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Ⅳ 恋は異なもの味なもの 編
ラカンの鬼眼
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「おい、エールをもう一杯くれ」
通りがかった店の女にそう言って、水滴の残る傷だらけのテーブルを睨みつける。
隣の女たちはまだキャーキャー言いながらあいつの話をしていた。
曰く「それより昨日、見た? あの魔性の女気どりのイディスがかなり本気で狙ってるみたいよ」「誰にも靡かないから、落としたら自慢になるって考えてるんじゃない?」「あんな嫌な女より、私の方が断然いい相手になれるのに!」「その下心がいけないんじゃない? 私なんてこの間ニコッて笑いかけられたわよ」「ちょっと! あなたマッチョじゃないと駄目なんでしょ!?」「うーん、あの人よく見たら腕とか綺麗に筋肉ついてるわよねぇ。ポーションの大瓶の箱とか軽々持って結構力持ちだし」「ちょっと! この節操なし!」だと。
いやいやあんたらは知らないだろうが、そいつこないだ俺の摩羅で散々突かれまくって女みたいに泣きながらイキまくってたからな。一晩で三回もイッてたから。それにいやらしい道具をいっぱい持ってて、あの白い肌をほんのり赤く染めてアンアンかわいく喘ぎながら俺の下で泣きまくってたからな。
…………なんて言ったらどうなるんだろうな。目が点どころじゃないよな、きっと。誰だって信じるわけがない。顔が良くて能力あって、あの気難しいラヴァン婆さんにまで気に入られてる腕っこきだぞ?
あいつがこの街でどれだけ女たちの憧れの眼差しを集めているか、俺だって知らないわけじゃない。
今もこんな酒場でも女たちの話題を集めてて、雑貨屋の娘なんか誰が描いたのか知らんがあいつの似姿なんかをこっそり持ってて、おまけに若い女たちだけじゃなくて下宿屋のばあさんから裏の猫屋敷のおばさんやら防具屋のよちよち歩きの孫娘まで、年齢問わずやたら好かれて世話焼かれてるようなやつだぞ?
それが俺みたいな野郎の下でアンアン喘いでたなんて、一体誰が信じるっていうんだ。俺だってそんなの聞いたら夢でも見たのか、って鼻で笑い飛ばす自信あるぞ。
「……どうしたの? さっきから妙な百面相をして」
向かいからいぶかしげな顔をしたリディアが聞いて来た。珍しいな、こいつがそんな風に人のこと気にするなんて。
「……なんでもない」
エールのお代わりと一緒に出されたカクの実をガリガリ噛み砕きながらそう答えた時、突然隣から素っ頓狂な歓声が聞こえてきた。
「キャー! ちょっと! あれ見て! アドルティスさんじゃない!?」
「うそっ、しかもレンさんも一緒にいるわ!」
何かと思って見れば、さっきの女たちがキャーキャー言いながら窓に張りついている。そこから見える通りの向こう側に、確かにアドルティスとレンとリナルアが立っていた。すごい偶然だな、おい。
「うわ、目の保養だわ」
「キラキラしてる」
「あ~~~~こうして見るとアドルティスさんって細いわねぇ~~」
「私としてはちょっと物足りないかな~~」
「筋肉マニアに聞いてない」
「マニアじゃないっての」
すごい食いつきっぷりだな。窓が鼻息で白くなってるぜ。しかしリナルアのことは完全に目に入ってねぇな。
俺たち鬼人は人間より目がいいから、窓から離れたこの席からでもやつらの姿がよく見える。
「レンさん、アドルティスさんと仲いいんだね~」
いやいやいやいや、仲いいとか聞いてねぇぞ。それどころか結構迷惑そうにしてたよな、あいつ。
「ほら、レンさんってあの『剣鬼』の人とお友達なんでしょう? ほら、レンさんの妹が付き合ってるっていう」
「何?」
いかん、あまりに思いがけない言葉に声が出た。だが幸い盛り上がってる隣の女たちには聞こえなかったらしい。いや、それより俺がリナルアとつきあってるなんて初めて聞いたぞ?
