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レヴェント編
135.修羅場Ⅱ
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流石にこの時には二人も腕を離してくれて、俺はようやく両手の花から解放された。
いや~、初めて思ったね、両手の花から早く解放されたいって。
「な、両手の花さん方」
「「?」」
急に話を振られ困惑した表情を浮かべる二人。まあ、当然の反応である。
「何してるんだ?」
「いや、特には何も」
「そうか、何もなさそうには見えないが、まあ、とりあえず、おはようケイヤ」
「ああ、おはよアル」
金髪の髪を風に靡かせ、女子生徒の視線を釘つけにする男。た、アルバート・バルティオス、彼はそっと俺の横に立つのだった。
相変わらず女性人気すご……。
周囲の黄色い声援に若干の嫉妬を見せる。
呆れるほどの色男。男としては多少なりとも嫉妬がない方がおかしいくらいには、彼はモテるしかっこいい。
「二人もおはよう。オリビアと、えー、アリシアさん、だっけ?」
「おはようございますアルさん」
「アリシアでいい。お前は?」
オリビアは元気よく挨拶し、隣に立っているアリシアそう問いかける。
「アルバート・バルティオスだ。アルでいい」
「そうか。よろしくアル」
アルから差し出された手を握り挨拶を交わした。
あれ? 結構素直。
アリシアが思った以上に素直に挨拶をする姿に驚く。俺とは目配せとか、手を差し出しても渋ってたのに……これが色男と凡男の差か。
と、若干悲しくなった。
フッ、アリシアも結局は顔のいい男が好きなのか。
そう笑みを浮かべた瞬間――
「うグふッ――」
グサッとみぞおちに肘が突き刺さる。
「何バカなこと考えてる」
「か、考えたら、ダメ、なの、か……」
バタンと力無く地面に崩れ落ちる。
呼吸ができない。横隔膜のダメージで止まって空気が、酸素が肺に入って来ない。
あの、マジで痛いっす。あの、ダジャレだ! とかツッコミできない。マジ痛い、マジ酸素、さん、そ……
地面でのた打ち回り、痛みにもがき苦しむ。
彼女の優しさの無さに今一度理解する。
というかなぜ、彼女は俺の思考を読めたのだろうか? やっぱり俺って、表情に思考が反映されるタイプなのかな? そんなわかりやすい?
自己解析をしている内に横隔膜が動き始め、呼吸できるようになる。
「ハアハア……普通に痛いし、酸素吸えないし、死ぬかと思った」
「発言には気をつけることだな」
「発言はしてねぇ」
「もう一発いっておくか?」
「遠慮する」
みぞおちを抑え立ち上がる。
「あー、痛ッて」
「…………」
無言でアルがじっとこちらを見つめてくる。
「何だよ」
「いやな、お前、いつからアリシアと仲良くなったんだ?」
「二日前、それと昨日じゃないか?」
「ああ、なるほど」
「?」
彼の納得に何故か嫌な予感を感じた。
「つまり、昨日お前が途中から授業を抜けたのは、二人でデートしてたってことだな」
「「なっ――」」
「――――」
俺とアリシアが驚きに声を漏らし、オリビアは声なく固まる。
そういえばコイツ、変なところで恋愛脳だった。いや、コイツの場合ただからかってるだけな気もしなくはないが。
そう思いながら訂正の声を上げる。
「なわけ――」
「ケイヤさん?」
言葉が遮られる。
「ち、違う! 俺はアリシアとは何も――」
「ケ・イ・ヤ・さん?」
「――――」
再びダークサイドオリビアさんが登場する。
影を宿すその表情に俺は冷や汗を掻き、血の気が引いてくるのを感じる。
なぜだろうか? 昨日と同じくらい死の予感を身近に感じている。俺はもうすぐ死ぬのだろうか?
