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Riwo氏

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【復讐編4】追憶1 久しぶりに同級生が声をかけてきて良い知らせなんてことはそうそうない

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椿の母、彩乃(あやの)が椿を産んだのは、結婚してから2年後のことだ。

それまでは他人であろうと自分を犠牲にしてでも守り助けていた彩乃も、自分の子供を中心とした生活へと切り替わっていった。

それは当然のことであり、周りの友人達も

「やっと自分の生活を大切にし始めた」

と安堵していた。

そんな生活の中、椿が9歳にもなる頃に事件は起こった。

実に11年の間、誰からも連絡が取れなくなっており、完全に消息を断ったと思われていた近藤が道場へとやってきた。

丁度、剣道教室での指導の最中であったが、近藤の尋常じゃなく焦燥しきった様子に只事ではない事態を感じた彩乃は、道場生を家へ帰らせ、近藤の話を聞いた。

財力はあった近藤であったが、事業に失敗し、立て直しのために借金をしたらしい。

だが、借金をした相手が悪かった。

お約束のようにヤのつく職業の方からお金を借り、理不尽な暴利をかけられたらしい。

『払えないなら殺す』

そう脅されて。

彩乃は、椿を危険に巻き込みたくはなかった。
それを理由に何度も断ったが、あまりにしつこく食い下がる近藤と、元来の面倒見の良さから断ることへの心苦しさが重なり『一晩だけなら』と匿うことを許してしまった。

ただし、匿う場所は道場だけで、家へは上げないこと、一晩経ったら必ず出ていくこと、を約束させて。

思えば何故、その時に警察を呼ぶなどをしなかったのか。
それは彩乃にしか感じられない悪い予感を察知していたのであろう。
警察では対処できないような何かを。

椿の父親は丁度、遠方の法事のため家に居らず、そのため椿は近くの親戚の家へと預けられていた。

かくして、道場へは彩乃と近藤のみを残して夜が訪れた。

正座をし、瞑想をしていた彩乃は、目をゆっくりとあけた。

合わせたかのように道場の扉が開くが彩乃は驚きもしなかった。

本来ならば人に対して向けることのない『真剣』を腰に帯刀し、立ち上がる。

道場に入ってきたのは、『ただのヤクザ』であった。
ヤクザを相手に『ただの』と言うのは些かおかしい話だが、彩乃は安堵した。

襲ってくるヤクザを倒して警察に引き渡して終わりだ。

事情聴取で遅くなると椿を待たせてしまうことの方が心配なくらいだ。

5、6人ほどのヤクザを早々に峰打ちでのして、警察にでも連絡をしようかと思った時に、彩乃の背筋に悪寒が走った。

入り口の扉へ神経を集中させると、おどけたように女が1人、現れた。

「あなた、良い魂の色をしているわね」

フフッ、と笑う女は、外見だけなら何てことのない、むしろ先ほど眠って貰ったヤクザの方が怖いくらい、何の変哲もない女だった。
20歳かそこらにも見えるが、口ぶりや妖艶な立ち振舞いはむしろ彩乃よりも年上にも感じる。

「何者だ…?」

彩乃は初めて口を開いた。

この何でもないような女が、この異常な場に当たり前にいる違和感、冷や汗が一筋頬を伝った。

女は問いには答えず、ただ

「けれども少し魂がくすんじゃってるわね、残念だけど要らないわ」

と言い放ち踵(きびす)を返した。

「おいっ…!」

問いかけに答えなかった女に声を、恐怖を払拭しようとするようにかけると、女は顔だけふりかえった。

首を『縦方向』に振り返って。

「要らないから、あなた達の好きにして良いわ。」

その呼び声に呼応するかのように道場の入り口からは『亡者』としか思えないような人の群れが入ってきた。

あり得ないような方向に曲がった首、眼球のない顔、そして月明かりに照らされて青白く光る皮膚。

ゾンビと言うものが実在するのであればこんな感じだろうか。

だが、想像するゾンビと違い、それらは野犬が飛び込むような速度で襲いかかってきた。

「(この世の者ではない…)」

咄嗟に飛びかかってきた亡者の首に居合い斬りを放つも、刃が通らない。
それどころか、打撃として亡者を吹っ飛ばすこともできず、亡者は真っ直ぐに彩乃へ爪を伸ばした。

体勢を崩しながらも何とかかわすものの、彩乃の頬にうっすらと線が入り、そこからじんわりと血が滲み出る。

「(固さとは違う…)」

人の体重くらいの重さならば、斬れないくらい固くても少しは軌道をずらすことはできるはず。
まして彩乃の剣は達人の域に達している。
普通ならあり得ない。
あり得ないことだが、

「(例えるならば質量のある幽霊…と言ったところか)」

諦めるわけにも行かないが、手の打ちようがないことも事実である。

次々と襲いかかってくる亡者を躱しながら、攻撃を試みても見るが全くと言って良いほど効果がない。

次第に避ける体力も減ってきて、少しずつ傷も増えて行く。

「(万事休すか…)」

そう諦めかけた時であった。

「お母さん!!!」

道場の下の小窓から、声が響いた。

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