虹色のプレゼントボックス

紀道侑

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第一章 温室育ちのへっぽこ先生異世界に降臨せり

手紙

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 うーん、またスケールでかすぎるネタバレくらった。
 いやいや、まだまだ確証なんてないじゃないか。
 あの妙に陽気な口調の人?が嘘をついてるかもしれないじゃないか。

 アパートごとわけのわからない世界に飛ばされて、おかしな銀色のプラモデルに襲われて、戦って壊したら気絶して、頭の中に聞こえてきた声に俺は神になったと言われた。

 他人が聞いたら、即頭おかしい人の烙印を押される。
 頭の中に聞こえてきた声を疑う以前に、状況がカオスすぎる。
 事故かなんかで意識不明になって夢見てる。とかが一番確率高いだろうな。

 まあ、もう絶対夢じゃないけどね。痛かったり、気絶したり、触ったり、とか生にも程があるからね。


 ……………………………………………そうか、神様になっちゃったか、俺。
 でも別に俺だけがそうじゃなくて、60億人皆神様になったらしいけど、ていうか俺の塾の生徒勇者になったのか。
あいつら、偏差値50そこそこの中学生のくせに勇者になったのか……生意気な、ていうか、大丈夫なのかあいつらで……。
 ……まあ心配したとこでなにも出来ないけども……。


「我はカミナリ……ヤハハ…………………はあ……」

 まあいいや、気を取り直して今できることをやろう。
 陽気な声の人がドアから出て、左に10メートル行ったとこになんかあるとか言ってたよな。

 散らかってる部屋を、ドアまで割れた食器なんかを踏まないように気をつけて歩く。
 そういや多少掃除もしないとな、ここなら一応屋根もあるし。拠点ってやつにできるだろう。


 さて…………左に10……ん?
 なんか……折れた木っぽい物があるな。
 木とは言っても自然な木ではなく、加工された高さ20センチ幅広20センチ程度の四角い木の棒だ。地面に刺さった折れた柱って感じかな。

 あ、向こう側に折れた柱の上の部分がある。
 折れた部分はでかいな、折れる前なら5メートル位の高さがあったんじゃなかろうか。
 ずいぶん土や泥で汚れてるな。
 柱を擦って土を落とす、なんか書いてあるな。
 ん!?これ日本語だ!!
 汚れるのも気にせず、書いてあることを読もうと慌てて柱を擦る。
 
 この…………下を……れ……。

 「この、柱の下を掘れ?」

 筆で書いた妙に達筆な字で柱にそう書いてある。

 ……元々あの地面に刺さってる方と一つだったわけだから。
 あっちの刺さってる方の下ってことだな、よし。
 刺さってる折れた柱を抜き、必死に掘る。
 レベルアップのせいだろうが、素手でも簡単に地面を掘れる。

 1メートル程度掘ったところで、手が土や石以外の感触を感じとった。
 なんか鉄?の割には錆びてないし、妙に銀色の50センチ程度の箱が出てきた。
 掘った穴から出て、箱についた土を手で払い落とす。

 うーん、なんだろうなこれは、開けてもいいんだろうか。なんか不安だわ。
 あ、そうかこんな時のために……

 箱を地面に置いて、と

 ウルトラ鑑定

アイテム名 ミスリルの箱

分類    雑貨
レア度   C+
価格相場  500000G~600000G

効果及び説明

希少な金属ミスリルで作られている箱。
物を収納することができる。錆びない。

余談

現在より2353年前、先見勇者タナカ(地球名、田中正晴)がスキル予知夢により、地球時代のアパート201号室の隣人および友人のヤスダ(地球名、安田龍臣)がこの地に転移することを知りヤスダのために用意し製作した各種生活魔導具、食糧、身を守るための魔導具、それらについての説明書。
そして読んだ時に、始めて田中が送り主だとわかるヤスダを驚かせるための手紙。
それら全てを魔法の部屋に格納し。
魔法の部屋を起動するドアノブを時間停止効果のある魔法布で包み、この錆びないミスリル製の箱にしまい埋めた。
ちなみに、箱の上の柱は魔法道具であり、本来転移の魔力を察知すると光と音を発し、ヤスダに場所を知らせて確実に魔法の部屋を渡すための魔導具であったが、あまりに時間が経ちすぎていたために破損してしまった。
破損してしまったのは、先見勇者タナカのスキル予知夢が、断片的な未来と事実しか把握できないために、2353年も後に転移して来るとは予想していなかったため。




 ――――――――読んだ時に始めて田中が送り主だとわかるヤスダを驚かせるための手紙が入っとる!!!!
 またネタバレ爆弾くらった!!

