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Ⅰ 窮鼠、鬼を噛む 編
アドルティス、パニック ★
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ハッ、ハッ、って、耳元に聞こえるラカンの熱くて切羽詰まったみたいな荒い息遣いにゾクゾクしてしまう。ああ、すごい、すごい、ナカだけじゃなくて、耳の中まで犯されてるみたいだ。
「ハッ、ハッ、な……ぁ、アドルティス……っ。俺、もう出そう、なんだが……っ、出していいのか……っ、これ?」
その言葉で、ラカンが今まで俺以外に男を抱いたことがないのがわかって少し嬉しくなる。
「いいよ、出して、俺もラカンの、欲しい……っ」
俺もハアハア言いながら、ラカンの粗削りで猛々しくて見蕩れてしまうくらいかっこいい顔を両手で挟んで答えた。
「ねえ、ちょうだい……っ、ラカンの、ラカンの子種、あふれるくらい、いっぱい、おれにちょうだい……っ」
こんな娼館の遊び女みたいなセリフを言うやつが現実にいるとは思いもしなかった。言ってるよ俺。言っちゃってるよ。今日の俺は一体いくつの伝説を生み出せば気が済むんだろうか。
「ラカン、ラカン……っ」
お腹の奥でどろどろと煮えたぎる何かが出口を求めて渦巻いてる。
「さ、さわって、まえも、おねが……っ」
「わかった」
すぐにラカンの大きくてかさついた手が俺のモノを握って優しく扱いてくれる。
「あっ、っふ、んっ、あ、あっ」
気持ちいい、気持ちいい、気持ちよすぎて頭が変になる。
「ハッ、ハッ、……ッ、クソッ、オラ、イけ、アドルティス……ッ」
「やっ、あ、あ゛~~~~~っ」
目閉じてるのに、真っ白になった。すっごいチカチカした。頭がふっとんだかと思った。それくらいの衝撃だった。
「……ッ、ハ……ッ、ッ、はぁ……ッ、……ッ」
すごい、いきが、いきができない。俺のモノも初めて人から与えられる快感に震えて、先端からとろとろと精液を零して腹を濡らしてる。
お腹の中にじわじわと熱が広がっていく。ラカンも無事イけたんだ。良かったぁ……。
そのラカンはどさっと俺の上に落ちてきて、前に一度出くわした超大型のゴルディアックスをほぼ一人で倒した時みたいにハアハアしてた。
俺は本気で、指一本動かすこともできなくてぐったり寝転んだままだ。というか乗っかってるラカンがめちゃくちゃ重い。重たすぎて息ができない。あ~~でも幸せな重みだ……。
それにこの体温。鬼人族って本当に体温が高いんだな。生い茂る木々に光を遮られた森の土みたいにひんやりした肌を持つ俺たちエルフとは真逆だ。でもこの熱さがたまらなく気持ちがいい。
ああ、でも中に出した後ってすぐ洗わないとまずいんじゃなかったっけ? 例の淫具を買った時に店の男がそんな話をしてた気がする。たしか中で精液を吸収してしまって腹を壊すとかなんとか……吸収……いいな……ラカンの精液……赤ちゃんはできないけれど。
どうせ俺も明日は暇だし、腹くらい壊してもまあいいか、一生に一度の思い出だ……なんて末期なことを思っていたら、急にラカンがぐいっと体を起こした。一気にラカンの重みと熱がなくなって、俺はものすごく悲しくなる。
ラカンはずり落ちてたズボンと下帯をえらく大胆に脱ぎ捨てて全裸になると、そのまま部屋の小さなテーブルのところに歩いていって水差しの水をそのまま直接口をつけて一気にあおった。そしてコップを一つとって俺のところに戻ってくる。赤銅色のものすごく大きくて逞しい身体にうっすら汗が浮かんでて死ぬほどかっこいい。
(……ああ……これでもう、思い残すことはないなぁ……)
ラカンに触れて、その上本当に抱いてもらって、しかも俺の中でラカンも達してくれた。成り行きみたいなもんだったけど、ちゃんと好きって言えて、さらには一糸纏わぬかっこいい裸体まで拝ませて貰えたんだもの。まさに一生分の幸運を使い果たした気分だ。
今まで酔っぱらったみたいにふわふわして覚束なかった思考が少しずついつもの状態に戻ってくる。
よし、覚悟はできた。いくらでも思う存分罵って殴るといい。さあ来い!!!
