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「足を開いて」

 アリスティドは恥ずかしさを堪えて彼の肩に手を置き、ベッドについた膝を横にずらして言われた通りにする。すると無骨なゲオルグの手がその間に入り込み、ツンと尖った胸を吸いながらくちゅくちゅといやらしい音を立ててアリスティドの後腔を弄りだした。

「あっ、あっ、あっ」

 待ち望んだ場所に触れられて、アリスティドは忙しなく喘ぎ声を漏らす。ゲオルグは太い指でそこを揉んだり揺らしたりしながら、不意を突くようにくぷ、と中に押し込んだ。

「ひうっ!」

 アリスティドはゲオルグの肩に置いた拳を握りしめて顔を跳ね上げる。

「ひっ、ふ、あ、あ、や……っ」

 ゲオルグが身体を伸ばしてアリスティドの反り返る喉に舌を這わせる。そしてぬるぬると指を慣らすように出し入れしながら少しずつ指を増やしていった。

「ひあっ、あっ、や、ソコ、う、ひっ!!」

 その時、ゲオルグの指があの恐ろしく敏感な膨らみに触れて、強烈な快感が脊髄を駆け上がる。

「ひゃ、ひっ、や、いやだ……っ、ソコ、あ、あんっ!」
「どうして、優しくここを撫でられるの大好きでしょう?」
「んっ! そ、そんなこと、あ……」
「それとももっとめちゃくちゃに掻きまわして欲しいですか?」
「ひうんっ!」

 執拗にソコを指の腹で撫でられ抉られて、アリスティドはきゅうきゅうと締め付けながら我知らず腰を揺らしていた。アリスティドは淫らな声をとめどなく漏らしながら、次から次に襲いくる未知の快感をなんとか逃そうとする。だがアリスティドの身体を本人以上に知り尽くしているようなゲオルグの指がそれを許さなかった。

「んあっ、あっ、ひうっ、んんっ」

 アリスティドの性器は限界まで反り返り、だらだらと我慢汁をこぼしている。痛いほど勃起したソレに思わず手を伸ばそうとした時、その手をゲオルグに掴まれた。

「駄目ですよ」
「な、なぜだ……っ!?」
「貴方を気持ちよくさせて、何度でもイかせてあげるのは私の役目です」
「そ、そん……っひゃ、あっ」

 ぐちゅぐちゅと指で中を掻きまわされ、前立腺をいやというほど揉みしだかれてアリスティドはたまらず悲鳴を上げた。

「い、いやだ、ゲオルグ、ゆびじゃ、いやだ」

 それでは今までの『主人と奉仕委員』という関係と変わらない気がして、アリスティドは思わずそう口走る。すると驚いたように目を開いたゲオルグが、そっと指を抜いてからアリスティドの身体を引き寄せた。

「さあ、ここへ。出来ますか?」

 ゲオルグに聞かれてアリスティドは経験の浅さゆえの躊躇いを押し隠して頷く。導かれるままに彼の足をまたいで膝立ちし、彼の胸のあたりに自分の腹を押し付ける。

「自分でシャツを持ち上げてくれますか?」

 言われる通りにそろそろとシャツの裾をたくし上げるとゲオルグがあのあまり感情を映さない黒い目でじっとそこを見つめた。

「あ、あまり、みるな……っ」
「それは無理な相談だ」

 ちゅ、とまた乳首を口に含み、上目遣いにアリスティドを見上げたゲオルグが答える。

「俺は、貴方の柔らかく蕩けたココで俺のモノを咥え込んでいるところを見るのが好きなんです」
「…………っ、この……っ、!」

 そんなことを言われても腹が立つどころか一層下腹の疼きが強まって、アリスティドは悔しさと恥ずかしさに唇を噛みしめる。ゲオルグの手がシャツの下に入り込み、宥めるように優しく背中を撫でた。

「そう、ゆっくり腰を落として」
「ん……っ」

 やがて、ひくひくと脈打つ後腔にひどく熱いモノが押し当てられる。

「あ、あ、あ」

 そのままゲオルグに腰を下へ下へと引っぱられ、ガチガチに勃起した男根がゆっくりと熱く蕩ける秘肉を掻き分けて狭い隘路をこじ開けていく。

「…………ひ………………あ………………」

 アリスティドは目を見開き天を仰いで自分の中に入ってくる灼熱の肉棒を受け入れた。

「あ、きた、ゲオルグ、の、はいって、くる……っ」
「……上手ですよ、アリスティド」

 同じくらい熱を孕んだ声でゲオルグが囁く。そしてふいに奥をとん、と突かれた。

「あ、や、いやだ、ソコ……ソコ、あ、んんっ!!」

 アリスティドは震える身体を懸命に膝で支えて少しでも身体を浮かそうとするが、がっちりと腰を掴むゲオルグがそれを許さない。
 とん、とん、と軽く、やさしくソコを何度もノックされてアリスティドは擦れる声で哀願した。

