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第二章 向田さんちの無花果の樹
メダカの昔話。
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向田さんが飼っていたメダカに歓迎されて、今俺たちは水草だらけの森の中の掘っ立て小屋の外にいる。
水の中に生えてないのに水草ってのも変な話だが。
「あ、そうだそうだ。こんな感じだったよマッサージ屋、向田さん自宅の敷地に建てた小屋でマッサージやってた」
だそうだ。
鈴木さんの記憶によればここは紛れもなく向田マッサージ店らしい。
ちなみに小屋の中には全員は入れなかったので小屋の外に椅子とかテーブルを持ってきてみんな座ってる。
「粗茶です」
「こりゃどうも」
なにやら空飛ぶメダカの横を湯飲みがふよふよ浮いて俺たちが座ってるとこにあるテーブルに着地した。
みんな口々に礼を言ってる。
メダカの能力か。鑑定で出てた念動力ってやつだろうな。
「久しぶりのお客だわね」
「本当にねえ、1000年ぶりくらいだろうか?」
「前に来たのは誰だったかな」
「あれよ、木村とかいう特攻服きてる変な子よ」
「ああ、そうじゃそうじゃ、変な格好してたがいい子じゃったな」
メダカ達が会話に花を咲かせている。
俺たちが遭遇した第一メダカの他にもメダカは結構居たらしい。向田さんが結構飼っていたんだろう。
まあ、メダカって寂しいと死んじゃう系のペットらしいからな。
ちなみにみんなレベル40オーバーだ。
とんでもないメダカだ。
俺達が会った第一遭遇メダカはもうどれだかわからない。
メダカだからみんな同じに見える。
「俺達以外にも来たことあるヤツいるのかい?」
「おるよ、本当に数える位しかおらんがね」
聞けばどうやらごく希に迷い混んだ冒険者が来たことが二度ほど、あとは俺達みたいな勇者、まあ地球人が来たことあるようだ。
1000年ぶりとか言ってなかったか?何年規模の話なのこれ。
「ところでメダカはここでなにをしているのだ?」
あ、みんな気になってることを京が斬り込んだ。
まあダンジョンの中だからねここ。
そりゃ気になるよね。
「……ふむ、んん?そこのお前さんは知識系のスキルを持っておるね?聞かなくてもわかるのでは?」
おお、なにやら見破られたぞ。
すげえメダカだ。
「調べてもいいなら調べるけども、教えてくれるんならその方がいいよ」
ただの興味だからね。
「……うふふ、面白い子だわ」
「然り、知識系の能力持ちの勇者はみんな不思議な感覚を持っておるの。だがお主は特に不思議じゃな」
「他の子にも勇者が何人か混ざっておる。ふむ、そこのお嬢さんはまた別格の匂いがするの」
「おおホントじゃ、勇者が、ひい、ふう、4人もおる」
「すごいの、これは本当に初めてじゃな。勇者が他の勇者のパーティーの中にいるのか?」
「お嬢さんの後ろにいる犬もまた変じゃな。勇者の匂いがするような、違うような」
「なんじゃあの犬は、緑じゃ」
おう、またメダカ達が話始めたな。
ていうかあの犬居たの?
「おっと、そうじゃそうじゃ、なぜ儂らがここにいるかじゃな」
「別に居たくているわけではないのだ」
「世界樹を守っとる」
「強いていうなら、はぐれたのだ」
「我々はバラバラになった」
メダカみんなが話始めた。
しかも全く的を得ない。
パーティーメンバーもみんな首を傾げてる。
うん。もう鑑定使おうかな。
「お話を割って申しわけありません」
おや?俺が鑑定を使おうとしたら隊長さんが割って入ってきた。
「もしやあなた様方は、光樹の大魚様ではありませんか?」
おおう、なにその大層な名前。
大魚?メダカが?
