落書き

カイル

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第6章

6-2

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「何か見せたくねーもんがあるから、んな気色悪い笑顔張り付けてんだろ?イラつくんだけど。」



必死で言葉を選んだ結果がこれ。

動揺を悟られたくなくてタバコに火をつけた。それをくわえたままドカドカ部屋を横断してカーテンを全開にした。



クソ、重ぇよカーテンこんちくしょ。





「いいえ、あなたに見せれないものなどなにもない。すみません、以前の癖が出てしまったようです。ダメですね、反省します。何でも話せ、そう受け取っていいんですよね今の。僕の個人的な事に関心を持ってもらえるなんて勘違いしてしまいそうですよ。クスクス、そんなにイジケないでください、秘密などありはしません。ただ話していないことは確かにあります。」




タッタッタと後に続いて来て、背後から両腕で俺を抱き込む。そしてハムハムと耳をかじってみたり、チュ、チュとわざと音を立てて頬にキスしながらいつもの調子で話す凛。



「ッバカ!いじけてねーし。・・・興味ねーし、関心なんかねーし。調子乗んじゃねーし。」



チラリと横目で奴を見てみれば、まーいつも通りのスカシ君健在。

これはこれでやっぱムカつく。




「クク、そうですね。では温泉でも入って食事しましょうか。プールもありますけど行きます?」


俺の腹がグゴーーっとヒキガエルみてぇな音でなったおかげで、話してないことよりも食事が優位にたちました。

部屋で飯食えるとか言ってたけど、それってルームサービスってやつっしょ?

何それ楽しいの?



飯はバイキング!食い放題に限りますよね。


つーことで、人でごった返す一階のレストラン会場でひとまず夕食。


「まじやばいね、この人の量。」


客も多けりゃシェフも多い。ウエイターも多けりゃ飯も多い。


「やはりルームサービス取りましょうか?」



ほら、いったでしょ?って感じで言いやがってこの野郎。



「いい。飯は人が多いとこのほが好き。」



ボソッとそう言った俺を見て、一瞬ぱちぱちと瞬きして意外そうな表情を浮かべた凛が、次の瞬間には優しい調子で同調してくれて。


「食事は元来、ただ生命維持のためにカロリーを摂取する行為ではなく、食べ物が自分の滋養となっていくことを、誰かと共に心から楽しみながら行うことが大切ですからね。ケイの意向は大いに理に適っていますよ。さぁ、たらふく食べましょう。」


同級だったら、かなりの確率でバカにされそうな、誰かと一緒に飯が食いたいって俺の本音。

凛乃介と暮らす以前は、太いチューブからただただ栄養を胃に流し込んでたような俺。おかげで食に無頓着、1日3食なんぞこの男と生活して初めて経験した目からうろこな実話談。


「おうよ!全種類食うぞ、行くぜ。」


そして無駄にテンションが上がる俺。石窯ピザ、板前付きの寿司、何かむこうに鍋も見える。だがしかし、最初はやっぱ中華っしょ!



