魂を彩る世界で

Riwo氏

文字の大きさ
上 下
67 / 84

【リゾートバイト編4】人によって露骨に態度を変えるのは良くないが変えないのも考えもの

しおりを挟む
労働の程よい疲れと満腹感、お風呂でしっかり体も温まり、昨晩はすっきり気持ち良く眠れた。

最初はナーバスな気分だったが、この待遇なら案外悪くない。

さて、今日もお仕事頑張るぞ!

「しゃっせー!!」

元気な声を出したからか、早速お客が寄ってくる。

気持ち良い仕事始め、幸先いいぜ。

と思いきや、寄ってきたのは白い帽子にワンピース、なんだか見覚えが…

「ちょっと颯士クン!酷いじゃないの!」

お客じゃなかった。オーナーの娘だった。

一生懸命働いているアルバイトに向かって酷いとは酷い。

何を怒っているのだろう、ヒステリーって怖い。

「え?ちゃんと働いていますけど…」

そう言うと、オーナーの娘は顔を真っ赤にして抗議してきた。

「そうじゃなくて!昨日約束すっぽかしたじゃない!」

約束、なんだったっけな…

こちらの顔に疑問符が張り付いていたことを察したのか、さらに顔を真っ赤にしてオーナーの娘が言う。

「昨日!夕方から遊ぼうって、ホテルのロビーで待ち合わせしていたじゃない!!ずっと待っていたんだから!!」

あぁ、そういえばそんなこと言っていたな。

白々しい後付けで言い出したのかと思っていたけど違ったのか。

「あ、えっと、それで、娘…さん?はずっとロビーで待っていたと…?」

恐る恐る聞くと、さらにヒステリーが加速する。

「何その、名前も忘れちゃってる感じ!麗華(れいか)です!早瀬麗華(はやせれいか)!!」

そういえば名前も聞いていた。そうでした、麗華さんだ。オーナーの娘は麗華さん。

「えっと、それで、麗華さんは俺に何の用で…?」

いくら視察にしてもちょっとしつこすぎる。他にもアルバイターはいるでしょうが。

「いや、だから、美少女が!夏に!一緒に遊ぼうって誘ってるんでしょうが!普通喜んでくるでしょう!!」

何故かとても怒っている。これは謝っておいたほうがよさそうだ。

「あ、はい、ごめんなさい。」

「とりあえず謝っておこう感が凄い!!」

さすがオーナーの娘さん、人間観察力に優れている。
とりあえず謝ったのがすぐバレてしまった。

「すみません、綺麗な人が自分を誘うとは思えなくてつい。」

言い訳に言い訳を重ねてしまって、すぐにまた怒られるのかと思ったのだが

「え、あ、そういうことなら仕方ないわね…」

と、先ほどとは違う意味で赤くなって許してくれた。

よくわからない人だ。

「今日こそ絶対来なさいよ!夕方!ロビー!来る!オッケー!?」

何故かカタコトになりながら捲し立ててきたので

「お、オッケー」

とだけ返しておいた。

そもそも昨日はオッケーしてなかった気がするのを思い出しつつ。





バイトの時間が終わると、とりあえずオーナーの娘が待つというロビーに行った。

「おっ、待っていたよ~!」

朝とは打って変わって上機嫌なオーナーの娘が手を振りながらやってくる。

「お仕事お疲れ様!さぁて、何して遊ぶ??」

全く、これだからお金持ちは困る。
こちとら朝から労働をして疲れているんだ。
まずは働いてすっかり空かせたお腹を満たすのが先に決まっているだろう。

「ご飯先に食べたいです。」

「あ、そうだよね、お腹すいているよね、どこで食べる?」

「まかないでバイキングあるんでちょっと食べてきます。」

「え?」

オーナーの娘は何故かそこで立ち止まっているが、バイキングとて戦争なのだ。場合によっては人気のお肉などは品切れになる可能性もある。
ついてこれないならばバイキングと言う名の戦場から去ってもらうしかない。
大体、オーナーの娘ならこんなの食べ飽きているだろ。
そんなことより肉だ、牛のやつ!





さすがに初日より感動はないが、それでもこれだけ贅沢に食べられるならば文句なし、むしろ満足。

満たされた胃袋をさすりながら戻ると、ロビーでオーナーの娘が待っていた。

「もうご飯食べたんですか?」

食べに行ったようには見えないが。

「い、いらないわよ!」

また怒っている。
こちらも自由時間にオーナーの娘に付き合って拘束時間発生しているのだから文句言いたいくらいなのに。

「あ、えーっと、じゃあ遊びます…か…?」

「当たり前でしょ!」

こんなに怒っているのに当たり前なのか。

「じゃあ、エスコートしてよ!」

えぇー、誘っといてノープランなの?この人…
オーナーの娘だからってわがまま過ぎない?

「え、あ、じゃあお風呂に…?」

「段階を踏めー!!!」

何故かめちゃくちゃ怒られた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

しちせき 14.4光年の軌跡 

主道 学
SF
学校帰りの寄り道で、商店街へ向かった梶野 光太郎は、そこで街角にある駄菓子屋のガチャを引いた。 見事不思議なチケット「太陽系リゾート地。宇宙ホテル(宇宙ステーション・ミルキーウェイ)」の当たりを引く。 同時刻。 世界各地でオーロラが見えるという怪奇現象が起きていた。 不吉な前兆を前に、光太郎たちは宇宙ステーション・ミルキーウェイへ宿泊するが……。 度々改稿作業加筆修正をします汗 本当にすみません汗 お暇潰し程度にお読みくださいませ!

