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第二章 平穏な日々ばかりではないようです。
新たなお世話対象者
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「待て! 別の奴だと!? それはいったい誰だ?」
内心舌打ちをしながらアルディアは聞く。
サーバスの企みが見えるような気がして眉間にシワを寄せた。
「まだ会っていないからわからないわ。なんでもウルフィアの知り合いだそうなんだけど――――」
暖の返事を聞いたアルディアは、今度は隠さず大きな舌打ちをした。
「会うのは禁止する。そいつはドワーフの狂戦士だ」
「ドワーフ!?」
エルフ、吸血鬼に続くファンタジーな存在に、暖は思わず身を乗り出す。
興味津々な暖の様子にアルディアは表情を険しくする。
「狂戦士だと言っただろう! 怪我をして半身不随になっているが、そいつがやろうと思えばお前など直ぐに殺されるぞ!」
大声で怒鳴りつけた。
ウルフィアの知り合いで暖の世話がいる者と言えば、十中八九アルディアが思っている者で間違いないだろう。
よりによってなんて凶悪な相手をサーバスは選ぶのかとアルディアは怒る。
もちろんサーバスの意図は容易く察せられた。
半身不随のドワーフを暖が癒せば、暖の力は確かなものと確認出来るのだ。
しかし――――
(危険過ぎる)
何よりそのドワーフは人間嫌いだった。
ウルフィアだけは、かつて死闘を演じた相手として認めてはいるが、他の人間は近づくだけでも威嚇しまくっている。
「そいつが、この村で大人しく世話をされているのは、ただ一点ウルフィアがそう望むからだけだ。そうでなければそいつは暴れまくったあげくとっくの昔にここを飛び出し、のたれ死んでいる」
アルディアの表情は苦い。
ウルフィアが「奴が死んだりしたら私の夢見が悪い」そう言ってドワーフを連れて来たから、やむを得ず彼を受け入れたアルディアだ。
何故なら、この村は種族の違いを越えてそんな存在を受け入れると約束された地だったから。
どこにも行き場のない廃棄処分同然の存在を、唯一受け入れる場所であるこの村。
そのためにここは人間のみならずいろいろな種族からの援助金が集まっていた。
村はその金で運営されているのだ。
もちろん、その中にはドワーフからの援助もある。
この村は、外の者たちが見たくない、かつての仲間の落ちぶれた姿を隠す場所でもあった。
(だから、私もここにいる)
王族でありながら当たり前の日常さえも満足に送れない病人である自分を自嘲しながら、アルディアは思う。
一方、暗い思考に陥りそうなアルディアとは反対に、暖はますますやる気に満ちていった。
「そんな! だったら、尚更私はウルフィアのお手伝いをしなきゃでしょう! 最近調子が良さそうだけど、彼女には腰痛があるんですよ。私が手伝わないでどうするんです!」
日本でも介護をする人の腰痛は大きな問題になっていた。
それを思い出した暖にアルディアの説得は逆効果だ。
「危険だと言っているだろう!」
「大丈夫です。ウルフィアと一緒に行きますから。彼女と一緒なら心配ないでしょう?」
暖はきっぱりとそう言った。
既に彼女の中でドワーフの世話をするのは決定事項なのだろう。
アルディアは顔をしかめる。
危険面ばかりではなくそれ以外の理由でも、暖を止めたいとアルディアは思っていた。
暖に癒しの力があるかも知れないことが公になれば、どんな危険が降りかかるかわからないからだ。
しかし、それを教えるわけにはいかない。
(自分に癒しの力があることがわかれば、こいつはますます張り切りそうだ)
アルディアは頭を抱える。
「ともかく、ドワーフに近づく事は禁止する!」
「えぇ~? アルディア横暴!」
「うるさい! ともかくダメなものはダメだ!」
アルディアはきっぱり宣言する。
これ以上話して興奮されてまた発作でも起こされたらまずいとでも思ったのか、暖は黙りこんだ。
