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レヴェント編・真紅の血鬼《クリムゾン・ブラッド》
20.嫌悪鏖殺
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荒くれ一人一人の動きは高が知れている。
折角ある小さな脳みそも、使わなきゃゴミ。筋力や体格の大きいオークの方が幾分マシ、本当の救いようのない阿呆共だ。
バカみたいに突進してくる男共を容赦なく蹴散らし、踏み殺す。
剣にこべり付く人間の血肉や油。
「人殺しをなんとも思わないタイプですか……私と同類、でいいんですかね?」
「敵を殺すのに情が湧くわけねぇだろ」
ドン引きしているファグナに、死んだ目を向けてそう言った。
剣を振り下ろす。血肉を裂き、命を切り捨てる。恐怖に歪んだ表情がこちらに向けられるが、俺はその悉くを――切り殺す。
容赦はない――
慈悲はない――
そこに下すは〝死〟という結果のみ。
ごみ処理に感情が動く筈がない。
止まった で剣を振り下ろし続ける。
「っ――、う、うぁああああああ――ッ!」
恐怖を押し殺すような叫びと共に横薙ぎを放つ男。
右手に握った剣を空中へ放った。
同時、男の動きを視界に捉えた俺は、即座に間合いを詰める。こちらから見て左から右へ払われる斬撃、俺を剣を振るう男の腕を左脇腹で挟み取り、斬撃を静止させる。
「っ――!?」
驚愕した表情が向けられる。
右拳を握り込む、大きく空いた腹に向けて強く握った拳を容赦なく叩きつけ、深く深く抉り込ませる。
「グぇっヘ、ゲッ――!?」
内蔵を叩き潰す一撃に嘔吐く。
ゲホゲホっと鮮血を口から撒き散らす男、腰を折って腹部を押さえる。そんな中、俺は右足を高く振り上げ、男の頭部目掛けて蹴り下ろした。
グシャリと叩き潰れた頭部。
脳髄や頭蓋骨がその場に散らばり、あまりにも悲惨な死に様に周囲の男達が狼狽える。
よくそんな顔が出来るな、コイツら……。
呆れたような表情を作り、そう思った。
この場にいる人間は、他人を殺して幸福を得てきた奴ら。仲間が死んだ程度でその反応には、少々イラついた。コイツらのせいで奪われた幸福が一体どれほどあったか……この場にいる人間は、それを一切理解しようとしないクズだ。
ああ、やっぱり、ここで――――殺そう。
ロングソードを握る右手に力が籠る。目はより鋭さを帯び、敵を殺すだけの怪物へとカタチを変えていく。
自己幸福のためだけに周囲を犠牲にするその頭蓋――ここで叩き砕いてやる。
どこか〝自己嫌悪〟にも似た感情を滾らせ、俺は地面を強く蹴る。
男達は狼狽えつつも、接近する敵に対応すべく武器を構える。疾駆する天無に槍で突きを放つ、二人の荒くれ。テキは冷静に二つの槍を躱す。
空を貫く槍、テキは一瞬にして男達との距離を詰め、槍を持つ腕を斬り落とす。
四本の腕が空を舞う。
テキは地面を強く踏み締め、一回転――二匹の首を切断する。
冷静に冷静に、テキはステップを踏んで振り下ろされる斧や剣を躱し、後退。
――同時、三匹の命を刈り取る。
地面に転がり落ちる頭は五つ、彼は即座に体勢を整え、再稼働する。
空の左手を異空間収納に入れ、中に入っているものを握る。
大男が一人、テキの前で拳を振り上げる。オークほどの巨躯ではないが、人族としてはかなりの大きさであろうその体、神塚敬也の頭二つ分ほどの大きな拳を真っ直ぐ叩きつけてくる。
地面を砕く一撃――
しかし、彼は容易く躱し、その腕を蔦って駆け上がり、がら空きの頭部に蹴りを入れてその太い首を簡単に圧し折ると共に、高く飛んだ。
クルリと空中で体勢を整えるテキは、エア・ボックス内で握った六本のショートソードの柄を強く握り、次の瞬間――空中で投擲した。
的確に男達の首を狙った投擲はその速度と予想外の動きから、男達は回避もできず、その首をキレイに落す。
慄く男達だが、すぐさま空中のテキに向って武器を構える。空中であれば、落下地点は予想できる。落下中、あるいは落下後を狙えば――殺せる。
