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Ⅰ 窮鼠、鬼を噛む 編

アドルティスの先制攻撃 ★

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「んッ、ん、ふ…………っ」

 すぐに落ちてくる自分の髪が邪魔で手で掻き上げて、一心不乱にラカンのモノを舌と頬の内側と喉の奥で責めていると、どんどん熱く硬く大きくなっていって、俺の脳味噌はますますぐらぐら沸騰し始める。

(ラカンの、おおきくなってる。きもちいいのかな、おれ、じょうずかな)

 腹の奥底がひどく疼いて、思わず下腹に力が入る。

(ほしい、いれたい、ここ、いっぱいにしてほしい)

 ラカンのモノをしゃぶりながら、自分のズボンのウエストから手を突っ込んで後ろを探る。
 ラカンを眠らせることに成功した直後、大急ぎで身体を洗って指と香油でしっかり準備したので、そこはもうかなり柔らかくなってる。中に仕込んだ香油が溢れてきて、俺の指も1、2本くらいならなんなく入るくらいだ。

 俺はベタベタの手で下履きごとズボンを脱ぎ捨てると、ベッドの下に隠しておいた香油を取って蓋をはずす。そしてもう手で支えていなくてもそそり勃ってるラカンくんに香油をぶっかけた。勢いでズボンまで濡れちゃったけど、後で土下座して謝ろう。

 というか、このことがバレたら土下座とか弁償とかで済むわけがないと頭の片隅ではちゃんとわかっている。だけどもう今更止められない。
 好きだと自覚してから八年間、積もり積もった恋心はこれ以上ないくらいにたわわに実り、色づき、赤く熟しきってもはや枝から落ちて腐ってしまう寸前なのだから。
 香油でぬるぬるになったラカンのモノを大事に大事にしごきながら、泣き出したくなるのを必死にこらえる。

 ラカンの、愛想はないけど信頼できてなんの気兼ねもなく付き合える腐れ縁の相棒を、これ以上演じ続ける自信がない。

 ラカンが独り身の今はいい。いつでも気軽に会って一緒に呑んだりしゃべったりできる。
 例えば、俺が久々に里帰りした西の森からラカンが好きなセイレムの実を山盛り持って帰ってきた時、ラカンがでっかい魔獣を仕留めてギルドから報奨金が出た時、いい酒が手に入ったから、牡蠣の季節になったから。あれこれ口実をつけては二人で会って飲み明かしたり、くだらないことをしゃべって二人でバカ笑いしたりできる。
 でもこんないい男に恋人がずっとできないなんてことはありえない。

 もし、ラカンに決まった彼女ができたり結婚なんてしちゃったら、俺はいつも通り笑えるんだろうか。
 失意のあまりいきなり北の鷲山あたりに引きこもって渓流釣りと鳥の巣箱作りが生きがいです、なんてなっちゃったらやっぱり怪しまれるだろうか。
 そんなことばっかり考えてたら、今まではラカンとそこらの森に採取に行くだけでも、そして面倒な王都からの調査依頼でさえもすごく楽しかったのに、それがすごくすごく辛くなってきた。

 嫌われてもいい。罵られてもいい。たった一度の思い出を貰えれば、この先二度と会えなくてもいい。きっとその方が毎日こんな苦しい思いをしなくて済む。

 ラカンの上に乗っかって、大きく息を吐き出す。怖くて顔は見れない。
 ラカンの身体は大きくて分厚くて胴回りなんかもすごく太いから、男の俺でも跨ると思いっきり足を開くことになる。うーん、なんかすごく自分がか弱くていたいけな女の子にでもなった気分だ……。
 俺は別に女になりたいなんて思ったことないけど、でもラカンが自分から抱きたがるような相手になった気分を味わうだけでもちょっと嬉しい。って本気で末期だな。