首を傾げながら顔を戻すと、向かいのリディアが半目でこっちを見ていた。
「あなた、いつからリナルアと付き合ってたの?」
「付き合ってねぇよ」
「ふーん。なんだ、フカシか」
リディアはそう呟いて白けた顔でワインをごくりと飲んだ。こいつは顔はミステリアスな美女系の割に結構口が悪い。
その時、またしても隣から悲鳴が聞こえてきて持ち上げたジョッキを落としそうになった。
「キャーッ! ちょっと! あれ見て!」
「やだ、顔が近ーい!」
「うそ、ほんと!」
………………おい、あいつら何してんだ。
見れば外の店先でアドルティスがレンに肩を抱かれて何かを覗き込んでいる。その隣でリナルアが何か言って手を叩いて…………レンの野郎、今度はアドルティスの腰なんか抱いてヘラヘラ笑ってんぞ。おい、アドルティスも何やってんだ。お前そいつのこと苦手なんだろ? いつも触って来ようとすると避けてたじゃねぇか。何ボケッと突っ立ってんだ。避けろよ。離れろよ。
なんか妙に面白くなくて皿に残ってた軟骨のから揚げを口に放り込んでバリボリと奥歯で噛み砕く。
というか、最近あいつと全然顔を合わせてないな。どのくらいだ? あのすごいコレクション? の数々を見せられた晩からずっとだから十日ぐらいか? 長いな。
俺は元々じっとしてるのが苦手だから、何日も続けて街にいることはあまりない。それでもお互いダナンにいる時はなんだかんだで三日と空けずに会ってメシを食ったりなんだりしているはずだ。
たいてい俺が街に戻るとなぜかタイミングよくあいつが会いに来て『下宿のばあさんがうまいミートパイを焼いたからうちで食べよう』とか『いい酒が手に入ったから飲もう』だとか誘ってくる。だから俺も遠いところに行って帰ってきた時は名物の酒だとか菓子だとか、途中で見つけた珍しい石とか花や草とか持って行く。あいつ、そういうの集めるのが好きだからな。集めてどうすんのかは謎だが。
それはともかく、俺もあいつもダナンにいるのに十日も会ってないのは初めてだ。
まあ、あんなこともあったし、さすがに気まずいのかと思って俺からは特に会いに行ったりはしてないからお互い様なんだが、それにしたってなんでこんな時間にこんな場所に、しかもあいつと一緒にいるのかが解せん。
その時、窓ガラス越しにアドルティスを見下ろしてやけにやに下がってるレンの顔が目に入って、なんかイラっときた。
そういえばあいつ、あれから十日も経つが、あんなにセックスが好きで気持ちいいことに弱くて、男のくせに尻を責められてイく寸前までなっちゃうような身体してて、それでそんなに長い期間清く正しい生活なんてできてるんだろうか?
ふと湧き上がったそんな疑問に、なぜか酔いとは違った熱が腹の奥底にカッと差し込む。
あのオモチャで自分で慰めてるのか? でもあいつ結局、あの細い張型だの魔道具だのじゃイケなかったよな。そんでえげつねぇ形した黒いズイキは自分じゃ入れられなかった。そんなんでちゃんと自分でヤれてるのか?
いや、普通に前を触ればイけるんだろうが、あれだけ尻に張型だのなんだの入れて二へんも三べんもイッてるヤツが摩羅を擦るだけで満足できるのか?
