魂を彩る世界で

Riwo氏

文字の大きさ
上 下
52 / 84

【復讐編10】やる時はやる男と思わせるには普段から積み重ねておくことが大事

しおりを挟む
何となく、そう、本当に何となく颯士はそんな気がしていた。

この新島とか言う男は、言うほど妖(あやか)しでも何でもない。


「邪魔をしたことを後悔してもらうよ」

そう言って新島が産み出したのは紺色のナイフだった。

サバイバルナイフと言うやつか。

刃渡り15cmほど、確かに斬られると危ない。





椿の情報をまとめると、幼少の頃の椿が見た光景は

①野犬のように青白く光るゾンビの群れが母に飛びかかり、切り捨てられていた。

②近藤と言う男が刀や槍を造り出し、手から触手を出していた。

③四肢を切断された近藤の手足を、これまた新たに青白く光る手足に作り直した女がいた。

多分、①や③の青白く光るゾンビや手足は、その謎の女の能力だろう。

②の刀や槍、触手を造り出すのは近藤の能力。

灯里の能力と差異はあるが、恐らくは同じ性質のもの。


全く…嫌になる。

思わずため息がでた。

こちとら、その能力が欲しくて悩んでいたのにポンポン使う奴等が出てくるんだから。

しかし、こうなるとこの新島と言う男も珍しくも何ともない。

『ただの能力者』だ。

ナイフを振りかぶって斬りつけてくる新島だが、ハッキリ言って鈍(のろ)い。

刃を避けると、手首を掴み、そのまま再び足をかける。

いくら力が弱いと言っても、相手からの攻撃の進行方向へ引っ張ると自然とそちらへと倒れる。

二度も転ばされた新島は、顔を赤くしながら起き上がってくる。

「くそガキがっ…!!」

ムキになって攻めてくる新島の攻撃は、ハッキリ言って単調そのもの。

立派なナイフがただ虚しく空を斬る。

ほいっ!

三度(みたび)、足をかけようとすると、ひょいっ、とジャンプをして躱される。

「バカがぁ!何度も同じ手を食らうか!!」

嬉しそうな新島だが、攻撃の体勢が既に前のめりになっている。

『パシッ』

新島の後頭部に手を置いて、そのまま地面へとただ押す。

すると新島がまたまた、顔から地面へと叩きつけられる。

練習した甲斐があった。

春葬会(しゅんそうかい)へ乗り込んだ時、綺羅々の攻撃は見えていた、避けられた、止められた。

能力者だろうとただ物を造り出すだけなら凡人とスピードは変わらない。

つまり、凶器は作り出せても身体能力が上がるわけではない。

それでも一般人は、一般人同士で喧嘩した時でも、パンチやキックは簡単には避けられないものだ。



だが、灯里は違う。

『モノを作り出す能力』で敢えて作り出す練習に力を入れたのは『蒸気のような粒子』であった。

蒸気機関の原理で爆発的加速、それにより威力が上がるキックやパンチ。

そしてそれを考え出し、見てきて、受けてきただけの自負はある。

油断さえしなければ

『一般人の攻撃など当たらない』

繰り返しナイフで斬りつけてくる、なんとも面白味のない展開だが、スイスイとよける。


そして、筋力がなく、相手への攻撃手段がない自分自身が戦う必要がある時、ただ『転ばせる』ことだけは可能なのではないかと気付いた。

合気道ってこんな感じだろうか?