「わかったのか?」
「ハイハイ」
「返事は一回だ!」
まるでお父さんのような王子さまだった。
内心舌打ちをしながらアルディアは聞く。
サーバスの企みが見えるような気がして眉間にシワを寄せた。
「まだ会っていないからわからないわ。なんでもウルフィアの知り合いだそうなんだけど――――」
暖の返事を聞いたアルディアは、今度は隠さず大きな舌打ちをした。
「会うのは禁止する。そいつはドワーフの狂戦士だ」
「ドワーフ!?」
エルフ、吸血鬼に続くファンタジーな存在に、暖は思わず身を乗り出す。
興味津々な暖の様子にアルディアは表情を険しくする。
「狂戦士だと言っただろう! 怪我をして半身不随になっているが、そいつがやろうと思えばお前など直ぐに殺されるぞ!」
大声で怒鳴りつけた。
ウルフィアの知り合いで暖の世話がいる者と言えば、十中八九アルディアが思っている者で間違いないだろう。
よりによってなんて凶悪な相手をサーバスは選ぶのかとアルディアは怒る。
もちろんサーバスの意図は容易く察せられた。
半身不随のドワーフを暖が癒せば、暖の力は確かなものと確認出来るのだ。
しかし――――
(危険過ぎる)
何よりそのドワーフは人間嫌いだった。
ウルフィアだけは、かつて死闘を演じた相手として認めてはいるが、他の人間は近づくだけでも威嚇しまくっている。
「そいつが、この村で大人しく世話をされているのは、ただ一点ウルフィアがそう望むからだけだ。そうでなければそいつは暴れまくったあげくとっくの昔にここを飛び出し、のたれ死んでいる」
アルディアの表情は苦い。
ウルフィアが「奴が死んだりしたら私の夢見が悪い」そう言ってドワーフを連れて来たから、やむを得ず彼を受け入れたアルディアだ。
何故なら、この村は種族の違いを越えてそんな存在を受け入れると約束された地だったから。
どこにも行き場のない廃棄処分同然の存在を、唯一受け入れる場所であるこの村。
そのためにここは人間のみならずいろいろな種族からの援助金が集まっていた。
村はその金で運営されているのだ。
もちろん、その中にはドワーフからの援助もある。
この村は、外の者たちが見たくない、かつての仲間の落ちぶれた姿を隠す場所でもあった。
(だから、私もここにいる)
王族でありながら当たり前の日常さえも満足に送れない病人である自分を自嘲しながら、アルディアは思う。
一方、暗い思考に陥りそうなアルディアとは反対に、暖はますますやる気に満ちていった。
「そんな! だったら、尚更私はウルフィアのお手伝いをしなきゃでしょう! 最近調子が良さそうだけど、彼女には腰痛があるんですよ。私が手伝わないでどうするんです!」
日本でも介護をする人の腰痛は大きな問題になっていた。
それを思い出した暖にアルディアの説得は逆効果だ。
「危険だと言っているだろう!」
「大丈夫です。ウルフィアと一緒に行きますから。彼女と一緒なら心配ないでしょう?」
暖はきっぱりとそう言った。
既に彼女の中でドワーフの世話をするのは決定事項なのだろう。
アルディアは顔をしかめる。
危険面ばかりではなくそれ以外の理由でも、暖を止めたいとアルディアは思っていた。
暖に癒しの力があるかも知れないことが公になれば、どんな危険が降りかかるかわからないからだ。
しかし、それを教えるわけにはいかない。
(自分に癒しの力があることがわかれば、こいつはますます張り切りそうだ)
アルディアは頭を抱える。
「ともかく、ドワーフに近づく事は禁止する!」
「えぇ~? アルディア横暴!」
「うるさい! ともかくダメなものはダメだ!」
アルディアはきっぱり宣言する。
これ以上話して興奮されてまた発作でも起こされたらまずいとでも思ったのか、暖は黙りこんだ。
「わかったのか?」
「ハイハイ」
「返事は一回だ!」
まるでお父さんのような王子さまだった。
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