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Ⅲ 有為転変はエルフの習い 編

最終兵器、見つかる ★

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 ぎゅうぅううっとその魔道具の端っこを握り締めて、もう開けっ放しで閉じることもできない口からみっともないほどのあえぎ声を漏らす。
 え、うそ、なんで? 一人でやってる時と全然違う。やっぱりラカンがいるから? ラカンが見てるから?
 すごい、すごいすごい、しぬほどきもちがいい。ああ、でも足りない、だってラカンのは、こんなんじゃなかった、もっと、もっと太くて、かたくて、すごく熱くて、

「あっ、っん、あう」

 どうしても、思い出してしまう。この間初めてラカンに抱かれた時のことを。
 本物のラカンが入ってきた時の衝撃とか、熱さとか、苦しいのに嬉しくて気持ちよくてたまらなかった、あの時の感覚を。

「んっ、これ、ちがう、や、やだ、イけない、イきたい……ぃ……っ」

 イきたい。イきたいのにイけない。俺のペニスは痛いくらい反り返ってダラダラと先走りを垂らしている。

 駄目だ、だめだだめだだめだ。イきたいのにどうしてもイけない。いやそんなの当たり前だけど。でもすごくお腹の奥がひくひく痙攣してる。なんで、いつもこんなんだったかな? 奥よりあのしこりの方がきもちいいはずなのに。違ったっけ?
 その時、また耳元でラカンの声が聞こえた。

「……やっぱり前触らないとイけないか?」
「んっ、……あっ、そ、そう、だから、ね、ラカン、ラカン」

 頼むから触らせて、もうイかせて楽にして、って言おうとした時、魔道具を持つ俺の手をまたラカンが握ってずるり、とそれを引きずり出した。

「~~~~~ッ!?」

 もっと太くて硬いモノを欲しがって熱を持つ粘膜を引きずられて思わず悶絶する。しっとりと汗ばんで震える足の間に香油まみれでドロドロの魔道具がぼとり、と落とされた。
 ああ、やだ、むり、はやく。
 おく。おくがあつい。はやくなんでもいいからめちゃくちゃに扱いて、おくをついて、かきまわしたい。

「ラカン……、も、いいだろ……っ、まえ、さわりたい……っ」

 恥も外聞もかなぐり捨てて哀願する。なのにラカンがまだ納得いかないような声音で尋ねてくる。

「なあ、お前本当にナカだけじゃイけないのか?」
「む、むりだ、って……っ」
「けど、こないだお前……」

 そう言ってラカンが首を傾げている。一体何を不思議がってるんだろう、わかんない。わかんないけどとにかく早く楽になりたくて、子どもみたいに鼻をすすって涙を堪えて言う。

「なあ、ラカン、も、いいだろ……っ、おれ、もう、がまんできない……ぃ……」

 その時、突然ラカンがパッと何か閃いたみたいな顔をして言った。

「そうか、わかった。お前本当はこっち使ってるんだろう」
「え?」

 するとラカンが涙が滲んでよく見えない俺の目の前に何かを突きつける。

「これ、な?」
「………………ッ!!」

 なんで。なんでソレ持ってんの。
 サーッと音をたてて血の気が引いていくのがわかる。
 それは他のと一緒に買ったはいいけど一度も使わずに引き出しの奥の奥、包み紙のまましまいこんでたヤツだ。
 ものすごく珍しい、東の、ラカンの国で使われてるっていう、見たことのない形をした、ソレ。

「な……なんで、それ……っ」
「お前、隠してたのか? なら香油なんかと一緒に入れとくなよ」

 だってまさかラカンに寝室の引き出し漁られるとか思ってもみなかったんだって。っていうか忘れてたよそんなの買ったの。

「ちが……っ、それ、それは、つかったことないから、だから……」

 必死に言い募る俺に意外なほど真面目な顔をして、ラカンがソレを両手で転がしてためつすがめつする。

「でも使ってみたいから買ったんだろう?」
「い、いや、それは」
「しかし、よくこんなの手に入ったな。俺も実物は初めて見たわ」
「そ、そう……」

 古今東西あらゆる性交のための玩具を集めていると豪語する店の店主が自信満々持ってきたソレ。ラカンたち鬼人族の住む東の国のものだと聞いて思わず買ってしまった。
 黒くて太い蔦や茎を編み込んで作られた、凹凸や茎の結び目が恐ろしく禍々しい未知の淫具。本当に鬼という魔獣が存在するなら、きっとそいつの男根はこんな形なんじゃないかって思わせるような。

