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第八章 ダンジョンを攻略して女神様に会おう1

6、極限のエリア70階層へ☆グルメ伯爵とコレクター公爵

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 プリン堂の一味を捕縛するための、ダンジョン包囲網は瓦解した。まだ残っているのは、マリアクアの兵だけである。
 謎の街道モンスターの目撃情報も無い。

 捕縛の手段は、当初の計画通りになる。出てきたところを後をつけ、ダンジョン領域を離れてから捕まえる。
 騎士達の中には、実力に裏打ちされた自信を持つ者がいた。彼らの中には、何度もダンジョンに挑み地下50階を超えた者もいる。

 ダンジョンを何処まで行き、どの程度まで鍛えてくるかは知らない。しかし、初めてダンジョンに挑んだ者が多少強くなる程度ならば……。
 自分が負ける訳が無い、そう思っていた。彼らには、一味の詳しい情報は知らされていない。

 そんな状況で、一部の兵の中にダンジョンへ様子を探りに行こう。と、言う話が出ている。許可を求められメンバーを見ると騎士隊長が言う。

「かまわん、いても大して役にはたたん奴らだ」

 隊長と数名いる、女神のダンジョン地下50階を超えた事のある者。彼らから見れば、新米騎士は足手まといでしかなかった。
 もともと、ほんの少しの足止めとしか期待していない。

 マリアクアの騎士マイルズは、その偵察任務に志願していた。

☆☆☆

 ダンジョン包囲網が崩壊した頃、マリアクアのハワード伯爵は、聖王都の公爵邸を尋ねていた。
 連れてきた配下には、アイテムボックス持ちがいて公爵への手土産を持たしている。
 プリンとケーキである。

「本日は、珍しい食べ物をお持ちしました。
 そして、それに関して、お願いしたい事がございます」

 公爵は、珍しいという言葉に瞳を輝かせる。
 伯爵の合図と共に、プリンとケーキがテーブルの上に並べられた。

「マリアクアで、売りだされていた品でプリンとケーキといいます」

「ほぅ、ハワード伯爵が手土産にする程の物、さぞ美味なのであろう」

 そう言うと、公爵は周りの者に問いかける。

「誰か、知っている者はいるか? エチゴヤはどうだ?」

「……プリンとケーキは、日本にある食べ物です」

 ガタリッ、公爵は思わず身を乗り出した。
 当たるなどとは、思ってもいなかった懸賞にでも当たった気分だろう。物凄い笑顔になる。

「ハワード伯爵、この品を作った者の事を詳しくお話いただきたい」

 伯爵は、プリンとケーキを作ったプリン堂のことを話した。現在逃亡中であり、ダンジョン内にいることを含めて……。

「――――空野和弘に、和也、花音。この名前は、どう思う?」

「……日本人の名前の様に思えます」

「捕らえよ! 何としても捕らえるのだ!」

「……ハッ!」

「ハッチ、カークに連絡を。
 マリアアースの町へは、昔のトモダチも連れて行く様に言いなさい」

 伯爵が増援を頼むまでもなく、物事は進んでいく。伯爵としてはレシピさえ手に入れば、作り手など誰でも良い。
 自分が殺すつもりだった事など忘れて、逃げるなどとはバカなマネをしたものだと、心の中でプリン堂一味に待ち受けるだろう運命をあざ笑っていた。

☆☆☆

 69階の人魚は、どうやら女神ミューズ様だったらしい。怒っているんだろうか? いやいや、そんな大人気ないこと……。
 ボクの宝箱の中身がボールペンだったのは、「――女神様は、暇だとか、友達いない」って考えてしまったせいなのか?
 どんな神様なんだ? 女神ミューズ様って。ボクは、みんなに聞いてみた。

「この世界の神様の女神ミューズ様って、どう?」

「どうと言われても……良い神様です」
「ええ、悪く言う人はいません」

「えっ、いないの? 神様の悪口言う人」

「……何故、神様の悪口を?」

「まあ、地球じゃ誰も神様なんて本当には信じてないじゃないかな?」
「何もしてくれませんし」

 と、和弘さん花織さん。

「えっ、信じてないって……。何もしてくれないんですか?」

「神話なんかだと、色々やってますけど……洪水起こしたり――――」

 ボクは地球の神様について、色々と話していた。
 女神様が聞いている可能性を忘れて……。


 地下70階へ降りてみると、そこは灼熱の砂漠が広がっていた。セーティーゾーンは神殿のような建物になっている。中は、適温である。

「熱い~、ここから出たくない~」

 花音ちゃんが、一歩足を踏み入れると悲鳴を上げて戻ってきた。

「魔力の数値は、魔法防御力の高さでもあります。
 この暑さに魔力で対抗する事が、ここの試練でもある筈です」

 と、マリアさんが言う。ブランカさんが頷いているが。

「「「「「……?」」」」」

 なんですか? それ。ブランカさんマリアさんとしては、ボク達が知っているものと思っていたらしい。ボク達が魔法の使い手だったから。

 魔力数値による抵抗力は、何の訓練もしなければ、~10%だという。
 訓練を重ねれば数値の限界まで、更にはMPを注ぎ込んで抵抗値を限界を超えて上げる事が出来る。

 火炎魔法などのスキル伝授では必須の技術なのだという。これを知らなければ、教える相手が火傷だらけになるだろう。

 ボク達は、セーフティゾーンで魔力による抵抗能力の使い方を教わることになった。魔力を意識的に使うと、灼熱の砂漠が春の日差し程度の暖かさに変わった。

 だが、集中が切れるとすぐに暑さが戻る。
 この階でも数日を鍛錬に費やすことになりそうだった。


 サンドウォームは砂の中から、いきなり飛び出して攻撃してくる。砂の中の動きをうさ子に捉えられていたのだが……。

 71階層に降りて、その様相の変化にボク達は驚かされる。灼熱の砂漠から一転、そこは氷の世界だった。
 70階層のテーマは、苛酷な環境での戦闘なのだろうか。だが、対抗する術は同じである。
 交互に灼熱の砂漠と氷の世界が続く、極限のエリアとでも言うべきか。

 スノウウルフの群れを倒し、先に進む。

 ボク達は、ある程度無意識に魔力で環境に対抗できるようになっていた。
 念話にしても今回のことにしても、ボク達を鍛えるためのダンジョンだということだろう。

 女神様、感謝してます。 
 感謝してますよ~! だから、意地悪しないでください。
 ボクも、お宝が欲しいです……。
 女神様には、いつかお礼を言いに来ようと思っていたのに何でこうなった。


 スノウベアとスノウウルフを倒し、

 サンドウォームとデザートウルフを砂に変え、

 ボク達は極限のエリアを抜けて、地下80階へ降りていった。

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