 ハアハアやらしい息を漏らしながら目をつぶって、ラカンの大きなモノを手で軽く支えてその上にゆっくりと腰を落とす。
 ぴと。
 濡れた亀頭が俺の後孔にくっついた。ほんのちょっとだけ腰を前後に動かして、ぬるぬるした感触を楽しむ。そしてちょっとずつ、ちょっとずつ体を沈めていった。
 あ。
 さきっぽ。
 入った。
 そう思った瞬間、ゾクゾクとものすごい何かが背中を一気に駆け上っていった。

「っふ、……あ……ああっ!」

 狭い狭い小さな隙間をこじ開けるように、ラカンのモノが入っていく。

「あ、あ、あ、」

 すごい、すごい、すごい。ラカンが俺の中に入ってる。俺の中にラカンが入ってる。

「……っあ、や……っ、ウソ、すご…………っ」

 オモチャなんか比べ物にもならない。だってこれ、熱い。熱くて、ビクビクしてて、めちゃくちゃ大きい。俺が使ってたおもちゃなんかとは全然、全然違ってた。

「っふ、んッ、お、おっきい……っ、あっ」

 うわ、びくびく。ラカンの硬くてぶっとくてあっついアレが、俺の中でどくどく、ビクビクしてる。その感触がとにかくすごくて、俺のナカもきゅんっ、って勝手にうねってラカンのを締め付けてしまう。

 ああ、くるしい、息ができない。でもうれしい、すき、だいすき。
 きもちいいのかな。きもちいいといいな。
 俺、ラカンのことすっごいきもちよくしてやりたい。ラカンの、今までとこれからの女よりも、もっと、ずっと。

「……っは……ぁ……っ、もっと、もっと、ほし……っ」

 もっと奥まで、もっとたくさん入れたい。ラカンので俺の中をいっぱいにしたい。ああ、でも苦しい、大きすぎてなかなか入っていかない。これ、姿勢に無理があるのかな。それとも俺が下手なせい? まだ先っぽだけなのに。

「っふ……っ、なんで……っ、ああ、もう、くそ……っ」

 いかん、涙が出そうだ。ぐし、と鼻をすすって乱暴に顔をぬぐう。
 いやだな、欲しい、全部欲しい、ラカンの、大好きなラカンの。これが最初で最後の、一生に一度のチャンスなのに。
 そう思って無理にでも腰を落とそうとした瞬間、突然視界がぐるりと反転して背中を柔らかい衝撃が襲った。

「…………へっ?」
「……お前、何やってんだ。アドルティス」

 目の前にあるのは、寝起きでものすごく不機嫌そうなラカンの顔だった。口の端にちら、と見えてる牙の迫力がすごい。

「え?」
「え? じゃないだろ。人が寝こけてる間に何やってんだコラ」
「えーと…………」

 襲ってました。と正直に言っていいんだろうか。いや、言わなくてもわかるだろう、この状態。下半身だけ裸でラカンのアレを、先っぽだけとはいえ尻で咥えこんじゃってるこの姿を見れば。

 というか俺、今まるでラカンに押し倒されてるみたいな格好してる。あ、ちょっとときめいちゃった。それどころじゃないっての。
 駄目だ、現実逃避してる場合じゃない。ラカンが早く答えろってすごい目力でガンガン迫ってきてるのに。ええとでも俺、いつもどんな声でラカンに話してたっけ。

「え、えーと、お、おいしそうだったから?」
「……何が」
「え~~、ラ、ラカンのラカンくんが」
「は? なんだそれは」

 俺は視線をラカンの顔からラカンの股間に移動させた。ラカンの目もそれを追う。

「お前、人の摩羅にヘンな名前つけんなよ」
「え、かわいいだろう? ラカンのラカンくん」
「かわいくねぇよ」

 だよね。かわいいなんてもんじゃないよね、ラカンのラカンくんは♡ すっかり頭が馬鹿になってる俺はそう言いたくてうずうずする。でもさすがにこの状況でそんなことは口が裂けても言えなかった。

