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第五章 マルシカから第六王家の所領への関所まで
4、人助けして第八王都へ☆通りすがりの日本人
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スキルの持ち主が死んだら、アイテムボックスの中身はどうなるか? 亜空間から、この世界に戻される。何時何処になのかは、分からないが……。
盗賊達は、アイテムボックスの中身を脅し取る必要があった。助けた3人は、そのせいで攫われて殴られる事になった。その先は、もっと酷い運命が待っていただろう。
治癒魔法で見た目が分かるようになった。三十代後半の男女と15,6歳の少女……親子のようだ。
気が付いて状況を理解すると、猛烈な勢いでお礼を言い始めた。少女の目も映画俳優でも見るような憧れの眼差しだ。
ブライト・サトゥー・ハワードさん、第八王都で商店をしていると言う。奥さんはセーラ、少女はメグという名前だ。
ああ、もう感謝の言葉はいいです。お礼に娘さんは要りません。奥さんはもっと要りません……。
『『『カイト~顔まっかか~』』』
「たまたま……ただの通りすがりです」
そう言うと今日は此処で野営して王都へ向かうのは明日になると告げておく。ブランカさんとマリアさんがニヤニヤしてる……。
『たまも、治した~えらい?』
『うん、えらいぞ~』そう言って、たまを撫でて上げる。
『ぽちも~』『うさ子も~』
『うんうん、ぽちも、うさ子もえらいぞ~』
ぽち、たま、うさ子を撫でながら、しばらく二人は知らないフリをしておく……。
キュルルルル……ブランカさんのお腹がなった。ぷっぷぷぷっ……。
『『『おなかすいた~』』』
「ごはんにしましょうか……?」
「「はい!」」
一夜を過ごす盗賊の洞窟の中を調べて、溜め込んだお宝を見つけた。お宝は、届け出て約1割を税として収める必要があるらしい。
盗賊の賞金は、賞金首でなければ一人1万マールと言う事だ。
盗賊のお宝を見ていく。剣などの武器、防具、反物、陶器類、宝飾品に現金……。
「取られた物があったら、取り返しちゃってください」
ボクがそう言うと、ハワードさん達も探し出した。
「あっ、ひいおじいちゃんの幸運のお守り!」
そういって少女が、紺色の手帳のようなものを見つけて手に取る。
その紺色の手帳に、チラリと日本語とアルファベットの文字が見えた……。
「えっ……それ、ちょっと見せてもらってもいいかな?」
それは紺色の日本のパスポートだった。今は、赤色をしている。かなり昔のパスポートだろう。
「あの助けて頂いたお礼に、そのお守り……受け取って頂けるでしょうか」
ああ、いけない。珍しいモノで、ボクが欲しがってると思われちゃったかな?
「あのボクは、君達のおじいちゃんの遠い親戚みたいなモノだから、お礼とか気にしなくても良いよ」
そう言うとボクはパスポートの古いかお写真のページを開くとに書いてある名前を読んで上げた。
「……さとうまさはる。この絵の頃は、40歳くらいだね」
髪の色、瞳の色、顔立ちも西洋風で日本人の血が入っているとは分からなかった。でも、この人達は50年前の転移者の子孫のようだ。
「ひいおじいちゃんの……。ひいおじいちゃんに会いに来たんですか?」
「えっ、まさか……。い、生きて……ます?」
「「「……はい」」」
第八王都は、マルシカやマルクマの町に比べると流石に大きい。7,8倍の規模で、外壁にある門も複数あるようだ。
盗賊の討伐とお宝を届け出る。審問官立会いの下で、討伐した盗賊の人数や盗賊のお宝を申告する。百万マールくらいになり、ブランカさんマリアさんと三人で分けた。
そこは、王都のメインストリートからは外れている。が、そこそこ大きな店だった。道具取り扱いハワード商店という看板が、店の入り口の上に掛かっていた。
店の奥に通されていくと、一人の老人が待っている。顔にしわが刻まれ、白髪になり少し薄くなっているがパスポートの写真の面影がある。
「こんにちは、佐藤さん。ボクは山本といいます。日本から、この世界に来ました」
ビクリとして、こちらを見ている。
「ニホンゴなのか。にほんご……もっと聞かせてくれ」
さてと、困った。何を話せばいいのか……。ブランカさんやマリアさんは、何を言ってるのかさえ分かってない。