 前も思ったが、なんなんだこの余談って項目よおっ!!
 ぶっちゃけすぎなんだよっ!!
 わびもさびもねえなっ!! 

 ちくしょう、ここ二日間驚きっぱなしだわ。
 26年間の人生集めて、どろどろになるまで煮込んだのより108倍は濃い二日間だわ。

 ……ていうか、そうか、田中くんも来てたのか、二千年以上前に……。
 大丈夫だったんだろうか。もう死んじゃったかなあ……。
 ああ、死なないんだっけか?地球帰ったんだろうか?
 あれ?でも今は地球に人が居ないとかなんとか……。


 なんにしても幸せにやれたんかなあ……。
 しかしもう……精神の疲労がすげえわ。

 とりあえず箱を開く、なんかドアノブ入ってるとか書いてあったが。
 箱を開けると、黒い布に包まれた何か細長い物が入っていた。
 布を開く、あ、ホントにドアノブだ、レバータイプのなんかオシャレなやつだわ、アンティークっぽいな。
 二千年も前のらしいけど、これ錆びたりしないんだろうか?
 ああ、この布が魔法のなんとかなんだっけか。

 どうすんだこれ、どうやって使うの?
 回す?んん?どうやって……。

 あ!いろいろいじってたらドアノブが光った。

『知的生命体の接触を認識しました』
『前所有者からの部屋の引き継ぎ条件を提示します』

 しゃべった!?条件を提示?なんだ条件って
 聞いてないよ田中くん、そんなんあんの?どうしよう。

『部屋に接触した知的生命体の個人名を述べなさい』

 ああ、なんだ名前か。びっくりした。

「や、安田龍臣です」

『音声認識、個人名、ヤヤスダタツオミデス、でよろしいですか?』

 おおう、音声認識の融通のきかなさよ。

「いや、ダメ……です」

『音声認識、再度確認します、部屋に接触した知的生命体の個人名を述べなさい』

「安田龍臣」

『音声認識、個人名、ヤスダタツオミ、でよろしいですか?』

「……はい」

『確認しました……部屋の引き継ぎ条件を満たしました』
『魔導ロック解除、新たな所有者ヤスダタツオミに部屋の所有権を移行します』

 手の中でドアノブがまた光った。
 ……おお、どうやら俺の物になったらしい。
 ……で、どうすりゃいいんだ?ドアノブだからやっぱ回すのかな?

 カチャ、というまんまドアノブ回した音がしたらドアが出てきた。
 ドアノブ同様にアンティークっぽい意匠が施してある木のドアだ。

 よし、開くぞ、ガチャっとな。
 中は真っ暗だ。ちょっと怖いが、田中くんが用意してくれた部屋らしいので思いきって入る。

 開いた扉が背中で閉まる音がする。
 うーん暗い。

『所有者の登録をしてください』

「うお!?」

 急に電子的な声が聞こえて、ドアの横にある石の板みたいのがぼんやり光った。

『所有者の認証データを記録します。石板に右手をつけて下さい』

 ……登録?指紋認証かなんかなのか?
 言われるままに石板に右手をつける。

『…………登録完了しました。ようこそ新しい主ヤスダタツオミ』



 感情のこもってない電子的な歓迎の声と共に、パパパっと壁についている電球的なのが光った。



「………………うわあ……すげ……」

 照明が部屋を照らして飛び込んで来た光景はとんでもなかった。
 あれここ地球かな?て思った。



 なんか、20畳位ありそうなロフト付きの良さげな部屋だった。
 他にもいくつもドアが見える。どうやら沢山部屋がありそうだ。
 入り口付近に段差があってそこで靴脱ぐ日本式。ていうか下駄箱があるし、なんかすでになん足か靴が入ってる。