 今日が俺の命日か、とこの時覚悟を決める。当然だ。ラカンはこんな風に男に寝込みを襲われて黙ってるようなやつじゃない。
 俺の脳裏に、昔俺を楯にしてオーク・キングから逃げようとした自称ベテランリーダーの剣士がラカンにボコボコにされてぶっ倒れてた姿がよぎる。

 でも不思議なことにラカンは一向に俺を殴り飛ばす様子がなかった。
 しかも俺のナカのラカンくんは、こんな状況でもなぜか全然萎えてないようだった。あれか、男の生理現象というやつかな……。切ないな……生理現象……。
 だって俺みたいなのに襲われてるのに萎えるどころか、相変わらずラカンの男根は硬くて熱くて俺のナカでピクピクしている。そう気づいた途端、思わずぞくん、として尻に力が入ってラカンくんを締め付けてしまった。

「ぐ……っ」

 俺の両手を掴んで伸し掛かったまま、ラカンが眉を顰めて低く唸る。なにその声。エロい。ものすごくエロい。今きゅんってきた。すっごいきゅんってきた。
 するとラカンがものすごく不機嫌そうに眉を顰めたまま言った。

「……お前、ちょっと加減しろよ」
「え、あ……、……ごめん」

 でも加減って何? どうしろってこと?
 ラカンに言われた事ならなんでもしてやりたいけど、よくわからなかった。
 そしたらラカンが短い髪を乱暴に掻き上げて舌打ちをした。

「……ラカンくんだァ……?」

 あ、やっぱり気に入らないのソコなのか。
 いや、そんなことよりなんでラカンはこんな普通にしゃべってるんだろう。怒鳴って殴って俺を蹴り飛ばしてもおかしくない場面だろう、今。
 きっと頭の周りにハテナマークいっぱい飛ばしてるだろう俺を見下ろして、ラカンが突然ニヤリと笑った。

「じゃあこれはアドルティスくんか」

 そう言ってラカンが突然俺のモノを握ったので、思わず息を止めてしまった。
 先走りだか香油だかでぬるぬるしてる、恥ずかしいくらい勃起してる俺のものを、ラカンがじらすようにゆっくりと上下に擦る。

「え、あ、まって、や、あ、あ……っ!」

 ラカンのぶっとい親指の腹で先端をぐりぐりされて俺はあっという間にイッてしまった。

「そ、そんなまさか……っ」

 思わず真っ赤になって呟く。は、恥ずかしい。いくらなんでも早すぎる。自分でも呆れてしまうレベルだ。

「なんだ、アドルティスくんは俺の手が大好きか」

 おかしそうに目を細めてラカンが言った。
 そりゃあそうだ。大好きな大好きなラカンの手で可愛がってもらって俺のモノが喜ばないはずがない。というか夢じゃないのか、コレ。ほんとに夢じゃないの? ラカンの、節立った大きくて男らしい手で俺のモノを触って貰えるなんて。あ、アドルティスくんか。カワイイな、アドルティスくん。アディくんとどっちがかわいいかな。
 ラカンが酔っぱらった時とかわざとらしくふざけて何かを頼んでくる時に俺のこと『アディ』って呼ぶの、実はすごくすごく好きなんだ。話したことはないけど。

「ラ、ラカン……っ」

 ああ、もっとさわってほしい。もっといっぱい。夢ならそう言えるんだけどな。夢じゃないからなぁ。夢だったらいいのにな。
 そんな矛盾に苛まれてついうっかり目を潤ませてたら、ラカンがすっごい悪者みたいな顔で笑った。

「そんでこっちはアドルティスちゃん、か?」
「ひゃうんッ!?」

 ただでさえイッたばかりで敏感なところに、いきなり狭い肉壁を太い何かで、ずん、と押し開かれて、俺の体が跳ねた。
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