「やめ……っ、たのむ、から……っ、ソコ、やめろ……って……っ!」
「でもお好きでしょう?」

 ぐちゅぐちゅと先端をねじ込まれるように動かされてまた悲鳴が漏れる。

「ほら、俺に掴まって」
「う……ん……っ」

 その言葉にアリスティドはゲオルグの首に両腕を巻きつけてしがみついた。

「ひ……っ、あっ、あっ、ひ、う……んっ!!」

 アリスティドの腰を掴むゲオルグの手の動きに合わせて、小さく何度も何度も身体を上下させる。すると奥ばかりをくぷくぷと突かれてアリスティドは文字通り泣いて喘いだ。

「あうっ、ソコ……っ、ソコ、ダメ、あうっ、んんっ、ひうっ」
「俺の腹に擦りつけて、気持ちいいですか?」
「はうっ、イイ……っ! んあっ、いっ、イイ……っ、きもち、いい……っ!」
「……可愛いですね、アリスティド」

 ゲオルグに再び唇をふさがれる。そして逞しい両腕に抱え込まれたままベッドに寝かせられて、ぐいぐいと激しく奥を突かれた。

「んっ! あっ、ゲ、ゲオル、グ、すきだ、ぜったい、ほかのだれか、を、こんなふうに、」
「……抱きません。絶対に、貴方だけです。俺のアリスティド……っ!」
「ひっ、う…………っ、ん…………っ、うぐっ、イく、イく、ゲオル、グ」

 ベッドがギシギシと軋むほど激しくゲオルグがアリスティドの身体を揺さぶり上げる。

「はあっ! あう、んっ、あ、イイ、きもち、いい、あ、んひ、んぐっ!?」

 その時、行き止まりと思っていた場所を越えてゲオルグの膨れ上がった亀頭がぐぷっ、とどこかに嵌り込んだ。

「っひ、あ゛ぅ~~~~っ!!」

 突然の脳天を突き抜けるような激しい快感にアリスティドは全身を震わせて仰け反る。視界にパチパチと光が弾けて、腹の奥底がきゅううぅううっつ! と引き絞られた。

「……っぐ……ッ!」

 同時に低く呻いたゲオルグの全身が強張り、ぶるり、と震えたかと思うとアリスティドの中にたまらなく熱い何かがぶちまけられた。身体の奥から大波のように襲い掛かるうねりに飲み込まれ、ガクガクと全身を痙攣させながらアリスティドは果てた。そして息も絶え絶えにゲオルグにしがみつく。その背中にゲオルグの腕が回され、あまりの衝撃に浮いた身体がゆっくりと布団に横たえられた。

「…………ッ、…………っは…………ぁ……っ、……ッ……っは……ッ、ハッ」

 うまく息ができずにぐったりと四肢を投げ出して喘いでいると、ゲオルグがぐい、とアリスティドを抱きしめてこめかみや目尻や額に何度も何度も口づけながら囁いた。

「可愛い、可愛いアリス、俺の美しくて愛らしい、アリスティド」
「………………さ、さすがに、アリスだの、かわいいだのは、ないだろう……」
「すみません」

 ちっとも済まなさそうには聞こえぬ声で答えるゲオルグに、アリスティドは荒い息の下で呆れかえる。
 恋は盲目とはよくも言ったものだ。この男の目に自分はどうやらとんでもなく空想めいた姿にでも映っているらしい。

 アリスティドが怠い手を上げて擦れて痛む喉を撫でると、ゲオルグが立ち上がり机に置きっぱなしにしていた飲みかけのお茶を持ってきた。そしてアリスティドの身体を支えて起こし、ティーカップを口元にあてがう。とっくに冷めて苦味の出たお茶でも、喘ぎすぎて痛む喉にはひどく心地いい。思わず、ほう、と息を吐き出したアリスティドを横から抱きしめて、ゲオルグがこめかみや髪に幾度も口づけた。