 ああ、どうしよう、その場の勢いで買ったはいいけど家で見たらあまりにグロテスクで、すぐに引き出しにしまってしまったのに。
 でも今、ラカンの赤銅色の大きな手に握られてると、怖いのか、それとももっと違う気持ちなのか、よくわかんないのに見てるだけでゾクゾクしてくる。
 すごい、なにかものすごく興奮して思わず固まっていたら、ラカンが顔を上げてあっさりと言った。

「どうせなら今やってみろよ。なにか失敗したりしても今なら俺もいるから安心だろう?」
「ふあっ?」

 ラカンはまるで珍しいおもちゃを見つけた子どもみたいにニッと笑うと、それを持って部屋から出て行ってしまった。俺はぐちゃぐちゃな気持ちのまま、ただ呆然とそれを見送る。

 な、なんでそうなるの?

 ベッドの上に座ったまま、ラカンが戻ってきたらなんとか思いとどまらせようと必死に言葉を探すが、頭が真っ白でなんにも浮かばない。するとラカンは小さな手桶を持って戻ってきた。
 その中には湯が入っていて、その凶悪な形の淫具が浸してある。

「これ、こうやって湯で温めるんだろう? 初めて見たが表面が少しとろっとなるんだな」

 面白そうに言いながら、濡れて黒光りするソレを俺に持たせると、その手ごと握りこんで言った。

「ほら、見ててやるから。な?」
「う、うそ……ぉ……」

 なんかもう、人語とは思えない情けない声しか出ない。ぐちゃぐちゃの頭でただ呆然と目の前に突きつけられたソレを見つめた。

「なぁ、アドルティス。なんで今までコレ使わなかったんだ?」

 なんで? なんでって、だってこれ、明らかに、大きすぎる。
 それに、すごく、こわい形してる、だから。

「……アドルティス?」
「……ち、ちが……っ、おれ、そんな」

 怖くて怖くてラカンの顔が見れない。怒ってるかな、呆れてるかな、こんなもの持ってて、そのくせラカンにこれでヤれって言われてるのに怖くてできなくて。

 張型だの魔道具だの、いやらしい道具で夜な夜な自分を慰めていながらこんなこと言って笑われるだろうけど、本当は、俺は別にこんなオモチャとセックスしたいわけじゃない。ラカンに抱かれてるって想像しながら、でも実際そんなことあるわけないから、ただ想像しながらちょっと中を弄って、そして普通に前を触ってイケればそれで充分なんだ。

 ほんの、ちょっとした好奇心だったんだ。この怖いモノも一緒に買っちゃったのは。
 俺が知らない、遠いラカンの故郷で作られた物だっていうから。それにすごく大きくて、だからもしかしたらラカンのと同じくらい大きいんじゃないか、って、思ったから。でも。

「……っふ、ひっく、んぐ」

 涙と嗚咽が止まらなくて、ああ、もうほんとに頭ぐちゃぐちゃだ。視界も涙でドロドロでよく見えない。もうなりふり構わず子どもみたいに目を擦る。すると開けた視界にすごく妙な顔してこっちを見ているラカンの顔があった。
 あれ。俺また口に出して言ってた? そりゃまずいな。だって俺がラカンのこと好きなのは秘密だし。言っちゃ駄目だし。けど、もうぐちゃぐちゃでどろどろの頭の俺の口は勝手に開いて勝手に言ってた。

「ど、道具が、すきなわけじゃ、ないし」

 またずびっ、と鼻をすする。、

「ほんとは、ラカンのじゃないと、イヤだ」
「………………」

 ラカンは無言だった。ただ大きく目を見開いて俺を凝視している。これ、びっくりしてる顔なのかな? びっくり顔でもすごくカッコいい。ほんとカッコいい。触りたいな、もっとずっと見ていたいな。そんなしょうもないことを考えていると、不意にラカンがちょっとだけやさしい目をして言った。

「…………これ、俺のと同じくらいのサイズだな。多分」

 えっ、なにその新情報。やっぱりそう?

