーチェさん……」
実はあのときのことを気にしていたのか、とショコラは意外に思った。
それからふ、と微笑む。
「ショコラ、ルーチェさん、好きです」
「は、はぁ!? 何よいきなり!」
ルーチェは真っ赤になって動揺する。
「そんなこと言ったって、もう何もやらないわよ!」
「わかってますよ~」
ショコラが笑うと、ルーチェはショコラにびしっと指差して言った。
「いい、あたしとあんたはライバルなの。だから気安くしないでよねっ」
「?」
なんのライバルなのかさっぱりわからなくて、ショコラは首をかしげた。
ルーチェは何も言わず、さっさと部屋を出て行ってしまう。
(ルーチェさんって、結構いい人なんだよね。それにおもしろいし)
その背中を見送りながら、ショコラはそんなことを考えたのだった。
リリィはお茶を飲みながら、テレビを見ていた。
一通り仕事を済ませた後、寝る前にこうしてドラマを見て、お風呂に入るのがリリィのルーティーンなのだ。
リリィがテレビを見ていると、ダイニングルームにショコラが入ってきた。
「リリィさん、お風呂いただきました」
「あーはいはい。じゃあ私もそろそろ入り……」
リリィはショコラを振り返ると、固まってしまった。
その視線はしっぽに釘付けになっている。
「な……」
リリィはショコラに近づくと、しっぽを凝視した。
ショコラはもじもじと、恥ずかしそうにしている。
「ルーチェさんが、しっぽ専用のソープを買ってくれたんです」
そこにあったのは、あきらかにお風呂に入るまでとは違う、もっふもふでボリューミィなしっぽだった。
毛質がもっともっと柔らかそうになり、艶が出ている。
「……ショコラさん、大変失礼ですが」
「はい?」
「もふっても?」
「ど、どうそ」
リリィはその、ふわんふわんのしっぽをそっと両手で握った。
もふもふもふ。
とろけるような肌触りのしっぽが、リリィの手に触れた。
「……」
リリィは黙って、もふり続けた。
そしてぽつりと呟く。
「も……」
「?」
「モフリシャス!!!!」
よく分からないが、モフリシャスとは、もふもふしたものを褒めるときの褒め言葉のようだった。
◆
「美容関係の仕事仲間が教えてくれたのよ。あたしに感謝しなさいよね」
リビングで鼻高々にルーチェが言った。
ショコラは裸で出てきたミルとメルに服を着せていた。
そしてリリィは、なしっぷる社のポッキントッシュ、通称ポックPCで、ウェブサイトを検索している。
「あった! これですね!」
検索でたどり着いたのは、モフリシャスの公式通販ページだった。
リリィは必要事項を入力すると、『定期購入便』にカーソルを合わせ、かちりとクリックする。
「……定期購入しましたわ」
ふう、と一仕事を終えたように、リリィは息をつく。
それを見ていたショコラは、心配になった。
「あの、これ、とても高価なものだと思うんですけど、いいのでしょうか?」
「心配しないでください。ラグナル様のカードで買ってますから」
そっちの方が余計心配だったのだが、いくら言っても買うと聞かないので、ショコラはあとでラグナルに報告しようと思った。そしてしっぽを見たラグナルは、これほどためになる買い物はないと、定期購入を激押ししたのだった。
「いや~、いい買い物をしました」
そう言って、リリィはご機嫌で風呂へ向かったのだった。
◆
「ふんっ。これで、あたしがしたこと……ちゃらでいいでしょ?」
「え?」
ショコラが自分のしっぽをいじっていると、ルーチェがぽつりとそう言った。
「それって……」
「ま、別にあんたなんかにこんなことしてやる義理なんてないんだけどね!」
「ルーチェさん……」
実はあのときのことを気にしていたのか、とショコラは意外に思った。
それからふ、と微笑む。
「ショコラ、ルーチェさん、好きです」
「は、はぁ!? 何よいきなり!」
ルーチェは真っ赤になって動揺する。
「そんなこと言ったって、もう何もやらないわよ!」
「わかってますよ~」
ショコラが笑うと、ルーチェはショコラにびしっと指差して言った。
「いい、あたしとあんたはライバルなの。だから気安くしないでよねっ」
「?」
なんのライバルなのかさっぱりわからなくて、ショコラは首をかしげた。
ルーチェは何も言わず、さっさと部屋を出て行ってしまう。
(ルーチェさんって、結構いい人なんだよね。それにおもしろいし)
その背中を見送りながら、ショコラはそんなことを考えたのだった。
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