 フローリングの部屋、リビングかな?の向こうにキッチンがあるな。
 リビングのカーペットの上にはテーブルに、ローソファ。
 やったっ、ローソファ超好きっ!!
 間違いなく田中くんの配慮だろうな。こたつ入りながら使えるローソファの良さを熱弁したことあったからな。
 あとなんかテレビとか、本棚には漫画やらDVDやら何やらあるな。これテレビとか使えんの?
 あっ、おいおいおいジョ○ョあんじゃねえか、やったよ。
 ○ョジョ読めるの嬉しいわ。
 あ、でもこれ第3部だけが無い。条○郎の活躍だけ拝めない。田中君第3部が一番好きだっつってたからな。第3部だけ持ってったんだろうか。
 まあ、田中君の部屋で3部は読み終わってるからいいけど。
 重ちーが死んだとこから先、超気になってたんだよな。
  
 キッチンにはたくさんの食器に、これガスコンロなのか?あ、火がついた。ガスコンロだこれ。
 炊飯器にオーブン、おいおい携帯ガスコンロまであんじゃん。
 テーブルで鍋ができるぜっ。やったぜっ。
 他にも見る限り生活用品が過剰なまでに揃ってる。

 よし、他の部屋も見てみよう。

「お?こっちは寝室か?ベッドでかいっ」

 クローゼットにはパジャマが入ってる。
 でも俺シャツとパンツで寝る派なんだけどな。
 魔法のパジャマとかなのかな。寝返りうつとダメージ与えるやつとか。

 えーと、他の部屋は……

「洗面所に、洗濯機発見!!に風呂もあるっ!!」
「おおうトイレ発見、風呂とトイレ別だ、やった」

 風呂はなんと檜風呂だったぜ。余裕で足伸ばして入れるでかさだ。いや本当に檜なのかしらんが。
 もちろんシャワーと蛇口もついてる。
 んっ?洗濯機ドラム式で全自動のやつじゃねえのこれ!?
 洗面所の棚にはタオルと、魔法の袋が何個かある、なんだこれ、あっ中身石鹸だ、体洗う用と頭洗う用が500㎏づつパンパンに入ってる。
 こっちの袋は歯みがき粉と歯ブラシ?
 歯みがき粉まであんのか、至れり尽くせりだなあ。
 ていうかトイレも温水出るやつじゃねえか!!やった!!
 ファンタジー世界なのに家電のクオリティーが高いっ!!

 ……でもこの部屋換気とか排水とかどうなってんだろう?


 他はベッド二つづつ置いてある部屋が二つに何もない部屋が二つ、ベッドある方は客間かな。
 キッチン横の部屋は、
 ん?なんか棚がたくさんあって、魔法の袋が20個位ある部屋だ。
 あっこれ食糧庫か、米に醤油、味噌に砂糖、味醂に酢、料理酒まであんのか。調味料はそれぞれ袋1つづつで500㎏。
 米にいたっては袋五つ分で2500㎏もあるわ。
 後は色んな聞いたことないような野菜の入ってる袋に。
 肉、魚、あ、こっちはパンか。他にも色々あるなあ。
 それに冷蔵庫がある。あれ?でも冷蔵庫要るのか?
 魔法の袋って確か時間止まって物腐んないんじゃ無かったか?
 氷作ったり冷やしたりの為かな?

 後はロフトだな、気になるわ、ロフト。
 梯子的なのじゃなくて、ちょっとした階段ってのが高級感丸出しで実にいいな。
 ニヤニヤしながら登っていく。

「畳ーっ!!畳出ちゃったー!!」

 ロフトの上は十畳位の和室になってた。カーペット敷いてありこたつがある。
 こたつかよっ。超テンションが上がるわー。
 あっ、下のフローリングのとこのテーブルも、こたつにできるやつだったのかな?

 テンション上がりすぎて、意味もなく階段を走り降りて確かめに行く。下のテーブルもこたつにできるやつだ。やったぜ。

 その後は意味もなく水の入ってない風呂の中で横になったり、客間のベッドでごろごろしたりして、一通り堪能してからフローリングのローソファに体を投げ出した。

 はあ、まじで至れり尽くせりすぎだなあ。
 何で田中くんここまでしてくれるんだろう。

 そして、まあ最初から目についてたが、リビングのテーブルの上に置いてある魔法の袋に手を伸ばす。
 外で拾ったのと同じやつだ。
 ネタバレ食らって田中くんの手紙が入ってること知ってるからなあ。
 こんなに凄いもの用意してくれたのに、田中くんの狙い通り驚いてやれなかった。ちょっと罪悪感を感じるよ。
 さて、ん?手紙以外にもなんか入ってるな。
 頭の中に浮かぶ魔法の袋の内容に首を傾げる。

