魂を彩る世界で

Riwo氏

文字の大きさ
上 下
64 / 84

【リゾートバイト編1】久しぶりの登場、再会は新しい物語の始まり

しおりを挟む
夏、それはその季節のみならず、人々を熱くさせる季節である。

この熱く暑い季節の身の振り方で人生が大きく変わるとさえ言われている。

そんな夏に乗り遅れて、青春をふいにしそうな男がここにいた。

そう、神楽坂颯士(かぐらざかそうし)その人である。





颯士とて普通に男友達もいれば、一緒に遊んだりもする。

雄二(ゆうじ)もその一人で、しきりに颯士を遊びに誘っていた。

「なぁ颯士。やっぱり海じゃないか?」

雄二は焼けた肌によく映える白い歯を見せながら言ってきた。

「いきなり何の話だよ」

颯士が呆れて返すと、分かっているくせに、と言わんばかりに自慢の太い腕を颯士の首に巻き付けて、耳元に口を近づける。

「お前、吉村さんと仲良いだろ?」

なるほどね、と颯士はすぐに察した。だが颯士はあまり気乗りはしないのである。

「まぁ、悪くはないと思うけど…」

「自分だけ女の子と仲が良いなんて、友達としては気が引けるところがあるよなぁ」

「いや、お前だって仲が良い女子とかいるじゃん。レスリング部のマネージャーの谷山さんとか。」

「あいつはいいんだよ。俺は女として見てないから。それより、吉村さんに女の子誘ってくれるように頼んでさ、グループ交際といこうじゃないか」

「いや、けど…」

「お前も女の子が好きなら、この気持ちわかるよな?」

颯士は困った。非常に困った。

1つは雄二に対しての負い目である。

ひょんなことで雄二は颯士のことを同性愛者であると思い込んでいたことがあった。

そして、颯士が雄二を狙っているという、なんとも友情が崩壊しそうな誤解までセットであった。

なんとか諸々の誤解を解いたものの、未だにその疑惑が晴れきってはいないようなフシがある。

今日もこうしてやたら近い距離で接してくるが、むしろ今まで以上に過剰な接し方ゆえに『気にしていない風を無理に装っているのではないか』と、颯士は疑心暗鬼に陥ってしまっている。

そして、ここで女の子を呼ぶことを断ったら『やっぱり俺のことを狙っているんじゃないか』との疑惑が復活してしまう可能性すらある。

「う、う~ん、ちょっと吉村に聞いてみるよ…」

「それでこそ心の友だ!」

はたから見ればマッチョがガリに絡んでカツアゲでもしているような絵面である。
こうなったらアカりもんに助けを頼むしかないのか。

しかし颯士もここまで渋ったのには大きな理由があった。

女子にお誘いを申し込むのが抵抗があったということもあるが、もっと重要な理由がある。

端的に言えば、お金がなかった。

颯士の家は別に貧乏でもなければお金持ちでもない、普通の中流家庭で、普通に過ごしていれば夏の主要なイベントくらいはこなせるくらいのお小遣いは貰っている。

だが、夏休みを前にして、隣県まで遠出をしたり、分厚い刀剣の資料集を買ってみたり、蒸気機関の仕組みの本を買ってみたりしていたらあっという間にすっからかんになってしまった。

以前のように都合よく知り合いのところでアルバイトとかがあればよいのだが…。

悩んでいた颯士に、天啓がひらめいた。

「そうだ、リゾート地でバイトとかすればいいんじゃん!」

一石二鳥、友達と海にも行けて自分はバイトができる。

よく漫画などである展開を颯士は思い出したのであった。

「問題は、バイト先があるか、だな…」

短期アルバイトの募集をネットで探すと、確かにいくつかはある。

泊まり込み可・賄(まかな)いつき・それなりに高収入・そこそこの距離

「うーん、あるにはあるな。どこにするかな。」

いくつかの求人情報からピックアップして、女子ウケのよさそうなところに絞る。

『シー・スカイ・リゾート』

ここだ!ここなら皆が知っているし、なんせオシャレだ。

「『応募する』っと。」

きっと皆、喜んで参加するに違いないぞ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

『邪馬壱国の壱与~1,769年の眠りから覚めた美女とおっさん。時代考証や設定などは完全無視です!~』

姜維信繁
SF
1,769年の時を超えて目覚めた古代の女王壱与と、現代の考古学者が織り成す異色のタイムトラベルファンタジー!過去の邪馬壱国を再興し、平和を取り戻すために、二人は歴史の謎を解き明かし、未来を変えるための冒険に挑む。時代考証や設定を完全無視して描かれる、奇想天外で心温まる(?)物語!となる予定です……!

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

しちせき 14.4光年の軌跡 

主道 学
SF
学校帰りの寄り道で、商店街へ向かった梶野 光太郎は、そこで街角にある駄菓子屋のガチャを引いた。 見事不思議なチケット「太陽系リゾート地。宇宙ホテル(宇宙ステーション・ミルキーウェイ)」の当たりを引く。 同時刻。 世界各地でオーロラが見えるという怪奇現象が起きていた。 不吉な前兆を前に、光太郎たちは宇宙ステーション・ミルキーウェイへ宿泊するが……。 度々改稿作業加筆修正をします汗 本当にすみません汗 お暇潰し程度にお読みくださいませ!

銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?

第一機動部隊

桑名 裕輝
歴史・時代
突如アメリカ軍陸上攻撃機によって帝都が壊滅的損害を受けた後に宣戦布告を受けた大日本帝国。 祖国のため、そして愛する者のため大日本帝国の精鋭である第一機動部隊が米国太平洋艦隊重要拠点グアムを叩く。

令和の俺と昭和の私

廣瀬純一
ファンタジー
令和の男子と昭和の女子の体が入れ替わる話

MMS ~メタル・モンキー・サーガ~

千両文士
SF
エネルギー問題、環境問題、経済格差、疫病、収まらぬ紛争に戦争、少子高齢化・・・人類が直面するありとあらゆる問題を科学の力で解決すべく世界政府が協力して始まった『プロジェクト・エデン』 洋上に建造された大型研究施設人工島『エデン』に招致された若き大天才学者ミクラ・フトウは自身のサポートメカとしてその人格と知能を完全電子化複製した人工知能『ミクラ・ブレイン』を建造。 その迅速で的確な技術開発力と問題解決能力で矢継ぎ早に改善されていく世界で人類はバラ色の未来が確約されていた・・・はずだった。 突如人類に牙を剥き、暴走したミクラ・ブレインによる『人類救済計画』。 その指揮下で人類を滅ぼさんとする軍事戦闘用アンドロイドと直属配下の上位管理者アンドロイド6体を倒すべく人工島エデンに乗り込むのは・・・宿命に導かれた天才学者ミクラ・フトウの愛娘にしてレジスタンス軍特殊エージェント科学者、サン・フトウ博士とその相棒の戦闘用人型アンドロイドのモンキーマンであった!! 機械と人間のSF西遊記、ここに開幕!!

処理中です...