虹色のプレゼントボックス

紀道侑

文字の大きさ
上 下
71 / 80
第三章 茜空ギャラクシィ

快盗のイメージ。

しおりを挟む
「やめてくれます!?毎晩毎晩わけのわからないデカいロケット盗まさせる変な気持ちわかります!?頭おかしくなりそうなんだけど!?」

 ツルツルおじさんがキレ気味だ。

「……なに言ってんだか全然わかんない」

「わかるでしょ!?私の正体……」

「ああーっ、もう聞こえない聞こえないっ、もう騎士団のとこ行って今日の分のロケットのありか教えてくるっ」

 耳をふさいで騎士団が待ってる会議室に走り出す。

「やめてえ!!騎士団に言わないでえっ」

 おじさんの断末魔みたいのが聞こえた気がしたけど、気のせいだろう。

「やめろ龍臣」

 バチンっ。

 あいだっ。

 京に殴られた。

「ほれ快盗、これが残りのロケットのありかと隠し部屋の開き方が書いてあるメモだ」

 あっ、うちのパーティーメンバーだけに渡した超極秘書類をっ。

「ああ、ありがとうございます。……あと30ヶ所もあるの!?」

 おじさん涙目だ。

「泣くなっ、快盗はもっと気高くあれっ、もっと自分を高めろっ、研鑽しろっ」

「安田さん、鬼じゃないんだから」

 鬼みたいな顔してる高校生に鬼呼ばわりされた。

「……安田くんの中の快盗のイメージってなんなの?」

 鈴木さんがなんか言ってる。

「行け行け快盗、ここにいると龍臣にまたとんでもないことやらされるぞ」

「は、はいっ」

 あっ、京にうながされてツルツルのオッサンがどっか走っていっちまう!?

「待てえっ、快盗サイボーグ化計画はまだ着手すらしてないぞっ!!」

 最強の快盗を誕生させる計画がっ。

「怪盗をサイボーグにしてやるなよ」





 ……あーあ、快盗がどっか行っちまった。

「や、安田様、どうしました?」

 もはやいく理由も無いいつもの会議室でナナセさんがなんか話してるが、快盗どっか行っちまったから、もうめんどくさい。
 この捜査会議もう意味ない。

「気にするな。進めてくれ」

「は、はあ」

 京が会議進めようとするが、もう意味ないしな。
 ん~……。
 そう言えば快盗はまだしも、この騎士団には随分働かせてしまったなあ~。

「ナナセさん、あのアジフライの店はお持ち帰りもできるの?」

「え!?、あ、はいテイクアウトもやっておりますが」

 地球出身の俺がお持ち帰りで、異世界人にテイクアウトって言われたな。
 まあ、なんでもいいや。

「……じゃあ、今日はお弁当持ってピクニックに行こう。みんな用意して」

「え!?ピクニック!?」



 という訳で鑑定で選定した町外れの小高い丘に来ましたよ。
 中々の見晴らしの良さ、そこにブルーシート的なものを引いて、みんなでお弁当を食べる。
 このアジフライ冷めても旨いなあ。
 しかし、騎士団の面々は黙々と食べてるだけだ。
 ちっとも楽しそうじゃない。
 権力者のわがままにむりくり付き合わされる人々丸出しだ。
 まあ、実際その通りなんだが。

「モンブランさん、じゃあ予定どおり装備品彼らにあげてもいい?」

「ええ、いいですよ。せっかく作ったのに使わないのもあれでしたしね」

 まんじゅうの口から出てくる装備品が最上位なのがあって、初期にカワウソ達に作ってもらった装備品は大量に余っているからな。
 この世界だとカワウソ製の装備品も十分に一級品だ。
 売るのもなんかあれだしね。せっかくだしお世話になった人々に贈呈しよう。

「第一回、カワウソ製装備品争奪くじ引き大会~っ」

 場がざわついた。
 特に騎士団の辺りがざわついた。
 よしよし、好感触だ。

「えー、ルールは簡単です。騎士団の方々にはこちらにあるくじを引いてA賞、B賞、C賞と書いてあるくじに応じた商品を贈呈します」

 箱の中に紙切れが入っている超分かりやすいくじ引き形式。
 一番下のC賞でもカワウソ製の中々のヤツだ。
 ちなみにB賞はモンブランさんが結構うまいことできたといっていた鎧。


