上 下
38 / 73
【VerΑ編第3章〜大竜星祭】

38話「第一回群体名をどうするか会議」

しおりを挟む


 ダンジョン【古竜の寝所】を攻略後、私達はそれぞれイベントに向けて準備を行っていた。
 
 ミリーと蔵人さんは、蔵人さんのストーリークエストを終わらせて、群体を作れるようになるイベントの情報も手に入れてきた。

 私は、というと。

「私は! 装備とかアイテムとか! 作ります……ふふふこの【蒸気の歯車】でなんか作れそう……ふふふ……」

 まあ結局私が地下の工房に引き籠もっている間に、色々と進展があったようだ。

「ミスリルも適正価格よりちょい高めでマーケットに売ってきたから、結構儲かったで。まあもうみんな手に入れてるし、これ以上は売れんと判断して引き上げたけど」

 その後、私と蔵人さんはミリーと相談しながらステ振りやスキル構成、装備について吟味した。

「あたしと蔵人はAIアシストオフによる臨機応変さと回避能力を武器に、回避アタッカー。んでラノアは……細かい事は気にせずぶちかまして。なるべく、硬い装備にして敵の攻撃を避けるではなく受けて獣化ゲージを溜める感じ。敵がラノアを無視出来ずに気を取られたら——」
「俺らで刈り取ると」
「そう! あとは、全体を見て指示出せる遠距離アタッカーがおるとええんやけど……」
「俺とミリーで分担するしかないな」
「やなあ」

 そんな感じで、即席だった私達3人の連携も鍛えていた。

 新装備や新要素も色々と導入して、私達は順調だった。

「そういえば【暴王】の噂聞かなくなったな」
「いや、あちこちで強そうなプレイヤーに声を掛けてるで。あたしの顔見たら逃げていくけど」
「向こうはフルメンバーで来るだろうな。【偽アキコ】も出てくるだろう」

 偽アキコ。

 どんな人なんだろう?

「まあでも何より……一番大事な事がまだ終わってない」

 ミリーが取り出したのは、古めかしい羊皮紙だった。

 それは、サブクエストをこなすと手に入る【群体レギオン申請書】だった。
 既にミリーが手に入れてくれていたようだ。

「これに、群体名を記入して使用すると群体が結成される。一番最初に申請した人がその【群体】の長となるけど、それはあとでいくらでも譲渡できる。まあ誰が長をやるかは置いといて、決めなあかんのは——名前や!」

 というわけで。
 
「はい、では第一回群体名をどうするか会議をはじめまーす!」

 私のマイホーム内のリビング。
 丸いテーブルを、私、ミリー、蔵人さんの順番並んで座っている。
 それぞれの前には私が作った蜂蜜酒が置いてある。

「んーやっぱり3人だから3って数字を絡めたいなあ」
「元上位ランカーだったという意味も入れてはどうだ?」
「んーじゃあ【ランカービースターズ】!」

 私が手を挙げてタイトル案を提案。

「んーちょっとまんまやな」
「ならば……【スリースターズ】」
「三つ星かあ」
「ダメか」
「んーダメって訳じゃないけど」

 私達は色々と案を出し合ったが、どれもイマイチしっくりこない。

「うにゃー」

 テーブルに突っ伏したミリーが唸る。
 ちょっと行き詰まった感がある。

「難しいな……」
「んースピノサウルスにサーベルタイガーに鴉……共通点はないなあ」
「いっそ【三獣】とかそんなシンプルな名前にするとか?」
「んー。なんかそうなると、四人目が可哀想って話やん」
「だよねえ」

 結局私達は何も思い浮かぶ事なく、その日は終わった。


☆☆☆


 宿題として、それぞれ3案ずつ次回持ち寄ると決めて私達は解散した。

 ミリーと蔵人さんはもう遅いからとログアウトし、私はもう少しだけ残ることにした。

 私は、気分転換に最初の拠点——【リズナ】に行ってみる事にした。

「なんだか久しぶり感……って前もそうだったような」

 ゲーム内時刻は午後9時。

 リズナの街は夜になり、活気で溢れていた。スタート地点の広場には、屋台や出店が並んでおり、色んな装備をしたプレイヤーが行き交っている。

「ミスリル製の防具どう!? 今ならフルセットで500Bで売るぞ!」
「リジェネバフ30分付きドリンクはいらないっすか~。狩り前にぜひ一杯」

 なんだかみんな楽しそうだ。

 見ているだけで私もワクワクしてくる。
 
 私が屋台を覗いたり、装備を見ていたりしていると広場から少し外れたところで何やら声が聞こえた。

「断る……にゃん。あんたらのやり方は気に食わない……にゃん」
「は? お前、拒否できる権利あると思ってんの?」
「あるに決まってるにゃん。時間の無駄にゃん。バイニャン」

 見ると、2人の男に絡まれているのは、ピンクな女の子だった。
 ピンクのポニーテールにこのゲームでは滅多に見かけないフリルのついたドレスに、夜だと言うのに日傘を差している。

 その子の頭上を見れば、

 【神聖猫姫天使(VR)】、と表示されていた。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種
SF
そのVRMMOは【犯罪者】ばかり――? 新作VRMMO「Festival in Crime」。 浮遊監獄都市を舞台に、【犯罪者】となったプレイヤー達がダンジョンに潜ったり、時にプレイヤー同士で争ったりしつつ、ゲームを楽しんでプレイしていく。 そんなお話。

Beyond the soul 最強に挑む者たち

Keitetsu003
SF
 西暦2016年。  アノア研究所が発見した新元素『ソウル』が全世界に発表された。  ソウルとは魂を形成する元素であり、謎に包まれていた第六感にも関わる物質であると公表されている。  アノア研究所は魂と第六感の関連性のデータをとる為、あるゲームを開発した。  『アルカナ・ボンヤード』。  ソウルで構成された魂の仮想世界に、人の魂をソウルメイト(アバター)にリンクさせ、ソウルメイトを通して視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚、そして第六感を再現を試みたシミュレーションゲームである。  アルカナ・ボンヤードは現存のVR技術をはるかに超えた代物で、次世代のMMORPG、SRMMORPG(Soul Reality Massively Multiplayer Online Role-Playing Game)として期待されているだけでなく、軍事、医療等の様々な分野でも注目されていた。  しかし、魂の仮想世界にソウルイン(ログイン)するには膨大なデータを処理できる装置と通信施設が必要となるため、一部の大企業と国家だけがアルカナ・ボンヤードを体験出来た。  アノア研究所は多くのサンプルデータを集めるため、PVP形式のゲーム大会『ソウル杯』を企画した。  その目的はアノア研究所が用意した施設に参加者を集め、アルカナ・ボンヤードを体験してもらい、より多くのデータを収集する事にある。  ゲームのルールは、ゲーム内でプレイヤー同士を戦わせて、最後に生き残った者が勝者となる。優勝賞金は300万ドルという高額から、全世界のゲーマーだけでなく、格闘家、軍隊からも注目される大会となった。  各界のプロが競い合うことから、ネットではある噂が囁かれていた。それは……。 『この大会で優勝した人物はネトゲ―最強のプレイヤーの称号を得ることができる』  あるものは富と名声を、あるものは魂の世界の邂逅を夢見て……参加者は様々な思いを胸に、戦いへと身を投じていくのであった。 *お話の都合上、会話が長文になることがあります。  その場合、読みやすさを重視するため、改行や一行開けた文体にしていますので、ご容赦ください。   投稿日は不定期です 「小説家になろう」でも投稿していますが、投稿は終了しています

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

処理中です...