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【リゾートバイト編6】砂浜の砂が口に入って噛んでしまった時ってとても不愉快
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ポスッ…
非常に、非常に申し訳ないと思った。
麗華さんの口に砂が入ったかもしれない。
ただ、無意識に左手が麗華さんの口を塞いでいた。
一瞬、何が起きたか分からないような顔をしていた麗華さんに、つい言い訳を考えてしまう。
「あ、その、口元に砂がついていたから」
麗華さんは、半ば呆れたような、ホッとしたような顔をして口を塞いだ手をそっとどけた。
「颯士クンの手でついちゃったんでしょ」
苦笑しながら立ち上がると、服についた砂をパンパンと払いのけた。
「すみません…。」
どんな意味での謝罪なのか。自分でも正直よくわかっていなかったが、麗華さんは行為を止めたことへの謝罪ととらえたのだろう。
「まったく、こんな美少女を拒否するなんて罰(ばち)が当たるぞ」
ハハハ、と笑う姿が少しだけ寂しそうに見えた。
「そろそろ、もどろっか」
そう言うと麗華さんは花火のゴミを集め始めた。
自分でもあの時、何故止めてしまったのか分からなかった。
ただ、胸が少しだけチクッとした。
・
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昨夜はその後、特に何をするでもなく解散した。
何となく、今日はやる気がでないなぁ。
バーベキューを楽しむ声がやたらと遠くに聞こえる気がする。
昨夜のことは何だったのだろうな。
好きと言われるほどの時間を一緒に過ごしたわけでもない。
そもそも好かれている意味も分からないから好かれているわけでもないのだろう。
何故あんなことになったのか…。
いや、忘れよう。忘れよう。
…今日は麗華さん、来ないな。
ぼんやりと過ごしていたら特に何をするでもなく終業時間が来た。
「結局、来なかったな」
何とはなしに思考が口から洩れた。
・
・
・
バイキングも3日目となると飽きてきたな。
大浴場も、あまり集団入浴は好きじゃないしな。
何でこんなところでバイトしているんだったっけ。
お小遣い稼ぎ?地元でもいいじゃん。
はぁ…早く帰りたい。
・
・
・
気だるい朝がやってきた。
今日も淡々と業務をこなすか。
淡々と、淡々と…
「お、さすがに4日目となるとお疲れかな?」
ぼんやりと業務をこなしていると、背後から不意に声をかけられた。
反射的に振り返ると、そこにいたのは恰幅のいいおじさんが立っていた。
「なんだ…」
なんだ、の後にくる『おじさんか』と言う言葉を言わなかったのは我ながら偉かったと思うが、
「なんだとは失礼だな」
ガッハッハ、とおじさんは笑いながら言った。
「ちょっとちょっと、この人はオーナーよ」
おばさんパートがこそっと教えてくれる。
「え、あ、どうも、お世話になっています。」
「固くならなくて良い良い!こちらこそ助かっているよ!」
オーナーは馴れ馴れしく肩を叩きながら言った。
「どうにも最近は若い人手が足りなくてね、昔と比べて人気のアルバイトってわけでもなくなったらしい。」
オーナーは両肩を掴み、
「もしよかったら来年も頼むよ!」
と、陽気に告げてきた。
来年も、か…。娘さんと気まずいことになっていると知っても同じ様に声をかけてくれるのかな。
「はぁ…」
思わずため息が出た。
「え、あ、イヤなら無理にとは言わないが」
気まずそうなオーナーが
「それじゃ、よろしく!」
と、そそくさと去っていくのを見て、ちょっとしてから
「あぁ、悪いことをしてしまった」
と思ったのだが、時すでに遅しだった。
どうにも頭の働きが悪い。
思えばオーナーに娘さんのことを聞く手もあったか。
いや、余計気まずくなるか?
あー、もう、イライラする。
・
・
・
ササッと夕飯を済ませ、部屋でゴロゴロしていると、外から爆音が聞こえてきた。
ブォンブブブォンブォンブォン!!!!
…近年は工場等が原因の公害よりも、騒音などの都市生活型公害が問題視されているらしい。
それほどにドでかいバイクの音。
程よければロマン、しかしこれだけの爆音だと偏差値の低さを体現しているようにしか感じない。
「堕悪帝国(ダークていこく)か何かかよ。」
イライラついでに毒づいていると、拡声器を使ったのか、今度は声が響き渡る。
「オーナーの娘は預かった!!返して欲しければオーナーを出せ!!」
何!?麗華さんが攫われたのか!?
咄嗟に起き上がり靴を履く。助けないと…!!
