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【番外編】恋も積もれば愛となる 編
ラカンの告白
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我ながら恐ろしく単純というか現金だとは思うが、ラカンにそう言われると本当に「ああ、大丈夫なんだ」という気になった。
ああ、やっぱりラカンはすごい。朝からずっと抱えていた焦りや不安や悩みが、ラカンのたったひと言であっさり吹っ飛んでしまう。
やっぱり俺はラカンが好きだ。ものすごく好き。
と、そこで思い出した。
「……なあ、ラカン」
「なんだよ」
「少し聞きたいんだが」
「おう」
「……俺たちはさっきから一体なにをしてるんだ?」
「………………は?」
あ、ラカンの顔。ノームがどんぐりを食らったような、ってのはこういう顔なんだろうな。ラカンがこんな顔をするなんてものすごく貴重だ。
「だから、ええと……」
ちょっと躊躇いつつも、ここでちゃんと聞いておかなきゃどうしようもない。俺は唾を飲み込んで腹をくくった。
「なんで俺はさっきからあんたに、その、尻に触られたり……い、挿れられたりしてるんだ?」
というよりもなぜラカンは俺にそんなことをしたがるの?
そう尋ねると、ラカンは今度こそ本当に絶句した。俺はすごくいたたまれない気持ちのまま、くしゃくしゃになった敷布を弄って誤魔化す。するとラカンが心底驚いたような顔で言った。
「…………そうか、今のお前はそこからしてわかんないのか」
「…………ああ、そうだ」
するといきなりラカンが俺の顔を両手で挟んで引っ張った。
「うひゃっ!?」
俺がラカンの胸に倒れこむと、意外にもあっさり俺の重たいはずの身体を支えて、抱え込むみたいにしてラカンが言った。
「お前、俺のこと好きなんだろう?」
「…………ッ!?」
まずい。今ものすごく顔が赤くなってる。どうして。どうしてバレてるんだ。
思わず頭ぐるぐるしてたらラカンがまたニヤリと笑った。
「俺もだ」
「…………は?」
「俺もお前に惚れてる。だから今こういうことしてるんだ。わかるか?」
間違いなく、このとんでもない事尽くしの今日一日の中で一番の、まさにドラゴンブレス級の衝撃だった。
ラカン、おれのことすきなの?
それじゃ、コレって……
「そうだ。俺とお前は今ものすごくいやらしい、めちゃくちゃエロいセックスをしてるんだよ」
せっくす。
え、おれとラカンがせっくす?
「お前、気持ちよかっただろう? さっき俺にナカ擦られて」
…………確かに、そうだけど。つまり俺とラカンは……
「お前が俺に好きだって言ってきて、それからもう四年か? 身体はすっかり慣れてるはずだぜ? 一緒にいる時は毎晩欠かさず口かこっちで俺の摩羅咥え込んでるからな、お前」
「ひうんっ!」
突然、後ろに触れられて思わず身体が跳ねる。
「な? 俺のこと大好きだろう、お前のココ」
「ひゃっ、あうっ! や、まっ、まって、ま……ひん!」
ぐちゅぐちゅと指で掻きまわされて、気持ちがよすぎて下腹がきゅううっ、と引き攣れた。
「やっ、あっ、ラカ、ラカン……っ!」
「ほら、言ってみろよ。俺に尻の中嬲られるの大好きだ、って。気持ちがいいって」
す、すごい、すごい、本当に気持ちがいい……っ!
濡れた粘膜が節立った太いラカンの指に歓喜して絡みついてるのが自分でもよくわかる。なのにラカンはそれきり指を抜いてしまった。そして宥めるようにぽんぽん、と俺の背中を叩く。
「ラ……ラカン……?」
なんでやめちゃうの……? とはさすがに聞けずに黙って見上げると、ラカンが器用に片方の眉を上げて言った。
「身体はどうであれ、お前自身はしたことがないんだろう? だったら無理することはねぇよ」
………………え、そうなの? 今のラカンってこんな紳士なの?
