魂を彩る世界で

Riwo氏

文字の大きさ
上 下
45 / 84

【復讐編3】初対面の人に無礼な態度取るのはやめましょう。

しおりを挟む
正義感の強い灯里のことだから、そう言うと思っていた。

加えて、「拘束されて動けない状況」と「圧倒的優位な状態で協力を申し出てくるメリットがない」ことから、灯里にその気はなかったとしても心理的に揺さぶることに成功したようだ。

「詳しく、聞かせてくれないか…」

すっかり大人しくなってしまったのを見て、これ以上の敵意はないと判断した灯里は、アイアンメイデンを解除した。

「まずは自己紹介、私は吉村灯里、高2。あっちは神楽坂颯士。年は一緒。あなたは?」

「椿(つばき)だ。高3。」

それは名字なのか、名前なのか…



もうちょっと親切な自己紹介をしてくれても良いのに、と思うけどもややこしくなりそうなので話を進めることにする。

「椿さん、でいいかな?」

「構わん。」

ちょっとお堅い態度が生意気に感じるが、一応年上ではあるようなので、気にしないことにする。

「まずはそちらの事情から聞きたいのだけど…」

気になることは灯里がグイグイ聞きに行くのは助かる。

実は結構苦手だったりするのだ。この手の話を聞き出すのは。

「悪いが、まだ完全に信用したわけではない。そちらの妖術の納得いく説明からしてくれないか。」

うーん、この態度。いきなり襲いかかってきて、立場的にも追い詰められた側の癖に偉そう…
俺とは合わなそうだ。

「おっけー、そう言うことなら。」

灯里はサバサバと気にもしていない様子。
もしかして聖人なのではあるまいか。

そんな聖人、灯里は要点をかいつまんで説明をした。

自分は妖怪ではないこと。
ある日、突然能力に目覚めたこと。
その能力で色々な戦いを乗り越えてきたこと。
他にも能力者がいたが、能力の目覚めのキッカケは良く分からないこと。

「突然だの良く分からないだの抽象的なことばかりだな。」

何となくまた、鼻につく態度で言い放つ。

「ハハハ、面目ない!」

笑って対応する灯里はやはり聖人だ。

今までずっと『ムッ』とした顔をしていた椿も、ほんの少し口角が上がったのをかんじた。

「それでは、こちらの事情も。」

そう言って椿は事情を話し始めた。





椿はこの神社の一人娘である。

椿の父親は神主で、娘には甘々ながらも正しいことを行うことの大切さ、間違ったことを行うと自分に返ってくるという厳しさをしっかり教える、真の意味での優しさを備えていた。

母親は代々続く剣術の使い手であった。

厳密には、表向きには剣道教室で生計を立て、それ以外の時間には一族にのみ伝わる剣術を後継者である椿に伝えていたという。

「へぇ~、現実にもそんな話があるのね。」

感心したように灯里が言う。

続けるように、完全に漫画の中の世界じゃん、と呟くと、

「わざわざ言わないだけで、存外良くある話だと思うぞ」

と椿は言う。


椿の母は剣術の腕も強かったが、『凛』と言う言葉が似合う風格と、弱音を決して吐かない心の強さも兼ね備えた女性だったらしい。

そんな椿の母には、昔から言い寄ってくる男も決して少なくはなかったそうだ。

財力のあるもの、権力のあるもの、様々な男が言い寄ってきたが、椿の母が選んだのは、腕っぷしもなければ財力もない椿の父であった。

母の友人のほとんどは、意外に感じながらも素直に二人を祝福したそうだ。

しかし、それを許さない男もいた。

母の幼なじみであり、ずっと好意を寄せていた『近藤』と言う男だけは、
「あんな甲斐性なしはやめておけ」とか「俺の方が幸せにできる」とずっと言い続けてきた。
結局最後まで近藤は、母の祝福はせず、二人の結婚式の日から完全に消息を断ったという。
ただ一言、「必ず取り返す」とだけ言い残して。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

令和の俺と昭和の私

廣瀬純一
ファンタジー
令和の男子と昭和の女子の体が入れ替わる話

『邪馬壱国の壱与~1,769年の眠りから覚めた美女とおっさん。時代考証や設定などは完全無視です!~』

姜維信繁
SF
1,769年の時を超えて目覚めた古代の女王壱与と、現代の考古学者が織り成す異色のタイムトラベルファンタジー!過去の邪馬壱国を再興し、平和を取り戻すために、二人は歴史の謎を解き明かし、未来を変えるための冒険に挑む。時代考証や設定を完全無視して描かれる、奇想天外で心温まる(?)物語!となる予定です……!

MMS ~メタル・モンキー・サーガ~

千両文士
SF
エネルギー問題、環境問題、経済格差、疫病、収まらぬ紛争に戦争、少子高齢化・・・人類が直面するありとあらゆる問題を科学の力で解決すべく世界政府が協力して始まった『プロジェクト・エデン』 洋上に建造された大型研究施設人工島『エデン』に招致された若き大天才学者ミクラ・フトウは自身のサポートメカとしてその人格と知能を完全電子化複製した人工知能『ミクラ・ブレイン』を建造。 その迅速で的確な技術開発力と問題解決能力で矢継ぎ早に改善されていく世界で人類はバラ色の未来が確約されていた・・・はずだった。 突如人類に牙を剥き、暴走したミクラ・ブレインによる『人類救済計画』。 その指揮下で人類を滅ぼさんとする軍事戦闘用アンドロイドと直属配下の上位管理者アンドロイド6体を倒すべく人工島エデンに乗り込むのは・・・宿命に導かれた天才学者ミクラ・フトウの愛娘にしてレジスタンス軍特殊エージェント科学者、サン・フトウ博士とその相棒の戦闘用人型アンドロイドのモンキーマンであった!! 機械と人間のSF西遊記、ここに開幕!!

「メジャー・インフラトン」序章5/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 JUMP! JUMP! JUMP! No2.

あおっち
SF
 海を埋め尽くすAXISの艦隊。 飽和攻撃が始まる台湾、金門県。  海岸の空を埋め尽くすAXISの巨大なロボ、HARMARの大群。 同時に始まる苫小牧市へ着上陸作戦。 苫小牧市を守るシーラス防衛軍。 そこで、先に上陸した砲撃部隊の砲弾が千歳市を襲った! SF大河小説の前章譚、第5部作。 是非ご覧ください。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

怪獣特殊処理班ミナモト

kamin0
SF
隕石の飛来とともに突如として現れた敵性巨大生物、『怪獣』の脅威と、加速する砂漠化によって、大きく生活圏が縮小された近未来の地球。日本では、地球防衛省を設立するなどして怪獣の駆除に尽力していた。そんな中、元自衛官の源王城(みなもとおうじ)はその才能を買われて、怪獣の事後処理を専門とする衛生環境省処理科、特殊処理班に配属される。なんとそこは、怪獣の力の源であるコアの除去だけを専門とした特殊部隊だった。源は特殊処理班の癖のある班員達と交流しながら、怪獣の正体とその本質、そして自分の過去と向き合っていく。

第31回電撃大賞:3次選考落選作品

新人賞落選置き場にすることにしました
SF
SFっぽい何かです。 著者あ:作品名「boolean-DND-boolean」

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

処理中です...