男達は緩んだ笑みを浮かべる。
「君達、離れた方がいいよ」
ルーダの声。彼女の声には若干の呆れと無意味だろうな、という諦観が籠っていた。
同時――男達に驚愕が走る。
空中で反転しているテキは、家の壁を蹴って加速した。
その場にいる三人を除き、まったく反応できない速度で落下した彼は、着地と同時にその場にいた三人の首を斬り落す。酷く冷静な視線が、淡々と次の敵に狙いを定める。
荒くれ達はあまりにも圧倒的な怪物の姿に恐れ戦き、後ずさる。
彼らは本能的に察し始めたのだ。自分達では――〝この怪物に勝てない〟、と。
テキは数多くの同胞を現在進行形で切り殺しているが、一切疲れている素振りを見せず、その武器もまた、摩耗している様子はない。
切れ味が一切変わっていない、そういうものなのか――否。それは怪物がイカれている証明だ。
隔絶した技術により、刃の摩耗を極限まで減らし、本来では在り得ない数の敵を切り殺している。テキの斬撃の全ては的の急所、骨などの人体の硬質な箇所は一切触れず、切断する際は関節の隙間に通し、筋や肉を断っている。
確実に敵を殺しつつ、武具の摩耗を最小限に抑えている。
あまりにも意味不明な彼に、ネビルス、ファグナ、ルーダの三人は驚きを通り越し、呆れた表情をしていた。
自分達も人殺しがあるが故、彼が行っている〝事〟の異常さを強く理解している。仮にやれと言われて、あそこまで完璧に行える者はこの場にはいない。
「ははは、ねえ、ネビルス君、ファグナ、私、アレと戦うのやなんだけど……?」
嫌悪した表情でテキを指さすルーダ。
「同感、アレはちょっと苦戦するよ」
「だね」
ファグナとルーダは嫌々そうな表情でテキを見た。
そんな中、笑みを零すネビルス。
「クフフ。あなた達の言い方だと、まるで――アレに勝てる、と言っているように聞こえますが?」
「「は?」」
心底不思議そうに二人は言葉を返す。
「おや、勝てるのですか?」
キョトンとした表情でネビルスは言った。
二人はめんどくさいものを見るような目をネビルスに向け、同時に言った。
「当たり前ですね」「当たり前」
ファグナとルーダは各々武器を構え、怪物の前へ向かった。
折角ある小さな脳みそも、使わなきゃゴミ。筋力や体格の大きいオークの方が幾分マシ、本当の救いようのない阿呆共だ。
バカみたいに突進してくる男共を容赦なく蹴散らし、踏み殺す。
剣にこべり付く人間の血肉や油。
「人殺しをなんとも思わないタイプですか……私と同類、でいいんですかね?」
「敵を殺すのに情が湧くわけねぇだろ」
ドン引きしているファグナに、死んだ目を向けてそう言った。
剣を振り下ろす。血肉を裂き、命を切り捨てる。恐怖に歪んだ表情がこちらに向けられるが、俺はその悉くを――切り殺す。
容赦はない――
慈悲はない――
そこに下すは〝死〟という結果のみ。
ごみ処理に感情が動く筈がない。
止まった で剣を振り下ろし続ける。
「っ――、う、うぁああああああ――ッ!」
恐怖を押し殺すような叫びと共に横薙ぎを放つ男。
右手に握った剣を空中へ放った。
同時、男の動きを視界に捉えた俺は、即座に間合いを詰める。こちらから見て左から右へ払われる斬撃、俺を剣を振るう男の腕を左脇腹で挟み取り、斬撃を静止させる。
「っ――!?」
驚愕した表情が向けられる。
右拳を握り込む、大きく空いた腹に向けて強く握った拳を容赦なく叩きつけ、深く深く抉り込ませる。
「グぇっヘ、ゲッ――!?」
内蔵を叩き潰す一撃に嘔吐く。
ゲホゲホっと鮮血を口から撒き散らす男、腰を折って腹部を押さえる。そんな中、俺は右足を高く振り上げ、男の頭部目掛けて蹴り下ろした。
グシャリと叩き潰れた頭部。
脳髄や頭蓋骨がその場に散らばり、あまりにも悲惨な死に様に周囲の男達が狼狽える。
よくそんな顔が出来るな、コイツら……。
呆れたような表情を作り、そう思った。
この場にいる人間は、他人を殺して幸福を得てきた奴ら。仲間が死んだ程度でその反応には、少々イラついた。コイツらのせいで奪われた幸福が一体どれほどあったか……この場にいる人間は、それを一切理解しようとしないクズだ。
