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第一章 温室育ちのへっぽこ先生異世界に降臨せり
暗黒卿の悔恨
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俺の名はサイカ・ムツキ。
サイカ国の第一王子だ。
少し前まで自分の思い通りの人生を生きていた。
少し前までは……。
ガラガラガラ。
俺は今日も監獄の独房で壁についているよくわからんレバーをぐるぐる回す。
なんの意味もない行為だ。
このレバーも別に何にも繋がっていない。
壁にくっついてるただの棒でしかない。
この当たりだのドクロだのもなんの意味もない。
いくらやってもなんのスキルも得られない行為だ。
スキルも得られず、レベルももちろん上がらない。
むしろスキルを与えないようになんの作業もさせず、レベルをあげさせないようにろくな運動もさせない。
それがこの監獄の仕組みだ。
ガラガラガラ。
……くそ、何もかもあのヤスダのアホのせいだ。
部下の報告通りアイツはただのアホなお人好しでしかなかったはずだ。
そうだ。一見した時にもアホなお人好しだと確信した。
あのぼうっとした顔、覇気の無さ、どう見てもただの凡人だった。
「……くそっ」
だが、真実は違った。
アイツは思ったよりも頭の回るアホだった。
いや、それも違う。
芯の部分は確かにアホなお人好しなのだ。
だが、いざなにか問題と対峙した時は中身はアホなお人好しのままだが、そこに別な要素が乗るのだ。
こすっからく小手先で対処したり、力のあるものに巻かれてソイツに頼んで対処させたり、物語の世界に時々いる最後までしぶとく生き残る三下の悪役みたいな立ち回りになるのだ。
だが、ヤツは確かに善人だ。
善人故に周りは奴に味方をし、本人は悪知恵の働くしょぼい悪役のようなこすっからい動きをする。
しかもこちらはあれのアホ面と覇気の無さ故に全く眼中になくなる。
これはもう最悪の組み合わせだ。
全く見向きもしていない方向から致命的なダメージを貰う。
俺はまさにそれだ。
アホだアホだと見向きもせず他の勇者の東秀千代の方ばかりに着目しているうちに、完全にすべてを掌握されていた。
しかも話した限り、ヤツは少し天の邪鬼な性質も持ち合わせていた。
アイツはなにかをやれと命令されても、あまり素直にやらないタイプの人間だろう。
なんならデメリットしかない場面でも、意味のわからない理由でなぜかやらないという選択肢をとったりするタイプだ。
これではもうだめだ。
まともに行動のコントロールもできない。
しかもレベル86だ。
……アホかあんなヤツに勝てるヤツはこの世に存在しないだろう。
俺に加護を与えた自分を神とか言ってたヤツでも無理な気がする。
正直あの神もよくわからん人型の岩の固まりみたいなヤツだったからな。
ガキの頃に枕元に急に現れて加護を渡された。
あの岩の固まりもヤスダの白い宝箱に比べたら大したこと無さそうだ。
……うん、無理だ。
あんな訳のわからん連中には逆立ちしたって勝てない。
……思えばあんなに頭にきたのも生まれてはじめてだな。
なんでも思い通りになる人生を少々退屈だとは思っていたが。
思い通りにならないのがあんなに腹が立つとは。
……いや、違うなあのアホ面の思い通りにされたからこんなに腹が立つのだろうな。
ガラっ。
「差し入れだ。ヤスダ様からだぞ。弁当だそうだ」
監獄の扉の飯を入れる小さな戸から銀色の箱を入れられた。
差し入れ?
ヤスダからか?
「……弁当?」
銀色の箱の蓋に手をかける。
「……どういう意味だかわからんが、おちょくられてるのはわかるな。くたばれヤスダ」
サイカ国の第一王子だ。
少し前まで自分の思い通りの人生を生きていた。
少し前までは……。
ガラガラガラ。
俺は今日も監獄の独房で壁についているよくわからんレバーをぐるぐる回す。
なんの意味もない行為だ。
このレバーも別に何にも繋がっていない。
壁にくっついてるただの棒でしかない。
この当たりだのドクロだのもなんの意味もない。
いくらやってもなんのスキルも得られない行為だ。
スキルも得られず、レベルももちろん上がらない。
むしろスキルを与えないようになんの作業もさせず、レベルをあげさせないようにろくな運動もさせない。
それがこの監獄の仕組みだ。
ガラガラガラ。
……くそ、何もかもあのヤスダのアホのせいだ。
部下の報告通りアイツはただのアホなお人好しでしかなかったはずだ。
そうだ。一見した時にもアホなお人好しだと確信した。
あのぼうっとした顔、覇気の無さ、どう見てもただの凡人だった。
「……くそっ」
だが、真実は違った。
アイツは思ったよりも頭の回るアホだった。
いや、それも違う。
芯の部分は確かにアホなお人好しなのだ。
だが、いざなにか問題と対峙した時は中身はアホなお人好しのままだが、そこに別な要素が乗るのだ。
こすっからく小手先で対処したり、力のあるものに巻かれてソイツに頼んで対処させたり、物語の世界に時々いる最後までしぶとく生き残る三下の悪役みたいな立ち回りになるのだ。
だが、ヤツは確かに善人だ。
善人故に周りは奴に味方をし、本人は悪知恵の働くしょぼい悪役のようなこすっからい動きをする。
しかもこちらはあれのアホ面と覇気の無さ故に全く眼中になくなる。
これはもう最悪の組み合わせだ。
全く見向きもしていない方向から致命的なダメージを貰う。
俺はまさにそれだ。
アホだアホだと見向きもせず他の勇者の東秀千代の方ばかりに着目しているうちに、完全にすべてを掌握されていた。
しかも話した限り、ヤツは少し天の邪鬼な性質も持ち合わせていた。
アイツはなにかをやれと命令されても、あまり素直にやらないタイプの人間だろう。
なんならデメリットしかない場面でも、意味のわからない理由でなぜかやらないという選択肢をとったりするタイプだ。
これではもうだめだ。
まともに行動のコントロールもできない。
しかもレベル86だ。
……アホかあんなヤツに勝てるヤツはこの世に存在しないだろう。
俺に加護を与えた自分を神とか言ってたヤツでも無理な気がする。
正直あの神もよくわからん人型の岩の固まりみたいなヤツだったからな。
ガキの頃に枕元に急に現れて加護を渡された。
あの岩の固まりもヤスダの白い宝箱に比べたら大したこと無さそうだ。
……うん、無理だ。
あんな訳のわからん連中には逆立ちしたって勝てない。
……思えばあんなに頭にきたのも生まれてはじめてだな。
なんでも思い通りになる人生を少々退屈だとは思っていたが。
思い通りにならないのがあんなに腹が立つとは。
……いや、違うなあのアホ面の思い通りにされたからこんなに腹が立つのだろうな。
ガラっ。
「差し入れだ。ヤスダ様からだぞ。弁当だそうだ」
監獄の扉の飯を入れる小さな戸から銀色の箱を入れられた。
差し入れ?
ヤスダからか?
「……弁当?」
銀色の箱の蓋に手をかける。
「……どういう意味だかわからんが、おちょくられてるのはわかるな。くたばれヤスダ」
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