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【番外編】恋も積もれば愛となる 編
謎の行為 ★
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「何やってんだよ、アドルティス」
「うひゃあぁぁあああっつ!!」
と叫びそうになって「う」で止めた。恐々振り向くと、すぐ後ろに上半身裸のラカンが覗き込んでいる。思わず黒いソレを握り締めて硬直していると、そんな俺を見てラカンがニヤリと笑った。
「なんだよ、俺がいる時はコレはいらないだろう?」
「へ?」
「それとも今日はオモチャを使って欲しいのか?」
「は?」
ラカンが何を言ってるのかさっぱりわからない。おもちゃ? え、だってコレって、どう見ても男の……アレの形だぞ? そんなおもちゃがあったら子どもを持つ親全員にぶん殴られるんじゃないだろうか。
ポカンと馬鹿みたいに口を開けて見上げていると、ラカンがなんだかすごく悪党じみた笑みを浮かべた。
「早く行こうぜ。あとそこ、敷布を重ねておけよ」
そう言ってラカンはベッドの上に置いてた謎の細長い棒と香油らしき物が入った瓶だけを持って寝室から出て行く。俺はやっぱり呆然とそれを見送ることしかできなかった。
…………とりあえず、風呂行くか。
なにかもう、だいぶ頭が考えることを拒否してる気がする。
俺は手に持った恐ろしげなものから目を逸らしつつそれを引き出しの奥深くに仕舞うと、ラカンの後を追って浴室へと向かった。
二階へ上がる階段の下にある扉を開けると狭い物置兼脱衣所があって、作りつけの棚にはエリザさんお手製のハーブ入りの石鹸や湯上り用のリネンなどが置いてある。でもそこにラカンはいなくて、さらにその奥にある浴室から湯が流れる音が聞こえてきた。
俺が来たのがわかったのか、扉の向こうから「早く脱いで来いよ」と呼ばれる。
…………やっぱり俺も一緒に入るのか。でもなんで?
正直、この家の浴室は狭い。俺とラカン二人も入ったらかなり窮屈だろう。あ、もしかして実は背中かどこかを怪我していて、傷を洗うのを手伝って欲しいとか? そうなのか? ハッとそう思い当たって急いで服を脱いだ。
ああそうだ、それに今の俺のこともちゃんと話した方がいいだろうか。
見た目は三十二歳の俺だけど、でも本当は俺はまだ二十歳で、だから今のラカンのことやこの十二年の間に起きたことも何一つわからないんだ、って。
でも信じてもらえるんだろうか、と俺は思わず手を止める。
嘘ばっかり言うなって言われたらどうしよう。俺を騙すつもりか、って怒らせてしまったら。
「アドルティス?」
「い、今行く」
まるで心臓を握りつぶすような不安を振り切るように、俺は浴室への扉を開けた。
「お、来たな。遅ぇよ」
「……すまなかった」
なんとなく謝って、俺は後ろ手で扉を閉める。だが目線はラカンに釘付けだった。はぁ…………すごい…………ラカンの裸体をこんな間近で見るなんて初めてだけど、本当に凄すぎる……。
森を出て一年近く経つのにちっとも日焼けしないで白いままの俺とは真逆の赤銅色の身体はものすごく大きくて、すぐ傍に立っているとじりじりとラカンの熱が直接肌に伝わってきそうな感じがする。
ラカンが石鹸で自分の身体を擦るたびに肩から背中にかけての筋肉や腰が動いて、つい目線が吸い寄せられる。身体にかかった湯が筋肉の溝を伝い落ちていくのを見ているだけでなぜか顔や胸や腹の奥が熱っぽく火照ってきた。なんなんだ、一体。
それにしてもやっぱり戦うために生まれてきたなんて言われる種族で寿命も長いせいか、四十すぎと言っても全然歳をとった感じがしないな…………って、俺はどうなんだろう。老けて緩んだりしたところはないだろうか。
つい気になって自分の腕や胸元を見たがよくわからなかった。
その時、ふいにラカンが振り向いて言った。
「ほら来いよ、洗ってやる」
え。