こう言ってはなんだが死ぬほど驚いた。
以前ラカンから聞いた鬼人の三大欲求は『強いヤツと戦いたい』『そいつに勝ちたい』で、最後に食欲と性欲がセットになって来るらしい。そしてそれ以外のことは割とどうでもいいのだとか。
なのにラカンは俺がそういうことをしたことがないし慣れていないってわかった途端、するのを止めた。え、でもあんた、今すごくその気になってたんじゃないのか? だって、さっきからどうしても視界の端で見てしまうラカンの股間の逸物はバキバキに血管浮きたたせてそそり勃ったままだ。
そんなに気を遣わなくていいのに。だって三十二歳の俺はラカンと付き合ってるんだろう? だから俺のこの身体は簡単にラカンを受け入れられるし、触られただけでこんなに敏感に反応してるんだろう? だったら別に、このまま抱………………と、そこで気が付いた。
え?
俺、ラカンと付き合ってるの?
は? 四年前に俺の方から好きって言った?
それでラカンも俺のことが好き?????
「~~~~~~~~ッツ!?」
「おい、どうしたんだよ。いきなり顔真っ赤にして」
我慢できずに正座したままベッドに突っ伏した俺の背中をラカンが撫でる。
ま、待って待って待って待って。好きって、好きって言ったの? 俺が? そんな度胸が俺にあったなんてまったく知らなかったぞ!?
俺は手で口を覆ったまま、なんとか顔を上げてラカンを見る。
記憶よりももっと男臭くて、どこかにぶつけたのか鼻がちょっと曲がってて傷も増えてて、そして昔よりちょっとだけ眉間の皴が減ってて俺にニッて笑ってくれるラカンの顔が目の前にある。
「……本当に……?」
「あ?」
「本当に、俺とラカンは付き合ってるの…………?」
「ああ」
ラカンがなんでもないって顔で頷く。
「俺もここに住んでるくらいだからな」
なんだって? すごい新情報だ。あ、でも。
パッと浮かんだ怖い想像に思わず硬直した俺にすぐに気がついて、ラカンがほんの少し口角を上げる。
「ああ、エリザばあさんのことか? 大丈夫、ちょっと足腰は弱ってるが元気だぜ? 今はラヴァン婆さんのとこで向こうの孫娘夫婦と一緒に暮らしてるんだ」
「ラヴァンと?」
「二年前にお前、半年ぐらい俺と東方に行ってたんだよ。その間エリザばあさん一人じゃ心配だからってラヴァンのとこに行って、結局そのまま向こうで一緒に店やったりなんだりして楽しくやってるそうだぜ」
「…………そ、そうなのか」
良かった。ホッとした。
思わず胸をなでおろす俺にラカンが「今じゃエリザばあさんの作る石鹸だの茶だのはラヴァンの店の看板商品らしいぞ」と言って笑った。
ああ、なんだかこのラカンは本当によく笑うな。笑うと言ってもちょっと目を細めて口角が、くっ、て上がる感じの笑い方だけど。でも歳を重ねてますます度胸と覚悟が決まってそうなラカンにはよく似合ってると思う。
………………というか、本当にカッコいいな。元からカッコよかったけど大人の余裕というか、こういうちょっとした違いを見せつけられるたびに、なんだかとても落ち着かなくなってしまう。
うわ、どうしよう。なんだか恥ずかしくてまともに顔が見られない。
思わず俯いて顔を逸らした俺を、ラカンが屈んで覗き込んでくる。
「なんだ、今度はどうした」
「…………いや、その…………」
「おい、思ってることはちゃんと言えといつも言ってるだろう」
「ラ、ラカンはますますカッコよくなったな、と思って」
「………………」
あれ、ラカンが黙り込んでしまった。おかしなことを言ってしまっただろうか。するとラカンが突然俺を抱き上げて膝に乗せると、俺の眉間にキスをしながら「そういう二十歳のお前はすごくかわいいぜ」と言った。
…………っか、かわ…………っ!?
