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Ⅳ 恋は異なもの味なもの 編

ラカン、自覚する ★

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「なんだよ」
「い、いいから、中で、出して」
「あ? 何言ってるんだ。そんなことしたら腹下すんだろう、お前」
「いい、いいから……っ」

 アドルティスは切羽詰ったような顔で俺を見上げてさらに言い募る。

「ラカン……お願い、挿れて、ラカンの、いっぱい、俺にちょうだい……っ」

 あんまりにも直截なその言葉に、俺は思わず息を飲んだ。するとアドルティスがとろとろに蕩け切った目をしてねだってきた。

「ねえ……ラカンの子種、俺の中にいっぱいちょうだい……っ」

 こいつ、本当に馬鹿だ。馬鹿すぎていつか変な男や女にとっ捕まって骨の髄まで搾り取られちまうんじゃないのか? 危ない危ない。そんなやつらに引っかかる前に俺が捕まえといて本当に良かった。 

「……念の為聞くけど、お前明日の予定は?」
「特には……ああ、そういえばレンが何か用があるって……」
「あの野郎には会わなくていい」

 言下にそう言い渡してからふと思い出した。

「そういえばさっきの答えまだ聞いてないな。お前、どうしてあいつらと一緒にいたってあの時素直に教えなかったんだ」
「えっ」

 一瞬、虚を突かれたような顔をしたアドルティスが、落ち着かなげに視線を揺らしながらぽつり、と言った。

「……リナルアが、あんたを探してるって言ってたから」
「あ?」
「あんたと二人だけで飲みたかったのにいなくなっちゃったから、って言ってて」

 俺の下で細い身体を丸めてアドルティスが呟く。

「……あんたがいるってバレたら、リナルアに取られちゃうと思って……」

 ………………本当に、何バカかわいいこと言ってんだこいつ。
 俺は思わず困った顔して縮こまってるこいつの両腕押さえつけて無理矢理足を開かせてそれはもうめちゃくちゃに突っ込んでこいつが誰の物なのか完全に覚え込ませるまで突いてイかせて腹の中どろっどろになるくらい注ぎ込んでやろうかという衝動を死ぬ気で抑え込んだ。

「行くわけないだろ」

 なんとかそれだけ言って、眉がハの字になってるアドルティスの顔を覗き込む。というか、これまたレアな顔だな。

「俺がお前よりあいつら優先したことなんてあったかよ」
「…………わ、わかんない」
「いや、ねぇよ! さすがにそれくらいはわかっとけ」

 思わずそう言うと、アドルティスがめちゃくちゃ驚いた顔をした。

「え、そうなのか?」
「そうだよ」
「そ、そうか。それは………………うれしいな」

 と言ってふわっと笑った。うお、すごいな。こいつこんな顔もするのか。
 思わずそんな風に頭の中で拍手をしてしまった。
 本当に、いつもの澄ました顔しか知らないやつらが見たら腰砕けになるんだろうな。俺だって驚いてるくらいだ。

「……っ、なあ、ラカン、たのむから」

 俺の中にちょうだい、と涙目で言うアドルティスに、俺は黙って感動してしまった。するとアドルティスが俺の腕を掴んで催促する。

「なあ、俺、今すごく幸せなんだ。幸せすぎて夢なんじゃないかって思うくらい」
「……夢じゃないぞ」
「うん、だから今、あんたのおっきなのでいっぱいいっぱいヤられて、いっぱい注ぎ込まれて、それでイきたい。お腹壊すとかどうでもいいから」
「…………お前、ほんとに馬鹿だな」

 するとアドルティスがまた綺麗な顔を台無しにして、ふにゃっと笑って言った。

「そうか。俺って馬鹿なんだな」

 それを聞いて俺はもう駄目だ、と思った。

 この部屋で酔っぱらって初めてセックスしたあの時、アドルティスがまるでうわごとのように繰り返し繰り返し言っていた言葉。

――――すきだ。ラカン、すきだ。ずっとすき。

 本当はちゃんと聞こえてた。でも聞き間違いだと思ってた。いや、そう思いたかったんだ。

 こいつはこの件に関してはこの間から妙にぽやぽやしているが、普段は沈着冷静でどんな面倒事や強敵相手でも全然諦めないし動じない、そんで俺がどんだけ全力で突っ走ってもついて来れるいい相棒だ。
 でも若い。本当に、どうしようもなく若くて世間知らずなんだ。こんな、俺みたいな男に目を眩まされてしまうくらいに。