「懐かしい呼び名じゃな」
「うむ。実に懐かしい」
「だが儂らは様づけで呼ばれるような大層な存在ではない」
「しかり、ただのメダカじゃ」
「なにも守れぬ弱いメダカじゃ」
「守れぬ」
「守れぬ」
あれ、なんかメダカ達が落ち込んだ口調になったぞ。
「いいえ、なにをおっしゃいます。大魚様方はこの国を守ってくださった。ナピーナップは今も存続しております」
「うむ、確かにこの世界樹の側は守れたの」
「じゃがそれだけじゃ」
「私達が守ろうとしたのは、世界すべて」
「しかし結果は散々たるもの」
「多くの命を散らしてしまった」
「そして主とははぐれ」
「他の同志ともはぐれ」
「儂らはここにおる」
「主の願いを叶えるために」
「世界樹を守るために」
ああ、そういや前に鑑定したやつで悪の巨人とかいうのが来た時にいちじくバリアでこの国守ったとかあった気がするな。
また隊長とメダカが色々話してる。
結局まとめるとこうなる。
悪の巨人が来た時に向田さんはなにやらすごいスキルを使って世界を守ろうとしたが失敗。
辛うじてこの世界樹の側は守れた。
そのスキルの反動で向田さんの家はバラバラになってしまった。
なにやら本宅、仕事場、庭でバラバラに異空間に飛ばされたそうだ。
あのいちじくはこの世界に来た時に植林したものらしい。
向田さんや他の仲間を探そうにもメダカには感知の能力がないので見つけられない。
それ以来一万五千年間メダカ達はこの仕事場で世界樹の管理と警護をしているそうだ。
うん。
まず気になったのは向田さんがこの世界に来たのが二万三千年前、悪の巨人が来たのが一万五千年前。
うん。
つまり向田さんは八千年生きてたことになる。
すごい長寿だこと。
「主は常に言っておった。老後は平穏に暮らしたいと」
老後が八千年続いてる時点で全然老後じゃないからね。
むしろそっちが人生のメインだからね。
「安田くん」
「安田さん」
話を聞いた鈴木さんと東くんが何とかしてやれ的な目線を向けてくる。
いやもちろん何とかしてやりますよ。
「待ちなさい」
「無理じゃ」
「主の能力は守護」
「力の続く限り他の能力の干渉は受けない」
「未だ主を見つけられた勇者は居ない」
うん。じゃあ無理じゃね?
俺にそんな大層な力は無いと思うよ?
「しかし一縷の望みを託す」
「これを受け取ってくれ勇者よ」
「これは鍵」
「主のいる本宅に至る鍵じゃ」
なんかメダカが変な玉を浮かべて持ってきた。
なにやら向田さん家に入る為の鍵らしい。
向田さん家には色々貴重なアイテムやらがあるから厳重になっているらしく、入るには鍵を3つ集める必要があるそうだ。
一つ目はメダカが、二つ目はバラバラになった庭にいた彼らの仲間、別の世界樹である松の木、そして最後の三つ目はこの国にいる人間が受け継いでいるそうだ。
なんてRPGっぽい展開なんだ。
「だが望みは0に等しい」
「松の能力は隠蔽、勇者からすらもすべてを悟らせぬ能力」
「人に受け継がせた鍵もさすがに時が経ちすぎている。無くなっている可能性が高い。その人間のいた町はすでに無くなっていた」
バグって進めなくなってるRPGだな。
「隊長さん、この国に受け継がれてる鍵らしいけど、なんか知らない?」
「……申しわけありません」
隊長さんが悲痛な顔で謝ってくる。
この国の宰相の息子が知らないのか、ますます望み薄だなあ。
「うむ、まあやってみろ龍臣」
なんか偉そうに言ってる吸血鬼がいるな。
まあ、じゃあ。
ウルトラ鑑定。
アイテム名 青い鍵玉
分類 消費アイテム
レア度 A+
価額相場 0G
効果及び説明
向田さん家の本宅に入る為の鍵。
余談
赤い鍵玉はナピーナップ南にある港町にあります。
緑の鍵玉はナピーナップの西にある孤島にあります。
あるやん。
「赤い玉は南の港町で、緑の玉は西にある孤島にあるみたいよ」
「なんとっ」
「見つけた!?」
「能力が通じたのか!?」
「おお、奇跡じゃ」
メダカ達が騒いでる。
「うん。龍臣よくやったな」
「さすが安田くんだね」
「ホントですね。うちのリーダーはやるときはやりますね。げんこつは無しにしてあげます」
いやあ、照れるじゃないか。
まあ眼鏡で玉見ただけなんですけどね。
しかし向田さんの行方がわからんな。
ああ、そう言えばメダカ曰く能力通じないらしいからな。
ふむ、なんかざっくりした鑑定結果多いと思ってたけど、あれそのせいか。
俺鑑定能力がヘソ曲げたのかと思ってたわ。
ヘソ曲げるって何?……我ながらアホすぎない?