ところがラカンはコップに水をつぐと「飲むか?」と言って俺に差し出した。……とりあえず出されたもんは飲まなきゃ失礼だよな。なんとか身体を起こして水を飲む。それは裏の井戸で汲んだただの水なのに、西の森の一番奥深くに湧き出る清水以上に美味しかった。
思わずごくごくと一心不乱に飲んでいると、そんな俺を見下ろしながらラカンが言った。
「お前、明日は丸一日空いてるのか? 何か依頼受けてるか?」
……え? 今聞くことそれ???
「あー、そうだな、ええと、補修に出してた弓を受け取りに行くつもりだけど……」
「ふーん、俺は午前中に一度ギルドに行かなきゃならないが、後はなんにもないな」
そっか、ラカンも明日暇なんだ。そういえばそう言ってたな夕飯の時。あ~~~それなら明日も一緒にご飯食べたり、久し振りにどこか行ったりしたかったな。こんなことしでかす前なら気軽にそう誘えたんだけどな。
するとラカンが残ってた水を一気に飲み干してから、やけにあっさりと言った。
「なら久しぶりに街の外の森にでも行って、その後なんか食いに行くか」
え、ラカンと森に? すごい、それどんなご褒美?
森、と聞いてぱああぁあっ、と頭の中が晴れ渡る。
ラカンは時々仕事とは別にこんな風に俺を街の外へと誘ってくれる。行先は大抵森とか川とかその辺りだ。
といっても別に何か特別なことをするってわけじゃない。
俺はダナンの街に住んでもう八年経つけれど、やっぱりあまり森を離れては生きていけないらしい。
だからたまに森に行ってはただその辺りをフラフラして綺麗なレースみたいに繊細なシダの葉に触れたり、折れて腐った倒木の影にひっそりと生えた小さなキノコの群れを探したり、ただ歩いたりする。
ラカンはその間釣りをしたり鹿やなんかを仕留めたり昼寝したりしてる。そして日が暮れる前に一緒に帰って来る。ただそれだけなんだけどすごく楽しい。
これは腹なんか下してる場合じゃないな。起きよう。起きて水浴びてナカの始末をしなければ。
俺は慌てて「わかった」って返事してから勢いつけてベッドから起き上がろうとしたら、いきなり足から崩れて床にべしゃ、っと倒れこんでしまった。
「何してんだ、お前」
ラカンが呆れた声で言う。
は……恥ずかしい……でもなぜか全然足に力が入らない。
思うようにならない体にムチ打ってなんとか立とうとするけど、足が震えて全然立てない。一日中走り回った時だってこんな風にはならなかったのに。
俺が一人で羞恥に身もだえながら蹲ってたら、ラカンがとんでもなく楽しそうに笑った。
「お前、ひょっとして腰が立たないのか?」
「…………うるさい」
「『翡翠の目をした麗しき銀鈴の君』の名が泣くぜ」
「………………俺はそんなチンドン屋みたいな名前じゃない」
「酒場の歌い女たちが言ってんだよ」
なんと言い返してやろうか考えていると、尻の間から何かがとろとろと伝い落ちてくるのがわかった。これ、アレか。ラカンのか。
一瞬、いやだなって思ってしまった。せっかくラカンに貰ったのに、なくなっちゃうな、って。
するとラカンもそれを見たのか「うおっ、どんだけ中に出してんだ。盛り過ぎだな」なんて勝手なことを言っていた。出したのはあんただろうが、こら。
「風呂入るか。ここ、湯が出るやつあるだろう」
なんてラカンがものすごく普通に言うので、つい俺も普通に「そうだな」なんて答えてしまった。
俺が下宿させて貰ってるこの家は貴族のお屋敷で長年働いていたエリザおばあさんのもので、貴族の元ご主人様の計らいで風呂場にお湯が出るシャワーがついている。火と水の魔石を使ってお湯を沸かす仕組みらしい。
俺たちエルフは生まれつきの魔力の量は割と豊富だが、それを使って湯を沸かそうなどと考える者はいない。だからこういう魔道具を考えて作ってしまう人間はすごいな、と思う。それともドワーフの職人が考えたのだろうか。
普通、街の人は井戸の水で身体を拭くか、冒険者向けの共同浴場ぐらいでしか湯浴みはできない。普通の家で湯が出る浴室があるなんてめったにない贅沢だ。
根っからの自由人のラカンは家を持つことにこれっぽっちも興味がないが、この家のシャワーだけは羨ましいと言っている。
(……ってそんなことはどうでもよかった)
と、俺は我に返る。
いやいやいやいや、そんなことよりなんでラカンはこんな普通なんだ???? 怒ってないの????
