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★ミナミくんの職場。
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「台銘さん、こっちが明日納品のヤツですか?」
南が図面を片手に工場の隅に置かれた出来上がったばかりの金型を示す。するとこの町工場のボスともいうべき犬族の社長が頷いた。
「ああ、明日直接引き取りにくるそうだ」
「最終チェックは終わってますか?」
「今から正鼎がやる」
「じゃあ納品書だけ先作っときますね」
「わかった。頼むな」
南は今週一番の大物が週末を前に無事完成したことにホッとしながら作業服の胸ポケットにボールペンを挿すと、工場の隅にある事務所に戻った。そこでは長年事務員として勤めている猫族の女性と、南と同じく金型製作のための製図が専門の男性社員が座っている。
「あ、南くん、社長の機嫌どうだった?」
事務員の美美が尋ねる。
「ぼちぼちみたいですよ。相変わらず表情わかりにくいですが」
「哈哈。さすが鉄の男」
まもなく五〇代半ばという美美はこの工場に勤めてすでに四半世紀を超えている。社長の若造時代もよく知っているらしく言葉にも態度にも遠慮がない。今も犬の社長のひそかなあだ名を呼んで豪快な笑い声を上げる。
「呉工業さんとこの、完成したみたいなんで納品書手伝います」
「ううん、それより金さんところの分の修正をお願いって王さんが言ってたわよ」
「そうですか……わかりました。じゃあまた今度伝票処理は教えて下さい」
「當然!」
南は自分の席に戻るとマウスを動かしスリープモードを解除した。
南が働いているのは従業員二十名弱の小さな町工場だ。主に中小企業向けに小ロットの工業用金型を製作している。そのほとんどがプレス用の金型だが、この手のものは客の細かいニーズに合わせてその都度図面を起こさないといけないので、図面を引ける者、修正作業ができる者が必須だ。おかげで専門学校で製品設計を学んだ南も拾って貰えたというわけだ。
こちらの世界は南の世界と違っているところが色々とある。
動物そっくりの獣人の存在が一番大きな差で、特に今南が住んでいるこの国では獣人が九割を占め、残り一割が元々この世界にいた人間、南のような異世界から飛ばされてきた界渡りの人間は全体の1パーセントもいるかどうかといった感じのようだ。
十年ほど前まで大きな戦争があったらしく、生活のレベルは南の世界よりもやや低い。この世界の携帯電話は南にとっては昔懐かしい二つ折りのいわゆるガラケーに似ていて、ほかにもテレビがブラウン管だったり、パソコンやソフトウェアも南が学んだ物と似てはいるが機能が足りなかったりと、ITや通信技術に関しては十年ほど遅れているようだった。
それはこの会社で使われている製図用ソフトも同様で、お陰で専門学校を卒業してから二年のブランクがあった南でもなんとか仕事についていけていた。
南は保存していた図面を呼び出し、並列しているボルト穴の内径をチェックする。この製図は精密加工機械の部品を作るための金型だと聞いているが、パーツ一つ一つがかなり小さく、少しでも位置や寸法に狂いがあれば最終的に部品を組み上げる時に大幅なズレが生じることになる。そのため重要寸法だけでなくあくまで図面との完全一致が求められていた。
南はなんとか画面に集中しようとするが、どうしても意識はふらふらとよそへ彷徨っていく。その行き先はそう、アルバイト先の店長である呉凱のことだ。
呉凱は『男に抱かれたい』などという理由でいきなり飛び込んできた南を雇ってくれた。なのに南はその大恩人相手にちゃんと理由はあるにせよ、二度もセックスしてしまった。大失態だ。
(……やっぱマズかったよな……店長さん、別にゲイじゃないのに無理矢理付き合わせてしまって、しかもあんな結果になっちゃって……)
南はディスプレイに隠れて海より深く落ち込んだ。
南が『自分は女を抱きたいのではなく、男に抱かれたいのだ』と気づいたのはいつの頃だっただろうか。きっかけも覚えてはいないけれど、我慢できずに自分の指で後腔を弄り始め、そのあまりの快感に気がつけばすっかりハマってしまっていた。
