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【番外編】惚れた病は治りゃせぬ 編
愛の証明 【完】
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それから十日が経って、シャリから「おい、出来たぞ。取りに来い」と鍛冶場に呼び出された。前のと同じように朱塗りの柄に黒鉄の鍔という拵えだ。刀身は幅広で反りはやや浅い。
「刀というものは刀に模様があるのだな」
隣から覗き込みながらアドルティスが言った。
「ああ、綺麗だろ?」
らしくない俺の言葉にアドルティスが少し目を丸くする。俺だってたまにはメシが旨い、まずい以外の感想を言うことだってある。
それから俺はまだ鍛冶場に興味があるらしいアドルティスを置いて山に入った。そして冬眠し損ねた四つ足の大型魔獣を見つけて刀を抜く。早速新しい刀の試し斬りというやつだ。
何かがおかしい。そう気づいたのはその魔獣の胴体に最初の一太刀をくれてやった時だった。思わず首を傾げながら次の一閃で首ごと落とす。それからもう少し山の奥へ入って今度は長い毛で覆われた一つ目の魔獣を見つけると、その後を追いかけて右から斬りつけ、そして確信した。
◇ ◇ ◇
「おい、シャリ! なんなんだこの刀は!」
「どうかしたのか、ラカン」
山から戻るなりシャリに食って掛かった俺にアドルティスが首を傾げる。
「すごい剣幕だな。なまくらだったか」
なぜかオウグもそこにいて、シャリと三人で俺の帰りを待っていたようだった。だがシャリはしれっとした顔で言った。
「知らん」
「あんたが打った刀だろうが」
「確かにわしが打った刀だが、あんたが言おうとしていることはわしのした事じゃない」
「あァ?」
するとシャリは顎でアドルティスの方を指す。それで俺も思い出した。
「こないだ言ってた『呪』ってやつか」
「多分な」
「ラカン、何があったんだ。俺が何かいけないことをしたのか?」
アドルティスの隣にどっかりと座り、心配そうにしているやつの背中を一撫でして答えた。
「お前、シャリがこの刀を打ってる時いつも何か呟いてたよな」
「え? そうだったか?」
「無意識だったか?」
俺とシャリは目を見合わせる。
アドルティスは初めて見る刀鍛冶の仕事にいたく興味を示して、暇さえあれば外の窓や鍛冶場の隅からこの刀が出来上がるまでの様子をじっと見ていた。その集中力はこの俺が話しかけてもまったく上の空だったくらいで、だからこそシャリの仕事を見ている間いつも小さく口が動いて何かを唱えていたことに自分でも気づいていなかったのだろう。
俺は拵えてもらったばかりの刀を鞘ごと腰から抜いて床に置いた。
「この刀で今、七頭の魔獣を斬ってきた。だが最初っから最後まで斬れ味が変わらん。今のこの時期は冬を前にして魔獣も食いだめしてて肥えてる。いつもなら脂が巻いて多少なりとも斬れ味が変わるもんだが、これはそれがまったくなかった」
「そうか。それは良かった」
少しホッとしたような顔でアドルティスは頷いただけだったが、シャリとオウグはそのとんでもなさが理解できたようだ。カッと目を見開いて「よく見せろ」と言ってきた。
俺は二人の前で刀を抜く。その刀身には魔獣の血も脂もまったく残っておらず、初めと変わらぬ曇り一つない輝きを放っていた。
「こいつァ……すげぇな」
オウグが感嘆の声を漏らす。俺はオウグとシャリ、そしてアドルティスを見ながらさっきのことを話した。
「敵を見つけて刀を抜くと、柄が妙に熱くなる。魔獣を倒すたびにどんどん熱くなってくんだが、その反面刀身の方は斬ってくそばから水に濡れたように血も脂も洗い流してしかも冷たく冷えていく。そんなのは西の吟遊詩人たちが歌う御伽噺の中ぐらいでしか聞いたことがない」
するとアドルティスが「ああ、魔剣ヘリスカヤのことだな」と頷く。それを聞いてシャリが「なんだそれは」と片眉を上げた。