「…………お前という男は、意外にも捕まえた獲物にはこうも甘やかなのだな」
「そうですか」

 素知らぬ顔でそう答え、アリスティドの手からティーカップを受け取るついでに今度は指先にキスをする。アリスティドはもたれてもびくともしないゲオルグの胸に身体を預けてため息をついた。

「……バラしてしまったな、お前が私の奉仕委員だということを」

 そう呟くと、ゲオルグは少しばかり面白そうな顔で目を閃かす。

「まあいい。良い牽制にはなるだろう」
「そこまで俺を欲しがる物好きは貴方ぐらいだと思いますが」
「馬鹿を言え。お前はもっとお前の価値を知らねばならん」

 するとゲオルグはなぜかひどく呆れたような顔をした。だが不意にいつもの顔に戻ると、アリスティドの目を見て言った。

「先ほどの……奉仕委員の成り立ちについての話はどうか内密に」
「国が関わっているという件だろう? 当然だ」
「……さすがに察しがいい」
「そんな話を知っているお前の方が大した者だと思うがな」

 そう答えながら、確かこの男の家はかなり手広くやっている貿易商だったな、と気が付いた。

「……まあ、私のあの騒ぎを聞いていたのは評議会メンバーとあの女くらいだ。評議員たちは元より、あの厚かましい女生徒のこともアーサーとウィリアムが適当に処理してくれているだろう」

 そう言ったアリスティドを無言で見降ろすゲオルグに「何のために普段からあの二人に貸しを作っていると思ってる」と答える。だがやはり黙ってこちらを見ているゲオルグが自分を侮っているのでは、と感じて、アリスティドは鼻を鳴らした。

「いいか。お前にはみっともないところばかりを見られているが、これでも五学年生の頃から監督生を務めているんだ。どんなトラブルでもとりあえず帳尻だけは合わせる能力には自信がある」
「そうですか」
「そうだとも。とにかく奉仕委員に関してはこの先もグランディール学院一の秘密とするように私も心掛けるし、他の者にもそう言い含めておこう。お前の後任とやらの手配もやはり私に任せろ。ようはフロック教授を上手く使えばいいんだ」

 元はと言えばすべてあの寮監が分別くさくも余計な気を回してアリスティドに奉仕委員の存在を教えたりするからこんなことになったのだ。ここは一つ本人が貸した覚えがなくても借りを返してもらわねば。

 そう思案しているうちに、ここしばらくの気鬱があっさりと晴れていくのを感じる。

(なんだ、こんな簡単なことだったのか)

 案ずるより産むが易し、窮すれば通ず、陰きわまりて陽生ず。はるか東方の国のことわざらしいが、いにしえの賢人はうまい事を言うものだ。
 すべてを失う覚悟で開き直ってみれば、案外といい結果が生まれるものなのか。

(いや、今まで悩みに悩んであらゆる可能性と最悪の状況を考え抜いた上での行動だったからこそ良い目が出たのか)

 そんなことをつらつらと考えていると、不意にゲオルグがアリスティドを抱きしめる腕に力をこめてきて、アリスティドは驚いた。

「どうした、ゲオルグ」
「……いえ、ただ感心しているだけです」
「そうか。いろいろと不甲斐ない男だと心配させたかもしれんが、今後は大船に乗った気でいていいぞ。オリエンテーリングの時のような手落ちも、もう二度と起こさせん」
「好きだ、アリスティド」

 なんの脈絡もなく突然囁かれたその言葉に、一瞬心臓が止まるかと思った。やがてその愛の告白はアリスティドの中にゆっくりと深く食い込んで、どくどくと脈打つ心臓から血管に入り込み身体の隅々まで染みわたっていく。

「貴方の心も身体も、全部、食ってしまいたい」

 そう呟いたきり、骨が折れるかと思うほどアリスティドを強く抱きしめてゲオルグは黙り込んでしまった。情事の名残りに重くて怠い手をなんとか持ち上げて、その短い黒髪を梳いてやる。

「私も、お前が好きだよ」
(お前になら頭から食われて、その血や肉になり、お前を形作るすべてになってやってもいいかもしれないな)

 アリスティドが思ったことをそのまま口にすると、ゲオルグは見たことがないほど獰猛な笑みを浮かべては「本当に可愛い人だ」と呟き、再びベッドに押し倒して深く深くアリスティドに口づけた。
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