拡声器の声は続ける。
「我々は邪悪大国(じゃあくたいこく)」
堕悪帝国か何かだった。
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ポスッ…
非常に、非常に申し訳ないと思った。
麗華さんの口に砂が入ったかもしれない。
ただ、無意識に左手が麗華さんの口を塞いでいた。
一瞬、何が起きたか分からないような顔をしていた麗華さんに、つい言い訳を考えてしまう。
「あ、その、口元に砂がついていたから」
麗華さんは、半ば呆れたような、ホッとしたような顔をして口を塞いだ手をそっとどけた。
「颯士クンの手でついちゃったんでしょ」
苦笑しながら立ち上がると、服についた砂をパンパンと払いのけた。
「すみません…。」
どんな意味での謝罪なのか。自分でも正直よくわかっていなかったが、麗華さんは行為を止めたことへの謝罪ととらえたのだろう。
「まったく、こんな美少女を拒否するなんて罰(ばち)が当たるぞ」
ハハハ、と笑う姿が少しだけ寂しそうに見えた。
「そろそろ、もどろっか」
そう言うと麗華さんは花火のゴミを集め始めた。
自分でもあの時、何故止めてしまったのか分からなかった。
ただ、胸が少しだけチクッとした。
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昨夜はその後、特に何をするでもなく解散した。
何となく、今日はやる気がでないなぁ。
バーベキューを楽しむ声がやたらと遠くに聞こえる気がする。
昨夜のことは何だったのだろうな。
好きと言われるほどの時間を一緒に過ごしたわけでもない。
そもそも好かれている意味も分からないから好かれているわけでもないのだろう。
何故あんなことになったのか…。
いや、忘れよう。忘れよう。
…今日は麗華さん、来ないな。
ぼんやりと過ごしていたら特に何をするでもなく終業時間が来た。
「結局、来なかったな」
何とはなしに思考が口から洩れた。
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バイキングも3日目となると飽きてきたな。
大浴場も、あまり集団入浴は好きじゃないしな。
何でこんなところでバイトしているんだったっけ。
お小遣い稼ぎ?地元でもいいじゃん。
はぁ…早く帰りたい。
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気だるい朝がやってきた。
今日も淡々と業務をこなすか。
淡々と、淡々と…
「お、さすがに4日目となるとお疲れかな?」
ぼんやりと業務をこなしていると、背後から不意に声をかけられた。
反射的に振り返ると、そこにいたのは恰幅のいいおじさんが立っていた。
「なんだ…」
なんだ、の後にくる『おじさんか』と言う言葉を言わなかったのは我ながら偉かったと思うが、
「なんだとは失礼だな」
ガッハッハ、とおじさんは笑いながら言った。
「ちょっとちょっと、この人はオーナーよ」
おばさんパートがこそっと教えてくれる。
「え、あ、どうも、お世話になっています。」
「固くならなくて良い良い!こちらこそ助かっているよ!」
オーナーは馴れ馴れしく肩を叩きながら言った。
「どうにも最近は若い人手が足りなくてね、昔と比べて人気のアルバイトってわけでもなくなったらしい。」
オーナーは両肩を掴み、
「もしよかったら来年も頼むよ!」
と、陽気に告げてきた。
来年も、か…。娘さんと気まずいことになっていると知っても同じ様に声をかけてくれるのかな。
「はぁ…」
思わずため息が出た。
「え、あ、イヤなら無理にとは言わないが」
気まずそうなオーナーが
「それじゃ、よろしく!」
と、そそくさと去っていくのを見て、ちょっとしてから
「あぁ、悪いことをしてしまった」
と思ったのだが、時すでに遅しだった。
どうにも頭の働きが悪い。
思えばオーナーに娘さんのことを聞く手もあったか。
いや、余計気まずくなるか?
あー、もう、イライラする。
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ササッと夕飯を済ませ、部屋でゴロゴロしていると、外から爆音が聞こえてきた。
ブォンブブブォンブォンブォン!!!!
…近年は工場等が原因の公害よりも、騒音などの都市生活型公害が問題視されているらしい。
それほどにドでかいバイクの音。
程よければロマン、しかしこれだけの爆音だと偏差値の低さを体現しているようにしか感じない。
「堕悪帝国(ダークていこく)か何かかよ。」
イライラついでに毒づいていると、拡声器を使ったのか、今度は声が響き渡る。
「オーナーの娘は預かった!!返して欲しければオーナーを出せ!!」
何!?麗華さんが攫われたのか!?
咄嗟に起き上がり靴を履く。助けないと…!!
拡声器の声は続ける。
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