魔法の袋収納スペース 10、3㎏/500㎏

内容物
手紙×1
大防御のペンダント×1
不思議な地図×1
懐中時計×1
英爵位証明メダル×1
最上級体力回復薬×10
最上級状態異常回復薬×10
ゴーレム召喚の銀杖×1
サイカ国紫貨×10
サイカ国金貨×100
サイカ国銀貨×50
サイカ国大銅貨×50
サイカ国中銅貨×50
サイカ国小銅貨×50
サイカ国浅貨×50

おお、なんか色々入ってる……。

まあ、まずは手紙からかな。普通の白い便箋から中に入ってる手紙を取り出す。





ヤスダさんへ


おはようこんにちはこんばんは、この手紙を読んでいるということは無事にこの部屋がヤスダさんの手に渡ったようですね。

アパートの隣部屋の田中です。
びっくりしました?
びっくりしましたよね。絶対ドッキリ大成功してますよね。
まさかヤスダさんの隣の部屋に住んでる男が出てくるとは思わなかったでしょう?w
異世界転移ですしね。あの変な木の柱やたらチカチカしてうるさかったでしょう。



「……ごめん田中くん、ぜんぜんびっくりしなかったわ」
「あと柱古くなって折れてたぜ」



僕はこの世界に来た時は、部屋ごと畑のど真ん中に落ちて来ました。
何故か僕の部屋壁が無くてですね。横から丸見えでどうしようかと思いました。
僕の部屋昔のコント番組みたいでしたよ。
外からエロゲーのポスター丸見えだし、地獄でしたね、はずかし地獄でした。
しかも大事なフィギュア達は散らばるし泥だらけになるし、ホント最悪でした。
でも一番最悪だったのは、畑に落ちて畑ダメにしたから賠償金払えみたいになりまして、その後奴隷にさせられかけたことですかね。
泣く泣くフィギュアを手放しました。
こんな精巧な作りの人形見たことないとかなんとかで、高値で売れましてね。
まあ、僕でもこの世界に慣れるのにかなり苦労したんだから。枕変わっただけで寝れなくなる、軟弱ボンボンのヤスダさんでは3日位で心折れるでしょうからね、色々用意しといてあげましたよ。


「うるせえよ、でも多分その通りだよありがとう……ていうか、この世界奴隷制度あんのか……あと君の部屋の壁俺の部屋にくっついてるわ」



で、まあ凄い色々ありまして、ホントにホントに凄い色々あったんですよ。
どうやら転移物のテンプレ通りチート的な能力ありましてね。
それで冒険者やったり、国なんか救っちゃったり、挙げ句勇者なんて呼ばれちゃったりなんかして。
このオタクの僕がですよ?w
信じられます?
しかも嫁、三人できましたwwwwwwww



「……あのやろうハーレム作りやがった。草生やしてんの腹立つな」



そして、悪の巨人を崇拝する邪教なんかと戦ったりなんかしてましてね。
今手紙書いてる現在、大体転移してから3年位たってます。
邪教を撲滅するために今も戦ってるんですけど。
結局大本の巨人倒さないと話にならないだろうってことで、今色んな国と協力して準備してる最中なんですよ。



「なんか不穏な流れになってきたな」
「巨人って確か、不可抗力で人大勢死んじゃって罪悪感を感じすぎたからサラリーマンやめて仏門に入ったやつだろ。おいおい、邪教とかって何よ」



まあ、そんなことどうだっていいですよね。
ヤスダさんには、巨人とか言われてもわからないでしょうし。
とりあえず袋に入れといた手紙以外の物の話しましょうか。



「あっ!話変えやがった!知ってるっつの!!君より核心的な事実握ってるっつうの!!」
「やめろっ早まるな田中くん、その巨人ただの元サラリーマンだぞっ」



まず入れておいたお金の話しましょう。
この世界の貨幣はゴルトと言います。Gって書かれてゴルトです。
ゴールドじゃないですよ、ゴルトです。
1ゴルト1円位の換算でいいと思います。