専門学校を卒業してキャバクラで働き始め、寮扱いの安アパートで一人暮らしを始めたのをきっかけにこっそり通販でローターを買い、自分の指では届かない場所も余すことなく突いて抉って慰めて、そして南はとうとう気づいてしまった。自分が欲しいのは、もっともっと硬くて太くて熱いモノ。こんなニセモノのオモチャなのではなく、カウパーを滴らせながらそそり勃ち、ビクビクと脈打つ本物の男根なのだと。
かといって実際にゲイバーだのハッテン場だのに行ったり出会い系アプリを使って相手を探す度胸もなく、後ろめたさと罪悪感に苛まれながら必死におのれの性癖を隠し続けていた。
結局南は男とも女とも付き合うことなく童貞処女のまま死んでしまい、この世界に飛ばされてきた。
右も左もわからぬ異世界に飛ばされて呆然としていた南を気の毒に思った人が、街の教会が運営しているという救護院に連れて行ってくれた。そこにボランティアで来ていた美美さんの紹介でこの会社に拾って貰えたのは本当にラッキーだったと今でも思う。
そこから一年弱真面目に働いたのが認められてなんとか戸籍も取れ、間借りし続けていた会社の空き部屋から自分のアパートへ移る事ができ、自前の携帯を持つこともできた。そしてこの世界では有名な風俗街の五華路でゲイ専門のソープランドの求人情報を見つけたのだ。
南は別に真面目なお付き合いだとか人生のパートナーだとかを望んでいるわけではない。ただ後腐れなく、南の欲しい時に何も聞かずただ黙って尻を犯してくれる男が欲しかった。そんなある意味身勝手な願望に、本番アリのソープ嬢という職業はうってつけのように思えたのだ。だがそんな南の下心は予想外の形で裏切られた。
(…………ほんと、なんでなんだろう)
南はマウスを握りながらため息をつく。
あんなに欲しかったペニスに散々奥を突かれても、ちっとも感じない。気持ちよくなれない。もちろん何も感じないわけではないが、それでもあの時南が味わった快感と比べれば自慰にも劣るものだった。
そう、この自分が生まれ育った仕事場で作業服に身を包み、獣人の社員たちのすぐ傍でパソコンに向かっている今でさえも、南の頭を甘くとろかすあの恐ろしいほどの快楽。
(気持ちが良くて、気持ちが良くて)
滑らかな毛皮で覆われた太い指が、南のひくひくと物欲しげに震える後腔に潜り込んできて中の熟れきった媚肉をかき回す。
(お腹ん中、火が点いたみたいに熱くて熱くて)
口に含んだ男根が、南の舌と唇がもたらす愛撫に血管を浮き立たせ、そそり勃つ。そして先走りとローションとでぐちゃぐちゃになったアナルを押し開き、狭い肉壁をぐりぐりとこじ開けて奥の奥まで突き上げる。
(尻から中に、そんで頭のてっぺんまで)
雷に打たれたかのようなあの衝撃と、全てを呑み込む巨大な波のようなうねり。
(頭も身体も、どろどろに溶けてしまうみたいに)
その瞬間を思い出しただけで南の股間は熱を帯び、スラックスの中がきつくなる。
(ああ、またあんな風に気持ちよくなりたいなぁ……)
恥も外聞もなけなしのプライドも、何もかもが吹っ飛んでしまうほど気持ちがよくて燃え上がれる極上のセックス。そんな麻薬のようなものを、南は知ってしまった。
我慢できずに南は席を立つ。そしてさりげない風を装って奥にある従業員用のトイレに駆け込んだ。ベルトを外し、スラックスとボクサーの中からすでに大きくなっているペニスを取り出す。
「ん……っ、はっ、ふ、う……っ」
目を閉じ、ひたすら自分のモノを扱く。けれどその手の動きが激しくなればなるほど後ろが疼いて南は絶望のため息を吐いた。
(ほしい……っ、うしろに大きいのねじ込まれて、ずんずん奥まで突かれたいぃ……っ)
以前は自分の指やオモチャで後ろを弄りながらペニスを扱けば問題なくイけていた。なのにあの店に勤め始めてからそれじゃちっとも満足できない。例え射精できても腹の奥の熱は燻り続けて、いくら自分で慰めても欲求不満は募るばかりだ。
(なんで……っ? ホンモノのアレの味を知っちゃったから? だから指じゃダメなのか……っ?)
狭いトイレの個室でドアにもたれ、片手で竿を扱きもう片方の手で先端をこね回しながら南は考える。
(でも俺、店でも全然イけないのに。お客さんに後ろ、挿れてもらっても、全然気持ちよくなれないのに、なんで……っ?)
