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夢見る私
しおりを挟むぼっーとしている私を後に彼はそそくさと出ていく。
「もう時間なの?!」
「皆が集まっているから教室へ行こう。」
私を待たずに彼は音楽室を後にする。
「私をおいていかないでよ。」
「早く来いよ!!」
と彼は朗らかに笑った。
私は彼の後を慌ててついていく。
教室につくと中から先生の声が聞こえるだけで意外と静かだった。
私達二人は教室の後ろから入っていく。
先生が大きな声で皆に
「体育会の個人競技より、合唱コンクールの団体の方が成功させるのが難しいのよ。
一年生の最後になるコンクール…。皆の素晴らしい歌声で頑張りましょう!!」
と言った。
私は先生の一言一言が熱が入ってるなぁーと
ただただ感心した。
「ねぇ。なべ君、私、将来何になりたいのか知ってる?」
と聞いてみた。
「あっ、そういえば聞いたことないなぁ…。」
「そう、知らなかったぁ~?ピアニスト…、夢見るピアニストになりたいの…。なぁ~ンて大変だよ、きっと…。なんとなくわかるもん。」
「夢の話か~?」
「そう、夢のまた夢になるかも…。」
「でも楽しみだなぁ~。全力を尽くして頑張れよ~。」
ピアノを弾いてる間は、色んなことを考えないですむ。
気が楽だ。
少しの間忘れることができる。
少しの間だけ逃れることができる。
現実逃避、ピアノを弾くだけで忘れることが
できた。
「ところで、なべ君は大人になったら何なりたいの?」
「えっー、俺考えたことないや。」
そこまで言うと、前にいた先生に注意された。
「そこの二人、後から入ってきてうるさいぞ…。」
「はい、すみません。」
ゆっくりたまった呼吸を吐きだした
。
多分…、なべ君はもっと私より上の高校を目指すだろう…。
引越しして、私達は別々の学校となっていく。
二人は違った道へ行く。
その彼の横顔を見つめる。
このままがいいのに…。
そんな気持ちが渦巻いていた。
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