1ゴルト=浅貨
10ゴルト=小銅貨
100ゴルト=中銅貨
1000ゴルト=大銅貨
10000ゴルト=銀貨
100000ゴルト=金貨
1000000ゴルト=紫貨

て感じです。つまりその袋には二千万以上入ってます。
ヤスダさんもう結構金持ちです。



「ああ、もう完全に別の話になっちゃった。つうか二千万?マジで?……でも二千年前の金なんだよなこれ、使えんのかな?」



あとペンダントですが、それは絶対につけて下さいね。
大防御のペンダントといって、守備力をかなり上げてくれるアイテムなのですぐつけて下さい。
あと杖はゴーレム召喚の銀杖と言いまして、なんとファンタジー定番のゴーレムが出てきて、代わりに戦ってくれます。
レベルが低い内はそれで戦って下さい。
ゴーレム使ってもちゃんとレベル上がりますから。

あとこの世界の魔物は、倒すと煙になってアイテム落とすという、グロ要素0の精神的にかなり優しい仕様です。安心して倒して下さい。

ついでにその付近に、銀色のプラチナソウルって言う名前の魔物を何匹か放してあるので、杖とペンダントを駆使してレベル上げするといいですよ。
その魔物はぶっちゃけはぐれたメタルです。ちょっと改良して偽ガン○ムにしときました。

今ヤスダさんがいる場所って、ぐるっと周りに小川が流れてる200メートルくらいの島みたいになってましてね。
その小川聖なる力が宿ってるんで、プラチナソウルはそこから逃げられないんですよ。
魔物は聖なる力でダメージ受けるので、あいつらは川渡れなくて飛ぶ能力とかもないからそこから出れません。
しかも小川のせいで他の魔物も基本入ってこれないし、近づかないというボーナスフィールド仕様です。
作るのにすごい苦労しました。



「はぐれたメタルの上にガン○ムのパチモンなのか、要素乗っけすぎじゃね」
「ていうか、ここって田中くん特製のレベル上げ地域だったのか……わざわざ作ってくれたとは」



だからもし手紙書いてる今の時代から300年とか経ってたら、プラチナソウルの数増えてるかもしれません。
あいつらほんと滅多に増えないけど、ごくたまに分裂するんで。
もしそうだったら、ガンガンレベル上げちゃって下さい。
この世界だとレベルは生命線ですから。
それと繰り返しますが、ペンダントは絶対つけて下さいね。
はぐれたメタルなんですぐ逃げますが、あまりにも弱いステータス持ってる人に対しては、すんごくたまに突っ込んで来ますからね。
ほんとにすんごくたまになんですが。
変なとこでハズレくじ引くヤスダさんはかなり危ない気がします。
レベル1じゃあ下手すると即死します。
ペンダントつけてれば安心。

あと急激にレベル上がると、めっちゃ体痛いんで気をつけて下さい。
痛いの嫌いなヤスダさんなら気を失っちゃうかも?w
でもこれは我慢するしかないですね。



「田中くんの懸念通りに昨日殺されかけたわ、そして田中くんの予想通り気を失いましたよ」

 なるほどあれはレベルアップしたせいだったのか。


 次いでこの世界のレベルに関する記述も書いてある。
 レベルの認識は大体某竜の冒険ゲーム換算で良いらしい。

 レベル1~4   一般人
 レベル5~9   けっこうな強者
 レベル10~15 町一番の強者
 レベル16~20 周辺地域一番の強者
 レベル21~25 国有数の強者
 レベル26~30 国一番の強者
 レベル30~40 勇者の仲間クラス
 レベル40~99 勇者魔王クラス

 こんな感じらしい。
 あのゲーム大体レベル40位で神みたいな設定の魔王倒すもんな。
 ゲーム初期の鋼の剣持ってる頃の主人公でも一般的にはもはや手のつけられないレベルの猛者なんだろうしな。

 その次は不思議な地図とやらの記述だ。
 歩いた場所が地図に記入されていく、お決まりのアレらしい。
 今は世界地図って感じで、色んな大陸の輪郭と白点しか載ってないが、その場所を通過すると細部まで書き込まれていくらしい。白い点は村や町なんかだそうだ。
 スマホのように指でくいっとやるとズームアップなんかもできる優れものだと書いてある。

 英爵位証明メダルは、勇者の血筋だと証明する身分証みたいなやつらしい。
 俺は年下だった田中くんの子孫になるのか。
 貴族関連で問題おきたら使え、目立ちたくないなら出すな、と書いてある。
 なんだろう、黄門様の印籠的な匂いがするな。