天津を片っ端から皿に乗せる俺をしり目に、完全に好きなものだけ皿に乗っけていく凛。


「これも食え、これも、これも、あ、これも。うわ、つかうま。」


ムカついたんで、凛の皿に勝手に天津乗っけるついでに味見した肉まんがうますぎた件。


この後味見しながら皿によそってたら、席に着く前に結構腹いっぱいな残念結末。
休憩と称して完全に箸をおいた俺。


「はい。」



したら凛の奴パンちぎって俺の口元に運んできやがった。うまそうな匂いに思わずパクついた。ヨモギパン?ぱねぇ美味い。


咀嚼した俺に気を良くしたらしい凛は、絶妙のタイミングで次々に俺の口元に食いもんを運んでくる。

親鳥ですか。


「パンがいい。」


「クスクス、はいどうぞ。」



この日俺は焼き立てパンのうまさのとりこになりました。

食って飲んで風呂入って、時刻はまさかの午後9時ちょい前。

「なーなー、こんな早く風呂まで入ってこの後みんな何すんの?」


休日なら、下手すりゃ今頃ベッドから這い出てくる時間帯。
寝だめは生物学的に不可能ってなってるけど、俺は可能だと思うマジマジ。


「ファミリーなら団らん後就寝、カップルならセックスして就寝、というのが通常だと思います。僕たちは夜の福岡の街でも見学に行きましょうか。」


このホテルに2部屋しかない喫煙可能な貴重な部屋。その一室で完全にまったりしてる俺と凛。

長ぇ脚をソファに投げ出して、丈が足りてない浴衣みてぇな備え付けの部屋着を着たこの男は何故だろう。

俺の下半身にへばりついて、ウチモモあたりに頬ずりしてやがります。まぁ別に害はないからいいんだけど、若干くすぐってぇ。

ついでに腹がいっぱいすぎて幸せ。



「へーーーーーー。つかおまえってさ匂いフェチなわけ?」


モモあたりにいたはずの凛は、いつのまにかボクブリに鼻先を突っ込んでフンフンいってやがる。

風呂上がりで何も匂いしねーはずだが。



「フェチかといわれると答えはノーですが、あなた限定で言えば答えはイエスです。ケイの匂いも僕の匂いもしませんね、つまらない。」


パンツから鼻先を出すと、今度は通常サイズの俺の股間に頬ずり。
凛乃介に言わせるところの、究極のヤワフワらしい。

勃起していないこの状態を口に含んだ最初の感触に感動したらしい。


まー言いたいことはよく分かる、ガチガチよかフワフワのほうが口当たりいいもんな。

俺はぶっちゃけ萎えチンくわえると、噛み切りたくなる。なんかホルモンみてぇじゃね?

飴玉みてぇに歯と頬の間にくわえて、口の中で遊んでるとムシャムシャやっちまいそうになる。

てんまぁ、すぐ勃起して舌触り変わるけどな。





「でさ、さっきの人誰?」



タバコをもみ消しながら、あんだけ躊躇した言葉が不思議と今はすんなり口をついてでてきた。



あー、聞いちまったよ俺どうすんの。

体をよじってテーブルの灰皿に手を伸ばした結果、背中から下に余白が生まれた。


すかさずその空間に手を突っ込こみ骨盤を掴まれると、グルンとうつ伏せにされた俺。



「うわ、ちょ、危ぶな!お前サクッと回してんじゃねーって、腹立つなまじで!」


つるりと剥かれる俺のパンツ。
奴はプリッと現れた尻タブを両手でつかむと、パックリ割りやがった。


数時間前ガツガツと巨大な奴をくわえこんだそこは、プクリと膨らんだまま柔らかいだろう。


「さっきの男は五代目岩瀬組舎弟頭、須藤竜一。あぁ、中はちゃんとケイの匂いと。。。ふふ、少しは僕の匂いも残ってますね。」


至近距離でスーッと大きく息を吸い込んで、尖らせた長ぇ舌を出し入れしながらサラリと回答が返ってきた。
尻タブを左右に大きく開かれているせいで、何の抵抗もなくそれは繰り返される。


「っく。。。んっ。。やめっ。。お前それって。。アングラどころかまじもんじゃんか、よ。ちょ、やめろっ、て。」


しだいに滑らかに、奴を誘うようにヒクツき出す卑猥な穴。



ゲイバーで知り合った物好きなアメリカ人の女が言ってた。女も後ろの穴を開発されたら断然そっちの方がイイんだと。俺は女のイクって感覚は分かんねーけど、射精をともなうイクって感覚と、萎えチンのままイクって感覚。これは凛で初めて経験したんだが射精する感じにジンジンしたなんつーかそんな感じをプラス、実際精子はでないんだけど。


