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【リゾートバイト編1】久しぶりの登場、再会は新しい物語の始まり
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夏、それはその季節のみならず、人々を熱くさせる季節である。
この熱く暑い季節の身の振り方で人生が大きく変わるとさえ言われている。
そんな夏に乗り遅れて、青春をふいにしそうな男がここにいた。
そう、神楽坂颯士(かぐらざかそうし)その人である。
・
・
・
颯士とて普通に男友達もいれば、一緒に遊んだりもする。
雄二(ゆうじ)もその一人で、しきりに颯士を遊びに誘っていた。
「なぁ颯士。やっぱり海じゃないか?」
雄二は焼けた肌によく映える白い歯を見せながら言ってきた。
「いきなり何の話だよ」
颯士が呆れて返すと、分かっているくせに、と言わんばかりに自慢の太い腕を颯士の首に巻き付けて、耳元に口を近づける。
「お前、吉村さんと仲良いだろ?」
なるほどね、と颯士はすぐに察した。だが颯士はあまり気乗りはしないのである。
「まぁ、悪くはないと思うけど…」
「自分だけ女の子と仲が良いなんて、友達としては気が引けるところがあるよなぁ」
「いや、お前だって仲が良い女子とかいるじゃん。レスリング部のマネージャーの谷山さんとか。」
「あいつはいいんだよ。俺は女として見てないから。それより、吉村さんに女の子誘ってくれるように頼んでさ、グループ交際といこうじゃないか」
「いや、けど…」
「お前も女の子が好きなら、この気持ちわかるよな?」
颯士は困った。非常に困った。
1つは雄二に対しての負い目である。
ひょんなことで雄二は颯士のことを同性愛者であると思い込んでいたことがあった。
そして、颯士が雄二を狙っているという、なんとも友情が崩壊しそうな誤解までセットであった。
なんとか諸々の誤解を解いたものの、未だにその疑惑が晴れきってはいないようなフシがある。
今日もこうしてやたら近い距離で接してくるが、むしろ今まで以上に過剰な接し方ゆえに『気にしていない風を無理に装っているのではないか』と、颯士は疑心暗鬼に陥ってしまっている。
そして、ここで女の子を呼ぶことを断ったら『やっぱり俺のことを狙っているんじゃないか』との疑惑が復活してしまう可能性すらある。
「う、う~ん、ちょっと吉村に聞いてみるよ…」
「それでこそ心の友だ!」
はたから見ればマッチョがガリに絡んでカツアゲでもしているような絵面である。
こうなったらアカりもんに助けを頼むしかないのか。
しかし颯士もここまで渋ったのには大きな理由があった。
女子にお誘いを申し込むのが抵抗があったということもあるが、もっと重要な理由がある。
端的に言えば、お金がなかった。
颯士の家は別に貧乏でもなければお金持ちでもない、普通の中流家庭で、普通に過ごしていれば夏の主要なイベントくらいはこなせるくらいのお小遣いは貰っている。
だが、夏休みを前にして、隣県まで遠出をしたり、分厚い刀剣の資料集を買ってみたり、蒸気機関の仕組みの本を買ってみたりしていたらあっという間にすっからかんになってしまった。
以前のように都合よく知り合いのところでアルバイトとかがあればよいのだが…。
悩んでいた颯士に、天啓がひらめいた。
「そうだ、リゾート地でバイトとかすればいいんじゃん!」
一石二鳥、友達と海にも行けて自分はバイトができる。
よく漫画などである展開を颯士は思い出したのであった。
「問題は、バイト先があるか、だな…」
短期アルバイトの募集をネットで探すと、確かにいくつかはある。
泊まり込み可・賄(まかな)いつき・それなりに高収入・そこそこの距離
「うーん、あるにはあるな。どこにするかな。」
いくつかの求人情報からピックアップして、女子ウケのよさそうなところに絞る。
『シー・スカイ・リゾート』
ここだ!ここなら皆が知っているし、なんせオシャレだ。
「『応募する』っと。」
きっと皆、喜んで参加するに違いないぞ!
この熱く暑い季節の身の振り方で人生が大きく変わるとさえ言われている。
そんな夏に乗り遅れて、青春をふいにしそうな男がここにいた。
そう、神楽坂颯士(かぐらざかそうし)その人である。
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颯士とて普通に男友達もいれば、一緒に遊んだりもする。
雄二(ゆうじ)もその一人で、しきりに颯士を遊びに誘っていた。
「なぁ颯士。やっぱり海じゃないか?」
雄二は焼けた肌によく映える白い歯を見せながら言ってきた。
「いきなり何の話だよ」
颯士が呆れて返すと、分かっているくせに、と言わんばかりに自慢の太い腕を颯士の首に巻き付けて、耳元に口を近づける。
「お前、吉村さんと仲良いだろ?」
なるほどね、と颯士はすぐに察した。だが颯士はあまり気乗りはしないのである。
「まぁ、悪くはないと思うけど…」
「自分だけ女の子と仲が良いなんて、友達としては気が引けるところがあるよなぁ」
「いや、お前だって仲が良い女子とかいるじゃん。レスリング部のマネージャーの谷山さんとか。」
「あいつはいいんだよ。俺は女として見てないから。それより、吉村さんに女の子誘ってくれるように頼んでさ、グループ交際といこうじゃないか」
「いや、けど…」
「お前も女の子が好きなら、この気持ちわかるよな?」
颯士は困った。非常に困った。
1つは雄二に対しての負い目である。
ひょんなことで雄二は颯士のことを同性愛者であると思い込んでいたことがあった。
そして、颯士が雄二を狙っているという、なんとも友情が崩壊しそうな誤解までセットであった。
なんとか諸々の誤解を解いたものの、未だにその疑惑が晴れきってはいないようなフシがある。
今日もこうしてやたら近い距離で接してくるが、むしろ今まで以上に過剰な接し方ゆえに『気にしていない風を無理に装っているのではないか』と、颯士は疑心暗鬼に陥ってしまっている。
そして、ここで女の子を呼ぶことを断ったら『やっぱり俺のことを狙っているんじゃないか』との疑惑が復活してしまう可能性すらある。
「う、う~ん、ちょっと吉村に聞いてみるよ…」
「それでこそ心の友だ!」
はたから見ればマッチョがガリに絡んでカツアゲでもしているような絵面である。
こうなったらアカりもんに助けを頼むしかないのか。
しかし颯士もここまで渋ったのには大きな理由があった。
女子にお誘いを申し込むのが抵抗があったということもあるが、もっと重要な理由がある。
端的に言えば、お金がなかった。
颯士の家は別に貧乏でもなければお金持ちでもない、普通の中流家庭で、普通に過ごしていれば夏の主要なイベントくらいはこなせるくらいのお小遣いは貰っている。
だが、夏休みを前にして、隣県まで遠出をしたり、分厚い刀剣の資料集を買ってみたり、蒸気機関の仕組みの本を買ってみたりしていたらあっという間にすっからかんになってしまった。
以前のように都合よく知り合いのところでアルバイトとかがあればよいのだが…。
悩んでいた颯士に、天啓がひらめいた。
「そうだ、リゾート地でバイトとかすればいいんじゃん!」
一石二鳥、友達と海にも行けて自分はバイトができる。
よく漫画などである展開を颯士は思い出したのであった。
「問題は、バイト先があるか、だな…」
短期アルバイトの募集をネットで探すと、確かにいくつかはある。
泊まり込み可・賄(まかな)いつき・それなりに高収入・そこそこの距離
「うーん、あるにはあるな。どこにするかな。」
いくつかの求人情報からピックアップして、女子ウケのよさそうなところに絞る。
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