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【復讐編7】強さの評価の基準がコロコロ変わると萎えるよね
しおりを挟む椿との遭遇の翌日。
いつもの美術室、颯士と灯里は来るべき日に備えて作戦を立てていた。
「やっぱり、椿ちゃんはお母さんの仇を取りたいと思うのよね」
灯里は背もたれを正面にして座っている椅子をカタカタと揺らしながら言ってきた。
「もちろん、危険だとは思うのだけど。」
灯里としては、復讐は自力で果たしてほしいようだ。
「気持ちはわかるけど…」
キャンバスに向かって筆をふるいながら颯士は続けた。
「吉村はさ、実際のところかなり強いと思うんだよね。」
目線はキャンバスから外さないが、颯士は颯士で色々考えているようだ。
「センスもあると思うけど、能力の分まで加味すると1対1ではプロでも敵わないと思うし」
サラサラと筆を動かし、ピタッと止まってはまた筆を動かす。
「椿さんのお母さんが達人だとしても、能力者ではない普通の人間が能力を持つ敵を追い詰めることができた。それならば、能力者である吉村が戦えば勝率は高いとは思うんだよね。」
戦って危ない目にあって欲しいわけではないのだけど、と付け足しつつ。
「能力者じゃなくてもそこそこいけるのならば、椿ちゃんでもいいセンいけるんじゃないの?」
揚げ足を取るような灯里の発言に、今度は完全に筆を止める。
少し間をおいて、口を開く。
「いいセン、で惜しくも負けてしまった、では済まされないからなぁ」
「それは…確かに…」
二人は完全に難航していた。
今までの相手も決して楽な相手ではなかった。
しかし今回は人外?妖怪?が相手な上に、何より死人が出ている。
自分が、そして他人が死ぬ可能性があるとなるとお気楽に行き当たりばったりでなんとかなる、と言う気にはなれなかった。
「ふーむ…」
眉間にシワを寄せて考え込むように颯士は訊ねた。
「椿さんは実際、どのくらい強いの?」
実際少しの間だけど戦った灯里の意見を聞きたい様子だ。
「うーん、多分だけど…」
ちょっと考え込む。
「何を基準に、と言われると難しいけど…」
なかなか煮え切らない。当然だ。強さの基準など人それぞれ、相性もあり、ゲームのように簡単には決められないのだ。
「多分だけど…」
2回目の『多分』に、よっぽど言いづらいのか、と颯士が思っていると、
「『スピードB+』
『パワー:C』
『スタミナ:B』
『テクニック:A-』
パワーはそこまで高くないが、パワーの低さを木刀でカバーしているので威力は低くない。木刀にも関わらず居合の速さはかなり高い。真剣で同じことができれば攻撃のスピードはAを超えるだろう。それを込みでテクニックはA-。スタミナは若干未知数だが、攻撃を避けられた時に木刀を振らされ続けると消耗が激しかったように見える。」
ペラペラペラ…
颯士はちょっと、
「(なんだコイツ…)」
とか思っちゃったりしたが、灯里なりに結構正確な分析をしていたようだ。
しかし…
「AとかBとか言われてもよく分からないんだけど…」
と言うと
「ちなみに私は能力使用時で
『パワー:A+』
『スピード:S』
『スタミナ:B』
『テクニック:S+』
かな。」
「(自己評価たけぇな…)」
と、颯士は思ったが、実際に灯里は強くセンスもある。
そして、イメージからの応用力は確かにテクニック:S+と言えるだろう。
ただしそれは颯士のアイデアありきでもある、と言うことは忘れてはいけない。
「…あ、そうだ!」
思い付いたように颯士はスケッチブックを取りだして、サラサラと絵を描く。
「これならどうかな?」
どれどれ、と灯里も見てみる。
「これは妙案ね。けれども明確にイメージする練習と、能力の維持時間をあげるために相当練習しないといけないかも」
「間に合うか、が肝心か。」
ちょっと悩む颯士だが、