最強なのは精子らしきサラサラの体液を垂れ流しながらイクってやつ。今のとこぶっちぎりでこれが一番やばい。

男なら分かるだろうが、射精するの我慢してタイミングずれると少しだけイッちまことあるだろ。あれ?今俺イッタ?って聞きたくなるあの感じ。

あのちょっと出たがずっと続いて、最高潮で射精に至るわけだが。。何が言いていのかっていわれると・・・。





尻は射精よか快楽がでかい。これが言いたかっただけ。


「えぇ、正真正銘世間でヤクザと呼ばれる職業の方ですよ。ケイの可愛いお尻が僕を誘うのですが、入れていいですか?」


第二関節まで沈めて、ファックのポーズをとればそこが有名な前立腺。意外と近くに陣取ってるそこは、知名度の名にふさわしく効果は絶大。


だめだ、俺自身こんなにほだされて我慢できねぇ。聞きたいことも山ほどあるけど今は下にたまった熱をどうにかしてぇ。


「クソバカが、早くしろ、よ。。。」


熱気をムンムンと放ちながら、目の前にそそり立つそれに思わず食らいついてしまった。

そして凛の上に深く腰を下ろせばじゅぼじゅぼと遠慮を知らない卑猥な音が響いて、ジュプジュプと精子が泡立つ音に変わった。



珍しく入れてすぐに達した凛に連れられて、同時に熱を吐きだせばその一時だけ頭はクリアに思考力を取り戻す。


「っくっそ、止まれ、詳しく聞かせっ、ろよ。なって、凛ッ、やっめ、んぁ。」


引き抜かれることなく、あっというまに胎内で硬くなる凶器のようなそれ。


「えぇ、いくらでも話しますよ。ほら何が聞きたいですか?言わないとわかりませんよ、ほらケイ君?」



余裕そうな面しやがって、いつかその面必死にさせてやる。






そのままズルズル快楽に呑まれれば、どこまでも堕ちていける。

この男が与えてくれるものにしがみついていれば、自力で立つ必要もない。

この男の腕の中に飼われていれば、雨に打たれることもないだろう。



この檻の中にいさえすれば、己の色欲に悶え悩み苦しむ事もきっともうない。

俺はこの男以外に、もう誰とも体を交えることはないだろうから。











愛ってなに?






結構長い時間揺さぶられていた気がする。

もうやめてくれと背中に爪を立てて必死に訴え、最後の突き上げで意識が飛びそうになるのをギリギリ繋ぎ止めた。

ようやく俺の胎内から出て行った奴は、いつも通り綺麗に至るとこ拭ってくれて。。。さっきまでらんらんと獣じみた目で俺を責め立てていた本人とは到底思えない甲斐甲斐しさ。



ベッドの中でお互い"ク"の字でくっついて、デカイ凛は自然に俺を抱きいれる格好になる。


触れてない部分などきっとない。

俺という存在全部をまるっと受け入れてくれる、この暖かいゆりかご。
俺がどんな間違いを犯してもこの男だけが、最期まで必ず俺の味方。

俺はどこへ行っても、どこへ逃げても、どこへ隠れても結局最後はこの男の腕の中に捕縛されることだろう。




だんだん、だんだんと凛乃介という一人の男に浸食されていく自分を、少し離れたところからぼんやりと眺めていた。






「凛、さっきの話、続き。」

「えぇ、ではどこから話しましょうか。そうですね。。。」


俺の呼吸にあわせた凛の気息。自然とあくびが止まらなくなる。


目をつぶったまま、絵本でも読んで聞かせるように静かにゆっくり話し出したその声に、俺は黙って耳を傾けた。




「僕は五代目岩瀬組組長の実子として生まれました。両親は幼い頃病死、父の兄に引き取られ上京したのが中学卒業の年でした。兄弟はいません。もともと跡目などに興味ありませんでしたので、今日会ったあの男、須藤にヤクザ稼業すべてを押し付けて僕は教職につきました。ざっくりこんなところですか。面白くもなんともないでしょ、ほらほら灰が落ちますよ。ケイ、少し眠ってください。寝たい時に寝ていいんですよ。」



吸いかけのタバコを消す音がする。

布団を首まで引き上げる音がする。

丸まった俺を優しく抱きしめる吐息が聞こえる。



ざっくり過ぎて逆に軽快なほどだ。やっぱベンツ?若頭とか呼ばれんの?拳銃見たことあんの?仁義なき戦いなわけ?リアル姉さん着物なの?