いくら考えてもよくわからない。
……とりあえず汗を流そう。そしたら少しはまともに頭が動くようになるかもしれないな。
「……じゃあラカン、先に入ってくるといい」
「でもそれ早くなんとかしないと床汚れるだろうが」
「それはそうだけど……」
それに早く中出さないと、森に行けなくなっちゃうもんな。ラカンの子種は惜しいけど、森には絶対行きたい。
そんなことを、またしても俺は口に出して言ってたらしい。完全に頭のネジ飛んでるな、俺は。
ラカンの子種云々に関しては微妙な顔をしていたけれど、早く出さないとってところでラカンは太い眉を上げた。
「なんだ、やっぱりまずかったのか?」
「別にまずくはないけど、そのままにしとくと腹を下すらしいと聞いた」
「おいおい、ほんとかよ」
するとラカンは急に立ち上がって俺が辛うじて引っ掛けてたシャツをパッと剥ぎ取ってしまう。そしで俺を軽々と担ぎ上げてしまった。
「うぇっ!?」
あまりに突然すぎて変な声を上げてしまう。
「そういうことは早く言えよ。洗ってやるから」
「い、いや、いいって! 自分でやるからいいって!」
「そんな足震えててできるかよ」
「いや、それはそうかもしれないけど……」
っていうか、本当になんでこの人こんな普通なんだ? 酒で酔わされて寝てるところを襲われて勝手なことをされて、なぜ怒らないんだ? 昔あの馬鹿野郎にしたみたいに投げ飛ばさないの?
正直なにがなんだかわからない。わかんないわかんないで頭ぐるぐるしてるうちに、いつの間にか浴室に連行されてて、俺は思わず絶叫してしまった。
この時ほどエリザさんの耳が遠くて本当に、本当に良かったと思ったことはなかった。
「ハッ、ハッ、な……ぁ、アドルティス……っ。俺、もう出そう、なんだが……っ、出していいのか……っ、これ?」
その言葉で、ラカンが今まで俺以外に男を抱いたことがないのがわかって少し嬉しくなる。
「いいよ、出して、俺もラカンの、欲しい……っ」
俺もハアハア言いながら、ラカンの粗削りで猛々しくて見蕩れてしまうくらいかっこいい顔を両手で挟んで答えた。
「ねえ、ちょうだい……っ、ラカンの、ラカンの子種、あふれるくらい、いっぱい、おれにちょうだい……っ」
こんな娼館の遊び女みたいなセリフを言うやつが現実にいるとは思いもしなかった。言ってるよ俺。言っちゃってるよ。今日の俺は一体いくつの伝説を生み出せば気が済むんだろうか。
「ラカン、ラカン……っ」
お腹の奥でどろどろと煮えたぎる何かが出口を求めて渦巻いてる。
「さ、さわって、まえも、おねが……っ」
「わかった」
すぐにラカンの大きくてかさついた手が俺のモノを握って優しく扱いてくれる。
「あっ、っふ、んっ、あ、あっ」
気持ちいい、気持ちいい、気持ちよすぎて頭が変になる。
「ハッ、ハッ、……ッ、クソッ、オラ、イけ、アドルティス……ッ」
「やっ、あ、あ゛~~~~~っ」
目閉じてるのに、真っ白になった。すっごいチカチカした。頭がふっとんだかと思った。それくらいの衝撃だった。
「……ッ、ハ……ッ、ッ、はぁ……ッ、……ッ」
すごい、いきが、いきができない。俺のモノも初めて人から与えられる快感に震えて、先端からとろとろと精液を零して腹を濡らしてる。