目が点になった俺に構わず、ラカンが俺の腕をぐいっと引き寄せた。思わずよろけて目の前のラカンの身体にしがみつきそうになる。するとラカンがそれを抱きとめて、湯気で俺の顔に張りつく髪を掻き上げた。その動作がものすごく自然であまりにも慣れた雰囲気なのに驚きすぎてとっさに声も出ない。
瞬きするのも忘れてラカンの顔を見ていたら、突然泡だらけの大きな手で尻から腰を撫で上げられた。
「ひゃうんっ!?」
な、なんだ今の甲高い声は!? ってまさか俺の声か? いやいや嘘だろう、なんでこんな声……っ。
あまりに恥ずかしくて口を押さえようとしたけれど、ラカンに抱きついてるような今の態勢でそれはできず、顔を見られないようにとっさにラカンの胸に埋める。けれどそのせいで俺の身体がラカンの身体にぴったりと密着してしまって焦った。
え、なにこの体勢。
慌てて身体を離そうとする俺の背中をまたラカンの手が撫でてきて、またしても俺の身体がビクン! と跳ねる。
「相変わらずお前は俺の手が大好きだな」
え、それはもちろんそうだろう。と言ってもラカンの手に触ったり触られたりする機会なんてあるわけないから、あくまで想像というか妄想の中での話だけど。
でもそんなことを考えているうちにラカンの手は俺の身体中を撫でたり這ったり揉んだりし始めて、俺はみっともない声を必死で噛み殺そうとした。
「んっ、う……んっ、ん………………あっ」
それでも、鼻や喉から漏れる甘ったれたような声と吐息がどうしても抑えきれない。
「んっ、っふ、ん…………っ」
「なんだよ、声殺すなよ」
ラカンはそう言いながら俺の手を取って壁の方を向かせると、上にある湯の注ぎ口を握らせた。
「じゃあ、中洗うからな。じっとしとけよ」
……………………中? 中ってどこ? 俺の頭に疑問符が乱舞する。けれどその答えはそのすぐ後に判明した。
◇ ◇ ◇
――――なんというか、そのことに関してはこの先もずっと、極力思い出したくない。
俺は信じられないような場所を散々ラカンに触られて、それが終わった時には気持ちが疲労困憊で浴室の床にへたり込んでしまっていた。
「よーし、よく頑張ったなアディ」
なんなんだ。なんなんだこの男。カッコいいとか思った俺の純情を返せ。
というかなんでこんなことするんだろう。俺、もしかして怪我か病気でもしてるのか? 尻や腹の中を? それでラカンが治療か何かのためにわざわざうちに来て、こうやって、な、中を綺麗に湯で流してくれているとか?
もう何がなんだかわからない。やっぱりちゃんと言わなきゃ。俺は二十歳の頃までのことしかわからないから、なんで今ラカンとこんなことしてるのか教えて欲しい、って。
でも俺の頭はこの時点ですでにパンク寸前だった。なのにこんなのはまだまだ序の口だったのだと、俺はこれから知ることになる。
へたり込んだ身体をラカンに引っ張り起こされて壁を向いて立たされる。すると突然背中に、俺よりずっと体温の高いラカンの身体が押し付けられた。
思わずビクッとすると、俺の耳をラカンの低い擦れた笑い声がくすぐる。何、あんたってこんな笑い方するの? 初めて聞いた。なんというか、ものすごく性的で、ものすごく男っぽい。そんな声だった。
ふいに後ろから回ってきたラカンの両手が俺の胸を下から掬い上げるように持ち上げる。いや、女じゃないんだから胸なんてないんだけど。なのにラカンは俺の胸を二、三度揉みしだくといきなり乳首を摘んでくりくりと弄り始めた。
「ひぁっ!?」
あまりに突然すぎてまた変な声が出てしまう。けれどラカンはお構いなしに俺の肩や背中を舐めたり噛んだりしながら両方の乳首を擦ったり引っ張ったり、そして乳輪の周りを指の先で円を描くようにゆっくりとなぞったりする。するとそこからビリビリと痺れるような奇妙な何かが襲い掛かってきて、俺の身体がひくひくと震えだした。
「ひゃ……っ、ラ、ラカン……っ、えっ、な……っ」
なんで、なんでこんなとこがきもちいいんだ? いや、これ気持ちいいって言っていいんだよな?