思わずジョッキをぐいと煽ろうとしたがまたしても空で思わず舌打ちをする。
「おい、同じのもう一杯」
「はい! 今すぐに!」
そう暑いわけでもないのになぜか喉が妙に干からびてるような気がして、届いたエールを一気に腹に流し込む。向かいでリディアがカメムシでも踏んづけたみたいな顔してこっちを見ているが、まあそれはどうでもいい。
するとまた隣の女たちが急に声を潜めてしゃべり始めた。
「……ねえねえ、アドルティスさんって、最近すごく色っぽい時があると思わない?」
「………………わかる」
………………俺だけじゃなくお隣さんもだいぶ酔いが回ってきてるなコレ。色っぽい? んなわけあるか。と思いつつまた窓の外を見たら、今度はアドルティスの方がレンを見上げていた。そして長い睫毛をゆっくりと動かして瞬きをすると、薄く開いた口から何かを言う。思わずその顔に見入っていると、次の瞬間ゆっくりと口角を持ち上げてアドルティスが笑った。
………………なんだアレは。あいつあんな顔もするのか。隣の女たちも窓に張りついてあいつを見ながらなんか無言だし。というかあんな外の往来であんな顔するんじゃねぇ。わざとか。それとも隣にいる垂れ目でド派手な金髪でいつもヘラヘラ笑ってる野郎のせいか。お前そいつ苦手なんじゃなかったのか。
ああ、なんか面白くねぇ。なんかイライラしてきた。というかここしばらく俺はずっと何かに腹を立ててムカムカしているような気がする。
大体なんなんだ、あいつは。いきなり寝てる人間のイチモツを咥えて襲い掛かったり、散々エロい声漏らして人のこと煽って一晩に二度も三度もイキまくったり、好きだのなんだの本当か嘘かもわからないうわごと言って人のことビビらせておいていきなり十日も雲隠れしやがって。なんかあったら呼べっつっただろうが。
腹が立った。無性に腹が立ってきた。
俺はリディアの無言の視線を振り切るようにジョッキをテーブルに叩きつけると、窓の外のあいつを見てぐっ、と目に力を籠める。
おい、こっち見ろ。俺に気づけ。自分に向けられる『そういう』視線には馬鹿かっていうくらい鈍いが、殺気とか魔獣の気配にはものすごく敏感だろうが。オラ、どうしたそれでも本職の斥候よりとんでもなく優秀な目と耳を持ってる俺の相棒か、コラ!
その時、アドルティスがビクッと驚いたようにこっちを向いた。途端に窓に張りついてた女たちがキャーッ! と悲鳴を上げたが残念だったな。そいつを振り向かせたのはお前らの熱い視線じゃなくて俺の殺気だ。
ついでに反対側のテーブルの剣士や重戦士が化け物でも出たみたいな顔して椅子から落っこちてるけどな。悪い悪い。
アドルティスは不思議そうにキョロキョロと辺りを見回していて、そんなヤツにレンが懸命に何か話し掛けている。それを見てなんとなく『やってやった』みたいな気分になって頭も腹の中もスッキリした。よし、なにか追加するか。
「大将、コカク鳥の砂肝とハツと鳥皮追加。あ、塩でな」
「あいよ」
通りがかった店の女にそう言って、水滴の残る傷だらけのテーブルを睨みつける。
隣の女たちはまだキャーキャー言いながらあいつの話をしていた。
曰く「それより昨日、見た? あの魔性の女気どりのイディスがかなり本気で狙ってるみたいよ」「誰にも靡かないから、落としたら自慢になるって考えてるんじゃない?」「あんな嫌な女より、私の方が断然いい相手になれるのに!」「その下心がいけないんじゃない? 私なんてこの間ニコッて笑いかけられたわよ」「ちょっと! あなたマッチョじゃないと駄目なんでしょ!?」「うーん、あの人よく見たら腕とか綺麗に筋肉ついてるわよねぇ。ポーションの大瓶の箱とか軽々持って結構力持ちだし」「ちょっと! この節操なし!」だと。
いやいやあんたらは知らないだろうが、そいつこないだ俺の摩羅で散々突かれまくって女みたいに泣きながらイキまくってたからな。一晩で三回もイッてたから。それにいやらしい道具をいっぱい持ってて、あの白い肌をほんのり赤く染めてアンアンかわいく喘ぎながら俺の下で泣きまくってたからな。
…………なんて言ったらどうなるんだろうな。目が点どころじゃないよな、きっと。誰だって信じるわけがない。顔が良くて能力あって、あの気難しいラヴァン婆さんにまで気に入られてる腕っこきだぞ?
あいつがこの街でどれだけ女たちの憧れの眼差しを集めているか、俺だって知らないわけじゃない。
今もこんな酒場でも女たちの話題を集めてて、雑貨屋の娘なんか誰が描いたのか知らんがあいつの似姿なんかをこっそり持ってて、おまけに若い女たちだけじゃなくて下宿屋のばあさんから裏の猫屋敷のおばさんやら防具屋のよちよち歩きの孫娘まで、年齢問わずやたら好かれて世話焼かれてるようなやつだぞ?
