魂を彩る世界で

Riwo氏

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【リゾートバイトの裏で5】さかな×3の歌のタイトルっぽい

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「(もしかして…)」

谷川は魔導執事の声に聞き覚えがあったが、雄二やヨーコは余裕がなく気づいていないようだ。

「いいから早く!」

魔導執事がフッと姿を消し、再び姿を現すとさらに数人のサーファーがまた倒れた。

「谷川さん、いこう!」

ヨーコに引っ張られて3人はこの場から去っていく。

心配そうにこちらをチラチラと振り向く谷川に、後ろ向きのまま親指を立てて、大丈夫な旨を伝える。

これで安心して戦える。

「てめぇ、俺たちを誰だと思ってやがる!!」

サーファーの一人が威勢よく声を上げる。

後ろから次々に増援が来る。バイクに乗った集団だ。



「俺たちは鮫悪天国(しゃーくてんごく)。俺たちに逆らうとこの鮫の牙がだまっちゃいないぜ。」

サーフボードをチラッと見せてくる。

はぁ、堕悪帝国(だーくていこく)か何かだったか…。

内心、灯里…じゃなかった魔導執事はため息をつく。

完全に呆れたが、しょせんは烏合の衆。

「堕悪帝国を潰したのは誰か教えてあげるわ」

ニヤリ…

多少の増援くらい、相手になるはずもなかった。






ヨロヨロの雄二を支えながら、谷川とヨーコはなんとかシャワー室近辺までたどり着いた。

ようやく落ち着いて連絡ができる、とヨーコがグループにメッセージを飛ばすと、連絡を見て安心したのか10分程度でメンバーがぞろぞろと集まってきた。

「谷川さんめっちゃ凄かったよ!!かっこよかった!!」

ヨーコが興奮気味にメンバーに話すと、陽一や良太も

「凄い!!さすがは谷川さんだ!!その割れた腹筋は伊達じゃないぜ!!ヒュー!!」

とはやし立てた。

「私なんて全然…とにかくもう必死で…」

そう謙遜する谷川の照れ笑いした表情は、真夏の太陽に照らされてキラキラと輝いていた。

日頃から培った力と技、その成果を誰かのために使うこと、谷川にとっては何にも代えられないほどの誇りとなった。

「それに、雄二クンもさ、凄かったよね!お腹が真っ赤になるまで叩き合ってさ!」

ヨーコもまた、照れくさそうに言う。

「だからさ、なんていうかその…」

モジモジとするヨーコに雄二は確信した。

「(これはイケる…!!)」





「魔導旋風脚(まどうせんぷうきゃく)!!」

魔導執事の嵐のような回転蹴りが一気に数人を吹っ飛ばした。

「ふぅ、まだやる?」

一応、声をかけてみたが、どうみても「まだやる」ような奴は残っていなかった。

『鮫悪天国』の連中を8割ほど倒したところで、残ったメンツは完全に戦意喪失していたのである。

完全に委縮しながら、メンバーの一人のロン毛が魔導執事に声をかける。

「もしかして…チン撃姫さんですか…?」

「チン撃ゆーな!!」

咄嗟に突っ込んでしまったばかりに

「おぉ、これがあの堕悪帝国を潰したという…」

「何故、こんな格好をしているんだ?」

「噂通りの恐ろしさだ…」

と、騒ぎ立てられる始末。せっかく魔導執事に変身してきたのに。

すると、腹筋を抑えながらサトシが辛そうに起き上がってくる。

「なるほど、アンタが噂のチン撃姫か。話は聞いているぜ…」

苦しそうな癖に起き上がって話しかけてくるとは意外に根性があるやつ、と内心感心しながらも

「あんたは?」

灯里も聞き返す。

「俺の名はサトシ。あんたが倒したサトルのイトコで、鮫悪帝国の頭はらせてもらっている。」

「(なんてどうしようもない血族なんだ…)」

灯里は思わず口に出そうになった言葉をグッとこらえた。

さすがに血族全体を馬鹿にしてしまっては申し訳ない。たまたまサトルとかサトシとかサトなんとかがしょうもないだけかもしれないのだ。

そう思うと、親御さんの苦労も窺える。このどうしようもない男も小さい頃はもう少し可愛げがあって、両親も愛情の限りを注いでいたに違いない。
しかし、今のこいつらときたら…。

『ジトーー…』

灯里の批難の目に謎のプレッシャーを感じながらも、サトシは続ける。

「サトルには聞いていたがよ、確かにハンパねぇな。その上、仲間に黄金の腹筋と、なかなかできるレスリングのねーちゃんもいる。これだけのメンツが揃えば確かに、堕悪帝国を潰せても不思議じゃねぇかもな…」

フッ…とサトシが笑う。

「(後ろ2人は全く関係ないのだが…)」

灯里が複雑な表情をしていると、何かサイレンの音が近づいてくる。

「そうだった!!警察呼んで貰っていたんだった!!」

自分で頼んでおいてなんだが、魔導執事の恰好で大暴れしたことがバレてしまうと面倒だ。あと、恥ずかしい。

どうしようどうしよう。

そんな状態で思考回路が大混線していると、サトシが転がっていたバイクを起こしてエンジンをかける。

「チン撃!乗れ!!」

サトシが放り投げてくるヘルメットをキャッチする。

「…やむを得ないわね!!」

ヘルメットをかぶってバッとかろやかにバイクの後部座席にまたがると、急発車にかかるGに耐えその場を後にした。
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