女じゃあるまいし、胸なんて感じるわけがないのに、ラカンに少し触られただけでこんなにも身体がビクビク反応している。
「あっ、あっ、あっ、」
俺の口からは耳を塞ぎたくなるほど甘ったるくて甲高い声がひっきりなしに漏れてしまう。なんで? なんで? なんで俺、そんなところくりくりされてるの? あっ、だめ、そんな、爪で引っ掻いたりしないで、うそ、あんっ、ふあっ、だめだって……っ!
ラカンが胸や乳首をいじくり回しながら、俺の耳に熱い息を吹き込む。それでまた俺の背中にぞくぞくと得体の知れない何かが走って、壁についた手に力が篭った。
その時、ふいに濡れてざらついた舌でぞろりと耳の穴を舐められて、俺は「ひうんっ!!」と甲高い声を上げて背筋を逸らした。
「ひあっ、え、や、ラカ、まって、ラカン……ひんっ!」
「どうしたんだ、お前。今日なんかめちゃくちゃ感度良くないか?」
「そ……そんな……んっ、ひあんっ!」
「見ろよ、こっちもすごい元気だな」
そう言ってラカンがするりと手で俺の腹を撫で下ろして、突然俺のペニスを掴んだ。
「~~~~~ッ!?」
「な?」
俺は手を壁に当てて必死に身体を支えながら下を見る。するとそこにはラカンの手で根元を支えられた俺の勃起した性器があって、先端からとろとろと透明な先走りを垂らしているのが見えた。
「お前、最近ものすごく乳首で感じるようになってきたよな」
そう言いながらラカンがペニスの根元をさすさすと擦り、その下にある陰嚢を揉みしだく。それにまた俺は悲鳴みたいな喘ぎ声を上げてラカンに笑われた。
「じゃあこっちのアディちゃんもかわいがってやらねぇとな」
アディちゃん? なにそれ、おれのこと?
濡れた壁に必死にすがりつきながら俺が肩で息をしていると、がっちりとしたもう片方の手が俺の腰骨をくすぐり、尻の谷間をなぞりながら降りていった。そして触れられた場所がどこなのかわかった途端、俺の頭は真っ白になった。
え、え、え? 待って、そこって、そこって、尻の穴だぞ? さっき散々湯で洗われた。
いつの間にかラカンはそっちの手に何かひどくぬるぬるするものを塗りつけていた。そしてそのぬるぬるをなすり付けるように俺のソコを優しく揉んだり撫でたりさすったりし始める。
「ちょ……ちょっと……っ、ラカン……っ」
「どうした?」
どうした、って、あんたこそ何してるんだ!?
でもラカンの手は少しも休むことなく俺の後腔を延々弄り続けている。けど時々入り口に指先をちょこっと押し付けるくらいでさすがに中に入ってくる様子はなくてホッとした。
これ、ただ撫でてるだけ? ならいいのか? でもこんなところ撫でてどうするの?
あまりにしつこく触られ続けて、なんだか奥の方がジンジンしてきた。って奥の方ってなんだよ。尻の中? なんでそんなとこがむずむずしてくるんだ?
「はあっ、あっ、んっ」
その熱くてジンジンするのがどんどん強くなってきて、俺はたまらずに濡れた声を漏らし続ける。
「腰揺れてるぜ?」
そう言われて初めて俺は自分が後ろのラカンに押し付けるみたいに腰を動かしてることに気づいた。
「え……うそ……っ」
ウソだろ? なんか俺の身体ヘンだ。なんで? 腰が揺れて動いてしまうのを押さえられない。俺は何がしたいんだ?
それよりさっきから尻の谷間に、何かすごく熱くて硬いのが当たってるんだけど、これ、なに?
