魂を彩る世界で

Riwo氏

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鷲を鷹と書き間違えて投稿前に気づく人もいるらしい

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確かに

「大軍と戦うところが見たい」

なんて言っていたから近くに来ているだろうとは思っていたのだが、こんな堂々と正面きって出てくるとは何とも意外な展開である。

能力者が2人、これならばこの大軍相手にもいくらか光明が見える。

灯里に、今のうちに集中してイメージを作り上げておくようにつたえる。

初手は白龍撃、ギリギリまで多くの敵に当てつつ、回収はしっかり行いエネルギーロスを極力減らす。

「了解!」

灯里はスッと集中モードに入り、腰に手を当ててイメージを始めた。

能力はただ見た目の形を作るだけではない。
明確に形や質量をイメージすることで威力も大きく変わることがこの1ヶ月の特訓で分かった。

灯里の作り上げる龍のイメージは、体は大蛇のように密度の高い筋肉、鋼鉄のように硬い牙と爪、それらが天をも揺るがすような勢いでうねりながら獲物を屠る、と言ったところだろう。

深くイメージしなかったり、ぼんやりした記憶だけで作る物質は、完全にはイメージしきれずドロドロになったり、セラミックのように軽くて表面だけ硬い場合が多い。

最初に龍のイメージを思い付いた時から、何度も何度もイメージし練度を上げてきたに違いない。

いわば、灯里の技の中では最も信頼度が高い技へと昇華されたと言える。

短い時間でも十分に準備できたようだ。

口汚く罵り合い、いよいよ本気で轢き殺そうとしている連中を見て灯里も飛び出した。

「綺羅々、下がって」

飛び込んでくるバイク集団に向かって両手を突き出す。

「はっく…!」

かつてなく巨大な龍の頭が精製される。

「龍撃っ!!!!」

灯里の両手のひらからうねりをあげながら巨大な龍が発射される。

「こんのぉ!!」

さすがに巨大すぎて反動が激しい。
制御が難しそうだが、鞭を振り上げるように力一杯両手を持ち上げ、龍を大きくうねらせる。

白龍が多くのバイクや人を吹き飛ばした。

そのまま巨大な白龍は再び回収され灯里のエネルギーへと戻る。

回収率70%と言ったところだろうか。

回収をしても全てのエネルギーを取り戻せるわけではない。

空気中に霧散したり、相手にぶつかった時に削れて消えていく分もある。

だが、これだけの白龍を撃って70%回収なら上出来だ。

「綺羅々もやるにゃ~」

巨大な爪を精製しようとする綺羅々を腕で制す。

「あんたはダメ、殺しちゃうから」

灯里一人でやる気みたいだ。

綺羅々を使えば効率よく倒せるのだが…

仕方がない。とりあえずは灯里一人でやらせてみよう。

「ちょっと消耗戦になるけど…」

ようやく特訓の成果を出せることの期待と、エネルギー不足への不安との両方が灯里から感じられる。

無駄撃ちしなければエネルギーは十分に足りるはずだ。

幸いにも、最初に倒した連中のバイクが多く転がっていてバリケードのようになっている。

しばらくは一気に攻めてくることは難しいはず。


バイク相手には鷲で、人のみの場合はブーストかけて体術で。
砕きやすい関節から砕いて確実に仕留めよう。


「…おっけ。」


灯里が一瞬、目をじっと見つめてきた気がするが今はそれどころではない。

目の前の敵を効率よく片付けねば。

相手は犯罪集団だ、殺しても構わないだろう。

灯里が敵陣へ突っ込んでいるうちに綺羅々に言伝てをする。

場合によっては構わず能力を使ってくれ、と。

「でも、灯里が…」

言いかける綺羅々の台詞を遮るように続ける。
発端は誰なのか、責任を取るべきではないのか、と少しキツめに詰める。

「…分かったニャ」

これで勝率はかなり上がる。

最終的に勝てば認められる。

絶望的な戦力差さえ、評価へのスパイスだ。





予想通りと言うか、ヘルメット被って走り回るバイカーを直接攻撃するのはさすがに無理がある。

飛び込んでくるバイク2台に正確に鷲を当てて倒しながら思う。

釘バットで殴りかかってくるのを得意の回し蹴りで撃退、そのまま回転して後ろの1台に鷲を飛ばす。

敵が多すぎてキリがない。

バールのようなものを振りかぶりながらそのまま灯里の頭に当たりそうなところを間一髪避ける。

鷲で先制攻撃をする作戦も、ここまで近寄られると難しい。



「ちょっと気が引けるけど、片付けさせてもらうニャ~」

綺羅々が手のひらを上に掲げ、巨大な黒爪を作り上げる。

「ほ~いだニャン!」

放り投げた黒爪が大軍へ突き刺さりそうになる。

…が、先陣を切っていたはずの灯里が黒爪を蹴りあげて弾き飛ばした。

「…颯士」

灯里が歩み寄ってくる。

「今日のアンタ、ちょっとおかしくない?」

鋭い目で詰めてくる。

いつも通りだけど。とだけ返すが、納得がいかない様子である。

「…」

何かを考えている様子が感じられたが、

「熱でもあるんじゃないの?」

と、おでこにかかる髪の毛をかきあげてきた。

そのままおでこを引っ付けようとしてくる…。



「オラぁ!!!」



ゴンッ!!!

灯里の強烈な頭突きが額に炸裂する。

「これで目ぇ覚めたかぁ!!」

凄く痛い。痛かったが…

頭にかかっていた霧が晴れたような気がした。
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