上 下
4 / 73
【Verβ編】

4話「出会い」

しおりを挟む


「スキル? って敵が使ってくるけど、どういう物なの?」
「んー簡単に言えば特殊能力だな。アキコのスピノサウルスには初期スキルが既にいくつかあるのだが……ステータス欄を見た方が早いな」

 私は言われるがままにステータス? の項目を開けた。

ハンドルネーム:【アキコ】
種族:【スピノサウルス】
レベル:5
体力:3200
スタミナ:2500
攻撃力:3200
防御力:2800
素早さ:2200
スキル:【水泳】【四足疾走】【獣脚乱舞】

 おお、なんか色々書かれてあるけど、意味が分かんない!

「まあそれぞれそのまんまの意味だ。攻撃力は与えるダメージだな。まあ実際のダメージ計算は、質量やら速度やら加味されるので複雑なんだけどな」
「防御力が高いと受けるダメージが減って、素早さが高くなると足が速くなる、かな?」
「そうだ。体力は頭の上にあるHPゲージの数値でスタミナは、行動を行うたびに消費され、時間経過で回復する。ぶっちゃけ2000越えたらほぼ休み無しで行動できるんだが……」

 そういえば、結構遠くのフィールドまでプレイヤーを追い掛けた事あるけど平気だったなあ。

「スキルは、この三つ……最後の奴はさっきゲットした奴だね! 水泳は分かるとして残りの二つはなんだろう?」
「今度、戦う時使うと良い。ほれ、それぞれのスキルに触れれば、発動条件とどういう効果かが記載されている」
「なるほど! よし次は使ってみよっと! でもこのステータス? の数字が高いのか低いのかイマイチ分かんないなあ」
「それぞれのステータスの値で言えば、アキコより上はいる……が、総合で言えばぶっちぎりでアキコの勝ちだ」
「そうなの!? よーしランキング上位狙っちゃおうかなあ」
「いけるぜ! ガンガン狩っていけ!」
「おー!」

 私は日課のボス狩りを終えたので、プレイヤーを狩りに原始林を駆けていくのであった。


☆☆☆

【前世】前々前世オンラインβ版【ナメクジ】 Part480

344 名前:前世は負け犬
この動画www
https://www.doutube.com/watch?v=oCYXv5thgo

345 名前:前世は負け犬
>>344
グロ注意
俺、これ昔映画で見たわ

346 名前:前世は負け犬
一方的な虐殺で草生える

347 名前:前世は負け犬
>>345
スピノサウルスがアロサウルスに逆サマーソルトぶちかます映画なんてあってたまるか

348 名前:前世は負け犬
>>344
俺、このボス全然倒せないんだが……なんでノーダメなの? 馬鹿なの?
つーかあの攻撃パリィ出来んのかよ

349 名前:前世は負け犬
>>348
スキル以外の攻撃はパリィ可能
なお受付猶予は……

350 名前:前世は負け犬
俺……ぜってー原始林には行かねえ
明らかにステとPSが違い過ぎる。俺なんて今猿だけど、AIアシストがあるのに全然使いこなせないぞ
人型じゃない生物をあれだけ動かせるってやばいだろ

351 名前:前世は負け犬
猿どう? 霊長類ルートに行くか、ネコ科ルート行くか迷う

352 名前:SAGE
はじめまして。今日からこのゲームやっていますが前世カマキリでした。
どうすれば、あのサソリボス倒せますか?

353 名前:前世は負け犬
>>352
sageはメール欄だハゲ

354 名前:前世は負け犬
>>352
まず服を脱ぎます

533 名前:前世は負け犬
ふーん、移動特化の俺なら倒せるなこいつ
やってみるか

534 名前:前世は負け犬
>>533
RIP
録画しとけよ

………………

☆☆☆

「なんかアキコ最近、明るくなったね」
「そお?」
「ちょっと前まで悲劇のヒロインぶってたから正直ウザいと思ってたけど」
「ひどい!」

 VRオンラインカフェの一角で、私はユキナと女子会をしていた。

「なんかアバターの雰囲気変わったし。アキコそんなに爬虫類萌えだったっけ?」

 ユキナが私の着ている服を見て怪訝そうにそう聞いてきた。ユキナは、赤と白のストライプワンピを着ていたが、私はというと、ジーンズの上にデフォルメした恐竜になれるパーカーを着ていた。
 フードに赤い目と赤いヒレ、縁には牙みたいな白い三角がついており、背中側の下の方には尻尾も付いている。

 現実だと恥ずかしくて着られないけど、VRオンライン上ならいいかと思って購入したやつだ。

「爬虫類じゃないよ~恐竜~」
「一緒じゃない。ただのトカゲでしょ?」
「違うってば。まあ何? ラッキーアイテム? 的な?」
「ふーん。まあいいけどさ」

 興味を無くしたのかユキナが星がキラキラ光っている綺麗なソーダを飲み始めた。

「そういえばアキコ、あれやってるの? あの前世占いの奴」
「え? あーうん、ちょっとだけね」

 毎日他のプレイヤー狩ってるなんて言えない

「勧めておいてなんだけど、あれなんか裏モード? みたいなのがあってそっちがメインらしいし面白くないらしいよ。占いもしょぼいらしいし」
「あはは……そうなんだね」

 その裏モードをやり込んでいるんだけどね……。

「なんかその裏モードに彼ぴがハマッててさー最近オンライン上でも会えない。ひどくない?」
「へー……彼の前世なんだったの?」
「なんだっけな。確かオオアリクイだったような」

 ……きっとオオアリクイはよくある前世に違いない!