ああ、どうしよう、尻の奥が熱く疼いて、ずくずくして、たまらない。
とうとう我慢しきれずに目をぎゅっとつむって食いしばった歯の隙間から震える悲鳴を漏らすと、それまで穴の入り口をねっとり円を描くように這い回っていたラカンの指が、ほんのちょっとだけ中に入ってきた。
「ひっ」
うそ、何してるんだ。そんなとこに指なんて入れてどうするんだ。
そう思ったのに、俺のアソコはラカンの指をなんの抵抗もなく受け入れた。
「ふ………………んっあっ……、」
中指が一本、俺の中に根元まで潜り込んでいく。そしてすぐにぬくぬくと中で動き出した。
「ふあっ、んあっ、ひんっ!」
うそっ、うそっ、すごい、きもちいい……っ!
ラカンの指が俺の中をえぐって掻きまわしている。時々曲げた指の関節でぐりぐりされて、俺の身体が跳ね上がる。
なんでなんでなんで? なんでそんなところにこんなに簡単に入っちゃうんだ。なんで? もっと痛いとか苦しいとかないの? あ、ゆびふえた。にほん。あ、そこだめ……っ!
「っ、う、う゛~~~~~~っ」
「すごい声だな。そんなに気持ちいいか?」
うるさい。言うな。それよりなんで? なんで? 俺の身体、どうなっちゃってるの? なんでラカンにそんなところを指でぐちゃぐちゃにされてるの? しかもすっごい気持ちがいいし。ふあああ、どうしよう、きもちよくてこえがでちゃう……。
「あっ、ひゃっ、ん、や、や、~~~~~っ」
「あー、駄目だ。我慢できねぇ」
すぐ耳の後ろでラカンの呟く声が聞こえた。そしてその頃には三本に増えてた指がずるりと抜かれてまた声が出てしまう。なんだろう、よくわからないけどやっと終わったのかな。
「ここまでトロトロなら張り型で広げなくても、もう入るだろう?」
はりがた? なにそれ。あ、れ? なんか、アソコになにか当たって……
そしてふいに、明らかに指じゃない何かが狭い肉壁を押し開くようにずくっ、と入ってきた。
え、これ、これって、まさか。
次の瞬間、ものすごく熱くて硬くて太いモノにがつんと突き上げられて、一瞬息が止まった。
「うひゃあぁぁあああっつ!!」
と叫びそうになって「う」で止めた。恐々振り向くと、すぐ後ろに上半身裸のラカンが覗き込んでいる。思わず黒いソレを握り締めて硬直していると、そんな俺を見てラカンがニヤリと笑った。
「なんだよ、俺がいる時はコレはいらないだろう?」
「へ?」
「それとも今日はオモチャを使って欲しいのか?」
「は?」
ラカンが何を言ってるのかさっぱりわからない。おもちゃ? え、だってコレって、どう見ても男の……アレの形だぞ? そんなおもちゃがあったら子どもを持つ親全員にぶん殴られるんじゃないだろうか。
ポカンと馬鹿みたいに口を開けて見上げていると、ラカンがなんだかすごく悪党じみた笑みを浮かべた。
「早く行こうぜ。あとそこ、敷布を重ねておけよ」
そう言ってラカンはベッドの上に置いてた謎の細長い棒と香油らしき物が入った瓶だけを持って寝室から出て行く。俺はやっぱり呆然とそれを見送ることしかできなかった。
…………とりあえず、風呂行くか。
なにかもう、だいぶ頭が考えることを拒否してる気がする。
俺は手に持った恐ろしげなものから目を逸らしつつそれを引き出しの奥深くに仕舞うと、ラカンの後を追って浴室へと向かった。
二階へ上がる階段の下にある扉を開けると狭い物置兼脱衣所があって、作りつけの棚にはエリザさんお手製のハーブ入りの石鹸や湯上り用のリネンなどが置いてある。でもそこにラカンはいなくて、さらにその奥にある浴室から湯が流れる音が聞こえてきた。
俺が来たのがわかったのか、扉の向こうから「早く脱いで来いよ」と呼ばれる。
…………やっぱり俺も一緒に入るのか。でもなんで?