「お、とんがり耳まで赤くなったな」
「い、いや、でも、今の俺はもう三十超えてるわけだし」
「顔の作りの話じゃないぞ? こうして見ると昔のお前って結構なんでも顔に出てたんだな。気づかなかったわ」
そう言って今度は俺の口にちゅ、って口づけながら睫毛が重なりそうなほど近くで目を合わせてくる。
「…………なあ、アドルティス」
「なんだ?」
「やっぱりお前を抱きたい。いいか?」
まるで剥き出しの心臓をぐっと掴まれたような気分だった。
嘘みたいだ。ラカンが俺を欲しがってる。俺を抱きたがってる。え、すごい、すごいな。
正直、俺は今までラカンより他に好きになった相手はいないし、当然ながら誰ともそういう意味で触れ合ったことがない。
元々エルフは肉体的な接触に重きを置かない種族で、そのせいで例え夫婦の契りを交わしても一人くらいしか子どもはできないことがほとんどなくらいだ。
だからラカンに欲しがられるのはとても嬉しいけれど、何をどうしたらいいのかわからないし、正直怖い。
でも、俺がこのラカンに出会えたのは奇跡みたいなものだ。だから今断ったらきっと後悔すると思った。
「………ああ、構わない」
「ふはっ、相変わらず頭がまともな時はかわいくない物言いだな」
かわいくない。そうか。一瞬落ち込みそうになったが、元々人付き合いの経験も浅く変わり者と言われ続けた俺がかわいいはずないのだから仕方がない。
けれどラカンがまた俺の唇に触れるだけのキスをして言った。
「いや、違うな。そういうところもかわいい」
抱きしめられた拍子に尻のあたりにものすごく熱くて硬いモノが当たる。思わずびくっと肩を揺らすと、不意にラカンの目の奥が光って俺は息を呑んだ。
「なんせ初めてだもんな。怖いよな」
ニヤリと笑ったラカンが、俺の耳元で囁いた。
「大丈夫。優しく、ゆっくり、たっぷり可愛がってやる」
その低くて擦れた声に背筋が震える。でもそれは怖いからじゃない。ラカンは昔から意地が悪くて口も悪かったけど、でも、だからってこんな。
「な? 俺と気持ちいいことしようぜ? アディ」
そう言うラカンを見て、ああ、これが本気になった鬼の顔なんだ、って。
すっかり頭が馬鹿になってしまった世間知らずの森のエルフの俺はもう、ただ黙って頷くしかなかった。
ああ、やっぱりラカンはすごい。朝からずっと抱えていた焦りや不安や悩みが、ラカンのたったひと言であっさり吹っ飛んでしまう。
やっぱり俺はラカンが好きだ。ものすごく好き。
と、そこで思い出した。
「……なあ、ラカン」
「なんだよ」
「少し聞きたいんだが」
「おう」
「……俺たちはさっきから一体なにをしてるんだ?」
「………………は?」
あ、ラカンの顔。ノームがどんぐりを食らったような、ってのはこういう顔なんだろうな。ラカンがこんな顔をするなんてものすごく貴重だ。
「だから、ええと……」
ちょっと躊躇いつつも、ここでちゃんと聞いておかなきゃどうしようもない。俺は唾を飲み込んで腹をくくった。
「なんで俺はさっきからあんたに、その、尻に触られたり……い、挿れられたりしてるんだ?」
というよりもなぜラカンは俺にそんなことをしたがるの?
そう尋ねると、ラカンは今度こそ本当に絶句した。俺はすごくいたたまれない気持ちのまま、くしゃくしゃになった敷布を弄って誤魔化す。するとラカンが心底驚いたような顔で言った。
「…………そうか、今のお前はそこからしてわかんないのか」
「…………ああ、そうだ」
するといきなりラカンが俺の顔を両手で挟んで引っ張った。
「うひゃっ!?」
俺がラカンの胸に倒れこむと、意外にもあっさり俺の重たいはずの身体を支えて、抱え込むみたいにしてラカンが言った。
「お前、俺のこと好きなんだろう?」
「…………ッ!?」
まずい。今ものすごく顔が赤くなってる。どうして。どうしてバレてるんだ。
思わず頭ぐるぐるしてたらラカンがまたニヤリと笑った。
「俺もだ」
「…………は?」
「俺もお前に惚れてる。だから今こういうことしてるんだ。わかるか?」
間違いなく、このとんでもない事尽くしの今日一日の中で一番の、まさにドラゴンブレス級の衝撃だった。
ラカン、おれのことすきなの?
