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レヴェント編
110.心の形に意味はない
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「つまりアマナイさんはヤキョウ様の後続修正者ってことでしょうか?」
「まあ、俺は夜境ってやつを知らないけどな」
「そうですか」
俺はメイビスにこちらの事情を話した。
レナやアンドリュオと交わした依頼について、神塚敬也もとい修正者天無としての事情も話せる内容は全て話した。
にしてもレナのヤツ、俺のこと話しとけよ。
ギルドへ向かう前、レナがギルドには知り合いがいるとの話をしていたが、それは確実にメイビスのことだろう。修正者等の事情を知っているのであれば、彼女にも事前に情報提供をしておいてほしかった。
まあ、本人から直接聞いた方がいいと思ったのかもしれないが、どうせあの女はめんどくさがっただけだ。そうに違いない。
「事情を理解しました。であれば、私もアマナイさんに協力致します」
「いいのか?」
「ええ、私やレナはヤキョウ様に何度も助けられました。修正者という役柄がどういった意味を示すのかも理解できます。貴方のお力になれるなら、ぜひ協力させて下さい」
「レナにもアンドリュオにも言ったけど、その恩は俺のものじゃないけどな」
人差し指で頬を掻きながらそう言うと、メイビスは首を横に振った。
「いえ、貴方はきっとこの恩を受け取るべき人です」
「……俺は、夜境じゃない」
「分かっています。確かにアマナイさんからはヤキョウ様と似た雰囲気を感じます――けれど、アマナイさんとヤキョウ様は別人です」
「どうして言い切れる?」
「えー、言い方は悪いんですけど。ヤキョウ様はアマナイさんほど、真っ白な人じゃないですよ」
「真っ白?」
「はい。アマナイさんはあまりにも――心が白いです」
「――――」
その言葉を聞いて不思議な納得を感じた。
「私の心の輪郭を感覚的に捉えることができるんです」
「心の輪郭をか?」
「ええ。具体的に把握しているわけではないですが、目に映る人の心を感覚として知覚する。ヤキョウ様曰く、〝魔眼に至る可能性のある霊視〟とのことでした」
「アンタすごいもん持ってるな」
「あくまで至る可能性を持った霊視であって、完璧な魔眼というわけではないですがね」
謙遜するように彼女は言った。
「アマナイさんは魔眼を持ってないんですか?」
「魔眼?」
「はい。ヤキョウ様はかなり特殊な魔眼所有者、そちらの言い方では魔眼ホルダーでしたか」
「そういう話も知ってるのか……」
予想外に魔術的な知識を有しているメイビスに驚く。そしてこれで確定したが、夜境という人物は俺が元いた世界にもいた人物だ。
魔術師か?
そんな疑問が過る中、彼女の疑問に回答を述べる。
「そうだな、一様俺も魔眼持ちだ」
「どのような魔眼なんですか?」
「ん~、できるだけ手の内を他人に話したくないんだけど……」
「ああ、そういうことなら黙秘して構いませんよ」
「すまん」
「いえ、大丈夫ですよ」
微笑を浮かべる。そしてふと思いついたように疑問を口にした。
「それにしてもヤキョウ様もそうでしたが、修正者というのは自身の情報が露呈するのを過度に嫌がりますね」
「まあ、夜境っていうのがどんな奴だったかは知らないけど、仕事柄情報を隠したいってのは同意するな。特に俺の場合、相手に知られれば知られるほど色々と不利になるからな」
「そうなんですか?」
「ああ、特に顕著なのは戦闘だ。俺は単純な戦闘能力が低い分、一発逆転できる手札を数枚持ってるだけ。それも基本は二度使うことを想定してない。あくまで平常では絶対に届かない神を殺すための方法だ」
「神を、殺す……」
ゾクリとメイビスは体を震わせる。
「アマナイさんは人間なんですよね?」
「もちろん」
「じゃあ、人の身で神に挑むことに恐れは感じないんですか?」
「普通に怖いよ」
「へ? そ、そうなんですか?」
呆気なく怖れを吐露する俺に言葉に、メイビスはすっとんきょな声を漏らす。
「当たり前だろ。神ってマジの神だぞ? 人とは何もかもが違う圧倒的な存在、ソレと相対することに恐怖を感じない筈がない」
「で、ではどうして戦えるのですか?」
「これが俺の役目だからだ」
「…………」
「今の俺は何者でもない。そんな俺に有るのは、修正者としての役目だけ……バカらしい話だが、この役目が俺が俺でいていい理由な気がしたんだ」
「それが、恐怖を押し殺す理由なんですね……」
俺は頷き答える。
「俺は自分を信じ切れるほど強くない。でも俺は、自身が選んだを道、選択を、例え間違いだったとしても、胸を張って歩いて行きたい。この〝在り方〟だけは絶対、変わらないモノだから……」
変わらない信念。唯一、己が信じ切れるモノだ。
「歪ですね」
「ああ、俺もそう思う」
メイビスの言葉に同意し、俺は苦笑する。
ふと、聞こうと思い忘れていた疑問が振り返ってきた。
「そういえば聞きたいことがあるんだが、一ついいか?」
「なんです?」
「夜境ってのはどんな心の輪郭をしてたんだ?」
ドキリと心臓が脈拍する。何故だかこの質問をすることを俺は躊躇っていた。忘れたのではなく、忘れたかっただけなのかもしれない。
……、気持ち、わるい。
不意に体調が悪くなる。
「ヤキョウ様ですか。そうですね、あの人の心の輪郭は――」
頭痛がして右手で頭を押さえる。
