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【番外編】惚れた病は治りゃせぬ 編
岩屋の湯治場(2)★
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「ラ、ラカン? どうしたんだ?」
「うるせぇ、ちょっと黙ってろ!」
借りてる家に戻るなり、熾火がのこっていた炉端の前に布団を引きずり寄せてアドルティスを下ろす。そして驚いてぽかんとしているやつの足を掴んで大きく開かせて、だいぶ残りが少なくなってる香油を思いっきりぶちまけた。そしてガッチガチに勃起した摩羅で一気に奥まで貫く。
「ひうんッツ!?」
いきなりごつん、と最奥をぶち抜かれて、アドルティスのものから押し出されるように白濁がこぼれた。すげぇ、挿れられただけでイっちまいやがった。カワイイなちくしょう。
だがこいつには悪いがここで終わらせるわけにはいかない。何が何だかわかってないって顔してハテナマーク飛ばしているやつの細い腰を両手で掴んで、俺はゆっくり、でも強く深く突き挿れ始めた。
「っひっ! あ、あうんっ! んぐ、っひんッ」
イったばかりでまだ中が痙攣しているのが嫌っていうほど伝わってくる。ビクビクしてる柔らかい肉を引きずるように何度も出し挿れするたびアドルティスが声を上げて身をよじった。
ぐぐっと亀頭を奥に押し付けてこねくり回してやると、先っぽがちゅぱちゅぱ食われてるみたいな感じがする。
「なあ、奥、すげぇ吸い付いてきてんのわかってるか?」
「……っ、わかる、わか、る……ぅ……っ」
「ほら、ちゅっ、ちゅっ、て、ほんとにいやらしいな、アディのココは」
「あ……っ、そこ……っ、すき、ラカンに、ぐりぐりされるの、すき、ィ……っ」
ちゅぐ、ぬちゅ、といやらしい音を立ててソコをくぽくぽ突いてやると、アドルティスが俺にしがみついてそりゃあかわいらしい声で「もっと、もっと」と泣き出した。そんなやつが逃げられないように肩と頭をがっちり抱え込んでドクドクと精を流し込む。これで一回目。
男の生理で一度出せば少しはスッキリするはずだろうが、ちっとも満足できやしない。
俺はアドルティスの片足を肩に担いで二人が繋がった場所を見る。赤黒くてグロテスクな俺のものがやつの小さな後腔をぬちぬちと出入りしているさまを見ながら、こいつの手足を雁字搦めにして壊れるくらい激しく犯してやりたくなる衝動を必死に堪えた。
根本までねじ込んですっかり俺の形を覚え込んだこいつの後腔をみっちりと埋め尽くす。そして奥を捏ねるように何度も何度も突きながら、泣いて喘ぐアドルティスの顎を掴んで小さな口を貪った。
足りない。足りない。何度抱いても、どれだけ突いて扱いて孕むほど精を注いでもまだ足りない。いっそ頭から全部食っちまったらこのたまらない飢えと渇きが満たされるのだろうか。
頭が沸騰してるみたいにぐらぐらする。ガチ、と牙を鳴らして、腹の底から息を吐いて、過ぎる熱をなんとか逃がす。頭の角の辺りがちりちりと熱く焼けつくようだ。
ああ、クソッ。もっと、もっと。
こうしてこいつを抱いてる最中でさえ、俺はこいつがもっと欲しくてたまらない。
その時、ふと耳にかすかにアドルティスの声が聞こえた。真っ赤になった視界にやつが下から俺を見上げている顔が映る。
「ラカン」
俺に負けず劣らず熱に浮かされたような顔をして、アドルティスが俺を見ている。
「ラカン、好きだ」
何度も何度もこいつは俺にそう言ってくる。俺をじっと見て、それからほんの少し眉を下げて微笑むのだ。
本当は俺だってわかってる。こいつがそう言う時は俺にも同じ言葉を返して欲しい時なんだと。でも俺にはそれができない。
俺は鬼人だ。今までずっと自分の欲と本能だけで生きてきた。常識も世の理なんぞも知らないし、正直愛だの恋だのいうのもわからない。
わからないものをおいそれと口にしてはいけない。
言葉は呪だ。
口に出せばそれはたちまち力を持って、言った者と聞いた者とを縛る。
いや、そんな理屈は本当はどうだっていいんだ。こいつが『それ』を欲しいと言うのなら、いくらでもやればいい。なぜなら俺だって、本当は、
「ラカン、いいんだ」
下から伸びて来たアドルティスの手が俺の顔に触れる。そしてキラキラ光る緑の目を細めて笑った。
「ラカンは、いつも俺にたくさんのものをくれている。ラカンは全然興味がないのに、不思議な色の石や綺麗な葉を持ち帰ってきてくれるし、こんな遠いところまで俺を連れて来てくれて、いろんな珍しいものを見せてくれた」
たまに下宿に行けばいつも旨いものを作ってくれる指先が尖った俺の牙をそっと撫でる。
「ラカンに出会えてよかった。ラカンが好きだ。大好き」
ああ、そうだ。俺の負けだ。俺はきっとこの先一生こいつには勝てない。
アドルティスの手を取って、俺は背中を丸めてあいつを深く深く抱きしめる。サラサラした金色の髪に顔を埋めて、この綺麗で一途で馬鹿がつくくらいかわいい生き物を死んでも逃がさぬように。でもこいつに痛い思いをさせないように、一生懸命気を付けて。
「ラカン」
