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レヴェント編・真紅の血鬼《クリムゾン・ブラッド》
15.駒
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パーティ決めを終えた後は授業へ移行した。
座学、実技、魔道学、と何事もなく(相変わらずの勇者一行のチートは抜きにして)今日の授業が終わった。
変わり映えのない日常で少し退屈だが、またそのうちめんどくさい事に巻き込まれるのだと思うと、そんな時間も退屈だが充実したものに思えた。
そんな俺は現在、アリシアと詩織の二人と話し合いをしていた。
「詩織、俺とアリシアは今日この後、遺跡に行こうと思ってる」
「うん」
「それでついでに資金集めも兼ねて、冒険者ギルドで依頼を受けようと予定を立てている。それで、お前って冒険者の登録はしてあるのか?」
「ううん」
「そうか……」
唸るようにして両腕を組む。
予定としては実戦訓練として遺跡に行きたかったのだが、詩織とパーティを組んだ以上、彼女にも戦いに慣れてほしい。
言っちゃ悪いが、今の詩織は優秀だが、俺とアリシアにはついて来れないだろう。故に、少しでも実戦に慣れ、俺達にも慣れてほしい。
これは勝手な願望だが、俺は彼女に――死んでほしくない。
十年以上の関係だ、情が湧かない方がおかしい。俺は純粋に詩織には死んでほしくないと思っている。だから、彼女には力をつけてもらい、一人でも絶対に死なないようになってほしい。
そのためには実戦になれ、彼女のポテンシャルを発揮できるようにならなくてはならない。
「アリシア」
「ん?」
「今日はとりあえず、詩織の冒険者登録を済ませよう。時間があれば、依頼を何個か受けて遺跡に行けばいい、最優先は詩織の冒険者登録だ」
「ああ、わかった。私としても、その意見には同意だ。その方針でいこう」
アリシアの同意を得てこれからの時間の予定を決める。
すると、そんな俺達に声を掛ける者が数名いた。
「兄貴」
「ケイヤさん」
俺の名を呼ぶ声に視線を向けると、そこにはルーカとオリビア、アルとエヴァがいた。
すっかりオリビア、エヴァ、アルの三人グループに馴染んでいるルーカに考え深いものを感じながら、そんな彼らに問い掛ける。
「ん、どうした?」
「いや、俺も……俺達も三人に同行していいですか?」
「……なぜ?」
少し驚いた表情をして四人に視線を向ける。
「俺、強くなりたいんっす」
「…………」
「兄貴に……兄貴たちについていけば、強くなれる方法が分かる気がするんです」
「それで強くなれたら苦労しない……――で、そっちも同意見なのか?」
呆れたような眼差しをルーカに向けた後、残りの三人に視線の矛先を向けた。
「えーと、私はもうそろそろある遺跡探索を予行練習を兼ねて、皆さんと一緒に行きたいな、と」
「同じく私も。あとは学園序列を上げるためってのもあるかな?」
「なるほど……お前は?」
納得したように呟き、アルに視線を向け問い掛ける。
「俺はルーカと似たような理由だ。お前は意味がないと思うかもしれないが、やはり強い者をすぐ傍で見て、体験することは意味があると思う」
「……別に、意味がないとは最初から思ってない」
言葉足らずだったこちらの発言の裏を突かれ、バツが悪そうに言った。
「じゃ、じゃあ、OKってことですか!?」
「…………」
チラリとアリシアに視線を向ける。すると彼女は少し呆れたようなため息と共に仕方がない、という表情を見せた。
「はぁ……ま、いっか。うん、構わないよ」
「マジっすか!」
「ああ。ただの遺跡探索だし、何かあるというわけでもないしな」
特段隠密行動をする意味もないと判断した俺は、そう彼らに言い、同行を許可した。
「で、お前らは冒険者登録してあるのか?」
「はい。一様俺は胴級を取ってます」
「私も胴級です」
「私も私も!」
「俺は銀級だ」
「っ――」
俺は驚いた顔でアルを見る。
冒険者にそれなりの月日が経過した。故に、冒険者ランクというもの価値などは大体理解した。
以前、アリシアとシュナから伝えられた通り、冒険者は一つランクが上げるのにかなりの実績と実力が必要になる。一ランクごとの差は想像以上である。
現在、俺のランクはアル同様の銀級。
これは以前の変異個体オーク・キングの討伐や以降の実績により、特例的に向上したためである。普通、一気に二段階クラスが上がることはない。
……ま、コイツは相応の実力者か。
少し驚きはしたが、よくよく考えればそうおかしな話はない。
忘れがちだが、アルはれっきとした実力者。剣の腕はこのクラス内では上位、同様に魔法の腕もかなりだ、万能なバランスタイプなアルはその全てが高水準。タイプとしては俺やシド、宮登と似た、全領域対応型の人間だ。
勇者の影響で存在感は薄いが、その実力はこのクラスでもトップレベル。
「フッ……なるほど」
ニヤリと笑みを浮かべる。
すると、その笑みを見た者達からうげという嫌な顔をされた。
予想外の状況だが、やはりアルは使えるし、オリビアやエヴァ、ルーカの三人も悪くない。遺跡探索の同行くらいは何の問題もない。
