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【VerΑ編第3章〜大竜星祭】
38話「第一回群体名をどうするか会議」
しおりを挟むダンジョン【古竜の寝所】を攻略後、私達はそれぞれイベントに向けて準備を行っていた。
ミリーと蔵人さんは、蔵人さんのストーリークエストを終わらせて、群体を作れるようになるイベントの情報も手に入れてきた。
私は、というと。
「私は! 装備とかアイテムとか! 作ります……ふふふこの【蒸気の歯車】でなんか作れそう……ふふふ……」
まあ結局私が地下の工房に引き籠もっている間に、色々と進展があったようだ。
「ミスリルも適正価格よりちょい高めでマーケットに売ってきたから、結構儲かったで。まあもうみんな手に入れてるし、これ以上は売れんと判断して引き上げたけど」
その後、私と蔵人さんはミリーと相談しながらステ振りやスキル構成、装備について吟味した。
「あたしと蔵人はAIアシストオフによる臨機応変さと回避能力を武器に、回避アタッカー。んでラノアは……細かい事は気にせずぶちかまして。なるべく、硬い装備にして敵の攻撃を避けるではなく受けて獣化ゲージを溜める感じ。敵がラノアを無視出来ずに気を取られたら——」
「俺らで刈り取ると」
「そう! あとは、全体を見て指示出せる遠距離アタッカーがおるとええんやけど……」
「俺とミリーで分担するしかないな」
「やなあ」
そんな感じで、即席だった私達3人の連携も鍛えていた。
新装備や新要素も色々と導入して、私達は順調だった。
「そういえば【暴王】の噂聞かなくなったな」
「いや、あちこちで強そうなプレイヤーに声を掛けてるで。あたしの顔見たら逃げていくけど」
「向こうはフルメンバーで来るだろうな。【偽アキコ】も出てくるだろう」
偽アキコ。
どんな人なんだろう?
「まあでも何より……一番大事な事がまだ終わってない」
ミリーが取り出したのは、古めかしい羊皮紙だった。
それは、サブクエストをこなすと手に入る【群体申請書】だった。
既にミリーが手に入れてくれていたようだ。
「これに、群体名を記入して使用すると群体が結成される。一番最初に申請した人がその【群体】の長となるけど、それはあとでいくらでも譲渡できる。まあ誰が長をやるかは置いといて、決めなあかんのは——名前や!」
というわけで。
「はい、では第一回群体名をどうするか会議をはじめまーす!」
私のマイホーム内のリビング。
丸いテーブルを、私、ミリー、蔵人さんの順番並んで座っている。
それぞれの前には私が作った蜂蜜酒が置いてある。
「んーやっぱり3人だから3って数字を絡めたいなあ」
「元上位ランカーだったという意味も入れてはどうだ?」
「んーじゃあ【ランカービースターズ】!」
私が手を挙げてタイトル案を提案。
「んーちょっとまんまやな」
「ならば……【スリースターズ】」
「三つ星かあ」
「ダメか」
「んーダメって訳じゃないけど」
私達は色々と案を出し合ったが、どれもイマイチしっくりこない。
「うにゃー」
テーブルに突っ伏したミリーが唸る。
ちょっと行き詰まった感がある。
「難しいな……」
「んースピノサウルスにサーベルタイガーに鴉……共通点はないなあ」
「いっそ【三獣】とかそんなシンプルな名前にするとか?」
「んー。なんかそうなると、四人目が可哀想って話やん」
「だよねえ」
結局私達は何も思い浮かぶ事なく、その日は終わった。
☆☆☆
宿題として、それぞれ3案ずつ次回持ち寄ると決めて私達は解散した。
ミリーと蔵人さんはもう遅いからとログアウトし、私はもう少しだけ残ることにした。
私は、気分転換に最初の拠点——【リズナ】に行ってみる事にした。
「なんだか久しぶり感……って前もそうだったような」
ゲーム内時刻は午後9時。
リズナの街は夜になり、活気で溢れていた。スタート地点の広場には、屋台や出店が並んでおり、色んな装備をしたプレイヤーが行き交っている。
「ミスリル製の防具どう!? 今ならフルセットで500Bで売るぞ!」
「リジェネバフ30分付きドリンクはいらないっすか~。狩り前にぜひ一杯」
なんだかみんな楽しそうだ。
見ているだけで私もワクワクしてくる。
私が屋台を覗いたり、装備を見ていたりしていると広場から少し外れたところで何やら声が聞こえた。
「断る……にゃん。あんたらのやり方は気に食わない……にゃん」
「は? お前、拒否できる権利あると思ってんの?」
「あるに決まってるにゃん。時間の無駄にゃん。バイニャン」
見ると、2人の男に絡まれているのは、ピンクな女の子だった。
ピンクのポニーテールにこのゲームでは滅多に見かけないフリルのついたドレスに、夜だと言うのに日傘を差している。
その子の頭上を見れば、
【神聖猫姫天使(VR)】、と表示されていた。
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