 どうしたんだよ、お前。お前ならいくらだって相手は選り取り見取りだろうが。
 もっと優しくて繊細で、お前を森や湖に連れて行ってお前が欲しがるような珍しい草やなんかを見つけてやれるようなやつがきっといるだろうし、あいつの仏頂面の下の気持ちをちゃんとわかってやれてあいつと添い遂げて赤ん坊だって抱かせてやれる女だっていくらでもいるだろうが。
 そんな男が、よりによって俺なんかに惚れてるって? そんなのありえない、あっちゃいけない。そう思ってた。だから愛想尽かされたくてメチャクチャやってみた。まあ、ものの見事に失敗したわけだが。

 けれど、本当のところは俺も知りたかったんだ。こいつが本当に本気で俺のことが好きなのか。そして俺自身がこいつをどう思っているのか。
 けど、こんな馬鹿で阿呆で百年の恋もいっぺんで冷めるようなふにゃふにゃした顔でこんな風に笑われて、男が落ちないわけがないだろう。俺だって結局は馬鹿で阿呆なただの男なんだ。

「……あとでやっぱり嫌だと言っても聞かないからな」
「言うわけないだろう」

 濡れた目を細めて笑うアドルティスからしたら、俺なんか本当にチョロイただの馬鹿なけだものなんだろうな。けどまあ、それも望むところだ。
 欲にまみれたケダモノな俺は、今から毛色の変わった森の雛鳥をとことん味わうってわけだ。いいじゃないか。実に旨そうだ。

 俺はもう一度アドルティスをうつぶせにさせると、剥き出しの亀頭をアドルティスのとろとろにぬかるんだ穴にあてがい、その熱と感触を楽しむようにゆっくりと先端を押し込んでいった。

「あ、あ、あ、」

 アドルティスが熱い吐息と一緒に甲高い声を漏らし始める。
 真っ赤に熟れた肉を押し開いてぬぷぬぷと入っていくさまを俺はじっくりと堪能する。あー、やっぱりこの眺め興奮する。それに本当に腰、細いな。
 簡単に両手で掴める細い腰と小さな尻。そんできつくて狭くてずくずく熱いナカで思う存分好きなだけ扱けるんだぜ? おまけに突くたびにとろとろに蕩けた甘い吐息や喘ぎ声が聞こえてきてますます摩羅が硬くなる。こんな気持ちのいいセックス、そうそうねぇだろう。

 俺はめちゃくちゃに突っ込みたくなる衝動を殺して、ゆっくり丁寧に、大事にアドルティスのイイところを擦ってやる。
 初めてヤった時に、こいつが教えてくれた入り口の少し上の腹側のしこり。あそこをぐりぐりと抉りながら奥へ奥へと進んで、あいつが少し慣れてきたかな、って頃に後腔の中ほどをゆっくり抜き挿ししながら何度もソコを先端で押し潰してやった。

「はあっ、あっ、ひ……ぃあ……っ、ソコ……っ、あっ、だめ、そこ、ダメ……っ」
「駄目じゃないだろ。気持ちいいんだろう? ココ」

 だって明らかにさっきまでと声が違う。
 こいつは普段は割とぶっきらぼうな口調なのに、セックスでイきだすと女みたいな声に変わる。出会って八年目にして初めて知った事実だ。

 初めてこの部屋でセックスした時、こいつに教えてもらった一番敏感だというこの場所を何度も突いてやったら、アドルティスの様子がおかしくなった。
 急にひどく取り乱して辛そうだったからその時は早々に止めたんだが、今思えばあれは『心が身体に付いていかない』ってやつだったんだと思う。
 そりゃつらいよな。こいつにしてみりゃ自分のことが好きでもなんでもない男がいきなりこいつの一番の性感帯をガンガン責めてきたようなもんだもんな。そりゃビビるよな。

「あっ、は……、ラカン、ラカ、ン、おねがいだから、イかせて」

 アドルティスが息も絶え絶えにねだる。

「きもちいい……っ、きもちよすぎて、もう、がまんできない、ラカン」

 風呂場で身体洗ってやったり俺のモノをしゃぶらせたりしてた時からこいつのモノはしっかり反応して勃ってたけど、まだ一度もイけていない。そりゃ辛いよな。俺はとりあえずこいつを楽にしてやることにした。