「やあ、面白そうな話をしているね。僕も混ぜてよ」

 突然そう声を掛けてきたのは、長身の眼鏡を掛けた男性だった。

「ええっと、ユキナ知り合い?」
「知らない」

 警戒するように低い声を出したユキナ。あーあれかオンラインナンパか。

「まあそう邪険にしないでよ。今の話、【前々前世オンラインVer.β】の事でしょ?」

 男はそう言いながら私の横へと勝手に座った。ちょっと誰も同席していいと言ってませんけど!

「だったら何?」

 ユキナが睨み付ける。

「いや、僕もそのゲームに。せっかくだからお話したいな、と」
「結構です。いこ、アキコ——あちょっと待って」

 立ち上がったユキナが、耳元に付けているデバイスに手を当てると、喋り始めた

「あ、いっくん!? どうしたの? え、今から? うん、大丈夫! うん、うん、わかった! じゃね!」

 彼氏からの電話かな?

「ごめん、アキコ、私落ちるわ」

 そう言って、ごめんねポーズをしながら、ユキナが消えた。

「置いていかれたね」

 男が柔和な笑みを浮かべて、肩をすくめたポーズを取るとユキナが座っていた席へと移動した。
 さっきはいきなり横に座ってドキリとしたのでほっとした。

「まあいつもの事です」
「そのパーカー可愛いね。それに、その下に着ているTシャツ、映画のロゴマークでしょ?」
「え、分かるんですか!?」

 そう、私がパーカーの下に着ているのは大昔に作られた映画のロゴがプリントされたTシャツだ。

 丸いロゴの中に恐竜の骨格が描かれており、その下にタイトルと、三本の引っ掻き傷。
 何を隠そう、この描かれている恐竜の骨格が私の前世でもあるスピノサウルス、らしい

「その映画の主役恐竜は確かスピノサウルス、だったかな?」
「そうなんですよ! まあ映画自体は見たことないんですけど」
「あー古い映画だからデータ自体が出回ってないね。僕は仕事柄そういうデータ色々持ってるけど……見たい?」
「見たい! です!」
「あはは、好きなんだね恐竜」
「はい!」
「よし、じゃあ、また日程決めてくれたら、僕の個人VRシネマへの招待URL送るよ。連絡先聞いてもいい?」

 私は言われるがままに、連絡先を交換した。まあ現実ならともかくオンライン上なら別に大丈夫だろう。

 それによく見れば、銀縁眼鏡に、綺麗になでつけた黒髪。スーツ姿が似合う中々のイケメンだった。

 彼から送られてきたプロフィールを見ると、

 ID:【鈴木】
 仕事:ゲームデザイナー

 とだけ書かれていた。

 鈴木って本名かな? と思ったけど聞かない。

「じゃあ、また連絡待っているよ」

 にっこりと笑う鈴木さんに、私は少しだけ予感めいた物を感じていた。

 私の運気、上がってる気がします!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

人工子宮

木森木林(きもりきりん)
SF
この小説は、産婦人科専門医・生殖医療専門医でもある筆者が、人工知能マッチングや人工子宮という架空設定を持ち込んでいますが、現在の産婦人科医療や不妊治療をベースに書きました。 昨今、結婚されない人も増え、また男女とも結婚が遅くなり、挙児を希望しても妊娠しにくいカップルも5組に1組と増えています。 妊娠しにくい原因は色々と考えられますが、「女性加齢」も原因になり、35歳くらいから妊娠率は低下し、流産率が上昇します。これは卵子数の減少と質的低下によるものと考えられます。 体外受精など生殖補助医療による出生児は29216万9797人であり、国内総出生児に対する割合は8.6%(11.6人に1人)になっています。 もちろん「妊娠出産しなければならない」ことはないのですが、「妊娠出産しやすい」「子育てしやすい」環境に向け、私達はどうしたらよいのでしょう?まずは、妊娠出産、不妊治療のことを知っていただきたいと書きました。 挿し絵は医学生時代からの友人「kinZoさん」が描いてくれました。ありがとう!

VRMMOで物作り!~さぁ始めよう、まずは壁からだ~

夢・風魔
SF
物作りが大好きな大学生「栗木望」は、事故で右手を骨折してしまう。 そんな彼に学友がVRゲームを勧め、栗木は初めてのVRMMOをプレイすることにした。 「物作り系スキルがたくさんあるぞ」そんな甘い言葉に誘われた彼が降り立ったのは、何も無い――ただただ草原が広がるだけの場所。 雑貨屋NPCがひとりという状況で、栗木は相棒の獣魔モンスターと共に安全を確保するための『壁』作りから始めた。 *ヒロインの登場予定が今のところ作者脳内にありません。 *小説家になろう カクヨムでも投稿しております。

Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種
SF
そのVRMMOは【犯罪者】ばかり――? 新作VRMMO「Festival in Crime」。 浮遊監獄都市を舞台に、【犯罪者】となったプレイヤー達がダンジョンに潜ったり、時にプレイヤー同士で争ったりしつつ、ゲームを楽しんでプレイしていく。 そんなお話。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...