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レヴェント編
54.イッツ、ヴェリーヴェリー弱い
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「まあそれはいいや」
「いいのかよ。人の頭ぶっ叩いておいて……」
「そんなことより、カミヅカ君と、えーと」
「アルバート、アルバート・バルティオスだ。アルで構わない、エヴァ・ローレシアさん」
「そうそう、アル君。二人は魔法抜きでどれくらい出来るの? まあ、カミヅカ君は魔法抜き以前に魔力無しだけど……」
エヴァは手に持ったショートソードを遊ばせそう言った。
「俺は小さい頃から両方とも鍛錬を欠かしてない、それなりに出来ると自負しているけど。ケイヤはどうだ?」
「はぁ、俺は異世界人だぞ? 話は聞いてるだろ、この世界と違ってあまり戦いのない生活を送ってた。あんまり期待のできるものじゃない」
ため息を吐きながらそう答える。
「んー……」
「む……」
「なんだよ」
「?」
回答に納得がいっていないという感じに唸るエヴァとアル、オリビアはそんな二人の反応を見て首を傾げている。
「ねえ、カミヅカ君。その話、ホント?」
「そうだな、ケイヤ。本当なのか?」
「は、なぜそこまで疑う?」
そこまで疑うか? ってくらいに疑われ思わず聞き返す。
「だって――」
「そうだな――」
「カミヅカ君の言葉信用できないもの」「ケイヤの言葉は信用できないからな」
「…………君ら酷くない?」
とても悲しくなる言葉、まだであって数日、アルに関しては今日会ったばかりなのに驚くほど信頼がない。いや、確かに出会ったばかりだかたというのはそうだが、それ以上に人間性を疑われている気がする。
コイツら、詩織と渚さんと同じ反応しやがって。
二人ともに思考の淵を多少把握されている事実にダメージ、俺はそんなにわかりやすい性格をしているのだろうか? いや、単純に俺のあくどさ露呈してるだけか。
「まあ、後は目だな」
「は、目?」
「ああ」
そう言ったのはアル、エヴァにも同じ感覚があったのかうんうんと頷いて同意していた。
「ケイヤの目線の動きは秀逸だ。まだ戦闘を見たわけじゃないからよくは言えないが、目線の動きがよく相手を捉えている」
「そうそう、なんだか野性の獣みたいに狙いを定めてるみたい」
「…………」
的確な指摘に思わず押し黙る。
確かに俺は無意識的に相手を俯瞰して捉え、弱点の把握をしている。これは身に沁みついた無意識の視野移動、野生の感性ではなく修練の技術。
自身が凡人だと深く理解しているからこそ、周囲への意識を鋭く研ぎ澄ませ自身の死に場所を回避するために全霊を懸ける。本来、意識して行うものを無意識レベルまで高めている。
故に目線の動きにはパターンが生まれ、才ある者、あるいはその域に達している者には容易く見破られる。
〝凡才〟それ故に生まれる〝天才〟との差。修練で生み出したものはどこか機械的になる、それは反復により動きの最適が生み出した副作用。速いがその分、単調になってしまう。
「――疑ってるところ悪いが、先の言葉以上はない。高が知れているのは事実だ、他の異世界人と違って魔力どころか身体能力だって別にそんな高くない……俺には何もないさ」
「「「…………」」」
俺のその言葉に次は三人が押し黙る。別に俺が何かしたわけじゃない、ただ彼女達は見た、俺が――虚しそう笑っているのが……
「オリビア様、武具の準備ができました」
少し遠くの方でそんな声が聞こえた。
「あ。ルーク、ありがとうございます」
「じゃあ、カミヅカ君、アル君、またね」
オリビアの知り合いが呼びに来たことにより、エヴァとオリビアはそっちへ行った。
「さて、もうそろそろ俺たちも行くか」
「ああ、そうだな」
そう提案するとアルも同意し、訓練用の武具が並べてある所へ向かった。
「いいのかよ。人の頭ぶっ叩いておいて……」
「そんなことより、カミヅカ君と、えーと」
「アルバート、アルバート・バルティオスだ。アルで構わない、エヴァ・ローレシアさん」
「そうそう、アル君。二人は魔法抜きでどれくらい出来るの? まあ、カミヅカ君は魔法抜き以前に魔力無しだけど……」
エヴァは手に持ったショートソードを遊ばせそう言った。
「俺は小さい頃から両方とも鍛錬を欠かしてない、それなりに出来ると自負しているけど。ケイヤはどうだ?」
「はぁ、俺は異世界人だぞ? 話は聞いてるだろ、この世界と違ってあまり戦いのない生活を送ってた。あんまり期待のできるものじゃない」
ため息を吐きながらそう答える。
「んー……」
「む……」
「なんだよ」
「?」
回答に納得がいっていないという感じに唸るエヴァとアル、オリビアはそんな二人の反応を見て首を傾げている。
「ねえ、カミヅカ君。その話、ホント?」
「そうだな、ケイヤ。本当なのか?」
「は、なぜそこまで疑う?」
そこまで疑うか? ってくらいに疑われ思わず聞き返す。
「だって――」
「そうだな――」
「カミヅカ君の言葉信用できないもの」「ケイヤの言葉は信用できないからな」
「…………君ら酷くない?」
とても悲しくなる言葉、まだであって数日、アルに関しては今日会ったばかりなのに驚くほど信頼がない。いや、確かに出会ったばかりだかたというのはそうだが、それ以上に人間性を疑われている気がする。
コイツら、詩織と渚さんと同じ反応しやがって。
二人ともに思考の淵を多少把握されている事実にダメージ、俺はそんなにわかりやすい性格をしているのだろうか? いや、単純に俺のあくどさ露呈してるだけか。
「まあ、後は目だな」
「は、目?」
「ああ」
そう言ったのはアル、エヴァにも同じ感覚があったのかうんうんと頷いて同意していた。
「ケイヤの目線の動きは秀逸だ。まだ戦闘を見たわけじゃないからよくは言えないが、目線の動きがよく相手を捉えている」
「そうそう、なんだか野性の獣みたいに狙いを定めてるみたい」
「…………」
的確な指摘に思わず押し黙る。
確かに俺は無意識的に相手を俯瞰して捉え、弱点の把握をしている。これは身に沁みついた無意識の視野移動、野生の感性ではなく修練の技術。
自身が凡人だと深く理解しているからこそ、周囲への意識を鋭く研ぎ澄ませ自身の死に場所を回避するために全霊を懸ける。本来、意識して行うものを無意識レベルまで高めている。
故に目線の動きにはパターンが生まれ、才ある者、あるいはその域に達している者には容易く見破られる。
〝凡才〟それ故に生まれる〝天才〟との差。修練で生み出したものはどこか機械的になる、それは反復により動きの最適が生み出した副作用。速いがその分、単調になってしまう。
「――疑ってるところ悪いが、先の言葉以上はない。高が知れているのは事実だ、他の異世界人と違って魔力どころか身体能力だって別にそんな高くない……俺には何もないさ」
「「「…………」」」
俺のその言葉に次は三人が押し黙る。別に俺が何かしたわけじゃない、ただ彼女達は見た、俺が――虚しそう笑っているのが……
「オリビア様、武具の準備ができました」
少し遠くの方でそんな声が聞こえた。
「あ。ルーク、ありがとうございます」
「じゃあ、カミヅカ君、アル君、またね」
オリビアの知り合いが呼びに来たことにより、エヴァとオリビアはそっちへ行った。
「さて、もうそろそろ俺たちも行くか」
「ああ、そうだな」
そう提案するとアルも同意し、訓練用の武具が並べてある所へ向かった。
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