そう言えば前にもこんなことあったな。
確かバカ王子に鑑定使って邪神逮捕させた時と、後は……。
あ、そうだ。鈴木さん発掘した時だわ。
そう言えば神様が直で関わってると鑑定効きづらくなるんだなあ。
あれ?邪神の時にはあっさり全部暴露できたんだけどなあ。
なんでだべ?
鑑定結果
世界樹松の木により、そもそも向田関連の何かに気づくことがないように隠蔽されています。
その上勇者向田の能力によりあらゆる干渉から守護されています。
自分の能力がヘソ曲げたと思った。という訳のわからないことに定評のあるヤスダにしてもあまりにも訳のわからない思考はそのせいです。
本気を出しますか?
YES/NO
ええ?なにこれ?
邪神逮捕以来のYES/NO出たよ?
ええー、本気?
俺って選択肢で本気出すかどうか決めんの?
どんなタイプの人間それ?
うーん、じゃあYES。
……うん?あれ?頭の中に浮かぶ選択肢が動かない。
んぬぬっ、ぬぬぬぬぬ。
あ、ピロって一瞬選択肢がYESの方に動いた。
コントローラーの十字キーが壊れてるみたいになってる。
んぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬっ
んぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬねぬぬっ。
んぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬっ。
なんか途中ぬの中に一つだけねがあった気がしたが、頑張りすぎててそんなん気にならない。
「ど、どうした龍臣っ、顔真っ赤だぞ」
「安田くんっ?」
「安田さんっ」
「今、ちょっと、本気、出してる」
本気出しすぎて言葉が飛び飛びになるわ。
顔真っ赤にして歯を食い縛ってるからな。
ていうか鑑定能力の本気の出し方ってこれでいいのか?
「……鑑定するだけなのに踏ん張る意味がわからんっ!!!!」
ペロン♪
あ、俺の絶叫と共に変な音なった。
隠蔽を無効化。守護を突破。
情報を改めて開示します。
鑑定結果
赤い鍵玉はナピーナップ南にある港町シーパラの大商人マカッポ・サマンサが王家にすら明かさずに密かに代々受け継いで持っています。
彼は宰相の次男でそこにいる騎士団の隊長と同級生で友人なので、彼に任せれば穏便に手に入ります。
緑の玉はいちじくの世界樹から西に231キロ行ったところにある見えない孤島で世界樹松の木が持っています。
隠蔽の能力でまったく見えず辿り着けませんが、松の木は地球時代の記憶でヤスダのパーティーメンバースズキのことを子供の頃から見ていて覚えているので近くまでいけば向こうが見つけてくれます。
向田は世界樹上空17807メートルの場所にある異空間の自宅で今も生きています。
ぶっちゃけ、上空17807メートルにある異空間の扉をヤスダが全力でひっぱたけば鍵玉など使わずとも開きます。
攻略本で詳細な解決法知ったと思ったら、最終的にネットでバグ技での攻略法見ちまったみたいな鑑定結果出たな。
じゃあもう鍵玉がどうだのくだりいらなくね?