それが俺みたいな野郎の下でアンアン喘いでたなんて、一体誰が信じるっていうんだ。俺だってそんなの聞いたら夢でも見たのか、って鼻で笑い飛ばす自信あるぞ。
「……どうしたの? さっきから妙な百面相をして」
向かいからいぶかしげな顔をしたリディアが聞いて来た。珍しいな、こいつがそんな風に人のこと気にするなんて。
「……なんでもない」
エールのお代わりと一緒に出されたカクの実をガリガリ噛み砕きながらそう答えた時、突然隣から素っ頓狂な歓声が聞こえてきた。
「キャー! ちょっと! あれ見て! アドルティスさんじゃない!?」
「うそっ、しかもレンさんも一緒にいるわ!」
何かと思って見れば、さっきの女たちがキャーキャー言いながら窓に張りついている。そこから見える通りの向こう側に、確かにアドルティスとレンとリナルアが立っていた。すごい偶然だな、おい。
「うわ、目の保養だわ」
「キラキラしてる」
「あ~~~~こうして見るとアドルティスさんって細いわねぇ~~」
「私としてはちょっと物足りないかな~~」
「筋肉マニアに聞いてない」
「マニアじゃないっての」
すごい食いつきっぷりだな。窓が鼻息で白くなってるぜ。しかしリナルアのことは完全に目に入ってねぇな。
俺たち鬼人は人間より目がいいから、窓から離れたこの席からでもやつらの姿がよく見える。
「レンさん、アドルティスさんと仲いいんだね~」
いやいやいやいや、仲いいとか聞いてねぇぞ。それどころか結構迷惑そうにしてたよな、あいつ。
「ほら、レンさんってあの『剣鬼』の人とお友達なんでしょう? ほら、レンさんの妹が付き合ってるっていう」
「何?」
いかん、あまりに思いがけない言葉に声が出た。だが幸い盛り上がってる隣の女たちには聞こえなかったらしい。いや、それより俺がリナルアとつきあってるなんて初めて聞いたぞ?
首を傾げながら顔を戻すと、向かいのリディアが半目でこっちを見ていた。
「あなた、いつからリナルアと付き合ってたの?」
「付き合ってねぇよ」
「ふーん。なんだ、フカシか」
リディアはそう呟いて白けた顔でワインをごくりと飲んだ。こいつは顔はミステリアスな美女系の割に結構口が悪い。
その時、またしても隣から悲鳴が聞こえてきて持ち上げたジョッキを落としそうになった。
「キャーッ! ちょっと! あれ見て!」
「やだ、顔が近ーい!」
「うそ、ほんと!」
………………おい、あいつら何してんだ。
見れば外の店先でアドルティスがレンに肩を抱かれて何かを覗き込んでいる。その隣でリナルアが何か言って手を叩いて…………レンの野郎、今度はアドルティスの腰なんか抱いてヘラヘラ笑ってんぞ。おい、アドルティスも何やってんだ。お前そいつのこと苦手なんだろ? いつも触って来ようとすると避けてたじゃねぇか。何ボケッと突っ立ってんだ。避けろよ。離れろよ。
なんか妙に面白くなくて皿に残ってた軟骨のから揚げを口に放り込んでバリボリと奥歯で噛み砕く。
というか、最近あいつと全然顔を合わせてないな。どのくらいだ? あのすごいコレクション? の数々を見せられた晩からずっとだから十日ぐらいか? 長いな。
俺は元々じっとしてるのが苦手だから、何日も続けて街にいることはあまりない。それでもお互いダナンにいる時はなんだかんだで三日と空けずに会ってメシを食ったりなんだりしているはずだ。
たいてい俺が街に戻るとなぜかタイミングよくあいつが会いに来て『下宿のばあさんがうまいミートパイを焼いたからうちで食べよう』とか『いい酒が手に入ったから飲もう』だとか誘ってくる。だから俺も遠いところに行って帰ってきた時は名物の酒だとか菓子だとか、途中で見つけた珍しい石とか花や草とか持って行く。あいつ、そういうの集めるのが好きだからな。集めてどうすんのかは謎だが。
それはともかく、俺もあいつもダナンにいるのに十日も会ってないのは初めてだ。
まあ、あんなこともあったし、さすがに気まずいのかと思って俺からは特に会いに行ったりはしてないからお互い様なんだが、それにしたってなんでこんな時間にこんな場所に、しかもあいつと一緒にいるのかが解せん。
その時、窓ガラス越しにアドルティスを見下ろしてやけにやに下がってるレンの顔が目に入って、なんかイラっときた。
そういえばあいつ、あれから十日も経つが、あんなにセックスが好きで気持ちいいことに弱くて、男のくせに尻を責められてイく寸前までなっちゃうような身体してて、それでそんなに長い期間清く正しい生活なんてできてるんだろうか?