それじゃ、コレって……
「そうだ。俺とお前は今ものすごくいやらしい、めちゃくちゃエロいセックスをしてるんだよ」
せっくす。
え、おれとラカンがせっくす?
「お前、気持ちよかっただろう? さっき俺にナカ擦られて」
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「ひうんっ!」
突然、後ろに触れられて思わず身体が跳ねる。
「な? 俺のこと大好きだろう、お前のココ」
「ひゃっ、あうっ! や、まっ、まって、ま……ひん!」
ぐちゅぐちゅと指で掻きまわされて、気持ちがよすぎて下腹がきゅううっ、と引き攣れた。
「やっ、あっ、ラカ、ラカン……っ!」
「ほら、言ってみろよ。俺に尻の中嬲られるの大好きだ、って。気持ちがいいって」
す、すごい、すごい、本当に気持ちがいい……っ!
濡れた粘膜が節立った太いラカンの指に歓喜して絡みついてるのが自分でもよくわかる。なのにラカンはそれきり指を抜いてしまった。そして宥めるようにぽんぽん、と俺の背中を叩く。
「ラ……ラカン……?」
なんでやめちゃうの……? とはさすがに聞けずに黙って見上げると、ラカンが器用に片方の眉を上げて言った。
「身体はどうであれ、お前自身はしたことがないんだろう? だったら無理することはねぇよ」
………………え、そうなの? 今のラカンってこんな紳士なの?
こう言ってはなんだが死ぬほど驚いた。
以前ラカンから聞いた鬼人の三大欲求は『強いヤツと戦いたい』『そいつに勝ちたい』で、最後に食欲と性欲がセットになって来るらしい。そしてそれ以外のことは割とどうでもいいのだとか。
なのにラカンは俺がそういうことをしたことがないし慣れていないってわかった途端、するのを止めた。え、でもあんた、今すごくその気になってたんじゃないのか? だって、さっきからどうしても視界の端で見てしまうラカンの股間の逸物はバキバキに血管浮きたたせてそそり勃ったままだ。
そんなに気を遣わなくていいのに。だって三十二歳の俺はラカンと付き合ってるんだろう? だから俺のこの身体は簡単にラカンを受け入れられるし、触られただけでこんなに敏感に反応してるんだろう? だったら別に、このまま抱………………と、そこで気が付いた。
え?
俺、ラカンと付き合ってるの?
は? 四年前に俺の方から好きって言った?
それでラカンも俺のことが好き?????
「~~~~~~~~ッツ!?」
「おい、どうしたんだよ。いきなり顔真っ赤にして」
我慢できずに正座したままベッドに突っ伏した俺の背中をラカンが撫でる。
ま、待って待って待って待って。好きって、好きって言ったの? 俺が? そんな度胸が俺にあったなんてまったく知らなかったぞ!?
