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イケメンキャラは人気がでたら優遇されて主人公より厚待遇になったりする
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足の裏が爆発するように加速し、即座に懐に潜り込むと続けざまにお得意のブーストハイキックを繰り出した。
加速のためにブーストを練習していたお陰か、どちらかと言うと灯里は蹴り技の方が得意のようだ。
相当に鋭い蹴りが顔面に迫ってきたが、まるで来るのか分かっていたかのように上体を反らしてかわした。
大きく空を切った蹴りはそのまま弧を描き地面へと到達したが、そのまま回転のエネルギーを利用して今度は拳に乗せる。
「白チン…」
そのまま拳を股間に向けて振り下ろす、が、腕が伸びきる前に肘を掴まれる。
途中で塞き止められたエネルギーに体を持っていかれて体制を崩した灯里は咄嗟に左足を地面につけて体制を直そうとするも、すかさず男の拳が脇腹にめり込んでいた。
バランスを崩していたお陰で衝撃を逃がすことができたが、その分後方へ数メートル吹っ飛ばされた。
ブーストのクッションで地面へぶつかるダメージは緩和したが、精神的なショックは大きい。
「つ、強い…」
加速した蹴りや拳は普通の人間が避けるには非現実的な速度である。
男のスピードが人間離れしているようには見えない。
ある程度、動きを読んでいるのか、凄く動体視力が良いのか。
再び加速し、男の前へと一気に距離を詰める。
腕を掴ませないように左右のジャブを連打する。
男は手のひらでそれを受けるが、違和感に気付く。
(軽い…?)
ブーストをかけると勢いに引っ張られるため、ジャブの連打は能力を使っていなかった。
本命は得意の足技、下段回し蹴りからの上段後ろ回し蹴りのコンビネーション。
(下段で体勢を崩し、揺らいだところを上段で脳天直撃!)
「ふっ…!」
下段回し蹴りを放つ、が、すかさず一歩引いてかわされる。
「なんのっ!」
空振りした右足を軸にし、後ろ回し蹴りへと移行したが、これもスウェーの要領でかわされる。
そのまま軸足を手前に刈られ、同時に顎に掌打を打ち付けられる。
後ろに転びそうになるところを続けざまに踏みつけられそうになるが、両足にブーストをかけてギリギリのとこらをバック転でかわした。
スピードを上げた攻撃や虚をついた攻撃でも捉えることができない。
流れるような動きで逆に翻弄されてしまう。
灯里の頬に冷や汗が流れた。
手の打ちようがない。
かけよってきた颯士が加勢を申し出るも、灯里はそれを手で遮り、真剣な顔で囁いた。
「大丈夫、あまりダメージはないから。それよりアレ使おうと思う」
男を見据えたまま続ける。
「集中したい、時間が欲しい。あと、スケッチブック見せて」
余裕のない表情のまま後退りをして時間を稼ぐ。
男はゆっくり歩いてくるが、逃がしてくれる様子はない。
慌ててカバンを漁りながら、めっちゃブーストかければ逃げきれるんじゃないか、と伝えると
「あんたを置いていけないし、顔も割れてるからどうせ待ち伏せされる。ここで叩くしかない…!」
と決意を固めた表情で言い放った。
颯士はカバンからスケッチブックを取り出すと、灯里に渡してから男の前に出た。
「邪魔をするならお前も痛い目をみることになるが。」
冷酷にいい放つ男に、なんとか時間を稼ごうと話題を探す。
拉致まがいのことをしてきたのはそちらの仲間であること、大人数で囲んだことは卑怯ではないのか、とのことを伝えるも
「先に首をつっこんできたのはそっちのお嬢ちゃんと聞いているが?」
と、引く様子はない。
1分が1時間にも感じる。
灯里はまだ用意はできないのかと内心焦りながらも、女の子に手を出して恥ずかしくないのか、と続ける。
「女なら何をしても許されるわけではない」
と、とりつく島もない。
そこで後方でスケッチブックを閉じる音が聞こえた。
「颯士!離れて!」
腰に手を添えた灯里が瞬間的に距離を詰めてきた。
「はく…」
ふっ、っと短く息を吐き、大きく吸い込み直す。
「それは効かない。」
片手で下半身をガードするが、今度はさっきと違う。
今度は胴体に目掛けて両手を前に突き出した。
「…龍撃!!!」
完全に避けられない距離と範囲、灯里の両手から白龍が繰り出される。
うねる白龍は男を飲み込んでも、まだ尾を見せず伸び続ける。
「龍…!?」
吹き飛びながら驚きの表情を見せる男に放出を続けながら叫ぶ。
「これに懲りたらっ…!」
吹っ飛ばされて塀に叩きつけられる男を確認すると、龍の尾を掴み、舞うように巻き取りながら静かに告げた。
「二度と顔見せるな…」
吸い込まれるように渦巻く龍が消えた。
エネルギーの回収は出来たが、体の疲労はピークに達していた。
男が打ち付けられた塀はひび割れ、衝撃が相当だったものを物語っている。
これで立ち上がれる人間などいるのだろうか、もし立ち上がられたら手の打ちようがない。
そんな「もしも」を想定しながらも、恐る恐る男に近づくも、完全に気絶しているように見える。
「もう大丈夫でしょ、行こう」
スケッチブックを拾いながら灯里に促され、その場を後にした。
「疲れたからアイス奢ってよ」
そんな軽口を叩きながら強がる灯里に、コンビニで買った2つに割れるアイスを半分あげようとしたら
「これだけかい!」
とつっこまれ、高級なダッツアイスを買わされるのであった。
・
・
・
二人が去った後、男の目が見開いた。
ゆっくり立ち上がり、服についた砂ぼこりを手で払った。
「やはり能力者だったか…」
何事もなかったかのようにタバコに火をつけて男は立ち去った。
必要以上に煙をふかしながら。
加速のためにブーストを練習していたお陰か、どちらかと言うと灯里は蹴り技の方が得意のようだ。
相当に鋭い蹴りが顔面に迫ってきたが、まるで来るのか分かっていたかのように上体を反らしてかわした。
大きく空を切った蹴りはそのまま弧を描き地面へと到達したが、そのまま回転のエネルギーを利用して今度は拳に乗せる。
「白チン…」
そのまま拳を股間に向けて振り下ろす、が、腕が伸びきる前に肘を掴まれる。
途中で塞き止められたエネルギーに体を持っていかれて体制を崩した灯里は咄嗟に左足を地面につけて体制を直そうとするも、すかさず男の拳が脇腹にめり込んでいた。
バランスを崩していたお陰で衝撃を逃がすことができたが、その分後方へ数メートル吹っ飛ばされた。
ブーストのクッションで地面へぶつかるダメージは緩和したが、精神的なショックは大きい。
「つ、強い…」
加速した蹴りや拳は普通の人間が避けるには非現実的な速度である。
男のスピードが人間離れしているようには見えない。
ある程度、動きを読んでいるのか、凄く動体視力が良いのか。
再び加速し、男の前へと一気に距離を詰める。
腕を掴ませないように左右のジャブを連打する。
男は手のひらでそれを受けるが、違和感に気付く。
(軽い…?)