 後は世界共通語はまんま日本語らしい。
 巨人が人類を絶滅しかけてから、残り少ない人類を集めて国を作り建て直したのが日本人の転移者だったらしい。
 それ以前にも日本人の転移者が作った国なんかもあり、日本語は普及してたが、その出来事で完全に世界的な共通語になったらしい。
 この世界日本人しか来ないらしいからな。
 言葉通じるようで、ありがたい限りだ。

 部屋の本棚に入ってる漫画以外のいくつかの本は、お決まりの魔導書ってやつらしい。
 なんと表紙に手を当てるだけで魔法が覚えられる仕様だとか書いてあってテンション上がったが、残念ながら地球人には使えないようだ。
 田中くんが調べた所、過去に転移してきた地球人は皆魔法が使えずMP0だったんだそうだ。代わりに尋常じゃないスキルを皆持ってたとか。
 ちなみにこの部屋の昭明とか、他の魔法の道具もみんなMPを消費して使うらしいがMPがない場合、HPを消費する仕様だそうだ。
 この世界の魔法使いも、MP切れたらヒーヒー言いながらHP消費しつつ魔法使うんだとか。
 そうか、HP減ってたのか、気をつけんとな。
 部屋の昭明程度じゃ百回つけたり消したりしてもHPは1も減らないが、杖でゴーレム使う際は一気に召喚するとレベル1のHPではくらっと来るから魔法薬使ったりして注意しろと赤線引いて書いてある。
 この部屋の換気とか排水も魔法の力だそうだ。
 亜空間がどうとか書いてある……真面目に考えたら怖そうだから止めよう。

 その他にはドラゴン倒してなんちゃらだとか、オーガがなんちゃらだとか、なんかチャラい奴の武勇伝語りみたいの始まってちょっとだけイライラしながら読み進める。







――――まあ、この辺りでヤスダさんに伝えたいことは、全部伝わったかな?
僕これから最終決戦ってやつなので、もしかしたら死んじゃうかもしれませんからこれだけは伝えておきますね。
まあ死ぬつもりなんて全くないんですけど。




僕は昔からアニメやゲームが好きでした。
その上人見知りでろくに他人と話もしませんでした。
そんな子供ですからね。やっぱり標的になりますよね。
僕はいじめられっ子でした。
小学校中学校はずっといじめられてました。
まあドラマに出てくるような、苛酷なやつじゃなかったですけどね。
無視されたり、上履きがすぐ見つかるとこに隠される程度のやつですね。

高校は地元から離れた所に通いましたから、いじめられなくなりました。
結局いじめられたせいなのか、余計に人付き合いが苦手になってしまって、高校は勿論大学でもろくに友達も作れず、家にこもって漫画やアニメばっか見てました。
結局少しも馴染めなくて大学も行かなくなり、中退してしまいました。大学中退したことはヤスダさんにも話しましたよね。
面と向かって言われたことはありませんでしたが、正直親にも見放されてました。
それからお金を稼ぐためにアニメショップに勤務しました。DVDや漫画に囲まれてれば、つらい現実を見なくてもすむから。もくもくと仕事してただ同じ毎日を過ごしてました。
いつからかゲームやアニメは楽しむ道具じゃなく、ただ現実から逃げるための道具になってました。
子供の頃には、あんなに楽しくてキラキラしていたすばらしいモノだったのにね。
もうね、今だから言いますけど、正直死んじゃおうかなって思ってたんですよ。
アニメすら楽しめなくなるなら、死んだ方がましだと思って。
まあヤスダさんも知っての通り、僕自殺なんてする根性無いからただ頭で考えるだけなんですけどw

そんな時ですかね。
アパートの隣部屋の妙な人に話掛けられたのはw

「君ゲーム詳しいよね?あのやたらモンスター狩るゲームやってる?」
「ちょっと俺が講師やってる塾生がマジで生意気だから、がっつり教えてくんない?」
「ゲームマスターになってガキどもを見下したいんだ」

とか言ってねw
最初なんだこいつって思いましたよ。
目がマジで怖かったから、つい「はい」って言っちゃったんですよね。
しかもその内ゲームにドハマリして、塾生関係なくなってたしw
それから何かにつけて人んちにゲームとか漫画借りにくるようになるしw
ヤスダさん見てたら、そういやゲームって面白いんだよなって、また思えるようになりました。

