上 下
31 / 49

★ミナミくんの大失敗。

しおりを挟む

「あっ、ひっ、う、うーかい、さ、ん……っ」
「なん、だよ……っ」

 フッ、フッ、と短く荒い呉凱の呼吸がかすかに聞こえてくる。南は腰を掴んでいる呉凱のふさふさとした大きな手を押さえて言われた通り奥からずらそうとするが、手にも腰にもまったく力が入らない。

「はっ、い……っ、うーかい、さ……んっ、あ、あ、どーしよ……っ」

 頭がぐらぐら沸騰してバカになる。考えられることはただ一つ、

(イきたい、イきたい、あの時の、頭が吹っ飛ぶような快感を、もう一度味わいたい……っ!)
「は……っ、うんっ、すご……っ、すごい、あう、イイ……っ、きもち、いい……っ」

 とうとう南は我慢できずに声を上げた。

「んっ、はっ、あうっ、イく、イく、うーかいさん、っ、おれ、イっちゃう…………っ!」

 すると呉凱の呆れ返った声と平手が尻にピシャリと飛んでくる。

「あのなぁ! 俺の言ってること聞いてんのか!?」
「ダメ、ダメ、イく、イきたい、んっ、あっ、んぐっ!」

 南は顔をエアマットにぐりぐりとこすり付けてとうとう泣き言を吐いた。

「おねが……っ、うーかい、さ……っ、てんちょうぉ……っ、イかせて、はやく、おね、おねが……っ」
「おま……っ、ほんとに堪え性のねぇメス猫だな! オラ、イけ!」
「ん~~~~~~~~~~っつ!!!!」

 ごちゅん! と最奥を突き上げられて、南は全身を痙攣させながらイった。二度目だというのにどぷどぷと精液が溢れてマットに零れ落ちる。するとまだイっている最中のアナルからぬるっと呉凱のモノが抜け落ちてまた南は悲鳴を呑み込んだ。しばらくマットに転がったまま荒い息を繰り返していると、しばしの沈黙の後、煮えくり返ったような呉凱の低い声が降ってきた。

「…………お前な」
「…………………………い……いわないで……、てんちょおさ……ん……」

 あまりの情けなさに思わず南は両腕に顔を埋めて呟く。

「…………てめぇ、何が『ちゃんとできてるか心配だから』だ! 全然ダメじゃねぇか!」
「わかってるって! だから言わないで! わかってますから!」

 泣きたい気持ちで叫び返すと、特大のため息を吐き出した。

「お……おれ、お客さん相手の時はもうちょっと冷静にやれてるはずなんですけど……」
「けど今出来てなきゃ同じだろ」
「んぐ」

 ドがつくほどの正論に思わず言葉に詰まると、呉凱が舌打ちをするのが聞こえた。

「クソッ、わかんねぇな。お前こんなんでどうして次の指名取れんだ」
「おれだってわかんないです……」

 投げやりにそう答えると、またしても「クソッ」と、短く吐き出すような声が聞こえた。南が全身脱力してマットに倒れこんだままでいると、呉凱がゴムを外して立ち上がる気配がした。そして暖かいお湯が掛けられる。

「オラ、足開け。洗ってやるから」
「…………ぜ、ぜんぜんちから、はいんない……」
「甘えたこと抜かすな。ケツ上げろ」
「う゛う゛~~~~~~~~」

 まだマットに倒れこんだままの南の太腿を呉凱がぐいっと押す。そして驚くほど丁寧な手つきでローションだのなんだのでドロドロの南の身体を洗い流してくれた。

「ミナミ、ここは片しといてやるから向こうで服着てろ」

 まだお湯を張ったままだった湯船の栓を抜いて呉凱が言う。

「す……すみませ……ん……よろしく、です…………」

 その言葉に甘えて南は這うようにして風呂場を出ると、ベッドの上に自分の服と財布が置かれているのに気づいた。どうやら呉凱がロッカーから持ってきてくれていたらしい。それを見て南は呉凱の目端の利きように感心しつつ、己のバカさ加減にほとほと呆れ返った。

(ちゃんとできてるかどうか、店長さんに見てもらうつもりが……)

