世界の修正者は世界を守らない

レヴェント編

４６．使えるモノは何だって

　思わず言葉が漏れる、表情も目を見開きそのまま停止した。俺は驚いた表情を固定させ、お願いの内容に長考を開始した。
　…………なんだろう。ここ最近、同じことをお願いされた気がするのだが……
　突拍子もないお願いに困惑する中、アルバートは話を続けた。
　「一様言っておくが、他意はない。俺は単純に君と友人になりたと思っただけだ」
　「何故？　自分でいうのも何だが、俺は悪目立ちしてるぞ？」
　「気にしないさ。自身の友人を他人の評価でも決めるほど、世間受けを気にしている人間じゃないからな」
　「はあ……」
　気の抜けた声が漏れる。言っていることに嘘はない以上、その言葉は本音なのだろう――だからこそ、ほんの少し感じた違和感が気になる。
　アルバートは俺に対して明確に害を与える者ではないとは判断したが、それ以上に自身の思惑で行動している人間だ、その思惑が何なのかは知らないがめんどうなことであることは確実だ。
　しかし――
　「本当にそれだけなら……分かった。よろしく、アル」
　これは使える、そう判断してしまった。
　その言葉に笑みを見せるアル、その笑みはびっくりするぐらい爽やかなものだった。
　「ああ、よろしくだ、ケイヤ」
　この男が何を目的にして、何を成そうとしているのか知らないが、利用してみせる。まだ俺は足りないモノばかりだ、目的を果たすために使えるモノは全て使ってやる。

　俺は、俺のため全てを使う――例え何であろうとな。

　そんなやり取りをしていると既に宮登の自己紹介は終わっており、どんどんと他の生徒が自己紹介をしていた。
　「飾霧、詩織……」
　その簡潔過ぎる自己紹介にその場が淀む、知人である俺も相変わらずな彼女の様子に呆れた。
　別に彼女はコミュ症というわけじゃない、単に自身の興味あること以外への意欲が極端に低いのである。興味さえあれば普通に喋るし、必要なら意見も出す。
　でも、クラスメートたちに一切興味なしってのは、どうなんだ？
　感情が籠っておらず、やる気を一切感じない言葉を見るに興味は完全にないのだろう。