ブーストをかけると勢いに引っ張られるため、ジャブの連打は能力を使っていなかった。
本命は得意の足技、下段回し蹴りからの上段後ろ回し蹴りのコンビネーション。
(下段で体勢を崩し、揺らいだところを上段で脳天直撃!)
「ふっ…!」
下段回し蹴りを放つ、が、すかさず一歩引いてかわされる。
「なんのっ!」
空振りした右足を軸にし、後ろ回し蹴りへと移行したが、これもスウェーの要領でかわされる。
そのまま軸足を手前に刈られ、同時に顎に掌打を打ち付けられる。
後ろに転びそうになるところを続けざまに踏みつけられそうになるが、両足にブーストをかけてギリギリのとこらをバック転でかわした。
スピードを上げた攻撃や虚をついた攻撃でも捉えることができない。
流れるような動きで逆に翻弄されてしまう。
灯里の頬に冷や汗が流れた。
手の打ちようがない。
かけよってきた颯士が加勢を申し出るも、灯里はそれを手で遮り、真剣な顔で囁いた。
「大丈夫、あまりダメージはないから。それよりアレ使おうと思う」
男を見据えたまま続ける。
「集中したい、時間が欲しい。あと、スケッチブック見せて」
余裕のない表情のまま後退りをして時間を稼ぐ。
男はゆっくり歩いてくるが、逃がしてくれる様子はない。
慌ててカバンを漁りながら、めっちゃブーストかければ逃げきれるんじゃないか、と伝えると
「あんたを置いていけないし、顔も割れてるからどうせ待ち伏せされる。ここで叩くしかない…!」
と決意を固めた表情で言い放った。
颯士はカバンからスケッチブックを取り出すと、灯里に渡してから男の前に出た。
「邪魔をするならお前も痛い目をみることになるが。」
冷酷にいい放つ男に、なんとか時間を稼ごうと話題を探す。
拉致まがいのことをしてきたのはそちらの仲間であること、大人数で囲んだことは卑怯ではないのか、とのことを伝えるも
「先に首をつっこんできたのはそっちのお嬢ちゃんと聞いているが?」
と、引く様子はない。
1分が1時間にも感じる。
灯里はまだ用意はできないのかと内心焦りながらも、女の子に手を出して恥ずかしくないのか、と続ける。
「女なら何をしても許されるわけではない」
と、とりつく島もない。
そこで後方でスケッチブックを閉じる音が聞こえた。
「颯士!離れて!」
腰に手を添えた灯里が瞬間的に距離を詰めてきた。
「はく…」
ふっ、っと短く息を吐き、大きく吸い込み直す。
「それは効かない。」
片手で下半身をガードするが、今度はさっきと違う。
今度は胴体に目掛けて両手を前に突き出した。
「…龍撃!!!」
完全に避けられない距離と範囲、灯里の両手から白龍が繰り出される。
うねる白龍は男を飲み込んでも、まだ尾を見せず伸び続ける。
「龍…!?」
吹き飛びながら驚きの表情を見せる男に放出を続けながら叫ぶ。
「これに懲りたらっ…!」
吹っ飛ばされて塀に叩きつけられる男を確認すると、龍の尾を掴み、舞うように巻き取りながら静かに告げた。
「二度と顔見せるな…」
吸い込まれるように渦巻く龍が消えた。
エネルギーの回収は出来たが、体の疲労はピークに達していた。
男が打ち付けられた塀はひび割れ、衝撃が相当だったものを物語っている。
これで立ち上がれる人間などいるのだろうか、もし立ち上がられたら手の打ちようがない。
そんな「もしも」を想定しながらも、恐る恐る男に近づくも、完全に気絶しているように見える。
「もう大丈夫でしょ、行こう」
スケッチブックを拾いながら灯里に促され、その場を後にした。
「疲れたからアイス奢ってよ」
そんな軽口を叩きながら強がる灯里に、コンビニで買った2つに割れるアイスを半分あげようとしたら
「これだけかい!」
とつっこまれ、高級なダッツアイスを買わされるのであった。
・
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二人が去った後、男の目が見開いた。
ゆっくり立ち上がり、服についた砂ぼこりを手で払った。
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