相変わらずわびもさびもないな。
ペロン♪
ん?また変な音なったな。
追加情報
現在おじいちゃん勇者向田は二万五千年生きてるのでもうギリギリです。
あと半日位の寿命でしょう。
勇者向田の寿命が尽きるといちじくバリアと松の木の隠蔽そして向田の守護の能力によってナピーナップの地下深くに封じられていた悪の巨人の電磁波が放出されナピーナップは崩壊します。
今回ばかりはガチの神様ですのでまんじゅうの魔法でも無理です。
ヤスダの治癒スキルで思いきりぶっとばして寿命を延長してください。
……最悪だわ。
「準備しろオメーらっ、成層圏まで出発だあーっ!!」
「龍臣なんだそのキャラは!?イメチェンか?成層圏!?」
今から数時間で成層圏まで飛ばなきゃいけないならやけくそにもなるよ。
水の中に生えてないのに水草ってのも変な話だが。
「あ、そうだそうだ。こんな感じだったよマッサージ屋、向田さん自宅の敷地に建てた小屋でマッサージやってた」
だそうだ。
鈴木さんの記憶によればここは紛れもなく向田マッサージ店らしい。
ちなみに小屋の中には全員は入れなかったので小屋の外に椅子とかテーブルを持ってきてみんな座ってる。
「粗茶です」
「こりゃどうも」
なにやら空飛ぶメダカの横を湯飲みがふよふよ浮いて俺たちが座ってるとこにあるテーブルに着地した。
みんな口々に礼を言ってる。
メダカの能力か。鑑定で出てた念動力ってやつだろうな。
「久しぶりのお客だわね」
「本当にねえ、1000年ぶりくらいだろうか?」
「前に来たのは誰だったかな」
「あれよ、木村とかいう特攻服きてる変な子よ」
「ああ、そうじゃそうじゃ、変な格好してたがいい子じゃったな」
メダカ達が会話に花を咲かせている。
俺たちが遭遇した第一メダカの他にもメダカは結構居たらしい。向田さんが結構飼っていたんだろう。
まあ、メダカって寂しいと死んじゃう系のペットらしいからな。
ちなみにみんなレベル40オーバーだ。
とんでもないメダカだ。
俺達が会った第一遭遇メダカはもうどれだかわからない。
メダカだからみんな同じに見える。
「俺達以外にも来たことあるヤツいるのかい?」
「おるよ、本当に数える位しかおらんがね」
聞けばどうやらごく希に迷い混んだ冒険者が来たことが二度ほど、あとは俺達みたいな勇者、まあ地球人が来たことあるようだ。
1000年ぶりとか言ってなかったか?何年規模の話なのこれ。
「ところでメダカはここでなにをしているのだ?」
あ、みんな気になってることを京が斬り込んだ。
まあダンジョンの中だからねここ。
そりゃ気になるよね。
「……ふむ、んん?そこのお前さんは知識系のスキルを持っておるね?聞かなくてもわかるのでは?」
おお、なにやら見破られたぞ。
すげえメダカだ。
「調べてもいいなら調べるけども、教えてくれるんならその方がいいよ」
ただの興味だからね。
「……うふふ、面白い子だわ」
「然り、知識系の能力持ちの勇者はみんな不思議な感覚を持っておるの。だがお主は特に不思議じゃな」
「他の子にも勇者が何人か混ざっておる。ふむ、そこのお嬢さんはまた別格の匂いがするの」
「おおホントじゃ、勇者が、ひい、ふう、4人もおる」
「すごいの、これは本当に初めてじゃな。勇者が他の勇者のパーティーの中にいるのか?」
「お嬢さんの後ろにいる犬もまた変じゃな。勇者の匂いがするような、違うような」
「なんじゃあの犬は、緑じゃ」
おう、またメダカ達が話始めたな。
ていうかあの犬居たの?
「おっと、そうじゃそうじゃ、なぜ儂らがここにいるかじゃな」
「別に居たくているわけではないのだ」
「世界樹を守っとる」
「強いていうなら、はぐれたのだ」
「我々はバラバラになった」
メダカみんなが話始めた。
しかも全く的を得ない。
パーティーメンバーもみんな首を傾げてる。
うん。もう鑑定使おうかな。
「お話を割って申しわけありません」
おや?俺が鑑定を使おうとしたら隊長さんが割って入ってきた。
「もしやあなた様方は、光樹の大魚様ではありませんか?」
おおう、なにその大層な名前。
大魚?メダカが?