「古の七賢王の時代にエルフの王が造らせ、英雄スカールに与えたといわれている伝説の剣のことだ」
「そう、伝説の剣。つまり現実にはねぇってことだ」
シャリはしばらく腕組みをしてその刀身を睨みつけていたが、不意に顔を上げてアドルティスを見る。
「この刀にまじないを掛けたのはあんただ。どうやら無意識だったらしいが、俺がこの刀を鍛えてるのを見ながら、あんたはどんなことを考えてたんだ?」
アドルティスはその時のことを思い出すように少し考えてから口を開いた。
「ラカンは自分より強い魔獣と戦うのが好きだ。この刀は、これから先ラカンが一番頼りにする相棒となるだろう」
それから俺の顔を見る。
「俺やほかの仲間が傍にいれなかったとしても、この刀だけはラカンと共にいて、ラカンを助け、守ることができる。だから決して折れず、決して曇らず、どのような穢れも呪いも跳ね返す強さと美しさを持つ刀になるといい、と思って見ていた」
「つまり、あんたのその思いが呪となってこの刀に宿った、というわけさ」
シャリの言葉にアドルティスは「そうか」と頷いた。
「俺たちエルフは強さの加護を乞う時は火の精霊に、そして清めを願う時は水の精霊に祈る。シャリの言うことが本当なら、ラカンの刀には火と水の精霊が宿っているということだ。良かったな、ラカン」
そう言ってそれはそれは綺麗に微笑んだアドルティスを見て、俺は黙るしかなかった。オウグが半分呆れたような目で俺を見ている。そりゃあそうだ。
俺を想って、俺のためにこいつは伝説の魔剣に等しい力を持つとんでもないシロモノを生み出してしまったのだ。ここまで強烈でぶっとんだ愛の告白が果たして他にあるだろうか。
こいつは気づいてないようだが、俺たちがあの雪の晩に岩屋の湯治場や借りてる家でどんだけヤりまくってたか知っているやつは多分一人や二人じゃない。ヤりすぎてあいつが気絶したみたいに寝こけてる間に家の戸口に誰かが持ってきてくれたらしい酒や肉の差し入れが置いてあった。
そのせいか、ここ数日やけに熱のこもった目つきでこいつを盗み見してる若いやつらがいたが、そいつら全員鍛錬と称して俺がきっちりぶちのめしておいた。
そんなことがあった上、さらにこの刀のことが里のやつらに知れたらさすがの俺も気恥しいどころの話じゃない。
つい苦々しい顔になっていた俺を、アドルティスが少しだけ心配そうな顔で覗き込んでくる。
「やはり前の刀と違っていると使いづらいだろうか。余計なことをしてしまってすまない、ラカン」
「いや、謝ることはねぇよ」
あいつの頭をくしゃり、と撫でて言った。
「これならきっと今までよりもっと強いやつと戦える。ありがとな、アドルティス」
「そうか。それは良かった」
パッと花がほころぶように笑ったアドルティスにオウグの野郎が柄にもなく顔を赤らめて目を逸らした。そうだそうだ、お前には目の毒だ。しばらく床の蚤でも見ていろ。
シャリは相変わらずのしかめっ面しい顔で刀をパチン、と鞘に納めると、俺に差し出した。
「これでわしの仕事は終わりだ。持っていけ。そして大事にしろ」
「言われなくとも」
◇ ◇ ◇
それから俺たちはもう二月ばかり里でダラダラと過ごして冬を越し、ようやく雪が消えた頃に鬼人の里を出た。
俺の腰には二振りの刀。アドルティスの背負った背嚢には西にはない珍しい薬草だの薬石だのふかしたコメをついて作った餅なんかがたっぷりと詰められている。
この後立ち寄る町に山ほど取り置きを頼んでいた物は、多分俺が背負って帰ることになるんだろう。でもまあいい。それより早く西に戻って、この刀の真価を試せるようなとんでもなく強い魔獣がどこかにいないかリンドあたりに聞いてみなくては。
「なあ、ラカン」
街道馬車が出るイラクサの町を目指して歩きながら、アドルティスが振り返る。
「旅は楽しかったが、家に戻る道のりも楽しいものだな」
