魂を彩る世界で

Riwo氏

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【復讐編11】ファンタジーらしくなってきたけれどファンシーさはない

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灯里得意のハイキックを受けて吹っ飛んだ新島は道場の壁へと叩きつけられていた。

立ち上がってくる様子はなく、すっかり伸びきっている。

「いぇーい!」

ハイタッチを求めてくる灯里に颯士も満更でもなさそうに応える。

「颯士も余裕だったじゃん!」

「まぁ、吉村に比べれば大して強くなかったしね」

そう言いながらも照れる颯士も実は結構息が上がって汗でびっしょりであった。

「それで、例のものは渡せた?」

真顔に戻った颯士に聞かれた灯里は

「もちろん、バッチリ!」

と、親指を立てた。





颯士君が新島と戦い始め、しびれを切らしたのか、やはりと言うか、近藤が道場に入りこんできた。

「ただのガキ相手に新島は何やってんだ」

見た目はただの不機嫌そうな中年。

しかし左腕、右足、右手は青白く光っている。

颯士君は、私と近藤を戦わせる為に、もう1人の男と戦ってくれている。

灯里ちゃんは何か考えがあるらしく、物を作り出す能力で何かを作り始めた。

「彩乃の娘ぇ!でかくなったなぁ!」

近藤が急にこちらに話しかけてきた。

親戚のおじさん気取りか?

「迎えにきてやったんだからよぉ、大人しくついてこい。」


スッ…と木刀を構え、拒絶の意思表示をする。

「…いっちょまえにやる気か?」

近藤はめんどくさそうにいい放った。

「できれば殺すなとは言われていたんだがな」

近藤が右手を前につき出すと、五指が触手へと変わる。

いや、厳密には能力で作り出した触手を指先から出しているのだろう。

伸ばした触手が迫ってくるが、木刀で上段へと打ち払う。

思いの外重い。

母はこんなもので何度も打ちつけられたのかと思うと怒りが込み上げる。

今度は左手から触手を伸ばしてくるがこちらはくぐって避ける。

そのまま敵の懐へ踏み込み、横一閃。

木刀で薙ぎつける。

木刀は密度、硬さ、重さがあり、実際に斬ることができなかったとしても殴る力は相当だ。
真剣などなくても撲殺できるような凶器である。

そんな木刀で脇腹をぶっ叩いたら当然、恐ろしく痛いはずである。

「いってぇなコラ!!!」

近藤の脇腹から嫌な手応えが伝わってくる。

多分、骨は折れたと思う。

肋骨とかどこかそのあたり。

もう一撃!と、木刀を振りかぶる。

近藤の青白く光る左肩に木刀が当たるが、不思議な手応え…

いや、むしろ手応えがない?

確実に当たっているのだが、『当たっていないみたい』だ。

意味が分からないが、効いている様子もない。
もう一度…!!

木刀を振り上げようとすると、近藤の左肩にみるみる木刀が飲み込まれていく…

いや、左肩の辺りから粘土のような物質が出てきて木刀を飲み込んでいるのだ。

一瞬、木刀を手離すことを躊躇してしまった。

そしてその一瞬が命取りだった。


『ぐばぁ…』

近藤のお腹の辺りから食虫植物やヒトデの裏側を思わせるような口が開いた。

ドロドロした物質がヨダレみたいだなぁ、なんて呑気な考えが浮かぶのは、もう避けるのは無理だと頭が理解しちゃったからだろうか。

死んだな、私。

バクンッ!!

口が閉じた。

食べられてしまった。



…袴が半分くらい。

「あっぶなー!!」

ギリギリのところで助けてくれたのは、やはり灯里ちゃんだった。

咄嗟に抱き締めて避けてくれていたようだ。

「って、ナマ足見えちゃってるじゃん!ダメダメ、変態オヤジがガン見してるよ!」

さりげなく変態にされた近藤は表情1つ変えずに見ている。

「30秒待ってね~…金属繊維のイメージ…!」

灯里ちゃんが目を閉じてイメージを開始したようだ。


「そこで待つお人好しに見えるのか?」

構わず向かってくる近藤に灯里ちゃんは左手をかざす。

「2つのこと同時にイメージするの得意じゃないんだってば。白鷺撃(はくろげき)!!」

白鷺(しらさぎ)…ではなく、鷲(わし)が3匹、高速で近藤へ飛んでいく。

「…この小娘、同じ力が使えるのか!」

両腕の触手で鷲を叩き落とされた。

「はいはい、近寄らないで!!もうちょっとだから!!」

続けざまに鷲を数匹放つと、近藤も大振りに触手を振り回して鷲を破壊する。

「よーしお待たせ、女の子が脚を見せっぱなしじゃいけないよ!」

灯里ちゃんがかざした右手から、みるみるうちに細かく編み込まれた白い繊維が現れ、私の身体を包み込む。

出来上がったのは、白い袴であった。

「鋼の硬さを持つ繊維で袴を作ったの。それと…」

灯里ちゃんはさらに、一振の刀を渡してきた。

鞘から抜いてみると、柄から刀身まで全て真っ白の刀。

「お誕生日おめでとう、20分くらいで消えちゃうプレゼントだけど…」

刀を持って振ってみると、羽のように軽い。

「切れ味は多分、保証できる」

なるほど、これは名刀の予感だ。

かたじけない。こいつを倒したらまたアイスでもあげよう。

では…

「いざ、参る!」

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