「懐かしい呼び名じゃな」
「うむ。実に懐かしい」
「だが儂らは様づけで呼ばれるような大層な存在ではない」
「しかり、ただのメダカじゃ」
「なにも守れぬ弱いメダカじゃ」
「守れぬ」
「守れぬ」
あれ、なんかメダカ達が落ち込んだ口調になったぞ。
「いいえ、なにをおっしゃいます。大魚様方はこの国を守ってくださった。ナピーナップは今も存続しております」
「うむ、確かにこの世界樹の側は守れたの」
「じゃがそれだけじゃ」
「私達が守ろうとしたのは、世界すべて」
「しかし結果は散々たるもの」
「多くの命を散らしてしまった」
「そして主とははぐれ」
「他の同志ともはぐれ」
「儂らはここにおる」
「主の願いを叶えるために」
「世界樹を守るために」
ああ、そういや前に鑑定したやつで悪の巨人とかいうのが来た時にいちじくバリアでこの国守ったとかあった気がするな。
また隊長とメダカが色々話してる。
結局まとめるとこうなる。
悪の巨人が来た時に向田さんはなにやらすごいスキルを使って世界を守ろうとしたが失敗。
辛うじてこの世界樹の側は守れた。
そのスキルの反動で向田さんの家はバラバラになってしまった。
なにやら本宅、仕事場、庭でバラバラに異空間に飛ばされたそうだ。
あのいちじくはこの世界に来た時に植林したものらしい。
向田さんや他の仲間を探そうにもメダカには感知の能力がないので見つけられない。
それ以来一万五千年間メダカ達はこの仕事場で世界樹の管理と警護をしているそうだ。
うん。
まず気になったのは向田さんがこの世界に来たのが二万三千年前、悪の巨人が来たのが一万五千年前。
うん。
つまり向田さんは八千年生きてたことになる。
すごい長寿だこと。
「主は常に言っておった。老後は平穏に暮らしたいと」
老後が八千年続いてる時点で全然老後じゃないからね。
むしろそっちが人生のメインだからね。
「安田くん」
「安田さん」
話を聞いた鈴木さんと東くんが何とかしてやれ的な目線を向けてくる。
いやもちろん何とかしてやりますよ。
「待ちなさい」
「無理じゃ」
「主の能力は守護」
「力の続く限り他の能力の干渉は受けない」
「未だ主を見つけられた勇者は居ない」
うん。じゃあ無理じゃね?
俺にそんな大層な力は無いと思うよ?
「しかし一縷の望みを託す」
「これを受け取ってくれ勇者よ」
「これは鍵」
「主のいる本宅に至る鍵じゃ」
なんかメダカが変な玉を浮かべて持ってきた。
なにやら向田さん家に入る為の鍵らしい。
向田さん家には色々貴重なアイテムやらがあるから厳重になっているらしく、入るには鍵を3つ集める必要があるそうだ。
一つ目はメダカが、二つ目はバラバラになった庭にいた彼らの仲間、別の世界樹である松の木、そして最後の三つ目はこの国にいる人間が受け継いでいるそうだ。
なんてRPGっぽい展開なんだ。
「だが望みは0に等しい」
「松の能力は隠蔽、勇者からすらもすべてを悟らせぬ能力」
「人に受け継がせた鍵もさすがに時が経ちすぎている。無くなっている可能性が高い。その人間のいた町はすでに無くなっていた」
バグって進めなくなってるRPGだな。
「隊長さん、この国に受け継がれてる鍵らしいけど、なんか知らない?」
「……申しわけありません」
隊長さんが悲痛な顔で謝ってくる。
この国の宰相の息子が知らないのか、ますます望み薄だなあ。
「うむ、まあやってみろ龍臣」
なんか偉そうに言ってる吸血鬼がいるな。
まあ、じゃあ。
ウルトラ鑑定。
アイテム名 青い鍵玉
分類 消費アイテム
レア度 A+
価額相場 0G
効果及び説明
向田さん家の本宅に入る為の鍵。
余談
赤い鍵玉はナピーナップ南にある港町にあります。
緑の鍵玉はナピーナップの西にある孤島にあります。
あるやん。
「赤い玉は南の港町で、緑の玉は西にある孤島にあるみたいよ」
「なんとっ」
「見つけた!?」
「能力が通じたのか!?」
「おお、奇跡じゃ」
メダカ達が騒いでる。
「うん。龍臣よくやったな」
「さすが安田くんだね」
「ホントですね。うちのリーダーはやるときはやりますね。げんこつは無しにしてあげます」
いやあ、照れるじゃないか。
まあ眼鏡で玉見ただけなんですけどね。
しかし向田さんの行方がわからんな。
ああ、そう言えばメダカ曰く能力通じないらしいからな。
ふむ、なんかざっくりした鑑定結果多いと思ってたけど、あれそのせいか。
俺鑑定能力がヘソ曲げたのかと思ってたわ。
ヘソ曲げるって何?……我ながらアホすぎない?