「お少し、お話よろしいですか?」
「後で、とかできますか?」
「お話、よろしいですか?」
「……はい」
まさかオリビアがこんなに怖いとは。
俺はオリビアにこってりと事情聴取を受けた後、教室へ向かった。
いや~、初めて思ったね、両手の花から早く解放されたいって。
「な、両手の花さん方」
「「?」」
急に話を振られ困惑した表情を浮かべる二人。まあ、当然の反応である。
「何してるんだ?」
「いや、特には何も」
「そうか、何もなさそうには見えないが、まあ、とりあえず、おはようケイヤ」
「ああ、おはよアル」
金髪の髪を風に靡かせ、女子生徒の視線を釘つけにする男。た、アルバート・バルティオス、彼はそっと俺の横に立つのだった。
相変わらず女性人気すご……。
周囲の黄色い声援に若干の嫉妬を見せる。
呆れるほどの色男。男としては多少なりとも嫉妬がない方がおかしいくらいには、彼はモテるしかっこいい。
「二人もおはよう。オリビアと、えー、アリシアさん、だっけ?」
「おはようございますアルさん」
「アリシアでいい。お前は?」
オリビアは元気よく挨拶し、隣に立っているアリシアそう問いかける。
「アルバート・バルティオスだ。アルでいい」
「そうか。よろしくアル」
アルから差し出された手を握り挨拶を交わした。
あれ? 結構素直。
アリシアが思った以上に素直に挨拶をする姿に驚く。俺とは目配せとか、手を差し出しても渋ってたのに……これが色男と凡男の差か。
と、若干悲しくなった。
フッ、アリシアも結局は顔のいい男が好きなのか。
そう笑みを浮かべた瞬間――
「うグふッ――」
グサッとみぞおちに肘が突き刺さる。
「何バカなこと考えてる」
「か、考えたら、ダメ、なの、か……」
バタンと力無く地面に崩れ落ちる。
呼吸ができない。横隔膜のダメージで止まって空気が、酸素が肺に入って来ない。
あの、マジで痛いっす。あの、ダジャレだ! とかツッコミできない。マジ痛い、マジ酸素、さん、そ……
地面でのた打ち回り、痛みにもがき苦しむ。
彼女の優しさの無さに今一度理解する。
というかなぜ、彼女は俺の思考を読めたのだろうか? やっぱり俺って、表情に思考が反映されるタイプなのかな? そんなわかりやすい?
自己解析をしている内に横隔膜が動き始め、呼吸できるようになる。
「ハアハア……普通に痛いし、酸素吸えないし、死ぬかと思った」
「発言には気をつけることだな」
「発言はしてねぇ」
「もう一発いっておくか?」
「遠慮する」
みぞおちを抑え立ち上がる。
「あー、痛ッて」
「…………」
無言でアルがじっとこちらを見つめてくる。
「何だよ」
「いやな、お前、いつからアリシアと仲良くなったんだ?」
「二日前、それと昨日じゃないか?」
「ああ、なるほど」
「?」
彼の納得に何故か嫌な予感を感じた。
「つまり、昨日お前が途中から授業を抜けたのは、二人でデートしてたってことだな」
「「なっ――」」
「――――」
俺とアリシアが驚きに声を漏らし、オリビアは声なく固まる。
そういえばコイツ、変なところで恋愛脳だった。いや、コイツの場合ただからかってるだけな気もしなくはないが。
そう思いながら訂正の声を上げる。
「なわけ――」
「ケイヤさん?」
言葉が遮られる。
「ち、違う! 俺はアリシアとは何も――」
「ケ・イ・ヤ・さん?」
「――――」
再びダークサイドオリビアさんが登場する。
影を宿すその表情に俺は冷や汗を掻き、血の気が引いてくるのを感じる。
なぜだろうか? 昨日と同じくらい死の予感を身近に感じている。俺はもうすぐ死ぬのだろうか?
「お少し、お話よろしいですか?」
「後で、とかできますか?」
「お話、よろしいですか?」
「……はい」
まさかオリビアがこんなに怖いとは。
俺はオリビアにこってりと事情聴取を受けた後、教室へ向かった。
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