『ぽち、たま、うさ子、挨拶するよ』
キャリーバックから顔を覗かせて、老人を見つめる。
『おじいちゃん、にほんじん?』『『にほんじん?』』
『そうだよ、ボク達と同じ日本から来た人だよ』
「ぽちです」「たまです」「うさ子です」
「ぽち、たま、うさ子か、日本的な……。しかし、安直な名前じゃのう」
なんとも楽しそうに笑いながら、老人が言う。
「他の名前も考えたのですが、本人達が気に入ってしまって」
「ほ~う、意志が通じ合えるか……。異世界じゃのぅ」
ぽち、たま、うさ子がキャリーバックに引っ込んだ。何故か名前の事になると、ご機嫌斜めになることがある……。
「東京オリンピックは、どうでしたか?」
遠くを見て、思い出しているようだ。パスポートの発行年は1964年オリンピックの年だった。たぶん異世界転移は、その数年後の筈だ。
「……よかった。とても良かったぞ。日本が最も輝いた年だろう。世界中から人が来て、日本の復活を世界に知らしめた年じゃ」
「日本はどうなった? あれから日本はどうなった?」
「日本は世界に誇る経済大国ですよ。2020年には、二度目の東京オリンピック開催が決まっています」
「おおっ、そうか、そうか。すると、お主はオリンピック……見れんのだな」
ぐっ、余計な一言を……。
ボクは言えなかった。日本を嫌いな政党が政権を取った事とか。
反日国が世界中にウソをばら撒いて海外の日本人の子供が、いじめにあう迄になってしまった事。
隣の国は領海侵犯を繰り返し、領土を奪われる危機すらある。
日本人は、安全で豊かな国を作ってきたけど、対外的には厳しい未来が立ちふさがっている。
「……生きるために、前へ進むのじゃ」
「異世界で50年……。頑張ってきたんですね」
「頑張れば、嫁も出来るぞ」
笑いながら、手をワシワシさせている……。スケベ爺め!
スマートフォンに残っていた、ボクの家の近所の写真。瓦屋根の家が写る風景が、気に入ったようなので板に焼き付けてプレゼントした。
盗賊達は、アイテムボックスの中身を脅し取る必要があった。助けた3人は、そのせいで攫われて殴られる事になった。その先は、もっと酷い運命が待っていただろう。
治癒魔法で見た目が分かるようになった。三十代後半の男女と15,6歳の少女……親子のようだ。
気が付いて状況を理解すると、猛烈な勢いでお礼を言い始めた。少女の目も映画俳優でも見るような憧れの眼差しだ。
ブライト・サトゥー・ハワードさん、第八王都で商店をしていると言う。奥さんはセーラ、少女はメグという名前だ。
ああ、もう感謝の言葉はいいです。お礼に娘さんは要りません。奥さんはもっと要りません……。
『『『カイト~顔まっかか~』』』
「たまたま……ただの通りすがりです」
そう言うと今日は此処で野営して王都へ向かうのは明日になると告げておく。ブランカさんとマリアさんがニヤニヤしてる……。
『たまも、治した~えらい?』
『うん、えらいぞ~』そう言って、たまを撫でて上げる。
『ぽちも~』『うさ子も~』
『うんうん、ぽちも、うさ子もえらいぞ~』
ぽち、たま、うさ子を撫でながら、しばらく二人は知らないフリをしておく……。
キュルルルル……ブランカさんのお腹がなった。ぷっぷぷぷっ……。
『『『おなかすいた~』』』
「ごはんにしましょうか……?」
「「はい!」」
一夜を過ごす盗賊の洞窟の中を調べて、溜め込んだお宝を見つけた。お宝は、届け出て約1割を税として収める必要があるらしい。
盗賊の賞金は、賞金首でなければ一人1万マールと言う事だ。
盗賊のお宝を見ていく。剣などの武器、防具、反物、陶器類、宝飾品に現金……。
「取られた物があったら、取り返しちゃってください」
ボクがそう言うと、ハワードさん達も探し出した。
「あっ、ひいおじいちゃんの幸運のお守り!」
そういって少女が、紺色の手帳のようなものを見つけて手に取る。
その紺色の手帳に、チラリと日本語とアルファベットの文字が見えた……。
「えっ……それ、ちょっと見せてもらってもいいかな?」
それは紺色の日本のパスポートだった。今は、赤色をしている。かなり昔のパスポートだろう。
「あの助けて頂いたお礼に、そのお守り……受け取って頂けるでしょうか」
ああ、いけない。珍しいモノで、ボクが欲しがってると思われちゃったかな?