いらん質問ばっか爽快に頭を巡っていく。


「かっちょいいぃ。」


ベッドに振動する俺の声。

やっぱゆるゆると俺の頭を撫でる凛の手が、どうしようもなく気持ちよくてコトリと寝いっちまった。





もう少し話がしたかったのに。な。。。



―------◇◇◇





フッと意識が返ってくれば、寝起きとは思えないほど脳みそは明白明瞭。
こんなにスッキリと目が覚めたのは、史上初かもしれない。


クルッと目玉だけで部屋を見渡せば、寝入った時のそのまま。

脱ぎ散らかした2人分の部屋着とスリッパ、ハイネケンの空瓶と開けっ放しのスーツケース。

そして、背後には暖かい体温と、規則正しい呼吸の音。



巨大なはめ殺しの窓は、カーテンが全開にしてあって高いとこに浮いてる月と少し低めのネオンの層。



そこに広がる人工的な光の海は、特別何も俺に語りかけてはこない。


凛乃介を起こさないよう慎重にベットから滑り降り、窓にへばりつくと知らない土地を見下ろしてみた。


「冷ッ。」



思わず手を引っこめるほど冷たい窓ガラス。


ふと、思い出す。

小学校の頃、理科の授業で見た雪の結晶。とても綺麗でとても不思議で夢中になって顕微鏡を覗いた。あのころはその先を考える世界を俺は持っていなかった。


そして今、綺麗だったあの雪の結晶は少し違って見える。


あの完璧なシンメトリー。何故こんなものが自然界に存在しえるのだろうかと不信に感じるのだ。

自然のエラーなのか、バグなのかは分からないが。。。。


あの完璧なシンメトリーからは何も伝わってこない。

眼下に広がるネオンから何も感じないのとは種類が違う。生きているエネルギーそのものを感じない。

得体のしれない完璧な姿で、静かに舞い落ちてくるあの結晶は命が終わった姿のように感じる。

ただ純粋に美しいモノには、もう見えない。




「風邪ひきますよ。」


肌触りのいい毛布が背後から俺を包む。


「世界は不思議だらけだな。」


俺の熱で窓ガラスが曇っていく。


「この世の不思議に気づける人間はごくわずか。不思議だと感じる間もなく一生を終える人間が大半です。あなたのその感性に僕は関心します、ケイの魅力は本当に尽きませんね。」


何となく寄り添って、ダラダラと取り留めもない話をした。

光の長さから虹、虹の外側にある2個めの虹から雨、雨から海。結局人はどっからきたんだって話になって朝日が昇った。


デートってこんな感じなのか?



