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【VerΑ編第2章〜古竜の寝所】

33話「ラノア死す?」

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 ようやくボスのHPゲージが3割ほど削れたが、まだ先は長い。 

 ミリーと蔵人さんが並走。ミリーが剣を躱し、蔵人さんが斧を弾き、更に一撃叩き込んだ。
 なんか2人とも動き速くなってない!?

 私は二人の間を縫って、ボスの懐に入ると【地鳴り火鉢】を発動。炎を纏った一撃を再び脚部へと叩き込むと、今度はそれと同時に、蔵人さんがボスの身体を駆け上がる。

 おお、ほんとに天狗みたい。

 ボスが私へと斧を振り下ろすが、それをミリーが真っ向から拳で受けた。斧が弾かれると同時にミリーが吹き飛ぶ。

 スキル発動終わりの隙を潰したくれた二人に感謝しながら私はバックステップ。
 
 蔵人さんが、空中で再び翼を広げ回転しながら錫杖をボスの頭部へと振り抜いた。

「後半分!」
「しかし、一撃喰らったらアウトなのはキツイな」

 そう言いながら戻ってくる蔵人さん。

 見ると、それぞれのHPゲージが結構減っている。

「ガードしたのにこれだけ削られるのはキッツい」

 ミリーが言うように、武器で直撃は防げても殺しきれないダメージを喰らっているのだ。
 元々盾の機能のない武器でのガードはカット率が低いんだとか。

「あと半分。リジェネ掛かってるとはいえ、少々厳しいか?」

 バフが切れるまで後3分。
 何とかそれまで倒しきりたい!

 蔵人さんの言葉と同時に、ボスが蒸気を噴き出しながら赤く発光。

「ギギャギャガ!!」

「っ! あかん!」

 ボスが剣と斧を回転するように振り回しながらコマのようにこちらへと高速で迫ってくる。

「ガードはあかん! 避けるんや!」

 蔵人さんが、背後の壁を蹴って宙へと舞う。ミリーがそれを悔しそうに見つめている。それをしても翼のないミリーや私ではすぐに落ちて、迫ってきている攻撃を避けられない。

 ……仕方ない。

「ミリー! ごめんね!」
「は? っ!! あほ!!」

 そう言うミリーに構わず私は、ミリーへとハンマーを振り抜いた。ハンマーの側面がミリーに当たり、彼女がボスの方へと吹き飛ぶ。

 ハンマーにはノックバック効果というのがあり、当たると、強制的に吹き飛ぶ効果が付いている。そして吹き飛んでいる間は——無敵判定。ちなみに、さっき蔵人さんを空に飛ばしたのもこの効果を使ってだ。

 そう、ミリーが私に教えてくれた事だ。
 “そのノックバックは、ボスには効かん事が多いが、味方には必ず効く。絶対に避けられない攻撃が来たら、それで躊躇無く殴ったらええ。少なくとも味方はその間無敵やから避けられるかもしれん”

 ミリーは無敵判定のおかげか、私からの攻撃で少しダメージを受けているものの、ボスの攻撃を喰らう事なく刃の旋風を抜けられた。

 目の前に刃による旋風が迫る。
 私はハンマーを立ててガード。ボスの刃が当たった瞬間に火花。

 私のHPがゴリゴリ削られていく。

 HPが残り4割
 残り3割

 残り2割

 ……早く終わって!

 私の願いむなしく、ボスの回転は止まず、更に速度を上げた。

 私は右手でハンマーを持ち、左手で素早く腕輪からポーションを出す。
 急げ! いそげ!

 HP残り1割。

「これで!」

 取り出したアイテムを飲む。
 しかし、私は飲む直前で気付いた。それはポーションではなく、黒い錠剤だった。
 慌てすぎて、ポーションと間違って出してしまった。

 私はそのままそれを飲み込んだ。
 当然HPは回復しないが、視界の端で違うゲージが溜まったのが見えた。
 
「二人とも……ごめんね」 

 私は聞こえるか分からないけど、そう二人に呟いた。HPゲージが削れる音と共に、聞き慣れない効果音が私を襲い、無我夢中になった私の——


 ——視界が暗転した 
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