MMS ~メタル・モンキー・サーガ~

千両文士
SF
エネルギー問題、環境問題、経済格差、疫病、収まらぬ紛争に戦争、少子高齢化・・・人類が直面するありとあらゆる問題を科学の力で解決すべく世界政府が協力して始まった『プロジェクト・エデン』 洋上に建造された大型研究施設人工島『エデン』に招致された若き大天才学者ミクラ・フトウは自身のサポートメカとしてその人格と知能を完全電子化複製した人工知能『ミクラ・ブレイン』を建造。 その迅速で的確な技術開発力と問題解決能力で矢継ぎ早に改善されていく世界で人類はバラ色の未来が確約されていた・・・はずだった。 突如人類に牙を剥き、暴走したミクラ・ブレインによる『人類救済計画』。 その指揮下で人類を滅ぼさんとする軍事戦闘用アンドロイドと直属配下の上位管理者アンドロイド6体を倒すべく人工島エデンに乗り込むのは・・・宿命に導かれた天才学者ミクラ・フトウの愛娘にしてレジスタンス軍特殊エージェント科学者、サン・フトウ博士とその相棒の戦闘用人型アンドロイドのモンキーマンであった!! 機械と人間のSF西遊記、ここに開幕!!

令和の俺と昭和の私

廣瀬純一
ファンタジー
令和の男子と昭和の女子の体が入れ替わる話

『邪馬壱国の壱与~1,769年の眠りから覚めた美女とおっさん。時代考証や設定などは完全無視です!~』

姜維信繁
SF
1,769年の時を超えて目覚めた古代の女王壱与と、現代の考古学者が織り成す異色のタイムトラベルファンタジー!過去の邪馬壱国を再興し、平和を取り戻すために、二人は歴史の謎を解き明かし、未来を変えるための冒険に挑む。時代考証や設定を完全無視して描かれる、奇想天外で心温まる(?)物語!となる予定です……!

「メジャー・インフラトン」序章5/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 JUMP! JUMP! JUMP! No2.

あおっち
SF
 海を埋め尽くすAXISの艦隊。 飽和攻撃が始まる台湾、金門県。  海岸の空を埋め尽くすAXISの巨大なロボ、HARMARの大群。 同時に始まる苫小牧市へ着上陸作戦。 苫小牧市を守るシーラス防衛軍。 そこで、先に上陸した砲撃部隊の砲弾が千歳市を襲った! SF大河小説の前章譚、第5部作。 是非ご覧ください。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

新・三国志 

明日ハレル
SF
皆さんも三国志はご存じですね、私も学生の頃嵌って読みふけりました。丁度図書委員をしていたので放課後遅くまで図書館で読んでいたのを思い出します。 三国志を見ていると弱い劉備と強い曹操を見て何時も不思議に思っていました。劉備の配下には曹操配下の猛将に劣らない関羽、張飛、趙雲等の勇将が居るのに、なぜ?何時も負けているのか? 劉備も漸く軍師諸葛亮を得て蜀と言う辺境の小国の主となりますが、漢王朝の復興も出来ないまま死んでいきます。 反三国志等が出て、徐庶の母親を趙雲が助けて、鳳士元、諸葛亮、徐元直の3名の軍師が揃って、劉備が曹操を打倒する物語もあります。 他だ黄巾党が滅んだ時点で軍師なり有能な文官が付いていれば1国の主となり、曹操や孫権、董卓や袁紹等にも対抗で来たのではないでしょうか? 兎も角劉備に漢帝国を再興して欲しいので、この物語を書きました。是非、皆さんも応援してください! 9歳になり早くに父親を失った劉備は従兄らと長安を牛耳る秦王劉星玄に招集され、彼の一番下の息子となる。秦王には16名の息子があり、それぞれが英雄クラスの武官・文官であった。 彼らの教育を受けながら劉備は成長して行く、10歳になり幼年学校に進み同じく劉氏の子弟達と争いながらも成長して行く。幼年学校を3年で納めた劉備は12歳で高校に進んだ。 劉備はここで知己を得て人脈を築いていく、師範級の兄達に幼少時から剣術、槍術、弓術、太極拳等を叩き込まれた劉備は学生では敵う者がなかった。高校を是も2年で終わらせ大学へ進む。 大学では学生以外に学者や官吏、商人とも接する機会があり、劉備の人脈は急速に拡大した。 大学を3年で終わらせ劉備は18歳で南陽の丞(太守の副官)となり政治の世界に入った。 これから太守を目指して勉学に勤しむ劉備の姿があった。

怪獣特殊処理班ミナモト

kamin0
SF
隕石の飛来とともに突如として現れた敵性巨大生物、『怪獣』の脅威と、加速する砂漠化によって、大きく生活圏が縮小された近未来の地球。日本では、地球防衛省を設立するなどして怪獣の駆除に尽力していた。そんな中、元自衛官の源王城(みなもとおうじ)はその才能を買われて、怪獣の事後処理を専門とする衛生環境省処理科、特殊処理班に配属される。なんとそこは、怪獣の力の源であるコアの除去だけを専門とした特殊部隊だった。源は特殊処理班の癖のある班員達と交流しながら、怪獣の正体とその本質、そして自分の過去と向き合っていく。

処理中です...