ふと湧き上がったそんな疑問に、なぜか酔いとは違った熱が腹の奥底にカッと差し込む。
あのオモチャで自分で慰めてるのか? でもあいつ結局、あの細い張型だの魔道具だのじゃイケなかったよな。そんでえげつねぇ形した黒いズイキは自分じゃ入れられなかった。そんなんでちゃんと自分でヤれてるのか?
いや、普通に前を触ればイけるんだろうが、あれだけ尻に張型だのなんだの入れて二へんも三べんもイッてるヤツが摩羅を擦るだけで満足できるのか?
思わずジョッキをぐいと煽ろうとしたがまたしても空で思わず舌打ちをする。
「おい、同じのもう一杯」
「はい! 今すぐに!」
そう暑いわけでもないのになぜか喉が妙に干からびてるような気がして、届いたエールを一気に腹に流し込む。向かいでリディアがカメムシでも踏んづけたみたいな顔してこっちを見ているが、まあそれはどうでもいい。
するとまた隣の女たちが急に声を潜めてしゃべり始めた。
「……ねえねえ、アドルティスさんって、最近すごく色っぽい時があると思わない?」
「………………わかる」
………………俺だけじゃなくお隣さんもだいぶ酔いが回ってきてるなコレ。色っぽい? んなわけあるか。と思いつつまた窓の外を見たら、今度はアドルティスの方がレンを見上げていた。そして長い睫毛をゆっくりと動かして瞬きをすると、薄く開いた口から何かを言う。思わずその顔に見入っていると、次の瞬間ゆっくりと口角を持ち上げてアドルティスが笑った。
………………なんだアレは。あいつあんな顔もするのか。隣の女たちも窓に張りついてあいつを見ながらなんか無言だし。というかあんな外の往来であんな顔するんじゃねぇ。わざとか。それとも隣にいる垂れ目でド派手な金髪でいつもヘラヘラ笑ってる野郎のせいか。お前そいつ苦手なんじゃなかったのか。
ああ、なんか面白くねぇ。なんかイライラしてきた。というかここしばらく俺はずっと何かに腹を立ててムカムカしているような気がする。
大体なんなんだ、あいつは。いきなり寝てる人間のイチモツを咥えて襲い掛かったり、散々エロい声漏らして人のこと煽って一晩に二度も三度もイキまくったり、好きだのなんだの本当か嘘かもわからないうわごと言って人のことビビらせておいていきなり十日も雲隠れしやがって。なんかあったら呼べっつっただろうが。
腹が立った。無性に腹が立ってきた。
俺はリディアの無言の視線を振り切るようにジョッキをテーブルに叩きつけると、窓の外のあいつを見てぐっ、と目に力を籠める。
おい、こっち見ろ。俺に気づけ。自分に向けられる『そういう』視線には馬鹿かっていうくらい鈍いが、殺気とか魔獣の気配にはものすごく敏感だろうが。オラ、どうしたそれでも本職の斥候よりとんでもなく優秀な目と耳を持ってる俺の相棒か、コラ!
その時、アドルティスがビクッと驚いたようにこっちを向いた。途端に窓に張りついてた女たちがキャーッ! と悲鳴を上げたが残念だったな。そいつを振り向かせたのはお前らの熱い視線じゃなくて俺の殺気だ。
ついでに反対側のテーブルの剣士や重戦士が化け物でも出たみたいな顔して椅子から落っこちてるけどな。悪い悪い。
アドルティスは不思議そうにキョロキョロと辺りを見回していて、そんなヤツにレンが懸命に何か話し掛けている。それを見てなんとなく『やってやった』みたいな気分になって頭も腹の中もスッキリした。よし、なにか追加するか。
「大将、コカク鳥の砂肝とハツと鳥皮追加。あ、塩でな」
「あいよ」
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