「ま、やるしかないか!」
とポジティブな灯里であった。
いつもの美術室、颯士と灯里は来るべき日に備えて作戦を立てていた。
「やっぱり、椿ちゃんはお母さんの仇を取りたいと思うのよね」
灯里は背もたれを正面にして座っている椅子をカタカタと揺らしながら言ってきた。
「もちろん、危険だとは思うのだけど。」
灯里としては、復讐は自力で果たしてほしいようだ。
「気持ちはわかるけど…」
キャンバスに向かって筆をふるいながら颯士は続けた。
「吉村はさ、実際のところかなり強いと思うんだよね。」
目線はキャンバスから外さないが、颯士は颯士で色々考えているようだ。
「センスもあると思うけど、能力の分まで加味すると1対1ではプロでも敵わないと思うし」
サラサラと筆を動かし、ピタッと止まってはまた筆を動かす。
「椿さんのお母さんが達人だとしても、能力者ではない普通の人間が能力を持つ敵を追い詰めることができた。それならば、能力者である吉村が戦えば勝率は高いとは思うんだよね。」
戦って危ない目にあって欲しいわけではないのだけど、と付け足しつつ。
「能力者じゃなくてもそこそこいけるのならば、椿ちゃんでもいいセンいけるんじゃないの?」
揚げ足を取るような灯里の発言に、今度は完全に筆を止める。
少し間をおいて、口を開く。
「いいセン、で惜しくも負けてしまった、では済まされないからなぁ」
「それは…確かに…」
二人は完全に難航していた。
今までの相手も決して楽な相手ではなかった。
しかし今回は人外?妖怪?が相手な上に、何より死人が出ている。
自分が、そして他人が死ぬ可能性があるとなるとお気楽に行き当たりばったりでなんとかなる、と言う気にはなれなかった。
「ふーむ…」
眉間にシワを寄せて考え込むように颯士は訊ねた。
「椿さんは実際、どのくらい強いの?」
実際少しの間だけど戦った灯里の意見を聞きたい様子だ。
「うーん、多分だけど…」
ちょっと考え込む。
「何を基準に、と言われると難しいけど…」
なかなか煮え切らない。当然だ。強さの基準など人それぞれ、相性もあり、ゲームのように簡単には決められないのだ。
「多分だけど…」
2回目の『多分』に、よっぽど言いづらいのか、と颯士が思っていると、
「『スピードB+』
『パワー:C』
『スタミナ:B』
『テクニック:A-』
パワーはそこまで高くないが、パワーの低さを木刀でカバーしているので威力は低くない。木刀にも関わらず居合の速さはかなり高い。真剣で同じことができれば攻撃のスピードはAを超えるだろう。それを込みでテクニックはA-。スタミナは若干未知数だが、攻撃を避けられた時に木刀を振らされ続けると消耗が激しかったように見える。」
ペラペラペラ…
颯士はちょっと、
「(なんだコイツ…)」
とか思っちゃったりしたが、灯里なりに結構正確な分析をしていたようだ。
しかし…
「AとかBとか言われてもよく分からないんだけど…」
と言うと
「ちなみに私は能力使用時で
『パワー:A+』
『スピード:S』
『スタミナ:B』
『テクニック:S+』
かな。」
「(自己評価たけぇな…)」
と、颯士は思ったが、実際に灯里は強くセンスもある。
そして、イメージからの応用力は確かにテクニック:S+と言えるだろう。
ただしそれは颯士のアイデアありきでもある、と言うことは忘れてはいけない。
「…あ、そうだ!」
思い付いたように颯士はスケッチブックを取りだして、サラサラと絵を描く。
「これならどうかな?」
どれどれ、と灯里も見てみる。
「これは妙案ね。けれども明確にイメージする練習と、能力の維持時間をあげるために相当練習しないといけないかも」
「間に合うか、が肝心か。」
ちょっと悩む颯士だが、
「ま、やるしかないか!」
とポジティブな灯里であった。
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