■、なんて。■、なんて……ある筈、ない……――
「―――――――――――――――――――――」
「まあ、俺は夜境ってやつを知らないけどな」
「そうですか」
俺はメイビスにこちらの事情を話した。
レナやアンドリュオと交わした依頼について、神塚敬也もとい修正者天無としての事情も話せる内容は全て話した。
にしてもレナのヤツ、俺のこと話しとけよ。
ギルドへ向かう前、レナがギルドには知り合いがいるとの話をしていたが、それは確実にメイビスのことだろう。修正者等の事情を知っているのであれば、彼女にも事前に情報提供をしておいてほしかった。
まあ、本人から直接聞いた方がいいと思ったのかもしれないが、どうせあの女はめんどくさがっただけだ。そうに違いない。
「事情を理解しました。であれば、私もアマナイさんに協力致します」
「いいのか?」
「ええ、私やレナはヤキョウ様に何度も助けられました。修正者という役柄がどういった意味を示すのかも理解できます。貴方のお力になれるなら、ぜひ協力させて下さい」
「レナにもアンドリュオにも言ったけど、その恩は俺のものじゃないけどな」
人差し指で頬を掻きながらそう言うと、メイビスは首を横に振った。
「いえ、貴方はきっとこの恩を受け取るべき人です」
「……俺は、夜境じゃない」
「分かっています。確かにアマナイさんからはヤキョウ様と似た雰囲気を感じます――けれど、アマナイさんとヤキョウ様は別人です」
「どうして言い切れる?」
「えー、言い方は悪いんですけど。ヤキョウ様はアマナイさんほど、真っ白な人じゃないですよ」
「真っ白?」
「はい。アマナイさんはあまりにも――心が白いです」
「――――」
その言葉を聞いて不思議な納得を感じた。
「私の心の輪郭を感覚的に捉えることができるんです」
「心の輪郭をか?」
「ええ。具体的に把握しているわけではないですが、目に映る人の心を感覚として知覚する。ヤキョウ様曰く、〝魔眼に至る可能性のある霊視〟とのことでした」
「アンタすごいもん持ってるな」
「あくまで至る可能性を持った霊視であって、完璧な魔眼というわけではないですがね」
謙遜するように彼女は言った。
「アマナイさんは魔眼を持ってないんですか?」
「魔眼?」
「はい。ヤキョウ様はかなり特殊な魔眼所有者、そちらの言い方では魔眼ホルダーでしたか」
「そういう話も知ってるのか……」
予想外に魔術的な知識を有しているメイビスに驚く。そしてこれで確定したが、夜境という人物は俺が元いた世界にもいた人物だ。
魔術師か?
そんな疑問が過る中、彼女の疑問に回答を述べる。
「そうだな、一様俺も魔眼持ちだ」
「どのような魔眼なんですか?」
「ん~、できるだけ手の内を他人に話したくないんだけど……」
「ああ、そういうことなら黙秘して構いませんよ」
「すまん」
「いえ、大丈夫ですよ」
微笑を浮かべる。そしてふと思いついたように疑問を口にした。
「それにしてもヤキョウ様もそうでしたが、修正者というのは自身の情報が露呈するのを過度に嫌がりますね」
「まあ、夜境っていうのがどんな奴だったかは知らないけど、仕事柄情報を隠したいってのは同意するな。特に俺の場合、相手に知られれば知られるほど色々と不利になるからな」
「そうなんですか?」
「ああ、特に顕著なのは戦闘だ。俺は単純な戦闘能力が低い分、一発逆転できる手札を数枚持ってるだけ。それも基本は二度使うことを想定してない。あくまで平常では絶対に届かない神を殺すための方法だ」
「神を、殺す……」
ゾクリとメイビスは体を震わせる。
「アマナイさんは人間なんですよね?」
「もちろん」
「じゃあ、人の身で神に挑むことに恐れは感じないんですか?」
「普通に怖いよ」
「へ? そ、そうなんですか?」
呆気なく怖れを吐露する俺に言葉に、メイビスはすっとんきょな声を漏らす。
「当たり前だろ。神ってマジの神だぞ? 人とは何もかもが違う圧倒的な存在、ソレと相対することに恐怖を感じない筈がない」
「で、ではどうして戦えるのですか?」
「これが俺の役目だからだ」
「…………」
「今の俺は何者でもない。そんな俺に有るのは、修正者としての役目だけ……バカらしい話だが、この役目が俺が俺でいていい理由な気がしたんだ」
「それが、恐怖を押し殺す理由なんですね……」
俺は頷き答える。
「俺は自分を信じ切れるほど強くない。でも俺は、自身が選んだを道、選択を、例え間違いだったとしても、胸を張って歩いて行きたい。この〝在り方〟だけは絶対、変わらないモノだから……」
変わらない信念。唯一、己が信じ切れるモノだ。
「歪ですね」
「ああ、俺もそう思う」
メイビスの言葉に同意し、俺は苦笑する。
ふと、聞こうと思い忘れていた疑問が振り返ってきた。
「そういえば聞きたいことがあるんだが、一ついいか?」
「なんです?」
「夜境ってのはどんな心の輪郭をしてたんだ?」
ドキリと心臓が脈拍する。何故だかこの質問をすることを俺は躊躇っていた。忘れたのではなく、忘れたかっただけなのかもしれない。
……、気持ち、わるい。
不意に体調が悪くなる。
「ヤキョウ様ですか。そうですね、あの人の心の輪郭は――」
頭痛がして右手で頭を押さえる。
■、なんて。■、なんて……ある筈、ない……――
「―――――――――――――――――――――」
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