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レヴェント編

98.リュウとセイレイのハンぶん、いつか

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 学園を出た後、目的地周辺に到着した。
 「一際でかい建物。多分、これだよな?」
 目の前には他の建物に比べ明らかに大きく、体躯のゴツイ人物達が出入りしていた。まあ、ほぼ間違いなく冒険者ギルドなのだろう。
 う~ん。なんだろ、この弱い奴は入って来るんじゃねぇオーラ。
 仮称、冒険者ギルドから発せられる雰囲気が、あまりにもピリついていて嫌になる。肌に、目に見えないほど小さな針を無数に刺されている、そんな感じ。別にそこまで痛くないけど、刺されてるなぁ~感がしっかりある。
 武者の闘気とか、その類のものなのだろうか? 依頼を受ける場所とは思えないほど殺気に溢れてないかな?
 立ち往生……というわけではないが、なんだか入るのに躊躇う。雰囲気に押されて足が思わず止まってしまったという感じだろう……まあ、絶対入りますけどね。
 「ま、流石にここまで引き返すは無いよな」
 あくまで雰囲気に嫌気が差しただけ、無視できる範囲だしこの程度で狼狽えるほどガキでもない。
 任侠者の屋敷に入った時を思い出しながら、冒険者ギルドへ入って行こうとした、その時――
 「すまない。君、ちょっといいか?」
 「ん?」
 背後から声を掛けられ、後ろを振り向いた。
 「えーと、何か用ですか?」
 そこにいたのは、思わず見惚れてしまいそうになる美少女だった。
 スレンダーなスタイルに凛とした顔立ち、深い青空色の長い髪。鉄紺てつこん色の目はキリッとこちらを向いている。その相貌からクール系の美女という印象を受ける。
 軽装だがそれなりにしっかりした装備、腰に携えられた一本の剣。見た目からして冒険者なのだろうか?
 そんな疑問を巡らせながら彼女の言葉を聞いた。
 「いや、君がギルドの前で気分の悪そう表情をしていたからな、少し声を掛けさせてもらった」
 「ああ、そういうことならご心配なく」
 微笑を浮かべて大丈夫大丈夫とジェスチャーする。
 どうやら彼女は単に俺の様子を見て心配してくれたようだ。その言葉に嘘はない、気遣うような表情をしている姿を見てそれは強い確信を帯びた。
 「実は僕、ギルドに来るのは初めてでして……正直ちょっと、緊張してたんですよね」
 「そうなのか……――君さえよければ、一緒に来るか?」
 「……一緒に、ですか?」
 突然の提案に驚く。
 「ああ、私はこんな身なりだが冒険者ではない。連れの付き添いで何度かギルド自体には訪れているんだが、正式に冒険者として登録している者じゃない」
 「それで、一緒に登録をってことですか?」
 俺の言葉に彼女は頷いて話を続けた。
 「どうやら君は完全にギルドが初めてのようだし、私なら多少の知識はある。聞きたい事があれば聞いてくれて構わない。どうだ?」
 「いや、それはありがたいんですけど……」
 「ん?」
 彼女の顔を見て疑う様な眼差しを向ける。
 正直、見知らぬ相手にここまで親切にしてくれる人が怖いです。いや、普通に善人なんだな、とは思うんだけどね? 俺の思考が荒んでいるのか、無茶苦茶悪い方向に考えが広がってるよ。
 人の優しさを素直に受け取れない捻じ曲がった性格のせいで無駄に苦しむ。
 両腕を組んで深く考えた後、俺は答えを出す。
 「……ぜひお願いします」
 俺は何故か苦しみながら、その提案を受け入れることにした。その際、彼女から何だこの人的な目を向けられたが、仕方ない俺の性格はこう歪んでいるのだから。
 「えっと、名前をお聞きしても?」
 「ああ、そう言えば名乗っていなかったな」
 彼女はそういい真っ直ぐと俺の顔を見て言った。
 「私はルーシュナ・エリューベース。君の名前は?」
 「僕の名前は神塚敬也です。よろしくお願いしますね、ルーシュナさん」
 「ん~……なんかしっくりこないな」
 「?」
 よろしくと言って出した右手をスルーされ、彼女はなにやら悩むようにジッと俺の顔を見て言った。
 「カミヅカ君。とりあえず私に敬語は必要ない。私のことは気軽にと呼んでくれ、私も君のことをカミヅカと呼ばしてもらうから」
 なるほど、俺の対応に違和感を抱いたのか。
 彼女の様子を見てそのことに気づき、俺は丁寧な喋りをオフにして素の喋り方に戻した。
 「わかった。じゃあ、ここからは普通に喋らしてもらう。よろしく、シュナ」
 再び右手を前に出した。
 「ああ、よろしく。カミヅカ」
 そう言って彼女は俺の右手を握った。
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