魂を彩る世界で

Riwo氏

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【リゾートバイトの裏で6】無理せず自然に一緒に居ることができる相手って貴重な相手なんですよね

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警察に見つかりたくない一心でサトシのバイクに乗せてもらい警察から逃げきれた灯里は、近くの駅までくると

「ここで大丈夫!ありがとう!」

と、バイクから降りた。

「いいってことよ。天下無双のチン撃姫様に貸しを作っておくのも悪くない。」

得意そうにサトシは言ってくる。

「助けて貰っておいてなんだけど、私の友達に手を出してきたのはそっちなんだからね。貸し借りはナシよ。」

呆れながら灯里が言い返す。

残念、と笑いながらサトシは半分は独り言のように呟く。

「噂通り厳しいな、サトルも強敵を相手にしたもんだ」

「いやー、あいつも強かったよ。全然倒れないし。」

「いや、タイマンの話じゃなくてね…」

超直情型のサトルのことだからチン撃姫にはとっくに告白でもしているものだと思っていたが、どうやらまだらしい。
これは勝手に伝えたら恨まれてしまうかな?

ふとそんなことを思ってサトシは言葉を濁した。

「…いんや、何でもない。じゃあ気を付けて帰れよ!」

爽やかに手を振るサトシに『案外良いヤツじゃん』なんて気持ちになりながら

「あいよー!もう悪いことするんじゃないよ!送ってくれてあんがとさん!」

さらっと手を振ってサヨナラをした。

そしてスマホを見ると通知がたくさん…

『今どこ?大丈夫?』
『返事して』
『どこにいる?』

しまった、一人だけ駅まで来てしまった。





雄二は内心『イケる!』と思っていた。

颯爽と助けに入ったこと、照れながら褒めてくるヨーコの態度、どうみても告白が来る。

それにしても皆の前で告白とは、なんて大胆なんだ、俺の腹筋のようだ。

そんなことを内心モニョモニョと言っているとヨーコが続けてきた。

「なんて言うか、凄くいいなって思っちゃったの。こう、相性というかなんというか…」

「で、では…」

興奮する雄二、もしかしたら今日は海から延長戦デートがあるかもしれない。

「…だから、気持ちを受け止めて欲しいの。谷川さんの」

「もちろん!喜ん…え?」

谷川?何故、谷川の名前が?

「よかった!!谷川さん!!オッケーだって!!」

ヨーコが嬉しそうに谷川の手を握る。

「ありがとうヨーコちゃん!!私、こんな気持ち初めて…夢が叶うってこんな気持ちなのかな!?」

ヨーコの手を握り返しながら谷川が嬉し泣きをする。

それから、雄二の方に向き直り目に涙を溢れさせながら言う。

「私、自分で言わないといけないと思っていたのにどうしても勇気がでなくて…そんな私なのに、真田は受け入れてくれて…」

こんな谷川は初めてみた。

いつも男勝りで、幼少の頃から異性と意識したこともなかった谷川が。

雄二は困惑した。

正直、雰囲気で強引に付き合わされるような展開は不本意ではある。

だが、こんな嬉しそうな谷川をがっかりさせたくはない。

今更、谷川のつもりじゃなかった、なんて言いづらいところもある。

あうあうあう…

グダグダと男らしくもなく悩んでいると、太陽光線が何かに反射して輝くのを感じる。

そう、それは谷川の腹筋だった。

「太陽の腹筋…」

こんな話がある。

『太陽の腹筋が輝く時、黄金の腹筋はその輝きをさらに増すだろう』

つまり、腹筋の相性は抜群ということになる。

そうなると、急に谷川を異性として意識してしまうし、なんだか可愛く見えてくる。腹筋もかわいらしい。

「いつまでも、俺の腹筋を照らし続けてくれ…」

「喜んで…!!」

輝く谷川の笑顔、そして腹筋が世界を照らした。

一同は拍手で二人を祝福した。

「おめでとう…おめでとう…!!!」






結局、灯里は連絡をしてみんなとは別便で電車に乗って地元の駅で待ち合わせることになった。

電車に揺られながら、結局なーんもなかったなぁ、何しに海まで来たんだろう、なんて物思いに耽ったり、

そもそも颯士のヤツ、自分からお願いしてきておいてリゾート地にバイトにいくとはなんて自己中なヤツ、なんてイライラしてみたりしていたらあっという間に待ち合わせ場所の駅についた。

他のメンバーより一足先に駅につき暇を持て余したのでポチポチと颯士にメッセージを打っておいた。

『海凄く楽しかった!こっちで男の人と仲良くなっちゃった☆颯士もそっちで女の子と仲良くできるといいね!♪』

ちょっとは悔しがって嫉妬しろ!なんて気持ちを込めた一通だったが、真実を知られるとなんとも恥ずかしい見栄っ張りである。

バイト中なのか返事がこないまま、メンバーと合流したが、妙に雄二と谷川さんがベタベタしていたことがここ最近で一番驚いた。

「身近で引っ付くなら海に行く必要なかったじゃん…」

と、不満を呟いたのが聞こえていなかったのが幸いだ。





5日後、示し合わせたわけでもなく、灯里が学校の美術室に行くと、颯士も同じタイミングで美術室の鍵を開けているところだった。

「およ?バイト帰りにそのままきたの?」

意外な再開に灯里が驚いていると、

「なんとなくここが恋しくなってさ」

と、颯士が笑う。

5日間合わなかっただけで随分と久しぶりに感じる。

「どうだった?海の出会いは?」

颯士がデリカシーなく訊ねてくる。

いや、ちょっとは気になっていたのかな?

「まぁ、ぼちぼちかな。そっちはどう?」

灯里が容赦なく突っ込んでくる。

ちょっと色々あったなんて言いづらいな。

「こっちもまぁ、ぼちぼち、かな。」

お互い、ハハハと笑いあった。

その後、やれ『邪悪大国(じゃあくたいこく)を倒した』だの『鮫悪天国(しゃーくてんごく)を潰した』だの報告してマウントの取り合いをして熱くヒートアップしたりした。

ひとしきり話し終えてから、二人して椅子の背もたれにそれぞれ寄りかかると、窓から見えるソフトクリームのような雲を眺めながらなんとなく颯士が呟いた。

「吉村と一緒だと楽しいな。」

「そうかそうか、それはよかった」

ハハハ、と灯里が返す。

「ずっと一緒に居たいなぁ」

ボソッと颯士が呟く。

「…え?」

思わず灯里が聞き返す。

みるみるうちに顔が赤くなっていくのを感じつつ。

「ほら、相棒って感じで楽しいじゃん」

颯士は空を眺めて、目も見ずに言ってくる。

「あ、あぁ~、そ~ゆ~ことね!はいはい!!そ~ぉゆ~あれねぇ!!」

分かりやすく挙動不審になる灯里を見て『?』となる颯士であったが、欲しい言葉が一応貰えて

『一応、良い夏になったかな』

と思った灯里であった。
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