正直、この家の浴室は狭い。俺とラカン二人も入ったらかなり窮屈だろう。あ、もしかして実は背中かどこかを怪我していて、傷を洗うのを手伝って欲しいとか? そうなのか? ハッとそう思い当たって急いで服を脱いだ。
ああそうだ、それに今の俺のこともちゃんと話した方がいいだろうか。
見た目は三十二歳の俺だけど、でも本当は俺はまだ二十歳で、だから今のラカンのことやこの十二年の間に起きたことも何一つわからないんだ、って。
でも信じてもらえるんだろうか、と俺は思わず手を止める。
嘘ばっかり言うなって言われたらどうしよう。俺を騙すつもりか、って怒らせてしまったら。
「アドルティス?」
「い、今行く」
まるで心臓を握りつぶすような不安を振り切るように、俺は浴室への扉を開けた。
「お、来たな。遅ぇよ」
「……すまなかった」
なんとなく謝って、俺は後ろ手で扉を閉める。だが目線はラカンに釘付けだった。はぁ…………すごい…………ラカンの裸体をこんな間近で見るなんて初めてだけど、本当に凄すぎる……。
森を出て一年近く経つのにちっとも日焼けしないで白いままの俺とは真逆の赤銅色の身体はものすごく大きくて、すぐ傍に立っているとじりじりとラカンの熱が直接肌に伝わってきそうな感じがする。
ラカンが石鹸で自分の身体を擦るたびに肩から背中にかけての筋肉や腰が動いて、つい目線が吸い寄せられる。身体にかかった湯が筋肉の溝を伝い落ちていくのを見ているだけでなぜか顔や胸や腹の奥が熱っぽく火照ってきた。なんなんだ、一体。
それにしてもやっぱり戦うために生まれてきたなんて言われる種族で寿命も長いせいか、四十すぎと言っても全然歳をとった感じがしないな…………って、俺はどうなんだろう。老けて緩んだりしたところはないだろうか。
つい気になって自分の腕や胸元を見たがよくわからなかった。
その時、ふいにラカンが振り向いて言った。
「ほら来いよ、洗ってやる」
え。
目が点になった俺に構わず、ラカンが俺の腕をぐいっと引き寄せた。思わずよろけて目の前のラカンの身体にしがみつきそうになる。するとラカンがそれを抱きとめて、湯気で俺の顔に張りつく髪を掻き上げた。その動作がものすごく自然であまりにも慣れた雰囲気なのに驚きすぎてとっさに声も出ない。
瞬きするのも忘れてラカンの顔を見ていたら、突然泡だらけの大きな手で尻から腰を撫で上げられた。
「ひゃうんっ!?」
な、なんだ今の甲高い声は!? ってまさか俺の声か? いやいや嘘だろう、なんでこんな声……っ。
あまりに恥ずかしくて口を押さえようとしたけれど、ラカンに抱きついてるような今の態勢でそれはできず、顔を見られないようにとっさにラカンの胸に埋める。けれどそのせいで俺の身体がラカンの身体にぴったりと密着してしまって焦った。
え、なにこの体勢。
慌てて身体を離そうとする俺の背中をまたラカンの手が撫でてきて、またしても俺の身体がビクン! と跳ねる。
「相変わらずお前は俺の手が大好きだな」
え、それはもちろんそうだろう。と言ってもラカンの手に触ったり触られたりする機会なんてあるわけないから、あくまで想像というか妄想の中での話だけど。
でもそんなことを考えているうちにラカンの手は俺の身体中を撫でたり這ったり揉んだりし始めて、俺はみっともない声を必死で噛み殺そうとした。
「んっ、う……んっ、ん………………あっ」
それでも、鼻や喉から漏れる甘ったれたような声と吐息がどうしても抑えきれない。
「んっ、っふ、ん…………っ」
「なんだよ、声殺すなよ」
ラカンはそう言いながら俺の手を取って壁の方を向かせると、上にある湯の注ぎ口を握らせた。
「じゃあ、中洗うからな。じっとしとけよ」
……………………中? 中ってどこ? 俺の頭に疑問符が乱舞する。けれどその答えはそのすぐ後に判明した。
◇ ◇ ◇
――――なんというか、そのことに関してはこの先もずっと、極力思い出したくない。
俺は信じられないような場所を散々ラカンに触られて、それが終わった時には気持ちが疲労困憊で浴室の床にへたり込んでしまっていた。
「よーし、よく頑張ったなアディ」
なんなんだ。なんなんだこの男。カッコいいとか思った俺の純情を返せ。
というかなんでこんなことするんだろう。俺、もしかして怪我か病気でもしてるのか? 尻や腹の中を? それでラカンが治療か何かのためにわざわざうちに来て、こうやって、な、中を綺麗に湯で流してくれているとか?