フフ、使える使える。
嫌な笑みを浮かべ、使える駒が増えたことに喜びを隠せずにいた。
座学、実技、魔道学、と何事もなく(相変わらずの勇者一行のチートは抜きにして)今日の授業が終わった。
変わり映えのない日常で少し退屈だが、またそのうちめんどくさい事に巻き込まれるのだと思うと、そんな時間も退屈だが充実したものに思えた。
そんな俺は現在、アリシアと詩織の二人と話し合いをしていた。
「詩織、俺とアリシアは今日この後、遺跡に行こうと思ってる」
「うん」
「それでついでに資金集めも兼ねて、冒険者ギルドで依頼を受けようと予定を立てている。それで、お前って冒険者の登録はしてあるのか?」
「ううん」
「そうか……」
唸るようにして両腕を組む。
予定としては実戦訓練として遺跡に行きたかったのだが、詩織とパーティを組んだ以上、彼女にも戦いに慣れてほしい。
言っちゃ悪いが、今の詩織は優秀だが、俺とアリシアにはついて来れないだろう。故に、少しでも実戦に慣れ、俺達にも慣れてほしい。
これは勝手な願望だが、俺は彼女に――死んでほしくない。
十年以上の関係だ、情が湧かない方がおかしい。俺は純粋に詩織には死んでほしくないと思っている。だから、彼女には力をつけてもらい、一人でも絶対に死なないようになってほしい。
そのためには実戦になれ、彼女のポテンシャルを発揮できるようにならなくてはならない。
「アリシア」
「ん?」
「今日はとりあえず、詩織の冒険者登録を済ませよう。時間があれば、依頼を何個か受けて遺跡に行けばいい、最優先は詩織の冒険者登録だ」
「ああ、わかった。私としても、その意見には同意だ。その方針でいこう」
アリシアの同意を得てこれからの時間の予定を決める。
すると、そんな俺達に声を掛ける者が数名いた。
「兄貴」
「ケイヤさん」
俺の名を呼ぶ声に視線を向けると、そこにはルーカとオリビア、アルとエヴァがいた。
すっかりオリビア、エヴァ、アルの三人グループに馴染んでいるルーカに考え深いものを感じながら、そんな彼らに問い掛ける。
「ん、どうした?」
「いや、俺も……俺達も三人に同行していいですか?」
「……なぜ?」
少し驚いた表情をして四人に視線を向ける。
「俺、強くなりたいんっす」
「…………」
「兄貴に……兄貴たちについていけば、強くなれる方法が分かる気がするんです」
「それで強くなれたら苦労しない……――で、そっちも同意見なのか?」
呆れたような眼差しをルーカに向けた後、残りの三人に視線の矛先を向けた。
「えーと、私はもうそろそろある遺跡探索を予行練習を兼ねて、皆さんと一緒に行きたいな、と」
「同じく私も。あとは学園序列を上げるためってのもあるかな?」
「なるほど……お前は?」
納得したように呟き、アルに視線を向け問い掛ける。
「俺はルーカと似たような理由だ。お前は意味がないと思うかもしれないが、やはり強い者をすぐ傍で見て、体験することは意味があると思う」
「……別に、意味がないとは最初から思ってない」
言葉足らずだったこちらの発言の裏を突かれ、バツが悪そうに言った。
「じゃ、じゃあ、OKってことですか!?」
「…………」
チラリとアリシアに視線を向ける。すると彼女は少し呆れたようなため息と共に仕方がない、という表情を見せた。
「はぁ……ま、いっか。うん、構わないよ」
「マジっすか!」
「ああ。ただの遺跡探索だし、何かあるというわけでもないしな」
特段隠密行動をする意味もないと判断した俺は、そう彼らに言い、同行を許可した。
「で、お前らは冒険者登録してあるのか?」
「はい。一様俺は胴級を取ってます」
「私も胴級です」
「私も私も!」
「俺は銀級だ」
「っ――」
俺は驚いた顔でアルを見る。
冒険者にそれなりの月日が経過した。故に、冒険者ランクというもの価値などは大体理解した。
以前、アリシアとシュナから伝えられた通り、冒険者は一つランクが上げるのにかなりの実績と実力が必要になる。一ランクごとの差は想像以上である。
現在、俺のランクはアル同様の銀級。
これは以前の変異個体オーク・キングの討伐や以降の実績により、特例的に向上したためである。普通、一気に二段階クラスが上がることはない。
……ま、コイツは相応の実力者か。
少し驚きはしたが、よくよく考えればそうおかしな話はない。
忘れがちだが、アルはれっきとした実力者。剣の腕はこのクラス内では上位、同様に魔法の腕もかなりだ、万能なバランスタイプなアルはその全てが高水準。タイプとしては俺やシド、宮登と似た、全領域対応型の人間だ。
勇者の影響で存在感は薄いが、その実力はこのクラスでもトップレベル。
「フッ……なるほど」
ニヤリと笑みを浮かべる。
すると、その笑みを見た者達からうげという嫌な顔をされた。
予想外の状況だが、やはりアルは使えるし、オリビアやエヴァ、ルーカの三人も悪くない。遺跡探索の同行くらいは何の問題もない。
フフ、使える使える。
嫌な笑みを浮かべ、使える駒が増えたことに喜びを隠せずにいた。
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