静まり返った暗い家の中で、俺はなんとか今の気持ちを伝えられる言葉がないかと考える。けどやっぱり立派な言葉は何一つ口から出てこなくて、どうしようもなくて俺はまたあいつに口づける。
アドルティスの細い身体を抱き上げて俺の上に乗せて、あいつが一番好きだという向かい合わせの体位で抱きしめる。そして小さい尻を持ち上げてもういっぺん、ゆっくりと挿れてやると、アドルティスは嬉しそうに吐息を漏らして俺にしがみついてきた。
「あ……っ、すご……っ、ラカンの、おっきくて、あつい……っ」
ぬるぬると絡ませた舌と唇の間からアドルティスが呟く。
「ン……ぅごいちゃ、あっ、やだ、そこ、だめぇ……っ」
「だめじゃないだろ? ここ、めちゃくちゃヒクヒクしてるぜ」
俺のモノが入ってる下腹をぐっと押してやると、アドルティスが目を見開いて「ひんっ!」と鳴いた。
「ああ、マジにかわいいな、お前」
思わずそう呟いてあいつの開きっぱなしの口にもう一度噛みつくように口づけると、アドルティスがふにゃふにゃの顔で笑った。
「は……っ、ほ、ほん、と……っ? うれしい……っ」
「ほら、わかるだろ? お前があんまりにもエロくてかわいいから」
ぐっとさらに嵩を増した怒張をぐりぐりと奥に擦り付けてやると、アドルティスは「んっ、あっ」と小さく声を上げて俺の胸にしがみついてくる。
「っ、ラ、ラカン……っ、きもちいい、ナカ、きもちいい……っ」
「次は? どうして欲しいんだ? アディ」
「ん……っ、ず、ずっと、ながく、いっぱいしてほしい……っ」
「朝までずっとか?」
「ぁぅうっ……んっ、そ、そう……っ、ぁんっ、ぁあ……っ」
その声を聞いていると不思議とさっきまでのどうしようもない激情とか焦燥感とかが嘘みたいに凪いでいく。コトの最中にこんな気持ちになるのは初めてなんじゃないだろうか。
「アディ、かわいいな。もっと鳴けよ。声を聞かせろ」
「くぅ、っん、あ、ぁ、だめ、だめだめ、っ、いくぅ……っ」
「いいぜ? なんべんでもイかせてやるよ」
「すき……、ラカン、すき、だいすき……ぃ……っ」
俺はあいつの背中を支えてもう一度布団に寝かせてやりながら、顔を真っ赤にして切なそうに眉を顰めながらアンアンかわいく喘いでいるやつの顔を覗き込む。するとなぜか無性に何かこいつにしてやりたくなった。こいつの好きなケルアの果実を腹いっぱい食わせてやるとか。美味い酒がある店につれて行ってやるだとか。こいつが喜んで、嬉しそうに笑うような何かを。
そんでその時、ふと思いついた。
そういえば鬼人ってのはパワーだけじゃなくて持久力だってなかなかのもんだ。昔、西の岸壁に巣くっていたグエラギルスに飲まず食わずで丸二日対峙して勝ったことだってあるんだからな。
俺がアドルティスを抱くと、こいつはいつも「気持ちがいい」「もっと」と言う。だからつい俺もガンガン責めてしまって、いつもこいつはイきすぎて頭が飛んでわけわかんなくなって、最後はいつもこいつが気を失うみたいに寝落ちして終わるパターンばかりな気がする。
一度くらいはもっとちゃんとこいつが楽しめるように優しく丁寧に抱いてやったらもっと喜ぶんじゃないだろうか?
突然そう思った俺は、初見の魔獣を相手にする時みたいにきっちりアドルティスの様子を観察しながら、焦らずじっくり攻めることにした。
そしてその夜は一晩中あいつと繋がりながら、いつもみたいにあいつがぶっ飛びそうになったら緩めて、落ち着いたらまた責めて、途中で失神したりしないように何べんでも繰り返し甘イキさせてやってたら明け方あたりでやっぱりあいつは力尽きて気絶するみたいに寝てしまった。
よくはわからんが俺の勝ちだな。多分。
そう思うと俺もなぜか心の底から満足できて、涙にぬれたピンク色のほっぺにちゅっとキスしてからあいつが寒くないように布団に巻いて抱っこして俺も寝落ちした――――んだが。
「…………あァ?」
やけにアソコがぬるぬるあったかくて気持ちが良くて目を覚ましたら、アドルティスがそれはそれは美味そうにうっとりした顔で俺の摩羅をしゃぶっていた。
「おいおい、すげぇ眺めだな」
「ん……っ、だって、ラカンの、朝勃ちしてたから……」
ちゅ、ちゅ、と赤ん坊みたいに甘ったれた顔しながら竿を扱いて先っぽをちろちろ舐めている。その頭を撫でてやって「うまいか?」と聞くと「…………おいしい……」と蕩けた声が返ってきた。
耳を澄まして外の気配を探ってみればいつも以上にしんと静まり返っていて、あれからずっと雪が降り続いて外に積もっているんだろうとわかる。いくらじっとしているのが苦手な鬼人だって、こんな日に外をうろついたりはしまい。
見ればアドルティスが寝っ転がったまま腿をこすり合わせてもじもじしている。だから俺は起き上がって好きなだけ俺のモノを舐めさせてやりながら、昨晩いやっていうほど注ぎ込んでやった精液が残ったままのあいつの中をそりゃあたっぷり、ねちねちとかわいがってやった。ここじゃ時間はいくらでもあるからな。
本当に、最高に気持ちのいい目覚めだった。
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