「なあ、お前は俺の手が大好きなんだよな?」
「そう……っ、すき、ラカンの、て、だいすき……っ」
「そうか。それじゃあ素直に言えたご褒美にお前の好きな手で優しくナデナデしてやるからな」

 なんて馬鹿なこと言いながら、俺は腹に付きそうなくらい反り返ったアドルティスのモノをそっと掴む。しかしエルフってやつはこんなところまで綺麗なんだな。細くてすんなりしてて、おいおい、色なんてピンク色じゃないか。なんかめちゃくちゃ甘そうな果実みたいだな。
 どうも尻をくぷくぷ突かれてるだけでも結構いっぱいいっぱいみたいだから、前は極力そっと撫でて、ゆるゆる扱いて優しくかわいがってやる。

「ひあっ、あっ、イイっ、ああっ、きもち、いい……っつ!」
「オラ、前でも後ろでも、好きな方で好きなだけイけよ」
「や……っ、ぁああぁんんっっ!」
「……ッ!」

 とんでもない声を上げてアドルティスがイくのと同時に、きゅううっつ! とナカの俺のモノが引き絞られる。俺もぐっ、と息を呑んで、これでもかってくらい中にザーメンをぶちまけてやった。
 すげぇ。一発でもっていかれてしまった。
 あまりに気持ちよくて、びくびくしてるアドルティスの肩をベッドに押さえつけて、まだイってる最中のあいつのナカになすりつけるみたいにグリグリしながら、どぷどぷと精液を注ぎ込む。ぶっちゃけ、今まで抱いた誰よりも一番気持ちよかった。

 ハアハアと全力疾走した後みたいに息を荒げながら、アドルティスがくったりと全身の力を抜く。俺もその背中に覆いかぶさって呼吸を整えようとしてたら、アドルティスが切れ切れの息の下から呟いた。

「すごい……ラカンの、せーえき……」
「……あ?」
「いっぱい、おくまで、きてて……、うれしい……」

 …………本気か、こいつ。どこでそんな台詞覚えてきやがった。

 一瞬そう思ったけど、でも本当に嬉しそうに呟くもんだから、俺は身体を起こして中の香油と精液を混ぜるみたいに腰を突き入れてこね回してやった。すると、ずっちゅずっちゅと聞くに耐えない音が響いてまた摩羅が硬くなる。それはアドルティスの方も一緒みたいで、開きっぱなしの口から唾液と甘ったるい嬌声を漏らしながらまた腰を揺らし始めた。

「うんっ、あっ、ラ、ラカン、っ、ふあっ、ん、ね、もっと、もっと……っ」
「もっと、なんだよ……っ」
「もっと、だして……んっ、あっ、おれのなか、いっぱい、」
「……なぁ、お前ほんとにココだけでイってみるか?」
「ふあ?」
「こないだ道具だけでイきそうになってたよな? でも嫌だって言ってただろう。道具なんかに後ろでイかされたくねぇって」
「ふあ、んっ、んあっ」
「なら、俺のならいいのかよ」

 そう尋ねると、アドルティスが肩越しにこっちを見てかすかに目を細めた。

「そう……っ、ラカンの、あっ、ラカンのが、いい……っ。ラカンなら、いい、よ……っ」

 そんでもう我慢できねぇって感じに目をつむって囁いた。

「ラカン、ラカン、すき、はやく、はやくイかせて……っ」

 後ろだけでイカせて。まるで女みたいに。

 そう言ってるみたいに聞こえた。
 俺より若いとはいえとっくに成人した立派な男で、どんなでかい魔獣にぶち当たっても一歩も引かないどころか自分から先陣切ってデバフ撃ちに突っ込んでくようなやつが何を馬鹿なこと言ってるんだ、と思っただろう。以前の俺ならば。
 だけど、俺の下で息も絶え絶えにあえぎながら根元まで俺のモノを受け入れて、ココロもカラダも何もかもを俺に明け渡して身悶えているアドルティスを見て、なにかもうたまんない気持ちになった。


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(長くてすみません;;;次でこの章終わりです;;;;)
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