なんかモン○ンのお礼だ。とか言ってちょっとしょっぱいけど妙に旨いしょうが焼き作って食わせてくれましたよね。w
なにこの人料理できんの?って意外性と共に味わったあの味は未だに忘れられません。


そんなことあった日から何ヵ月か後に、急にとんでもないこと言い出しましたよね。

「うちの塾生が最近怪我したり、制服破れたりして塾にくるんだ」
「他の塾生にそれとなく聞いたら学校でいじめられてるらしいんだけど、恥ずかしいんだか何だか親にも黙ってるらしい、こういうのってデリケートな問題だから、とりあえず生徒居ない放課後に学校の先生達と話し合いに行きたいんだ」

とか言われて、すげえなこの人。て思ってたら

「俺びびりだから一緒に来てくれ」

とか言い出すんだもん。
ええ!?なんで僕が!?って心の底から思いました。
いや、今でも思ってるんですけどねw
なんで僕だったんだ?ってw

しかも意気揚々と学校乗り込んで行っても、教師達お役所仕事丸出しで、いじめなんてない、ふざけあってるだけだの一点ばりですしね。
あれヤスダさんが塾の講師だからってのもあったんでしょうね。塾でだけしか子供の面倒見ない連中になにがわかる!?みたいなね。

最初は結構強気で文句言ってたけど、結局ヤスダさん教師達の反論に丸め込まれて、最後ちょっと半泣きでしたよねw

学校出た途端、地元の名士のお祖父さんに電話して泣きついたヤスダさんの勇姿は未だに目に焼き付いてますw

こいつ権力振りかざしやがった!?って思いました。

その数日後に、お役所仕事の教師達が冷や汗だらだらでアパートに来て、ヤスダさんに謝ってる姿は忘れられません。

いじめられてた塾生のところに、いじめてた生徒達とその親が揃って謝りに来たって話も忘れられません。

クリスマスに予定なんてないぜ!!
って開きなおって、二人で何故かレトロゲーを徹夜でやってた日を忘れません。

ペーパードライバー気味のヤスダさんが、金持ちの親に買って貰ったマニュアルの中古車で、調子に乗った顔でドライブいこうぜっ、とか言って発進したとたんギア操作間違って変な音出して1メートルも進まずに車壊して、なんとも言えない顔をしてアパートの部屋に帰るヤスダさんの背中を、そして僕はあまりの面白さに家に帰ったあと笑い転げたことは今も忘れません。

僕の職場に急に来て、アニメショップの独特の雰囲気にのまれて、何故かてんぱって同じ単行本二冊買って行ったヤスダさんの背中を僕は忘れません。


いじめられていた塾生が、ヤスダさんのアパートで他の塾生と一緒に、怪我なんて1つもない一切影のない笑顔でゲームをやってた光景は、そしていじめられてた過去の僕の魂を救ってくれたことは、絶対に忘れることはありません。


僕は、僕の人生はあなたに救われました。
本当に、本当にありがとうございました。
僕がヤスダさんにできる恩返しは、こんな些細なことしか出来ないけれど、どうかこの世界でも幸せに過ごして下さい。
さようなら。お元気で。


田中正晴




「……田中くん……」
「……なんか、目から汗が出るわ……」
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社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
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 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

努力しても平均的だった俺が異世界召喚された結果

ひむよ
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全てが平均的な少年、山田 涼太。 その少年は努力してもしなくても、何をしても平均的だった。そして少年は中学2年生の時に努力することをやめた。 そのまま成長していき、高校2年生になったとき、あることが起こり少年は全てが異常へと変わった。 それは───異世界召喚だ。 異世界に召喚されたことによって少年は、自分のステータスを確認できるようになった。すぐに確認してみるとその他の欄に平均的1と平均的2というものがあり、それは0歳の時に入手していた! 少年は名前からして自分が平均的なのはこれのせいだと確信した。 だが全てが平均的と言うのは、異世界ではチートだったのだ。 これは平均的で異常な少年が自由に異世界を楽しみ、無双する話である。 hotランキング1位にのりました! ファンタジーランキングの24hポイントで1位にのりました! 人気ランキングの24hポイントで 3位にのりました!

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