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レヴェント編
25.空っぽ
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彼女、レナと少し会話をして判明したのだが、この世界には一度修正者が来たことがあるらしい。レナはその修正者と知り合いとのこと。
その修正者の名前は夜境。
レナが俺を修正者と断定し、記憶の中の人物だと思ったのは俺がその夜境という人と面影が似ていたからだそうだ。
修正者の件は女神から一切聞いていない。それがワザとなのか、単に忘れていたのか、どちらにせよ知らないが不注意にもほどがある。
腕を組んでため息を吐く、そして俺はこちらに向いている視線に気づく。
「…………」
「何だよ」
「いや。やはり似ている、そう思っただけだよ……本当の違うのか?」
「何度も言わせないでくれ。俺は夜境なんて奴は知ら、ない――多分」
そう言いかけて歯切れが悪くなる。
理由は単純だ、俺は記憶喪失であり前の自分を知らない。もしかしたらその夜境って奴が俺という可能性は……零じゃない。
「?」
表情を強張らせ考え込む。
「なあ。その夜境って奴はそんなに…………そんなに俺に似ているのか――?」
恐る恐るそう質問した。なぜだかわからないがその質問を口にするのに強い躊躇いがあった。胸の奥で突っかかる〝何か〟……いや、本当の自分を知る恐れなのだろう。
「そうだな……雰囲気が、とても似ている」
「雰囲気?」
「そうだ。君は彼にとても雰囲気が似ている、なんだかとても――空っぽだ――」
「! …………そう、か」
一瞬、心臓がドキリと跳ねたのを感じた。
「他にも表情が似ていると思う。何を考えているのか分かりずらい表情」
「あー、それは俺の場合、単に表情を作ってるだけだ。冷静を装ってるだけで内心はここまで冷静じゃない、ただのポーカフェイスだ」
「ん? そうなのか? その割には板についていないか?」
「まあ。慣れだな。昔からこういう表情をよく作ってたんだよ」
「ふん、なるほど」
顎に指を当てながら得心いったという表情で頷いた。
「じゃあ、あの人も……夜境も、君と同じように表情を作っていたかもしれないな……」
「…………」
無意識に類似点を指摘していたのだが、結局類似点になってしまい再び心臓が跳ね上がる違和感を感じる。ただ、その違和感の正体を意識では認識できていない。故に正体不明の感覚に戸惑うばかりである。
「「――――」」
しばしの沈黙、お互いに情報が散漫としている為か言葉を止め、各々の思考に意識を割いている。
『修正者・夜境、俺に似ている』、この事実は俺にとっては限りなく大きいことだが、あまり嬉しいものでもない。その人物が仮に俺なのだとしてやはり――俺は偽物なのだろうか? ……俺は、そう思わずにはいられない。
記憶の無い俺は空っぽな器、そこに至るまでの経緯を失って何者なのかも分からない、今までの俺とは全く違う〝何か〟なのだろう。
思考が暗く沈む――
やはり俺は恐れている。自分自身を知ることを……過去には思い出したいと思っていたが最初だけだった、年月が経つにつれ〝今の自分〟の自我が強くなる、〝過去の自分〟とは別人だ。
だから俺は―――
己の■■を独白しようとしたその時。ドバンッと勢いよく扉が開いた。すると次の瞬間、白色の何かがこれまた勢いよく飛んで来た。
なにやら泣き喚きながら……
「ぐ ろ゙ ま゙ ざ ま゙ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ あ゙」
「ちょ、え、やめ――うでぶッ!!」
勢いよく飛んで来た白い物体は正確に俺の腹部目掛けて飛んで来た。そして俺は白い物体により弾き飛ばされ、地面に白い物体と共に転がり落ちた。
その修正者の名前は夜境。
レナが俺を修正者と断定し、記憶の中の人物だと思ったのは俺がその夜境という人と面影が似ていたからだそうだ。
修正者の件は女神から一切聞いていない。それがワザとなのか、単に忘れていたのか、どちらにせよ知らないが不注意にもほどがある。
腕を組んでため息を吐く、そして俺はこちらに向いている視線に気づく。
「…………」
「何だよ」
「いや。やはり似ている、そう思っただけだよ……本当の違うのか?」
「何度も言わせないでくれ。俺は夜境なんて奴は知ら、ない――多分」
そう言いかけて歯切れが悪くなる。
理由は単純だ、俺は記憶喪失であり前の自分を知らない。もしかしたらその夜境って奴が俺という可能性は……零じゃない。
「?」
表情を強張らせ考え込む。
「なあ。その夜境って奴はそんなに…………そんなに俺に似ているのか――?」
恐る恐るそう質問した。なぜだかわからないがその質問を口にするのに強い躊躇いがあった。胸の奥で突っかかる〝何か〟……いや、本当の自分を知る恐れなのだろう。
「そうだな……雰囲気が、とても似ている」
「雰囲気?」
「そうだ。君は彼にとても雰囲気が似ている、なんだかとても――空っぽだ――」
「! …………そう、か」
一瞬、心臓がドキリと跳ねたのを感じた。
「他にも表情が似ていると思う。何を考えているのか分かりずらい表情」
「あー、それは俺の場合、単に表情を作ってるだけだ。冷静を装ってるだけで内心はここまで冷静じゃない、ただのポーカフェイスだ」
「ん? そうなのか? その割には板についていないか?」
「まあ。慣れだな。昔からこういう表情をよく作ってたんだよ」
「ふん、なるほど」
顎に指を当てながら得心いったという表情で頷いた。
「じゃあ、あの人も……夜境も、君と同じように表情を作っていたかもしれないな……」
「…………」
無意識に類似点を指摘していたのだが、結局類似点になってしまい再び心臓が跳ね上がる違和感を感じる。ただ、その違和感の正体を意識では認識できていない。故に正体不明の感覚に戸惑うばかりである。
「「――――」」
しばしの沈黙、お互いに情報が散漫としている為か言葉を止め、各々の思考に意識を割いている。
『修正者・夜境、俺に似ている』、この事実は俺にとっては限りなく大きいことだが、あまり嬉しいものでもない。その人物が仮に俺なのだとしてやはり――俺は偽物なのだろうか? ……俺は、そう思わずにはいられない。
記憶の無い俺は空っぽな器、そこに至るまでの経緯を失って何者なのかも分からない、今までの俺とは全く違う〝何か〟なのだろう。
思考が暗く沈む――
やはり俺は恐れている。自分自身を知ることを……過去には思い出したいと思っていたが最初だけだった、年月が経つにつれ〝今の自分〟の自我が強くなる、〝過去の自分〟とは別人だ。
だから俺は―――
己の■■を独白しようとしたその時。ドバンッと勢いよく扉が開いた。すると次の瞬間、白色の何かがこれまた勢いよく飛んで来た。
なにやら泣き喚きながら……
「ぐ ろ゙ ま゙ ざ ま゙ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ あ゙」
「ちょ、え、やめ――うでぶッ!!」
勢いよく飛んで来た白い物体は正確に俺の腹部目掛けて飛んで来た。そして俺は白い物体により弾き飛ばされ、地面に白い物体と共に転がり落ちた。
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