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異世界迷走中
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(どこだ? ここは)
俺はあたりを見回す。
(王城が見えない)
城自体はそれ程高い建物ではないが、あの塔が見えなくなるなんて思ってもみなかった。
(完全に防御都市をなめていた。稲妻状道路の機能と目的は十分わかっていたはずなのに、ここまで見通しが悪くなるなんて)
百聞は一見にしかず。
実際体験しなければわからぬものがあるというのはこういう事なのだろう。
城が見えないどころか方角さえもわからなくなった俺は途方に暮れる。
とりあえず少しでも見晴らしの良いところを目指して進んでいるはずなのだが、周囲は似たような色合いと雰囲気の建物と、そっくり同じ壁の連なりで、何度も同じ場所をグルグルしているような気にさえなってくる。
(せめて、人がいれば)
最初の内は、まさかこの年で迷子になりましたとは言いたくなくて、すれ違う通行人に道を聞くなんてことができなかった。
しかし、いよいよどうにもならなくなって聞こうと決意した時には、今度は肝心の通行人がいなくなっていたのだ。
それほど路地裏に迷い込んだ自覚はなかったのだが、いないものはいない。
どうしようと思って、もうこれは恥を忍んで適当な家を訪ねて城への道を聞くしかないかと思いかけた時、俺はようやく通りの向こうに人影を見つけた。
もう、マジ助かった。
「あ!?」
しかも、あれは……
「すいません!」
俺は懸命に走り出した。
その人影がびっくりしたように立ち止まる。
振り返った目が真ん丸に見開かれていた。
「よかった。城の人ですよね。俺、マジ道に迷っちゃって」
青みががった長い髪と一緒に揺れる青い垂れ耳。
背中を向けている格好だから、可愛いお尻を包むショートパンツから、ポン! と丸いフワフワ尻尾が飛び出しているのが丸見えだ。
(すっげぇ、本当にホンモノなのか?)
真ん中が青くて毛先に行くほど純白になる本物のファーのポンポン尻尾は、姉貴が好んで頭に付けるヘアーアクセとそっくり同じに見えた。
(姉貴よりこの娘の方がずっと可愛いけど)
「俺、覚えている? 一度塔ですれ違った事があるんだけど」
あの時はびっくりマジマジ見られていたけれど、俺みたいな平凡顔は直ぐに忘れ去られていたって不思議はない。
中学、高校の同級生の女の子だって、ほとんど俺なんか覚えていないだろう。
「城の塔に昇る途中で荷物を落としただろう? あの時居た――――」
懸命に俺は説明する。
なんとか思い出してもらって、城までの道を教えてもらわなきゃならない。
いや、別に案内ついでに一緒に帰ろうだなんて、そんな虫のいいことは、ちょっぴりしか思っていないさ。
俺には心の恋人リーファがいるんだ。俺は好きな娘には一筋の男だからな。
それにしても、本当に可愛い娘だった。
びっくりして見開いた目は真紅で、なおのことウサギを連想させる。
(でもちょっと、驚きすぎじゃないか?)
そう思って、俺はリーファの言葉を思い出した。
『――――お声をかけても、おそらく意味は伝わりません』
そうだった。
リーファはそう言っていたのだった。
俺はそんな事はとても信じられなかったのだが……
「あの。俺の言っている事、わかる?」
恐る恐る聞けば、呆然としながらもウサ耳ちゃん(仮名:俺命名)は、コクリと頷いた。
やった! やっぱり俺の勘は間違っていなかったんだ。
「……わかります」
おお! 喋った。すっげぇ、小さくて可愛い声!
俺は思わず耳を近づける。
そうしないと聞き取れない程、か細い声だったからだ。
「……わかるから、わからない。この前もわからなかった。…………どうして、あなたは人間なのに、獣人の言葉を話しているのですか?」
……へっ?
俺はあたりを見回す。
(王城が見えない)
城自体はそれ程高い建物ではないが、あの塔が見えなくなるなんて思ってもみなかった。
(完全に防御都市をなめていた。稲妻状道路の機能と目的は十分わかっていたはずなのに、ここまで見通しが悪くなるなんて)
百聞は一見にしかず。
実際体験しなければわからぬものがあるというのはこういう事なのだろう。
城が見えないどころか方角さえもわからなくなった俺は途方に暮れる。
とりあえず少しでも見晴らしの良いところを目指して進んでいるはずなのだが、周囲は似たような色合いと雰囲気の建物と、そっくり同じ壁の連なりで、何度も同じ場所をグルグルしているような気にさえなってくる。
(せめて、人がいれば)
最初の内は、まさかこの年で迷子になりましたとは言いたくなくて、すれ違う通行人に道を聞くなんてことができなかった。
しかし、いよいよどうにもならなくなって聞こうと決意した時には、今度は肝心の通行人がいなくなっていたのだ。
それほど路地裏に迷い込んだ自覚はなかったのだが、いないものはいない。
どうしようと思って、もうこれは恥を忍んで適当な家を訪ねて城への道を聞くしかないかと思いかけた時、俺はようやく通りの向こうに人影を見つけた。
もう、マジ助かった。
「あ!?」
しかも、あれは……
「すいません!」
俺は懸命に走り出した。
その人影がびっくりしたように立ち止まる。
振り返った目が真ん丸に見開かれていた。
「よかった。城の人ですよね。俺、マジ道に迷っちゃって」
青みががった長い髪と一緒に揺れる青い垂れ耳。
背中を向けている格好だから、可愛いお尻を包むショートパンツから、ポン! と丸いフワフワ尻尾が飛び出しているのが丸見えだ。
(すっげぇ、本当にホンモノなのか?)
真ん中が青くて毛先に行くほど純白になる本物のファーのポンポン尻尾は、姉貴が好んで頭に付けるヘアーアクセとそっくり同じに見えた。
(姉貴よりこの娘の方がずっと可愛いけど)
「俺、覚えている? 一度塔ですれ違った事があるんだけど」
あの時はびっくりマジマジ見られていたけれど、俺みたいな平凡顔は直ぐに忘れ去られていたって不思議はない。
中学、高校の同級生の女の子だって、ほとんど俺なんか覚えていないだろう。
「城の塔に昇る途中で荷物を落としただろう? あの時居た――――」
懸命に俺は説明する。
なんとか思い出してもらって、城までの道を教えてもらわなきゃならない。
いや、別に案内ついでに一緒に帰ろうだなんて、そんな虫のいいことは、ちょっぴりしか思っていないさ。
俺には心の恋人リーファがいるんだ。俺は好きな娘には一筋の男だからな。
それにしても、本当に可愛い娘だった。
びっくりして見開いた目は真紅で、なおのことウサギを連想させる。
(でもちょっと、驚きすぎじゃないか?)
そう思って、俺はリーファの言葉を思い出した。
『――――お声をかけても、おそらく意味は伝わりません』
そうだった。
リーファはそう言っていたのだった。
俺はそんな事はとても信じられなかったのだが……
「あの。俺の言っている事、わかる?」
恐る恐る聞けば、呆然としながらもウサ耳ちゃん(仮名:俺命名)は、コクリと頷いた。
やった! やっぱり俺の勘は間違っていなかったんだ。
「……わかります」
おお! 喋った。すっげぇ、小さくて可愛い声!
俺は思わず耳を近づける。
そうしないと聞き取れない程、か細い声だったからだ。
「……わかるから、わからない。この前もわからなかった。…………どうして、あなたは人間なのに、獣人の言葉を話しているのですか?」
……へっ?
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