もう何がなんだかわからない。やっぱりちゃんと言わなきゃ。俺は二十歳の頃までのことしかわからないから、なんで今ラカンとこんなことしてるのか教えて欲しい、って。
でも俺の頭はこの時点ですでにパンク寸前だった。なのにこんなのはまだまだ序の口だったのだと、俺はこれから知ることになる。
へたり込んだ身体をラカンに引っ張り起こされて壁を向いて立たされる。すると突然背中に、俺よりずっと体温の高いラカンの身体が押し付けられた。
思わずビクッとすると、俺の耳をラカンの低い擦れた笑い声がくすぐる。何、あんたってこんな笑い方するの? 初めて聞いた。なんというか、ものすごく性的で、ものすごく男っぽい。そんな声だった。
ふいに後ろから回ってきたラカンの両手が俺の胸を下から掬い上げるように持ち上げる。いや、女じゃないんだから胸なんてないんだけど。なのにラカンは俺の胸を二、三度揉みしだくといきなり乳首を摘んでくりくりと弄り始めた。
「ひぁっ!?」
あまりに突然すぎてまた変な声が出てしまう。けれどラカンはお構いなしに俺の肩や背中を舐めたり噛んだりしながら両方の乳首を擦ったり引っ張ったり、そして乳輪の周りを指の先で円を描くようにゆっくりとなぞったりする。するとそこからビリビリと痺れるような奇妙な何かが襲い掛かってきて、俺の身体がひくひくと震えだした。
「ひゃ……っ、ラ、ラカン……っ、えっ、な……っ」
なんで、なんでこんなとこがきもちいいんだ? いや、これ気持ちいいって言っていいんだよな?
女じゃあるまいし、胸なんて感じるわけがないのに、ラカンに少し触られただけでこんなにも身体がビクビク反応している。
「あっ、あっ、あっ、」
俺の口からは耳を塞ぎたくなるほど甘ったるくて甲高い声がひっきりなしに漏れてしまう。なんで? なんで? なんで俺、そんなところくりくりされてるの? あっ、だめ、そんな、爪で引っ掻いたりしないで、うそ、あんっ、ふあっ、だめだって……っ!
ラカンが胸や乳首をいじくり回しながら、俺の耳に熱い息を吹き込む。それでまた俺の背中にぞくぞくと得体の知れない何かが走って、壁についた手に力が篭った。
その時、ふいに濡れてざらついた舌でぞろりと耳の穴を舐められて、俺は「ひうんっ!!」と甲高い声を上げて背筋を逸らした。
「ひあっ、え、や、ラカ、まって、ラカン……ひんっ!」
「どうしたんだ、お前。今日なんかめちゃくちゃ感度良くないか?」
「そ……そんな……んっ、ひあんっ!」
「見ろよ、こっちもすごい元気だな」
そう言ってラカンがするりと手で俺の腹を撫で下ろして、突然俺のペニスを掴んだ。
「~~~~~ッ!?」
「な?」
俺は手を壁に当てて必死に身体を支えながら下を見る。するとそこにはラカンの手で根元を支えられた俺の勃起した性器があって、先端からとろとろと透明な先走りを垂らしているのが見えた。
「お前、最近ものすごく乳首で感じるようになってきたよな」
そう言いながらラカンがペニスの根元をさすさすと擦り、その下にある陰嚢を揉みしだく。それにまた俺は悲鳴みたいな喘ぎ声を上げてラカンに笑われた。
「じゃあこっちのアディちゃんもかわいがってやらねぇとな」
アディちゃん? なにそれ、おれのこと?