きっと今アドルティスの頭の中には、今回の旅で手に入れた薬草だの食い物だのを見せた時のラヴァンやエリザばあさんの驚いた顔でも浮かんでいるのだろう。俺だってこの斬れ味抜群で精霊の加護付きというとんでもないシロモノをレンに見せびらかすのが楽しみで仕方がないくらいだ。
「なあ、ラカン。その刀、シャリが名前をつけただろう? あれはどういう意味なんだ」
「さあ、よくはわからんが、汚れを洗い流して位を極めるとか、そういう意味らしいぜ」
「西でいう石鹸や洗剤のような名か」
「違ぇよ」
俺があいつの髪をぐしゃりとかき回すと、アドルティスは楽しそうに目を細めて笑った。
◇ ◇ ◇
それから一年後、俺はその刀で今まで誰も倒したことがない東の迷宮の主を倒し、大陸で初めて『鬼神』の称号を得た。
アドルティスと二人で旅をして手に入れた刀は、俺の両腕でも囲めないくらい太くて硬いそいつの背骨を一閃の元にぶった斬り、刃こぼれ一つしなかった。
銘を『灌頂』というその刀は、いつしか吟遊詩人たちが語る冒険譚にまで登場するようになって、魔剣ヘリスカヤと同じくらい有名になった。
その生きる伝説の刀で時々俺が、アドルティスが見つけた恐ろしく硬くて砕けない魔獣由来の薬石なんかを刻んでやってるのは秘密だ。本当に便利な刀だな、おい。
おわり
--------------------------------
【宣伝】
今朝から『ユールの祝祭』というタイトルのちょっとダークな雰囲気の【わんこ(狂)攻×王子様】なお話をアップしています。以前アップした『仲良くしたいの。』というヒグマ半獣×人間の話みたいなお話です。
いろいろと不穏なタグが並んでいますがw ラストはハッピーエンドです。
もしよかったら目次の「著者近況」もしくは「著者名」からチェックしてみて下さい。
あと『月の砂漠に銀の雨《二人の騎士と異世界の神子》』というお話が今月アルファポリス様より書籍化されることになりました。
めちゃくちゃ綺麗な表紙絵ももうすぐ解禁されるので、こちらもよかったら『近況ボード』から見てみて下さい。
よろしくお願いします!
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それから十日が経って、シャリから「おい、出来たぞ。取りに来い」と鍛冶場に呼び出された。前のと同じように朱塗りの柄に黒鉄の鍔という拵えだ。刀身は幅広で反りはやや浅い。
「刀というものは刀に模様があるのだな」
隣から覗き込みながらアドルティスが言った。
「ああ、綺麗だろ?」
らしくない俺の言葉にアドルティスが少し目を丸くする。俺だってたまにはメシが旨い、まずい以外の感想を言うことだってある。
それから俺はまだ鍛冶場に興味があるらしいアドルティスを置いて山に入った。そして冬眠し損ねた四つ足の大型魔獣を見つけて刀を抜く。早速新しい刀の試し斬りというやつだ。
何かがおかしい。そう気づいたのはその魔獣の胴体に最初の一太刀をくれてやった時だった。思わず首を傾げながら次の一閃で首ごと落とす。それからもう少し山の奥へ入って今度は長い毛で覆われた一つ目の魔獣を見つけると、その後を追いかけて右から斬りつけ、そして確信した。
◇ ◇ ◇
「おい、シャリ! なんなんだこの刀は!」
「どうかしたのか、ラカン」
山から戻るなりシャリに食って掛かった俺にアドルティスが首を傾げる。
「すごい剣幕だな。なまくらだったか」
なぜかオウグもそこにいて、シャリと三人で俺の帰りを待っていたようだった。だがシャリはしれっとした顔で言った。
「知らん」
「あんたが打った刀だろうが」
「確かにわしが打った刀だが、あんたが言おうとしていることはわしのした事じゃない」
「あァ?」
するとシャリは顎でアドルティスの方を指す。それで俺も思い出した。
「こないだ言ってた『呪』ってやつか」
「多分な」
「ラカン、何があったんだ。俺が何かいけないことをしたのか?」
