魂を彩る世界で

Riwo氏

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【復讐編エピローグ】区切り的には第一部完だけど更新は平常運転です

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灯里の推論では、あの女は既に肉体はない、魂だけの存在だと言うことだった。

「確かに、そう考えると辻褄が合うところはあるな」

独り言のように椿は呟いた。

あくまで推論ではあるが、確かに筋は通っている。

『魂に干渉できるのは魂だけ』

『能力は魂の性質を変えるもの』

『能力で作ったものなら魂に干渉できる』



「こんがらがりそうだが、能力でしかダメージを与えられないから、あの女は魂の集合体か何かってわけか。」

椿は腕を組んで、ふーむ、と唸(うな)った。

「そそそ!まぁけど実際にお化けが来るとは思わなかったよ」

ハハハ、と灯里は笑う。

「尤(もっと)もだ!私も幽霊をぶん殴る人は初めて見たよ」

椿も笑った。そしてひとしきり笑い終えると

「さぁ、今夜はもう寝よう。明日も早いからな!」

と、促してきた。

「え?早い?」

何のこと?と聞くと

「観光に行くんだろう?」

と、ニヤニヤ顔を返してきた。

明日もハードな1日になりそうだ。






本当にハードな、しかし充実した1日だった。

飛行機の展示場へ行き、

移動販売の唐揚げ屋さんで舌鼓を打ち、

大きな滝のある公園に行っては

涼しげな流し素麺を食べたり

ガラス彫り体験なんてものを体験してみたり…

朝早くからアグレッシブに行動しすぎて、さすがに全員ぐったりとしていた。

町ぐるみで盛り上げている植物園のレストランで、だらだらと薔薇味のソフトクリームなどたしなんで

「これまた人を選ぶものを…」

灯里がこぼすのをハハハと受け流し、

そして間を置いて、椿は口を開いた。

「最後にちょっと付き合って欲しいところがあるんだ」





椿に連れられた場所は、お墓だった。

山の頂上にある、海が良く見えるお墓。

年季の入った水道から備え付けのバケツに水を入れ、柄杓で墓石に水をかける。

ひとしきり墓石を綺麗にした後、椿はそっと目を瞑り、手を合わせた。

自然と、一緒に手を合わせる。

「…」

ジジジジジ…

蝉の鳴き声だけが響き渡る。

何を思っているのだろうか、少し長めの沈黙が続いた。

小さく息を吐く音が聞こえると、

「よし。」

椿は立ち上がりこちらを振り向いた。

「お待たせした。そろそろ帰ろうか!」






「少し寂しい気がするね」

灯里が無理に笑顔を作るのを見て、椿も名残惜しそうに言う。

「そうだな、隣県とは言えすぐに来れる距離ではないからなぁ。」

「今度は椿ちゃんもこっちに遊びに来てよ。歓迎するよ、ね?」

灯里がこちらに同意を求めてくるので頷いて同意する。

最初は合わなそうな人だと思っていたが、濃い時間を一緒に過ごしてみると何ともお別れが寂しい。


「何か…そう、何か困ったことがあれば今度はこちらが力を貸す、貸させてくれ。」

「その時は、お願いするね」

椿が右手を差し出すと、灯里はそれを握って返した。

「颯士君も。」

灯里から手を離すとこちらにも手を差し出してくる。

それを軽く握ると

「灯里ちゃんとしっかりな」

と、こそっと耳打ちして笑ってみせたところで待っていたバスが来た。


「それじゃあ、また!!」

大手を振る椿に手を振り替えして、バスに乗り町を後にした。





初めは周りの客に気を遣って黙っていた灯里だったが、段々と乗客が減っていき、最後の二人になった時に一言呟いた。

「私の能力って、何なんだろうね」

灯里の方を振り向くが、逆光でよく表情が見えなかった。

何故、灯里には能力が生まれたのか、それは分からない。

ただ、1つだけ言えるのは

『お陰で1人救われた』

灯里はそのまま窓の方を向き直して

「それなら、良かったかな」

とだけ返してきた。
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