お腹の中にじわじわと熱が広がっていく。ラカンも無事イけたんだ。良かったぁ……。
そのラカンはどさっと俺の上に落ちてきて、前に一度出くわした超大型のゴルディアックスをほぼ一人で倒した時みたいにハアハアしてた。
俺は本気で、指一本動かすこともできなくてぐったり寝転んだままだ。というか乗っかってるラカンがめちゃくちゃ重い。重たすぎて息ができない。あ~~でも幸せな重みだ……。
それにこの体温。鬼人族って本当に体温が高いんだな。生い茂る木々に光を遮られた森の土みたいにひんやりした肌を持つ俺たちエルフとは真逆だ。でもこの熱さがたまらなく気持ちがいい。
ああ、でも中に出した後ってすぐ洗わないとまずいんじゃなかったっけ? 例の淫具を買った時に店の男がそんな話をしてた気がする。たしか中で精液を吸収してしまって腹を壊すとかなんとか……吸収……いいな……ラカンの精液……赤ちゃんはできないけれど。
どうせ俺も明日は暇だし、腹くらい壊してもまあいいか、一生に一度の思い出だ……なんて末期なことを思っていたら、急にラカンがぐいっと体を起こした。一気にラカンの重みと熱がなくなって、俺はものすごく悲しくなる。
ラカンはずり落ちてたズボンと下帯をえらく大胆に脱ぎ捨てて全裸になると、そのまま部屋の小さなテーブルのところに歩いていって水差しの水をそのまま直接口をつけて一気にあおった。そしてコップを一つとって俺のところに戻ってくる。赤銅色のものすごく大きくて逞しい身体にうっすら汗が浮かんでて死ぬほどかっこいい。
(……ああ……これでもう、思い残すことはないなぁ……)
ラカンに触れて、その上本当に抱いてもらって、しかも俺の中でラカンも達してくれた。成り行きみたいなもんだったけど、ちゃんと好きって言えて、さらには一糸纏わぬかっこいい裸体まで拝ませて貰えたんだもの。まさに一生分の幸運を使い果たした気分だ。
今まで酔っぱらったみたいにふわふわして覚束なかった思考が少しずついつもの状態に戻ってくる。
よし、覚悟はできた。いくらでも思う存分罵って殴るといい。さあ来い!!!
ところがラカンはコップに水をつぐと「飲むか?」と言って俺に差し出した。……とりあえず出されたもんは飲まなきゃ失礼だよな。なんとか身体を起こして水を飲む。それは裏の井戸で汲んだただの水なのに、西の森の一番奥深くに湧き出る清水以上に美味しかった。
思わずごくごくと一心不乱に飲んでいると、そんな俺を見下ろしながらラカンが言った。
「お前、明日は丸一日空いてるのか? 何か依頼受けてるか?」
……え? 今聞くことそれ???
「あー、そうだな、ええと、補修に出してた弓を受け取りに行くつもりだけど……」
「ふーん、俺は午前中に一度ギルドに行かなきゃならないが、後はなんにもないな」
そっか、ラカンも明日暇なんだ。そういえばそう言ってたな夕飯の時。あ~~~それなら明日も一緒にご飯食べたり、久し振りにどこか行ったりしたかったな。こんなことしでかす前なら気軽にそう誘えたんだけどな。
するとラカンが残ってた水を一気に飲み干してから、やけにあっさりと言った。
「なら久しぶりに街の外の森にでも行って、その後なんか食いに行くか」
え、ラカンと森に? すごい、それどんなご褒美?