アドルティスの隣にどっかりと座り、心配そうにしているやつの背中を一撫でして答えた。
「お前、シャリがこの刀を打ってる時いつも何か呟いてたよな」
「え? そうだったか?」
「無意識だったか?」
俺とシャリは目を見合わせる。
アドルティスは初めて見る刀鍛冶の仕事にいたく興味を示して、暇さえあれば外の窓や鍛冶場の隅からこの刀が出来上がるまでの様子をじっと見ていた。その集中力はこの俺が話しかけてもまったく上の空だったくらいで、だからこそシャリの仕事を見ている間いつも小さく口が動いて何かを唱えていたことに自分でも気づいていなかったのだろう。
俺は拵えてもらったばかりの刀を鞘ごと腰から抜いて床に置いた。
「この刀で今、七頭の魔獣を斬ってきた。だが最初っから最後まで斬れ味が変わらん。今のこの時期は冬を前にして魔獣も食いだめしてて肥えてる。いつもなら脂が巻いて多少なりとも斬れ味が変わるもんだが、これはそれがまったくなかった」
「そうか。それは良かった」
少しホッとしたような顔でアドルティスは頷いただけだったが、シャリとオウグはそのとんでもなさが理解できたようだ。カッと目を見開いて「よく見せろ」と言ってきた。
俺は二人の前で刀を抜く。その刀身には魔獣の血も脂もまったく残っておらず、初めと変わらぬ曇り一つない輝きを放っていた。
「こいつァ……すげぇな」
オウグが感嘆の声を漏らす。俺はオウグとシャリ、そしてアドルティスを見ながらさっきのことを話した。
「敵を見つけて刀を抜くと、柄が妙に熱くなる。魔獣を倒すたびにどんどん熱くなってくんだが、その反面刀身の方は斬ってくそばから水に濡れたように血も脂も洗い流してしかも冷たく冷えていく。そんなのは西の吟遊詩人たちが歌う御伽噺の中ぐらいでしか聞いたことがない」
するとアドルティスが「ああ、魔剣ヘリスカヤのことだな」と頷く。それを聞いてシャリが「なんだそれは」と片眉を上げた。
「古の七賢王の時代にエルフの王が造らせ、英雄スカールに与えたといわれている伝説の剣のことだ」
「そう、伝説の剣。つまり現実にはねぇってことだ」
シャリはしばらく腕組みをしてその刀身を睨みつけていたが、不意に顔を上げてアドルティスを見る。
「この刀にまじないを掛けたのはあんただ。どうやら無意識だったらしいが、俺がこの刀を鍛えてるのを見ながら、あんたはどんなことを考えてたんだ?」
アドルティスはその時のことを思い出すように少し考えてから口を開いた。
「ラカンは自分より強い魔獣と戦うのが好きだ。この刀は、これから先ラカンが一番頼りにする相棒となるだろう」
それから俺の顔を見る。
「俺やほかの仲間が傍にいれなかったとしても、この刀だけはラカンと共にいて、ラカンを助け、守ることができる。だから決して折れず、決して曇らず、どのような穢れも呪いも跳ね返す強さと美しさを持つ刀になるといい、と思って見ていた」
「つまり、あんたのその思いが呪となってこの刀に宿った、というわけさ」
シャリの言葉にアドルティスは「そうか」と頷いた。
「俺たちエルフは強さの加護を乞う時は火の精霊に、そして清めを願う時は水の精霊に祈る。シャリの言うことが本当なら、ラカンの刀には火と水の精霊が宿っているということだ。良かったな、ラカン」
そう言ってそれはそれは綺麗に微笑んだアドルティスを見て、俺は黙るしかなかった。オウグが半分呆れたような目で俺を見ている。そりゃあそうだ。
俺を想って、俺のためにこいつは伝説の魔剣に等しい力を持つとんでもないシロモノを生み出してしまったのだ。ここまで強烈でぶっとんだ愛の告白が果たして他にあるだろうか。
こいつは気づいてないようだが、俺たちがあの雪の晩に岩屋の湯治場や借りてる家でどんだけヤりまくってたか知っているやつは多分一人や二人じゃない。ヤりすぎてあいつが気絶したみたいに寝こけてる間に家の戸口に誰かが持ってきてくれたらしい酒や肉の差し入れが置いてあった。