濡れた壁に必死にすがりつきながら俺が肩で息をしていると、がっちりとしたもう片方の手が俺の腰骨をくすぐり、尻の谷間をなぞりながら降りていった。そして触れられた場所がどこなのかわかった途端、俺の頭は真っ白になった。
え、え、え? 待って、そこって、そこって、尻の穴だぞ? さっき散々湯で洗われた。
いつの間にかラカンはそっちの手に何かひどくぬるぬるするものを塗りつけていた。そしてそのぬるぬるをなすり付けるように俺のソコを優しく揉んだり撫でたりさすったりし始める。
「ちょ……ちょっと……っ、ラカン……っ」
「どうした?」
どうした、って、あんたこそ何してるんだ!?
でもラカンの手は少しも休むことなく俺の後腔を延々弄り続けている。けど時々入り口に指先をちょこっと押し付けるくらいでさすがに中に入ってくる様子はなくてホッとした。
これ、ただ撫でてるだけ? ならいいのか? でもこんなところ撫でてどうするの?
あまりにしつこく触られ続けて、なんだか奥の方がジンジンしてきた。って奥の方ってなんだよ。尻の中? なんでそんなとこがむずむずしてくるんだ?
「はあっ、あっ、んっ」
その熱くてジンジンするのがどんどん強くなってきて、俺はたまらずに濡れた声を漏らし続ける。
「腰揺れてるぜ?」
そう言われて初めて俺は自分が後ろのラカンに押し付けるみたいに腰を動かしてることに気づいた。
「え……うそ……っ」
ウソだろ? なんか俺の身体ヘンだ。なんで? 腰が揺れて動いてしまうのを押さえられない。俺は何がしたいんだ?
それよりさっきから尻の谷間に、何かすごく熱くて硬いのが当たってるんだけど、これ、なに?
ああ、どうしよう、尻の奥が熱く疼いて、ずくずくして、たまらない。
とうとう我慢しきれずに目をぎゅっとつむって食いしばった歯の隙間から震える悲鳴を漏らすと、それまで穴の入り口をねっとり円を描くように這い回っていたラカンの指が、ほんのちょっとだけ中に入ってきた。
「ひっ」
うそ、何してるんだ。そんなとこに指なんて入れてどうするんだ。
そう思ったのに、俺のアソコはラカンの指をなんの抵抗もなく受け入れた。
「ふ………………んっあっ……、」
中指が一本、俺の中に根元まで潜り込んでいく。そしてすぐにぬくぬくと中で動き出した。
「ふあっ、んあっ、ひんっ!」
うそっ、うそっ、すごい、きもちいい……っ!
ラカンの指が俺の中をえぐって掻きまわしている。時々曲げた指の関節でぐりぐりされて、俺の身体が跳ね上がる。
なんでなんでなんで? なんでそんなところにこんなに簡単に入っちゃうんだ。なんで? もっと痛いとか苦しいとかないの? あ、ゆびふえた。にほん。あ、そこだめ……っ!
「っ、う、う゛~~~~~~っ」
「すごい声だな。そんなに気持ちいいか?」
うるさい。言うな。それよりなんで? なんで? 俺の身体、どうなっちゃってるの? なんでラカンにそんなところを指でぐちゃぐちゃにされてるの? しかもすっごい気持ちがいいし。ふあああ、どうしよう、きもちよくてこえがでちゃう……。
「あっ、ひゃっ、ん、や、や、~~~~~っ」
「あー、駄目だ。我慢できねぇ」
すぐ耳の後ろでラカンの呟く声が聞こえた。そしてその頃には三本に増えてた指がずるりと抜かれてまた声が出てしまう。なんだろう、よくわからないけどやっと終わったのかな。
「ここまでトロトロなら張り型で広げなくても、もう入るだろう?」
はりがた? なにそれ。あ、れ? なんか、アソコになにか当たって……
そしてふいに、明らかに指じゃない何かが狭い肉壁を押し開くようにずくっ、と入ってきた。
え、これ、これって、まさか。
次の瞬間、ものすごく熱くて硬くて太いモノにがつんと突き上げられて、一瞬息が止まった。
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信頼していた婚約者と幼馴染は性格に問題のある姉と妹と肉体関係を持って、アメリアに冷たい態度をとるようになる。アメリアだけが恋愛できず仲間外れにされる辛い毎日を過ごすことになった――
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