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【VerΑ編第3章〜大竜星祭】
70話「祭は終わり、——side亜紀子」
しおりを挟む「【Day1】終了だああああああ!! 今回の1位は……【サーベラス】!! おめでとう! 後でイベントアイテム【星の砂】を送っておくぜえええ!! さて、ここからは運営からのお知らせだ」
スタジアムではなく、オープンチャットで流れる運営からのお知らせ。
赤い妖精スーズが叫びながら【Day1】の結果発表を行っていた。
この時ばかりは【前々前世オンライン】のプレイヤー皆が注目していた。
「さて……本来なら……【Day2】、【Day3】と続く予定だったんだけど……」
「残念ながら、イベントは延期となります。理由については追って知らせますが、この放送の2時間後からは長期メンテナンスに入る予定です。期間は……未定です」
「……残念だぜ。実際、Day1すらも中断すべきという声も上がっていたんだがな……」
その重大発表にブーイングをかますプレイヤーもいれば、当然と言わんばかりに無言で頷くプレイヤーがいた。
「だが、イベントについては必ずまた行うつもりなので……皆待っててくれ! それじゃあまた前世で会おう!」
「バイバイ!」
こうして放送が終わった。
☆☆☆
【長期】前々前世オンライン【メンテ】 Part856
212 名前:前世は負け犬
長期メンテ?
213 名前:前世は負け犬
は? せっかくめっちゃ盛り上がったのに延期でメンテとかやばくね?
214 名前:前世は負け犬
相当やばいバグあったんじゃねえの
215 名前:前世は負け犬
お前ら公式見てこい
まああれはチートだと思ってたわ
216 名前:前世は負け犬
光過敏性発作ってポリ〇ンショックかよ
それと外部ツールの使用?
217 名前:前世は負け犬
>>215
Vステの公式にも見解が載ってるぞ
光過敏性発作については、ソフト側の問題で生じたがハード側でも対応策を検討中。すぐにパッチを配布。
これに伴って、前々前世オンライン開発運営のクロムソフトウェア(株)にサービス提供を一時的に止める事を要請。
それとは別に有名プレイヤーが実は外部ツールを使用してプレイしていた事が分かって、現在クロムが聞き取り調査中。
こちらも対策を施す為に、長期メンテナンスを実行するに至った。
らしいぞ
218 名前:前世は負け犬
光過敏性発作ってあれかジュエリーフィッシュの奴等が使ってた奴か。垢BANしろ
219 名前:前世は負け犬
アキコがツール使ってたってマ?
Verβの無双は何だったんだよ
220 名前:前世は負け犬
>>219
偽アキコの方な。ゲーム内のくそAIアシストを勝手に強化して使ってたんだとよ
Verβアキコつまりラノアたんは無実ぞ。
221 名前:前世は負け犬
ややこしいな……
まあいずれにせよ……早くまたやりたいぜ
………………
☆☆☆
「なーんか……気が抜けちゃうなあ」
ぽけーっと空を見つめる一人の女——亜紀子がいた。
長い黒髪に、化粧をしているものの幼さが残る顔。
ジーンズに緑色のパーカーとラフな姿だが、その雰囲気が妙に本人に合っていた。
自宅からすぐ近くの公園で、特に何をする事もなく空を見上げる亜紀子。
まだ初夏だと言うのに、陽光が肌をじりじりと焼いていく。
ハマってやっていたゲームが長期メンテナンスに入り、亜紀子は暇を持て余していた。いや、すべき事は色々あるのだろうけど、中々手が付かなかった。仕事は幸い順調にこなせているけど……喪失感を埋めるほど忙しいわけでもない為、休日になると手持ち無沙汰になった。
ピロン、という通知音が鳴り亜紀子は携帯デバイスを取り出した。
「やっほーラノアじゃなかった亜紀子さん。久しぶり!」
それは、亜紀子がゲームで知り合った友達……ミリーだった。
「あははラノアでいいよ~。さん付けもいらないって」
「いやあ……まさかラノアが年上でしかも社会人だとは思ってへんくて……」
「顔も言動も子供っぽいってよく言われるよ」
「んー魔女め……」
「こら!」
「あはは~、ああそうやそうや忘れてた。実は今度の連休に東京いこかな思っててな」
「え! 嘘! じゃあ会おうよ! ちゃんとランキング1位おめでとう会出来なかったし」
「せやろ~そう思ってな、蔵人とユーナにもメッセ送っといたんやけど……ラノアは直接誘おうと思って」
「あー楽しみだなあ」
「あの二人が来るかどうかはわからんへんけど……まあその時はオンラインで会えばええし」
「うんうん! ああ楽しみが出来た! 東京案内したげる!」
「頼むわ~初めてやからなあ」
それからあーでもないこーでもない事を二人は喋っていた。
だけど自然と話題は二人がやっていたゲームの話になっていた。
「しかし……結局ジュエリーフィッシュの連中は自主退会したっぽいな。まあしゃあない。あんな事あった以上は同じアカウントではやれへんやろし」
「……まあ仕方ないね」
「偽アキコも消えたみたいやな。外部アシストツールを使ってたらしく、まあ言い逃れは出来んやろし。暴王も解散……と思ったら、ちゃっかり新しいリーダーを祭り上げて次のイベントでは巻き返すって意気込んでいるらしいわ」
偽アキコ……亜紀子はふと彼女はどうしてるんだろうと思った。ズルをしてまで彼女は何をしたかったのだろう。
「そうなんだ……でもメンテナンスいつ終わるんだろうねえ」
「どうやろなあ……VR法に触れた案件やからな……下手したらサービス終了かもしれん」
「もうスピちゃんに……会えないのかなあ」
「あたしもサーベルタイガーに結局なれんかったしな……何とかして欲しいもんや」
こうして二人は、通信を終えた。
亜紀子は久しぶりに、次の休日が楽しみになったのだった。
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