そのせいか、ここ数日やけに熱のこもった目つきでこいつを盗み見してる若いやつらがいたが、そいつら全員鍛錬と称して俺がきっちりぶちのめしておいた。
そんなことがあった上、さらにこの刀のことが里のやつらに知れたらさすがの俺も気恥しいどころの話じゃない。
つい苦々しい顔になっていた俺を、アドルティスが少しだけ心配そうな顔で覗き込んでくる。
「やはり前の刀と違っていると使いづらいだろうか。余計なことをしてしまってすまない、ラカン」
「いや、謝ることはねぇよ」
あいつの頭をくしゃり、と撫でて言った。
「これならきっと今までよりもっと強いやつと戦える。ありがとな、アドルティス」
「そうか。それは良かった」
パッと花がほころぶように笑ったアドルティスにオウグの野郎が柄にもなく顔を赤らめて目を逸らした。そうだそうだ、お前には目の毒だ。しばらく床の蚤でも見ていろ。
シャリは相変わらずのしかめっ面しい顔で刀をパチン、と鞘に納めると、俺に差し出した。
「これでわしの仕事は終わりだ。持っていけ。そして大事にしろ」
「言われなくとも」
◇ ◇ ◇
それから俺たちはもう二月ばかり里でダラダラと過ごして冬を越し、ようやく雪が消えた頃に鬼人の里を出た。
俺の腰には二振りの刀。アドルティスの背負った背嚢には西にはない珍しい薬草だの薬石だのふかしたコメをついて作った餅なんかがたっぷりと詰められている。
この後立ち寄る町に山ほど取り置きを頼んでいた物は、多分俺が背負って帰ることになるんだろう。でもまあいい。それより早く西に戻って、この刀の真価を試せるようなとんでもなく強い魔獣がどこかにいないかリンドあたりに聞いてみなくては。
「なあ、ラカン」
街道馬車が出るイラクサの町を目指して歩きながら、アドルティスが振り返る。
「旅は楽しかったが、家に戻る道のりも楽しいものだな」
きっと今アドルティスの頭の中には、今回の旅で手に入れた薬草だの食い物だのを見せた時のラヴァンやエリザばあさんの驚いた顔でも浮かんでいるのだろう。俺だってこの斬れ味抜群で精霊の加護付きというとんでもないシロモノをレンに見せびらかすのが楽しみで仕方がないくらいだ。
「なあ、ラカン。その刀、シャリが名前をつけただろう? あれはどういう意味なんだ」
「さあ、よくはわからんが、汚れを洗い流して位を極めるとか、そういう意味らしいぜ」
「西でいう石鹸や洗剤のような名か」
「違ぇよ」
俺があいつの髪をぐしゃりとかき回すと、アドルティスは楽しそうに目を細めて笑った。
◇ ◇ ◇
それから一年後、俺はその刀で今まで誰も倒したことがない東の迷宮の主を倒し、大陸で初めて『鬼神』の称号を得た。
アドルティスと二人で旅をして手に入れた刀は、俺の両腕でも囲めないくらい太くて硬いそいつの背骨を一閃の元にぶった斬り、刃こぼれ一つしなかった。
銘を『灌頂』というその刀は、いつしか吟遊詩人たちが語る冒険譚にまで登場するようになって、魔剣ヘリスカヤと同じくらい有名になった。
その生きる伝説の刀で時々俺が、アドルティスが見つけた恐ろしく硬くて砕けない魔獣由来の薬石なんかを刻んでやってるのは秘密だ。本当に便利な刀だな、おい。
おわり
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いろいろと不穏なタグが並んでいますがw ラストはハッピーエンドです。
もしよかったら目次の「著者近況」もしくは「著者名」からチェックしてみて下さい。
あと『月の砂漠に銀の雨《二人の騎士と異世界の神子》』というお話が今月アルファポリス様より書籍化されることになりました。
めちゃくちゃ綺麗な表紙絵ももうすぐ解禁されるので、こちらもよかったら『近況ボード』から見てみて下さい。
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