とうとう我慢できずにペニスを掴んだまま向きを変え、ドアに頬を押し付けて身体を支える。
陰嚢を揉み、とうとう後ろに指を伸ばしてもやっぱりイけない。何かが物足りない。じんじんと疼く後腔とやり場のない熱にくらくらと揺れる脳を持て余して南の目に涙が滲む。こんな時いつも思い出すのはそう、南が唯一知っているあの暴力的なまでの快感だった。
(……てんちょーさんは、どうやってたっけ……?)
あの指はどうやって南のアナルを開き、中を弄っていただろうか。どんな風に苛めて、愛撫して、どんな風に責めてきただろうか。そしてあのペニス。硬くて熱くて長い幹と膨れ上がった亀頭で、どんな風に南の中を貫き、掻き回しただろうか。
(ああ、アレ、もういっぺんほしい、あんなふうに、いっぱい、いっぱい……っ)
途端に南を苛む熱はより燃え上がり、すでに男の味を知った肉壷は中を弄る南の指にうねうねと絡みつく。
(ほしい、ほしい、てんちょーさんの、ゆびとか、アレとか……っ)
「て、てんちょぉ……さん……っ、てん、ちょ、さ……ぁ……っ」
知らず、南の口からその名が漏れる。
(きもちよくなりたい……っ、アタマもカラダもどろどろになって、なんにも考えられなくなるくらいぐちゃぐちゃになってイきたい……っ)
相手は誰でもいい。気持ちよくなりたい。でも呉凱はゲイじゃない。客でもない。南の店長さんだ。
「ふっ、あっ、ん……っ」
ドアに頬と上半身を押し付けたままちゅくちゅくと指を抜き挿しして、南はひたすら快感を追う。
(てんちょーさんがいけないんだ、てんちょーさんが上手すぎるから、あのひとのせいで俺、イけなくなっちゃったんだ)
「んっ、っふ、んん……っ」
とうとう待ち望んだ絶頂が近づいてくる。南は震える手でトイレットペーパーを巻き取り、ペニスに被せる。そしてぎゅっと目を閉じ息を詰めてその中に精液を吐き出した。
「………………っ、………………はっ、」
肩で激しく息をしながら南はべたり、と便座に座り込む。そして自分の精液と腸液に濡れた手を見下ろして呆然とする。
(か…………会社で、ヤっちゃった…………)
「…………ああ、もう!」
もうこれは末期だ。このままでは本当にマズイ。
(…………なんとかしなきゃ……)
ぼんやりと天井を見上げて、南は次の出勤日までの日数を頭の中で数えた。
南が図面を片手に工場の隅に置かれた出来上がったばかりの金型を示す。するとこの町工場のボスともいうべき犬族の社長が頷いた。
「ああ、明日直接引き取りにくるそうだ」
「最終チェックは終わってますか?」
「今から正鼎がやる」
「じゃあ納品書だけ先作っときますね」
「わかった。頼むな」
南は今週一番の大物が週末を前に無事完成したことにホッとしながら作業服の胸ポケットにボールペンを挿すと、工場の隅にある事務所に戻った。そこでは長年事務員として勤めている猫族の女性と、南と同じく金型製作のための製図が専門の男性社員が座っている。
「あ、南くん、社長の機嫌どうだった?」
事務員の美美が尋ねる。
「ぼちぼちみたいですよ。相変わらず表情わかりにくいですが」
「哈哈。さすが鉄の男」
まもなく五〇代半ばという美美はこの工場に勤めてすでに四半世紀を超えている。社長の若造時代もよく知っているらしく言葉にも態度にも遠慮がない。今も犬の社長のひそかなあだ名を呼んで豪快な笑い声を上げる。
「呉工業さんとこの、完成したみたいなんで納品書手伝います」
「ううん、それより金さんところの分の修正をお願いって王さんが言ってたわよ」
「そうですか……わかりました。じゃあまた今度伝票処理は教えて下さい」
「當然!」
南は自分の席に戻るとマウスを動かしスリープモードを解除した。
南が働いているのは従業員二十名弱の小さな町工場だ。主に中小企業向けに小ロットの工業用金型を製作している。そのほとんどがプレス用の金型だが、この手のものは客の細かいニーズに合わせてその都度図面を起こさないといけないので、図面を引ける者、修正作業ができる者が必須だ。おかげで専門学校で製品設計を学んだ南も拾って貰えたというわけだ。
こちらの世界は南の世界と違っているところが色々とある。
動物そっくりの獣人の存在が一番大きな差で、特に今南が住んでいるこの国では獣人が九割を占め、残り一割が元々この世界にいた人間、南のような異世界から飛ばされてきた界渡りの人間は全体の1パーセントもいるかどうかといった感じのようだ。