俺は手で口を覆ったまま、なんとか顔を上げてラカンを見る。
記憶よりももっと男臭くて、どこかにぶつけたのか鼻がちょっと曲がってて傷も増えてて、そして昔よりちょっとだけ眉間の皴が減ってて俺にニッて笑ってくれるラカンの顔が目の前にある。
「……本当に……?」
「あ?」
「本当に、俺とラカンは付き合ってるの…………?」
「ああ」
ラカンがなんでもないって顔で頷く。
「俺もここに住んでるくらいだからな」
なんだって? すごい新情報だ。あ、でも。
パッと浮かんだ怖い想像に思わず硬直した俺にすぐに気がついて、ラカンがほんの少し口角を上げる。
「ああ、エリザばあさんのことか? 大丈夫、ちょっと足腰は弱ってるが元気だぜ? 今はラヴァン婆さんのとこで向こうの孫娘夫婦と一緒に暮らしてるんだ」
「ラヴァンと?」
「二年前にお前、半年ぐらい俺と東方に行ってたんだよ。その間エリザばあさん一人じゃ心配だからってラヴァンのとこに行って、結局そのまま向こうで一緒に店やったりなんだりして楽しくやってるそうだぜ」
「…………そ、そうなのか」
良かった。ホッとした。
思わず胸をなでおろす俺にラカンが「今じゃエリザばあさんの作る石鹸だの茶だのはラヴァンの店の看板商品らしいぞ」と言って笑った。
ああ、なんだかこのラカンは本当によく笑うな。笑うと言ってもちょっと目を細めて口角が、くっ、て上がる感じの笑い方だけど。でも歳を重ねてますます度胸と覚悟が決まってそうなラカンにはよく似合ってると思う。
………………というか、本当にカッコいいな。元からカッコよかったけど大人の余裕というか、こういうちょっとした違いを見せつけられるたびに、なんだかとても落ち着かなくなってしまう。
うわ、どうしよう。なんだか恥ずかしくてまともに顔が見られない。
思わず俯いて顔を逸らした俺を、ラカンが屈んで覗き込んでくる。
「なんだ、今度はどうした」
「…………いや、その…………」
「おい、思ってることはちゃんと言えといつも言ってるだろう」
「ラ、ラカンはますますカッコよくなったな、と思って」
「………………」
あれ、ラカンが黙り込んでしまった。おかしなことを言ってしまっただろうか。するとラカンが突然俺を抱き上げて膝に乗せると、俺の眉間にキスをしながら「そういう二十歳のお前はすごくかわいいぜ」と言った。
…………っか、かわ…………っ!?
「お、とんがり耳まで赤くなったな」
「い、いや、でも、今の俺はもう三十超えてるわけだし」
「顔の作りの話じゃないぞ? こうして見ると昔のお前って結構なんでも顔に出てたんだな。気づかなかったわ」
そう言って今度は俺の口にちゅ、って口づけながら睫毛が重なりそうなほど近くで目を合わせてくる。
「…………なあ、アドルティス」
「なんだ?」
「やっぱりお前を抱きたい。いいか?」
まるで剥き出しの心臓をぐっと掴まれたような気分だった。
嘘みたいだ。ラカンが俺を欲しがってる。俺を抱きたがってる。え、すごい、すごいな。
正直、俺は今までラカンより他に好きになった相手はいないし、当然ながら誰ともそういう意味で触れ合ったことがない。
元々エルフは肉体的な接触に重きを置かない種族で、そのせいで例え夫婦の契りを交わしても一人くらいしか子どもはできないことがほとんどなくらいだ。
だからラカンに欲しがられるのはとても嬉しいけれど、何をどうしたらいいのかわからないし、正直怖い。
でも、俺がこのラカンに出会えたのは奇跡みたいなものだ。だから今断ったらきっと後悔すると思った。
「………ああ、構わない」
「ふはっ、相変わらず頭がまともな時はかわいくない物言いだな」
かわいくない。そうか。一瞬落ち込みそうになったが、元々人付き合いの経験も浅く変わり者と言われ続けた俺がかわいいはずないのだから仕方がない。
けれどラカンがまた俺の唇に触れるだけのキスをして言った。
「いや、違うな。そういうところもかわいい」
抱きしめられた拍子に尻のあたりにものすごく熱くて硬いモノが当たる。思わずびくっと肩を揺らすと、不意にラカンの目の奥が光って俺は息を呑んだ。
「なんせ初めてだもんな。怖いよな」
ニヤリと笑ったラカンが、俺の耳元で囁いた。
「大丈夫。優しく、ゆっくり、たっぷり可愛がってやる」
その低くて擦れた声に背筋が震える。でもそれは怖いからじゃない。ラカンは昔から意地が悪くて口も悪かったけど、でも、だからってこんな。
「な? 俺と気持ちいいことしようぜ? アディ」
そう言うラカンを見て、ああ、これが本気になった鬼の顔なんだ、って。
すっかり頭が馬鹿になってしまった世間知らずの森のエルフの俺はもう、ただ黙って頷くしかなかった。
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