「あのボクは、君達のおじいちゃんの遠い親戚みたいなモノだから、お礼とか気にしなくても良いよ」
そう言うとボクはパスポートの古いかお写真のページを開くとに書いてある名前を読んで上げた。
「……さとうまさはる。この絵の頃は、40歳くらいだね」
髪の色、瞳の色、顔立ちも西洋風で日本人の血が入っているとは分からなかった。でも、この人達は50年前の転移者の子孫のようだ。
「ひいおじいちゃんの……。ひいおじいちゃんに会いに来たんですか?」
「えっ、まさか……。い、生きて……ます?」
「「「……はい」」」
第八王都は、マルシカやマルクマの町に比べると流石に大きい。7,8倍の規模で、外壁にある門も複数あるようだ。
盗賊の討伐とお宝を届け出る。審問官立会いの下で、討伐した盗賊の人数や盗賊のお宝を申告する。百万マールくらいになり、ブランカさんマリアさんと三人で分けた。
そこは、王都のメインストリートからは外れている。が、そこそこ大きな店だった。道具取り扱いハワード商店という看板が、店の入り口の上に掛かっていた。
店の奥に通されていくと、一人の老人が待っている。顔にしわが刻まれ、白髪になり少し薄くなっているがパスポートの写真の面影がある。
「こんにちは、佐藤さん。ボクは山本といいます。日本から、この世界に来ました」
ビクリとして、こちらを見ている。
「ニホンゴなのか。にほんご……もっと聞かせてくれ」
さてと、困った。何を話せばいいのか……。ブランカさんやマリアさんは、何を言ってるのかさえ分かってない。
『ぽち、たま、うさ子、挨拶するよ』
キャリーバックから顔を覗かせて、老人を見つめる。
『おじいちゃん、にほんじん?』『『にほんじん?』』
『そうだよ、ボク達と同じ日本から来た人だよ』
「ぽちです」「たまです」「うさ子です」
「ぽち、たま、うさ子か、日本的な……。しかし、安直な名前じゃのう」
なんとも楽しそうに笑いながら、老人が言う。
「他の名前も考えたのですが、本人達が気に入ってしまって」
「ほ~う、意志が通じ合えるか……。異世界じゃのぅ」
ぽち、たま、うさ子がキャリーバックに引っ込んだ。何故か名前の事になると、ご機嫌斜めになることがある……。
「東京オリンピックは、どうでしたか?」
遠くを見て、思い出しているようだ。パスポートの発行年は1964年オリンピックの年だった。たぶん異世界転移は、その数年後の筈だ。
「……よかった。とても良かったぞ。日本が最も輝いた年だろう。世界中から人が来て、日本の復活を世界に知らしめた年じゃ」
「日本はどうなった? あれから日本はどうなった?」
「日本は世界に誇る経済大国ですよ。2020年には、二度目の東京オリンピック開催が決まっています」
「おおっ、そうか、そうか。すると、お主はオリンピック……見れんのだな」
ぐっ、余計な一言を……。
ボクは言えなかった。日本を嫌いな政党が政権を取った事とか。
反日国が世界中にウソをばら撒いて海外の日本人の子供が、いじめにあう迄になってしまった事。
隣の国は領海侵犯を繰り返し、領土を奪われる危機すらある。
日本人は、安全で豊かな国を作ってきたけど、対外的には厳しい未来が立ちふさがっている。
「……生きるために、前へ進むのじゃ」
「異世界で50年……。頑張ってきたんですね」
「頑張れば、嫁も出来るぞ」
笑いながら、手をワシワシさせている……。スケベ爺め!
スマートフォンに残っていた、ボクの家の近所の写真。瓦屋根の家が写る風景が、気に入ったようなので板に焼き付けてプレゼントした。
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