十年ほど前まで大きな戦争があったらしく、生活のレベルは南の世界よりもやや低い。この世界の携帯電話は南にとっては昔懐かしい二つ折りのいわゆるガラケーに似ていて、ほかにもテレビがブラウン管だったり、パソコンやソフトウェアも南が学んだ物と似てはいるが機能が足りなかったりと、ITや通信技術に関しては十年ほど遅れているようだった。
それはこの会社で使われている製図用ソフトも同様で、お陰で専門学校を卒業してから二年のブランクがあった南でもなんとか仕事についていけていた。
南は保存していた図面を呼び出し、並列しているボルト穴の内径をチェックする。この製図は精密加工機械の部品を作るための金型だと聞いているが、パーツ一つ一つがかなり小さく、少しでも位置や寸法に狂いがあれば最終的に部品を組み上げる時に大幅なズレが生じることになる。そのため重要寸法だけでなくあくまで図面との完全一致が求められていた。
南はなんとか画面に集中しようとするが、どうしても意識はふらふらとよそへ彷徨っていく。その行き先はそう、アルバイト先の店長である呉凱のことだ。
呉凱は『男に抱かれたい』などという理由でいきなり飛び込んできた南を雇ってくれた。なのに南はその大恩人相手にちゃんと理由はあるにせよ、二度もセックスしてしまった。大失態だ。
(……やっぱマズかったよな……店長さん、別にゲイじゃないのに無理矢理付き合わせてしまって、しかもあんな結果になっちゃって……)
南はディスプレイに隠れて海より深く落ち込んだ。
南が『自分は女を抱きたいのではなく、男に抱かれたいのだ』と気づいたのはいつの頃だっただろうか。きっかけも覚えてはいないけれど、我慢できずに自分の指で後腔を弄り始め、そのあまりの快感に気がつけばすっかりハマってしまっていた。
専門学校を卒業してキャバクラで働き始め、寮扱いの安アパートで一人暮らしを始めたのをきっかけにこっそり通販でローターを買い、自分の指では届かない場所も余すことなく突いて抉って慰めて、そして南はとうとう気づいてしまった。自分が欲しいのは、もっともっと硬くて太くて熱いモノ。こんなニセモノのオモチャなのではなく、カウパーを滴らせながらそそり勃ち、ビクビクと脈打つ本物の男根なのだと。
かといって実際にゲイバーだのハッテン場だのに行ったり出会い系アプリを使って相手を探す度胸もなく、後ろめたさと罪悪感に苛まれながら必死におのれの性癖を隠し続けていた。
結局南は男とも女とも付き合うことなく童貞処女のまま死んでしまい、この世界に飛ばされてきた。
右も左もわからぬ異世界に飛ばされて呆然としていた南を気の毒に思った人が、街の教会が運営しているという救護院に連れて行ってくれた。そこにボランティアで来ていた美美さんの紹介でこの会社に拾って貰えたのは本当にラッキーだったと今でも思う。
そこから一年弱真面目に働いたのが認められてなんとか戸籍も取れ、間借りし続けていた会社の空き部屋から自分のアパートへ移る事ができ、自前の携帯を持つこともできた。そしてこの世界では有名な風俗街の五華路でゲイ専門のソープランドの求人情報を見つけたのだ。
南は別に真面目なお付き合いだとか人生のパートナーだとかを望んでいるわけではない。ただ後腐れなく、南の欲しい時に何も聞かずただ黙って尻を犯してくれる男が欲しかった。そんなある意味身勝手な願望に、本番アリのソープ嬢という職業はうってつけのように思えたのだ。だがそんな南の下心は予想外の形で裏切られた。
(…………ほんと、なんでなんだろう)
南はマウスを握りながらため息をつく。
あんなに欲しかったペニスに散々奥を突かれても、ちっとも感じない。気持ちよくなれない。もちろん何も感じないわけではないが、それでもあの時南が味わった快感と比べれば自慰にも劣るものだった。
そう、この自分が生まれ育った仕事場で作業服に身を包み、獣人の社員たちのすぐ傍でパソコンに向かっている今でさえも、南の頭を甘くとろかすあの恐ろしいほどの快楽。
(気持ちが良くて、気持ちが良くて)
滑らかな毛皮で覆われた太い指が、南のひくひくと物欲しげに震える後腔に潜り込んできて中の熟れきった媚肉をかき回す。