デートがそんなキャピキャピしてなくて言い訳がない。
断じてよくない(はず)。


俺処方昼夜逆転の矯正方法:24時間起きて、それから寝る。


軽い時差ボケ起こしてた俺は強制矯正でようやく日中活動に絶えられるようになったのは家を出て3日目あたり。


デートらしく水族館へ行ってヒトデを掴み、北風に煽られながら遊園地を練り歩き、映画館でポルノを見て、クマ牧場でプりを撮った。




博多をスタート地点に、南下しながら毎日九州の名所を巡った。


「なんかさ、もう何もないじゃん。ククク。すげぇよ福岡なめてたマジで。」


その日は〇川市ってとこまで行くらしく、凛が運転するレンタカーは地平線が見えんじゃねーかってほど景色最高の土手沿いを走っていた。

市内から随分離れたその土地は、とにかく空がでっかくて"田舎"を代表したような風景だった。



「凄いでしょう、もう少し下ったら僕の生まれた町です。少し寄りたいところがあるので寄り道していいですか?」



ナビは川、道それ以外何も表示していない。もうナビって呼べないだろ。今んとこおばあちゃんしか見てないし。



長時間のドライブは、俺たちに色んな話をさせた。
それがまた意外と楽しくて、幾分か柔らかい表情を浮かべている凛乃介も地元を満喫しているらしかった。

ベントレーとかいう高そうな車のハンドルを握る凛と、この穏やかな風景がどこまでもミスマッチなのがたまにきず。

広い車内がいいんだと。


つかレンタカーTOY〇TAカロラで十分いいと思うんだが。



「あぁ、全然おっけ。お前こんなすげぇとこで育ったんだ。どこがどうなったらそんな風に育つんだろうな。ん?あれ?今の何?」



流れていった景色の中に、大きな木があった。
落葉樹らしいそれは、緑の葉一枚ついていなかったがあの立派な幹、横に大きく大きく伸びた太い枝。




どこかで見た気がする。



「・・・・・。」



あっという間に小さくなったその木を振り返って見送る。見送りながら記憶を辿った。道なんかないほど古い記憶の断片。

深いその辺りに、何か覚えていることがありそうなのにうまく引き出せないもどかしさ。

「なーって、今のさ・・・。」


一向に返事が返ってこなくて、再度質問した自分の声が思ったより大きくて、一瞬目があった凛の瞳の奥に妙な高ぶりを見た気がして。


「木が。。。その・・・。いや、わかんねーんだけど木がさ。」



何を聞きてぇのかはっきりしない、でも何か大切事な気がして聞かなきゃなんねー気がすんだけど。

聞きたいことが何なのか分からない。


いやにモヤモヤする。




「後であの場所に戻りましょう。先に見て欲し場所があるんです。」


真っ直ぐ前を見て運転してんのに、神経が俺に集中してんのがチリチリするほど伝わってくる。


握りしめられた片方の手に、ざわついた俺の心は撫でつけられた。



「ん、了解。つかさ、こうがいい。」



かぶせるようにして俺の手を握るそれに、指を全部絡ませて落ち着く俺。
別にこだわりとかねーけど、なんかしっくりくんだよね。



「クス、可愛いことしますねほんと。・・・愛してますよ。"愛している"陳腐な言葉しか浮かびませんが。僕の中がどれほどあなたでいっぱいか、見せる事ができたらどんなにいいだろうと思います。肉を裂いて見えるものならたやすいことなのに、心臓にあるものなら取り出して証明できるのに。愛とは不便なものです、まったく。」



何かわかるよ凛乃介。
俺にもその感覚なら理解できる。体中が叫ぶような、細胞全部が相手を求めて、血の一滴までソイツ以外いらないと主張して譲らない。


人生で一度だけ経験したその感情は、まだしっかりと俺の中に残っている。



「死ぬだろそれ、普通に。つか言っただろ?俺お前の気持ちは理解してるって。それでもまだ分かってねーっつーんなら、お前の透過率あげろよ。全力でかかってこい。」



意味のない焚き付けだと分かっている。


それでも、もし今以上にこの男が俺のことをかき回してくれたら。。

そしたら俺は少しでもその思いに呼応して、愛をささやき返すことができるようになるかもしれない、と淡い期待も込めたんだ。


「死にませんよ、僕。あなたを守る犬ですから。ここで初めて会った時、僕はあなたに噛みつきました。」



車は僅かな距離を走って停止した。そこはなんの変哲もない公園。

今はなくなってしまった踏切を超えて、細い路地の奥にそこはある。
ゆるやかなカーブのむこうには駄菓子屋があって、車が通るその道を歩くのは少し怖くて・・・。


誰かに手を引かれながら、その道を歩く自分のつま先が鮮明に蘇ってきた。



「・・・ここ、知ってる。」



あそこの踏切がなくなるとき、たくさんの紙の花で飾りを付けた電車に乗った。

大好きだったばぁちゃんが俺を呼ぶ声。

家にいた大きな雄鶏がいつも俺を追い回してきてた。
りっぱなトサカを持ったその雄鶏は、雌鶏を守るように飛べない翼を目いっぱい広げて車道に突っ込んで引かれて死んだ。



からっぽの鶏小屋が、今もそこにある。



「思い出しましたか?そう、ここはあなたが生まれた土地でもあるんです。僕たちはこの場所で、昔同じ時間を共有していました。」



あの家に住んでる子と毎日遊んで、その子の家の玄関が薄暗くて大きくて、まっすぐ伸びた廊下の先が見えなくてその子が部屋から出てくるまでビクビクして待っていた。


名前は思い出せねぇ。



「え、いや、待て。まじか。。。鳥肌なんだけど。」



クリアな記憶が断片的にパッパ、パッパっと浮かんでは消えていく。


そして、思い出す。
この公園にいた、綺麗な目をした一人の少年の存在を。

慎重に記憶の糸を手繰っていくと、確かに存在する瞳の色。
容姿や名前は全く覚えていないが、その不思議な光を宿した双眸は怖いほどはっきりと俺の中に記されていた。


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