 一人でサカって呉凱の身体で自慰まがいのことをした挙句、最後は結局呉凱に全部お任せ状態で一人でイきまくってしまった。

(これじゃどんだけ店長さんが親切でも怒るよな、ふつう……)

 南はベッドに座り込み、両足を抱え込んで大きく息を吐き出しながら思った。

(……………でも、すっげぇ……きもち、よかったぁ…………)
「じゃなくて!」
「なんだよ、独り言かジジくせぇ」

 南が思わず叫ぶと、片づけを終えた呉凱が風呂場から出てきた。

「オラ、支度できたか」
「あ、はい、なんとか…………」

 南はのろのろと着替えを済ますと、どっこいしょ、と勢いをつけて立ち上がる。

「ここはもういいから、お前もう帰れ」
「う……すみま…………せ…………」

 呉凱が言うのに曖昧な返事を返し、財布や携帯電話を尻ポケットに突っ込んだ。そして今度はベッドを整え始めた呉凱の背中に向かって言う。

「……疲れてるとこ、ほんと、すみませんでした……」
「あ? 何殊勝気なこと言ってんだよ、気持ち悪ィ」
「きも……って、ひど……、いえ、でも、ほんと……」

 南が言葉に詰まると、呉凱が眉を上げて言った。

「あのな、俺はここの責任者でお前は被雇用者。仕事に関することで俺がお前に付き合うのは当たり前だろ。だから悪いとか考えんな」
「…………はい、すみませんでした……」

 すると呉凱がため息をついて、また「クソッ」と呟いた。そして乱暴な手つきでベッドサイドの灰皿を引き寄せると財布の横に置かれていたくしゃくしゃのパッケージから煙草を一本取り出して火をつけた。そして深々と煙を吐き出す。ミナミはただぼーっとそれを見ていたが、呉凱は苦虫を噛み潰したような顔でしばらく天井を見上げていたかと思うと、急に煙草をもみ消して言った。

「オラ、着替え終わったんなら出るぞ。タクシー捕まえてやるから早く帰れ」
「あ、はい…………」

 狭い廊下を通って裏口から二人で出る。そして表通りへと歩きながら呉凱が言った。

「俺、売上金預けてこねぇといけねぇから、そこのコンビニまで付き合え。そっからならタクシーも拾いやすいから」
「それはもちろんいいですけど……」

 南はふと思いついて口を開く。

「あ、あの、店長さん、腹減ってないですか? それかビールでも」
「あ?」
「おれ、お礼に奢るので、一杯だけ付き合ってくれませんか?」

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)

藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!? 手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

【完結】俺の身体の半分は糖分で出来ている!? スイーツ男子の異世界紀行

うずみどり
BL
異世界に転移しちゃってこっちの世界は甘いものなんて全然ないしもう絶望的だ……と嘆いていた甘党男子大学生の柚木一哉(ゆのきいちや)は、自分の身体から甘い匂いがすることに気付いた。 (あれ? これは俺が大好きなみよしの豆大福の匂いでは!?) なんと一哉は気分次第で食べたことのあるスイーツの味がする身体になっていた。 甘いものなんてろくにない世界で狙われる一哉と、甘いものが嫌いなのに一哉の護衛をする黒豹獣人のロク。 二人は一哉が狙われる理由を無くす為に甘味を探す旅に出るが……。 《人物紹介》 柚木一哉(愛称チヤ、大学生19才)甘党だけど肉も好き。一人暮らしをしていたので簡単な料理は出来る。自分で作れるお菓子はクレープだけ。 女性に「ツルツルなのはちょっと引くわね。男はやっぱりモサモサしてないと」と言われてこちらの女性が苦手になった。 ベルモント・ロクサーン侯爵(通称ロク)黒豹の獣人。甘いものが嫌い。なので一哉の護衛に抜擢される。真っ黒い毛並みに見事なプルシアン・ブルーの瞳。 顔は黒豹そのものだが身体は二足歩行で、全身が天鵞絨のような毛に覆われている。爪と牙が鋭い。 ※)こちらはムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ※)Rが含まれる話はタイトルに記載されています。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

処理中です...