アイテム名 カワウソ印の鋼鎧
分類    防具
レア度   B-
防御力   40
価格相場  2500000G~3000000G

効果及び説明

カワウソ族の鍛治師が作った鎧。カワウソマークが胸のところについている。
カワウソ達の優しさが打ち込まれているためステータスVIT+8。


 というステータスがちょっと上がる鎧だ。

「この鎧がB賞です」

「す、すげえっ」

「あのC賞もカワウソ様が作ったんだろ?十分一級品じゃねえか」

 お、いいリアクションだな。
 名もなき騎士達よ。

「あ、あの安田様?その鎧がB賞なのですか?じゃあ、え、A賞は?」

 ナナセさんの台詞にまた場がざわついた。
 騎士達もそう言えばって顔している。

「……じゃあちょっとまって」

 俺は持ってきたスコップでおもむろに地面を掘る。

 ザックザック、ザックザック。

 なんでこの人突然地面掘り出したの?て顔で見られてるが事実突然地面を掘り出したから仕方ないけど。

 ザックザック、カンッ。

 あ、あった。
 地面を掘ってたら土以外の感触がスコップから伝わってきた。
 俺はスコップに当たった棒状の金属をずるっと引きずり出す。

「……?」

 なんかみんなに小汚ない棒みたいの出してきたぞって顔されてるな。事実小汚ない棒出したから仕方ないけど。

「まんじゅう、水で綺麗にしてくれ」

 リンリンリン。

 まんじゅうの回復魔法の水で小汚ない金属の棒が綺麗になる。
 うん、銀色の綺麗な槍になった。


アイテム名 清銀神真槍
分類    武具
レア度   A-
攻撃力   73
価格相場  12500000G~15000000G

効果及び説明

なぜか町外れに埋まっていた文明崩壊以前の古代の伝説の槍。
装備すると、スキル欄にエリアヒールのスキルが追加される。
範囲回復できる希少な武具。
だいぶ昔の勇者の従者の装備品。


「えー、このなぜか町外れに埋まっていたよく分からない伝説の槍がA賞です」

 A賞の商品の御披露目だ。

「「「「う、うおおおおおっ!!!!」」」」

 大盛り上がりだ。
 これでピクニックは成功だろう。
 やっぱ露骨な賄賂は効果ばつぐんだなー。

「安田くん、なんでこの丘選んだのかよくわからなかったけど、あの槍あったから?」

 いつも通り理解が早い鈴木さんが話しかけてくる。

「そう、あとなんか別な原っぱにもデカい宝石の原石があったけど、ロケーション的に丘のがピクニックっぽいでそ」

「宝石の原石?ほんとに?」

「うん、まあ探したら色々あるよ。多分これは日本でも一緒なんじゃないかな?」

 俺が地球でこの能力を持ってたら、徳川の埋蔵金をみつけられたのになあ。

「ああ、……そうかもしれないね。川底から金出て来てとかニュースで聞いたことあるしね。地面の下にあるもの手に取るようにわかるなら、確かに」

 ね、俺の場合地面見るだけでなに埋まってるのかわかるからね。
 温泉でもなんでも……温泉?

「……ああ、温泉も見つけられるな」

「や、安田くん、やめようね。温泉は色々すごく大変だよ。ほんと大変だから」

 うーん。ダメかな。
 鈴木さんの感じだと温泉事業って大変なんだろうか?


「やったああああぁっ」

 お、俺が温泉プランに考えを巡らしていると、なにやらナナセさんのかわいらしい叫び声が響いてきた。
 あ、ナナセさんが、伝説の槍をひき当てたらしい。
 騎士団で一番えらい人は運もいいんだなあ。
 騎士達もホクホク顔だ。

 そして騎士団の機嫌とりピクニック作戦は大成功に終わった。


 そして町に帰って、夜。

「じゃあそろそろ王都に帰るべか」

 鍋をつつきながらみんなにそろそろ帰ると話す。
 もう、ロケットの処理も大丈夫だべ。

「そうだね。後は快盗のおじさんに任せても大丈夫じゃないかな」

 鈴木さんも賛同してくれる。

「でも安田くん、騎士団の人達にはお礼をしたんだから快盗のおじさんにもなにかしてあげたら?」

「……ええー、そういうのは俺の快盗のイメージと違うなあ、快盗は基本欲しいものは全部悪人から盗まないと」

「欲しいもの全部盗むとかただの頭おかしい人ですよ、安田さんの中の快盗のイメージってなんなんですか?」

 東くんが俺の中の快盗のイメージを聞いてくる。
 まあ一言で言うなら……。

「ポケットからなんでも出す人?」

「ドラえ○んじゃないですか」

 違うよっ、そっちじゃないよっ。

「まんじゅうちゃん、プレゼントボックスやらせてくれるかい?」

 あっ、鈴木さんがまんじゅうのプレゼントボックスやろうとしてるっ。
 あっ、まんじゅうも抵抗しないっ。

「ん?安田くん、なにこれ?」

 あーあ、引いちゃった。


アイテム名 俊足ブーツ
分類    防具
レア度   B+
防御力   28
価格相場  6500000G~8000000G

効果及び説明

足が早くなるブーツ、装備するとAGI+15、スキル欄に壁走りのスキルが追加される。


 あーあ、やっぱり快盗におあつらえ向きの装備出ちゃったし。

 そして不本意ながら快盗にプレゼントを残し、俺達は王都に戻ることになった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!

芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️ ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。  嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる! 転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。 新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか?? 更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

しっかり者のエルフ妻と行く、三十路半オッサン勇者の成り上がり冒険記

スィグトーネ
ファンタジー
 ワンルームの安アパートに住み、非正規で給料は少なく、彼女いない歴35年=実年齢。  そんな負け組を絵にかいたような青年【海渡麒喜(かいときき)】は、仕事を終えてぐっすりと眠っていた。  まどろみの中を意識が彷徨うなか、女性の声が聞こえてくる。  全身からは、滝のような汗が流れていたが、彼はまだ自分の身に起こっている危機を知らない。  間もなく彼は金縛りに遭うと……その後の人生を大きく変えようとしていた。 ※この物語の挿絵は【AIイラスト】さんで作成したモノを使っています ※この物語は、暴力的・性的な表現が含まれています。特に外出先等でご覧になる場合は、ご注意頂きますようお願い致します。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

番だからと攫っておいて、番だと認めないと言われても。

七辻ゆゆ
ファンタジー
特に同情できないので、ルナは手段を選ばず帰国をめざすことにした。

処理中です...