そう言えば前にもこんなことあったな。
確かバカ王子に鑑定使って邪神逮捕させた時と、後は……。
あ、そうだ。鈴木さん発掘した時だわ。
そう言えば神様が直で関わってると鑑定効きづらくなるんだなあ。
あれ?邪神の時にはあっさり全部暴露できたんだけどなあ。
なんでだべ?
鑑定結果
世界樹松の木により、そもそも向田関連の何かに気づくことがないように隠蔽されています。
その上勇者向田の能力によりあらゆる干渉から守護されています。
自分の能力がヘソ曲げたと思った。という訳のわからないことに定評のあるヤスダにしてもあまりにも訳のわからない思考はそのせいです。
本気を出しますか?
YES/NO
ええ?なにこれ?
邪神逮捕以来のYES/NO出たよ?
ええー、本気?
俺って選択肢で本気出すかどうか決めんの?
どんなタイプの人間それ?
うーん、じゃあYES。
……うん?あれ?頭の中に浮かぶ選択肢が動かない。
んぬぬっ、ぬぬぬぬぬ。
あ、ピロって一瞬選択肢がYESの方に動いた。
コントローラーの十字キーが壊れてるみたいになってる。
んぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬっ
んぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬねぬぬっ。
んぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬっ。
なんか途中ぬの中に一つだけねがあった気がしたが、頑張りすぎててそんなん気にならない。
「ど、どうした龍臣っ、顔真っ赤だぞ」
「安田くんっ?」
「安田さんっ」
「今、ちょっと、本気、出してる」
本気出しすぎて言葉が飛び飛びになるわ。
顔真っ赤にして歯を食い縛ってるからな。
ていうか鑑定能力の本気の出し方ってこれでいいのか?
「……鑑定するだけなのに踏ん張る意味がわからんっ!!!!」
ペロン♪
あ、俺の絶叫と共に変な音なった。
隠蔽を無効化。守護を突破。
情報を改めて開示します。
鑑定結果
赤い鍵玉はナピーナップ南にある港町シーパラの大商人マカッポ・サマンサが王家にすら明かさずに密かに代々受け継いで持っています。
彼は宰相の次男でそこにいる騎士団の隊長と同級生で友人なので、彼に任せれば穏便に手に入ります。
緑の玉はいちじくの世界樹から西に231キロ行ったところにある見えない孤島で世界樹松の木が持っています。
隠蔽の能力でまったく見えず辿り着けませんが、松の木は地球時代の記憶でヤスダのパーティーメンバースズキのことを子供の頃から見ていて覚えているので近くまでいけば向こうが見つけてくれます。
向田は世界樹上空17807メートルの場所にある異空間の自宅で今も生きています。
ぶっちゃけ、上空17807メートルにある異空間の扉をヤスダが全力でひっぱたけば鍵玉など使わずとも開きます。
攻略本で詳細な解決法知ったと思ったら、最終的にネットでバグ技での攻略法見ちまったみたいな鑑定結果出たな。
じゃあもう鍵玉がどうだのくだりいらなくね?
相変わらずわびもさびもないな。
ペロン♪
ん?また変な音なったな。
追加情報
現在おじいちゃん勇者向田は二万五千年生きてるのでもうギリギリです。
あと半日位の寿命でしょう。
勇者向田の寿命が尽きるといちじくバリアと松の木の隠蔽そして向田の守護の能力によってナピーナップの地下深くに封じられていた悪の巨人の電磁波が放出されナピーナップは崩壊します。
今回ばかりはガチの神様ですのでまんじゅうの魔法でも無理です。
ヤスダの治癒スキルで思いきりぶっとばして寿命を延長してください。
……最悪だわ。
「準備しろオメーらっ、成層圏まで出発だあーっ!!」
「龍臣なんだそのキャラは!?イメチェンか?成層圏!?」
今から数時間で成層圏まで飛ばなきゃいけないならやけくそにもなるよ。
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