ああ、やっぱり、ここで――――殺そう。
ロングソードを握る右手に力が籠る。目はより鋭さを帯び、敵を殺すだけの怪物へとカタチを変えていく。
自己幸福のためだけに周囲を犠牲にするその頭蓋――ここで叩き砕いてやる。
どこか〝自己嫌悪〟にも似た感情を滾らせ、俺は地面を強く蹴る。
男達は狼狽えつつも、接近する敵に対応すべく武器を構える。疾駆する天無に槍で突きを放つ、二人の荒くれ。テキは冷静に二つの槍を躱す。
空を貫く槍、テキは一瞬にして男達との距離を詰め、槍を持つ腕を斬り落とす。
四本の腕が空を舞う。
テキは地面を強く踏み締め、一回転――二匹の首を切断する。
冷静に冷静に、テキはステップを踏んで振り下ろされる斧や剣を躱し、後退。
――同時、三匹の命を刈り取る。
地面に転がり落ちる頭は五つ、彼は即座に体勢を整え、再稼働する。
空の左手を異空間収納に入れ、中に入っているものを握る。
大男が一人、テキの前で拳を振り上げる。オークほどの巨躯ではないが、人族としてはかなりの大きさであろうその体、神塚敬也の頭二つ分ほどの大きな拳を真っ直ぐ叩きつけてくる。
地面を砕く一撃――
しかし、彼は容易く躱し、その腕を蔦って駆け上がり、がら空きの頭部に蹴りを入れてその太い首を簡単に圧し折ると共に、高く飛んだ。
クルリと空中で体勢を整えるテキは、エア・ボックス内で握った六本のショートソードの柄を強く握り、次の瞬間――空中で投擲した。
的確に男達の首を狙った投擲はその速度と予想外の動きから、男達は回避もできず、その首をキレイに落す。
慄く男達だが、すぐさま空中のテキに向って武器を構える。空中であれば、落下地点は予想できる。落下中、あるいは落下後を狙えば――殺せる。
男達は緩んだ笑みを浮かべる。
「君達、離れた方がいいよ」
ルーダの声。彼女の声には若干の呆れと無意味だろうな、という諦観が籠っていた。
同時――男達に驚愕が走る。
空中で反転しているテキは、家の壁を蹴って加速した。
その場にいる三人を除き、まったく反応できない速度で落下した彼は、着地と同時にその場にいた三人の首を斬り落す。酷く冷静な視線が、淡々と次の敵に狙いを定める。
荒くれ達はあまりにも圧倒的な怪物の姿に恐れ戦き、後ずさる。
彼らは本能的に察し始めたのだ。自分達では――〝この怪物に勝てない〟、と。
テキは数多くの同胞を現在進行形で切り殺しているが、一切疲れている素振りを見せず、その武器もまた、摩耗している様子はない。
切れ味が一切変わっていない、そういうものなのか――否。それは怪物がイカれている証明だ。
隔絶した技術により、刃の摩耗を極限まで減らし、本来では在り得ない数の敵を切り殺している。テキの斬撃の全ては的の急所、骨などの人体の硬質な箇所は一切触れず、切断する際は関節の隙間に通し、筋や肉を断っている。
確実に敵を殺しつつ、武具の摩耗を最小限に抑えている。
あまりにも意味不明な彼に、ネビルス、ファグナ、ルーダの三人は驚きを通り越し、呆れた表情をしていた。
自分達も人殺しがあるが故、彼が行っている〝事〟の異常さを強く理解している。仮にやれと言われて、あそこまで完璧に行える者はこの場にはいない。
「ははは、ねえ、ネビルス君、ファグナ、私、アレと戦うのやなんだけど……?」
嫌悪した表情でテキを指さすルーダ。
「同感、アレはちょっと苦戦するよ」
「だね」
ファグナとルーダは嫌々そうな表情でテキを見た。
そんな中、笑みを零すネビルス。
「クフフ。あなた達の言い方だと、まるで――アレに勝てる、と言っているように聞こえますが?」
「「は?」」
心底不思議そうに二人は言葉を返す。
「おや、勝てるのですか?」
キョトンとした表情でネビルスは言った。
二人はめんどくさいものを見るような目をネビルスに向け、同時に言った。
「当たり前ですね」「当たり前」
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