力の向きに押すだけで面白いように転んでくれる。

これでどのくらいのダメージがあるのかは分からないが、時間稼ぎにはなるだろう。

何度か顔面を地面に打ち付けて真っ赤にした新島が起き上がりながら新たな物質を精製する。

「これならどうだぁ!!!」

ナイフを捨てて、二本の刀を作り出した。

「二刀流!これは躱せないだろう!!」

やれやれ、ナイフだの刀だの、別に能力じゃなくても持てる物出してどうするの。

大振りで斬りかかってくるが、その瞬間、風が吹いた。

少し太めの見慣れた脚が、新島の顔面に食い込みそのまま吹っ飛ばした。


全く嫌になる。


「お待たせ!!」


いつもいいところは持っていくんだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

令和の俺と昭和の私

廣瀬純一
ファンタジー
令和の男子と昭和の女子の体が入れ替わる話

MMS ~メタル・モンキー・サーガ~

千両文士
SF
エネルギー問題、環境問題、経済格差、疫病、収まらぬ紛争に戦争、少子高齢化・・・人類が直面するありとあらゆる問題を科学の力で解決すべく世界政府が協力して始まった『プロジェクト・エデン』 洋上に建造された大型研究施設人工島『エデン』に招致された若き大天才学者ミクラ・フトウは自身のサポートメカとしてその人格と知能を完全電子化複製した人工知能『ミクラ・ブレイン』を建造。 その迅速で的確な技術開発力と問題解決能力で矢継ぎ早に改善されていく世界で人類はバラ色の未来が確約されていた・・・はずだった。 突如人類に牙を剥き、暴走したミクラ・ブレインによる『人類救済計画』。 その指揮下で人類を滅ぼさんとする軍事戦闘用アンドロイドと直属配下の上位管理者アンドロイド6体を倒すべく人工島エデンに乗り込むのは・・・宿命に導かれた天才学者ミクラ・フトウの愛娘にしてレジスタンス軍特殊エージェント科学者、サン・フトウ博士とその相棒の戦闘用人型アンドロイドのモンキーマンであった!! 機械と人間のSF西遊記、ここに開幕!!

「メジャー・インフラトン」序章5/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 JUMP! JUMP! JUMP! No2.

あおっち
SF
 海を埋め尽くすAXISの艦隊。 飽和攻撃が始まる台湾、金門県。  海岸の空を埋め尽くすAXISの巨大なロボ、HARMARの大群。 同時に始まる苫小牧市へ着上陸作戦。 苫小牧市を守るシーラス防衛軍。 そこで、先に上陸した砲撃部隊の砲弾が千歳市を襲った! SF大河小説の前章譚、第5部作。 是非ご覧ください。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

怪獣特殊処理班ミナモト

kamin0
SF
隕石の飛来とともに突如として現れた敵性巨大生物、『怪獣』の脅威と、加速する砂漠化によって、大きく生活圏が縮小された近未来の地球。日本では、地球防衛省を設立するなどして怪獣の駆除に尽力していた。そんな中、元自衛官の源王城(みなもとおうじ)はその才能を買われて、怪獣の事後処理を専門とする衛生環境省処理科、特殊処理班に配属される。なんとそこは、怪獣の力の源であるコアの除去だけを専門とした特殊部隊だった。源は特殊処理班の癖のある班員達と交流しながら、怪獣の正体とその本質、そして自分の過去と向き合っていく。

第31回電撃大賞:3次選考落選作品

新人賞落選置き場にすることにしました
SF
SFっぽい何かです。 著者あ:作品名「boolean-DND-boolean」

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

嵐の戦記

斉藤美琴【♂】
SF
時に西暦1942年6月の末期…日本海軍は激しい戦い中…着々っと太平洋戦線へ侵略していた。ミッドウェー…ウェック島…各地太平洋の各地の島を手に入れた。 しかし…突如……正体不明な艦隊が出現した。敵味方識別を関係無く攻撃を受けて敵味方も…各地の拠点を失い危機を恐れた。 その艦隊組織の名は『嵐の艦隊』を呼び・・・人類は恐れたのだ。 この艦隊は第二次世界大戦と同じ外形した艦船で塗装は不気味な漆黒に近い紫色の塗装した艦艇だった。 この作品は参考しているのは、『蒼き鋼のアルペジオ』に登場している敵【霧の艦隊】のモチーフをしています。

処理中です...