「………………ほんと?」
「多分、だけどな」

 そう言ってラカンが少し柔らかくなった黒い淫具を両手で握ったり離したりして眺める。俺は恐ろしい形をしたソレを弄ってるラカンの手をじっと見てしまう。
 ……ってことは、あんな風にラカンはいつもラカンくんを握ってヌイたりしてるわけだ。うわ。すごい興奮してきた。

「どうする? アドルティス」

 ラカンが横目で俺を見ながら尋ねる。

「コレ、入れてみるか?」
「………………うん」

 だってラカンがそう言うんだし。ラカンのと同じくらいだって言うし。
 途端にその卑猥な道具がものすごく大事な宝物のように思えてきて、俺はラカンから両手で恭しくソレを受け取る。
 はあ♡ ラカンの♡ ラカンのとおなじおおきさだって♡ おなじふとさだって♡ なにそれドキドキする♡♡
 間違いなく今俺はどろどろに蕩け切ったみっともない顔をしていることだろう。馬鹿だ阿呆だと罵られても全然構わない。だって何度も言うけど俺は本当に馬鹿で阿呆なんだから。ことラカンに関してだけは。

 茎を固く編み込んで作られた、隆起や結び目が恐ろしい淫具の先端をひくひく期待してるとろとろのソコにくっつける。そういえばこの間、ラカンくんとココ、ちゅっちゅっ、ってさせてくれたなあ。ラカンくんとアディちゃんのキス。すごく羨ましくて、すごく幸せだった。
 思わず口の端に笑みが浮かぶ。そんな俺をラカンがじっと見ている。

「…………っふ…………っ」

 ぬぷ、と先端を押し込む。ラカンのと同じ大きさの淫具を美味しそうにくわえ込むのを、ラカンが見ている。それだけでイッてしまいそうな気がする。
 でもさすがに最初の張型とは太さが全然違うし、魔道具とも形がまったく違うから、なかなか簡単には奥へ入っていかない。
 俺は一生懸命息を吐き、深呼吸を繰り返してなんとか全部呑みこもうと頑張る。でも思ったように入らなくて泣きたくなる。
 なんで、こないだラカンに抱いて貰った時は、確かにラカンのが入ったのに。途中までだったけど、でもこれ同じ大きさなんだよね? なのになんで? 

 奥が熱くて熱くて我慢できない。ってか奥が熱いってなんなんだ。もうほんとうに俺、おんなのこになっちゃったんだろうか。おんなのひとが男に抱かれてるときは、こんなふうに奥にほしくてほしくてたまらなくなるんだろうか。

「ん……っ、っふ、あ…………、う、ぐ……っ」

 はいんない。おおきすぎてはいんない。俺が下手なだけ? なにかコツがあるの? イキたい。なか、あつい。たすけて。たすけてラカン。

「ラ、ラカ……ン……っ」

 ああ、本気で泣けてきた。俺、やっぱり駄目なんだな。西の森にいた時も、こっちに来てからもしょっちゅう影で色々言われてるのに気づいてた。
 見たいものしか見ない。人の気持ちに疎い。見た目に中身が伴ってない。弓だって支援魔法だってちょっとは自信あるけど、多分そのくらいのことできるやつはいくらだっている。
 いいとこ全然ないな。なんでラカンは、こんな俺にずっと付き合ってご飯食べたり依頼受けたりしてくれてるんだろう。
 でもすき。すごくすき。ずっとすき。たぶん、これからもずっと。

 その時、凶悪な形をした淫具を握り締めたまま固まってた俺の手が、暖かいものに包まれた。
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