森、と聞いてぱああぁあっ、と頭の中が晴れ渡る。
ラカンは時々仕事とは別にこんな風に俺を街の外へと誘ってくれる。行先は大抵森とか川とかその辺りだ。
といっても別に何か特別なことをするってわけじゃない。
俺はダナンの街に住んでもう八年経つけれど、やっぱりあまり森を離れては生きていけないらしい。
だからたまに森に行ってはただその辺りをフラフラして綺麗なレースみたいに繊細なシダの葉に触れたり、折れて腐った倒木の影にひっそりと生えた小さなキノコの群れを探したり、ただ歩いたりする。
ラカンはその間釣りをしたり鹿やなんかを仕留めたり昼寝したりしてる。そして日が暮れる前に一緒に帰って来る。ただそれだけなんだけどすごく楽しい。
これは腹なんか下してる場合じゃないな。起きよう。起きて水浴びてナカの始末をしなければ。
俺は慌てて「わかった」って返事してから勢いつけてベッドから起き上がろうとしたら、いきなり足から崩れて床にべしゃ、っと倒れこんでしまった。
「何してんだ、お前」
ラカンが呆れた声で言う。
は……恥ずかしい……でもなぜか全然足に力が入らない。
思うようにならない体にムチ打ってなんとか立とうとするけど、足が震えて全然立てない。一日中走り回った時だってこんな風にはならなかったのに。
俺が一人で羞恥に身もだえながら蹲ってたら、ラカンがとんでもなく楽しそうに笑った。
「お前、ひょっとして腰が立たないのか?」
「…………うるさい」
「『翡翠の目をした麗しき銀鈴の君』の名が泣くぜ」
「………………俺はそんなチンドン屋みたいな名前じゃない」
「酒場の歌い女たちが言ってんだよ」
なんと言い返してやろうか考えていると、尻の間から何かがとろとろと伝い落ちてくるのがわかった。これ、アレか。ラカンのか。
一瞬、いやだなって思ってしまった。せっかくラカンに貰ったのに、なくなっちゃうな、って。
するとラカンもそれを見たのか「うおっ、どんだけ中に出してんだ。盛り過ぎだな」なんて勝手なことを言っていた。出したのはあんただろうが、こら。
「風呂入るか。ここ、湯が出るやつあるだろう」
なんてラカンがものすごく普通に言うので、つい俺も普通に「そうだな」なんて答えてしまった。
俺が下宿させて貰ってるこの家は貴族のお屋敷で長年働いていたエリザおばあさんのもので、貴族の元ご主人様の計らいで風呂場にお湯が出るシャワーがついている。火と水の魔石を使ってお湯を沸かす仕組みらしい。
俺たちエルフは生まれつきの魔力の量は割と豊富だが、それを使って湯を沸かそうなどと考える者はいない。だからこういう魔道具を考えて作ってしまう人間はすごいな、と思う。それともドワーフの職人が考えたのだろうか。
普通、街の人は井戸の水で身体を拭くか、冒険者向けの共同浴場ぐらいでしか湯浴みはできない。普通の家で湯が出る浴室があるなんてめったにない贅沢だ。
根っからの自由人のラカンは家を持つことにこれっぽっちも興味がないが、この家のシャワーだけは羨ましいと言っている。
(……ってそんなことはどうでもよかった)
と、俺は我に返る。
いやいやいやいや、そんなことよりなんでラカンはこんな普通なんだ???? 怒ってないの????
いくら考えてもよくわからない。
……とりあえず汗を流そう。そしたら少しはまともに頭が動くようになるかもしれないな。
「……じゃあラカン、先に入ってくるといい」
「でもそれ早くなんとかしないと床汚れるだろうが」
「それはそうだけど……」
それに早く中出さないと、森に行けなくなっちゃうもんな。ラカンの子種は惜しいけど、森には絶対行きたい。
そんなことを、またしても俺は口に出して言ってたらしい。完全に頭のネジ飛んでるな、俺は。
ラカンの子種云々に関しては微妙な顔をしていたけれど、早く出さないとってところでラカンは太い眉を上げた。
「なんだ、やっぱりまずかったのか?」
「別にまずくはないけど、そのままにしとくと腹を下すらしいと聞いた」
「おいおい、ほんとかよ」
するとラカンは急に立ち上がって俺が辛うじて引っ掛けてたシャツをパッと剥ぎ取ってしまう。そしで俺を軽々と担ぎ上げてしまった。
「うぇっ!?」
あまりに突然すぎて変な声を上げてしまう。
「そういうことは早く言えよ。洗ってやるから」
「い、いや、いいって! 自分でやるからいいって!」
「そんな足震えててできるかよ」
「いや、それはそうかもしれないけど……」
っていうか、本当になんでこの人こんな普通なんだ? 酒で酔わされて寝てるところを襲われて勝手なことをされて、なぜ怒らないんだ? 昔あの馬鹿野郎にしたみたいに投げ飛ばさないの?
正直なにがなんだかわからない。わかんないわかんないで頭ぐるぐるしてるうちに、いつの間にか浴室に連行されてて、俺は思わず絶叫してしまった。
この時ほどエリザさんの耳が遠くて本当に、本当に良かったと思ったことはなかった。
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