(お腹ん中、火が点いたみたいに熱くて熱くて)
口に含んだ男根が、南の舌と唇がもたらす愛撫に血管を浮き立たせ、そそり勃つ。そして先走りとローションとでぐちゃぐちゃになったアナルを押し開き、狭い肉壁をぐりぐりとこじ開けて奥の奥まで突き上げる。
(尻から中に、そんで頭のてっぺんまで)
雷に打たれたかのようなあの衝撃と、全てを呑み込む巨大な波のようなうねり。
(頭も身体も、どろどろに溶けてしまうみたいに)
その瞬間を思い出しただけで南の股間は熱を帯び、スラックスの中がきつくなる。
(ああ、またあんな風に気持ちよくなりたいなぁ……)
恥も外聞もなけなしのプライドも、何もかもが吹っ飛んでしまうほど気持ちがよくて燃え上がれる極上のセックス。そんな麻薬のようなものを、南は知ってしまった。
我慢できずに南は席を立つ。そしてさりげない風を装って奥にある従業員用のトイレに駆け込んだ。ベルトを外し、スラックスとボクサーの中からすでに大きくなっているペニスを取り出す。
「ん……っ、はっ、ふ、う……っ」
目を閉じ、ひたすら自分のモノを扱く。けれどその手の動きが激しくなればなるほど後ろが疼いて南は絶望のため息を吐いた。
(ほしい……っ、うしろに大きいのねじ込まれて、ずんずん奥まで突かれたいぃ……っ)
以前は自分の指やオモチャで後ろを弄りながらペニスを扱けば問題なくイけていた。なのにあの店に勤め始めてからそれじゃちっとも満足できない。例え射精できても腹の奥の熱は燻り続けて、いくら自分で慰めても欲求不満は募るばかりだ。
(なんで……っ? ホンモノのアレの味を知っちゃったから? だから指じゃダメなのか……っ?)
狭いトイレの個室でドアにもたれ、片手で竿を扱きもう片方の手で先端をこね回しながら南は考える。
(でも俺、店でも全然イけないのに。お客さんに後ろ、挿れてもらっても、全然気持ちよくなれないのに、なんで……っ?)
とうとう我慢できずにペニスを掴んだまま向きを変え、ドアに頬を押し付けて身体を支える。
陰嚢を揉み、とうとう後ろに指を伸ばしてもやっぱりイけない。何かが物足りない。じんじんと疼く後腔とやり場のない熱にくらくらと揺れる脳を持て余して南の目に涙が滲む。こんな時いつも思い出すのはそう、南が唯一知っているあの暴力的なまでの快感だった。
(……てんちょーさんは、どうやってたっけ……?)
あの指はどうやって南のアナルを開き、中を弄っていただろうか。どんな風に苛めて、愛撫して、どんな風に責めてきただろうか。そしてあのペニス。硬くて熱くて長い幹と膨れ上がった亀頭で、どんな風に南の中を貫き、掻き回しただろうか。
(ああ、アレ、もういっぺんほしい、あんなふうに、いっぱい、いっぱい……っ)
途端に南を苛む熱はより燃え上がり、すでに男の味を知った肉壷は中を弄る南の指にうねうねと絡みつく。
(ほしい、ほしい、てんちょーさんの、ゆびとか、アレとか……っ)
「て、てんちょぉ……さん……っ、てん、ちょ、さ……ぁ……っ」
知らず、南の口からその名が漏れる。
(きもちよくなりたい……っ、アタマもカラダもどろどろになって、なんにも考えられなくなるくらいぐちゃぐちゃになってイきたい……っ)
相手は誰でもいい。気持ちよくなりたい。でも呉凱はゲイじゃない。客でもない。南の店長さんだ。
「ふっ、あっ、ん……っ」
ドアに頬と上半身を押し付けたままちゅくちゅくと指を抜き挿しして、南はひたすら快感を追う。
(てんちょーさんがいけないんだ、てんちょーさんが上手すぎるから、あのひとのせいで俺、イけなくなっちゃったんだ)
「んっ、っふ、んん……っ」
とうとう待ち望んだ絶頂が近づいてくる。南は震える手でトイレットペーパーを巻き取り、ペニスに被せる。そしてぎゅっと目を閉じ息を詰めてその中に精液を吐き出した。
「………………っ、………………はっ、」
肩で激しく息をしながら南はべたり、と便座に座り込む。そして自分の精液と腸液に濡れた手を見下ろして呆然とする。
(か…………会社で、ヤっちゃった…………)
「…………ああ、もう!」
もうこれは末期だ。このままでは本当にマズイ。
(…………なんとかしなきゃ……)
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